By Atsushi Ito
スイスラウンド16回戦が終わり、いよいよスタンダードのトップ8デッキリストが出揃った。
初日時点でのメタゲームの結果、勝ち組となったのはどのデッキだったのか?8つのデッキリストを順に見ていこう。
14 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 2 《屍肉あさりの地》 -土地 (24)- 4 《ファルケンラスの過食者》 4 《ボーマットの急使》 4 《村の伝書士》 4 《地揺すりのケンラ》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アン一門の壊し屋》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー (26)- |
4 《ショック》 4 《削剥》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (10)- |
2 《ピア・ナラー》 2 《砂かけ獣》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《チャンドラの敗北》 2 《粗暴な協力》 2 《霊気圏の収集艇》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《チャンドラの誓い》 -サイドボード (15)- |
スイスランドをトップ通過したのはやはり『破滅の刻』で超強化された赤単、「ラムナプ・レッド」だった。
1マナクリーチャー12枚。2マナクリーチャー7枚。3マナクリーチャー4枚。そして4マナ域に《熱烈の神ハゾレト》が3枚。この26体のクリーチャーと残り8~9枚程度を3種類のスペルで埋めた構成がテンプレートで、《熱烈の神ハゾレト》がある関係上そのどれもが少しでも軽く早くダメージが入るカードになっているのが特徴的である。
また、通常《焼夷流》が入っているスロットが《削剥》になっているのと、《ゲトの裏切り者、カリタス》対策の《集団的抵抗》がメインから《反逆の先導者、チャンドラ》になっており、サイドスロットの節約を図っているのが見て取れる。
だが、”Face to Face” & “Channel Fireball”連合が持ち込んだ1位通過のこのリストは、さらにサイドボードが独特なことに注目すべきだ。
追加の《反逆の先導者、チャンドラ》に加えて《霊気圏の収集艇》《砂かけ獣》そして《栄光をもたらすもの》まで投入し、パワーカードによる中~長期戦まで見据えたミッドレンジへの変形サイドボードを用意しているのである。
前環境でマルドゥ機体が採用していた「プレインズウォーカー・サイド」と同様、最速のアグロデッキがサイドボード後には捌かれることを見越してプレインズウォーカーを主軸に据えるプランは、効果的なことこの上ない。赤単の存在は既にプロツアー以前から意識されていたことを考えると、その上で単体除去などの中途半端な赤単メタを軒並み弾き返せるこの構成には、見事な備えだと感服するほかない。
6 《沼》 5 《森》 3 《進化する未開地》 4 《花盛りの湿地》 4 《風切る泥沼》 1 《ハシェプのオアシス》 -土地 (23)- 4 《歩行バリスタ》 4 《残忍な剥ぎ取り》 4 《巻きつき蛇》 3 《不屈の追跡者》 1 《ピーマの改革派、リシュカー》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 2 《新緑の機械巨人》 -クリーチャー (20)- |
4 《ウルヴェンワルド横断》 4 《致命的な一押し》 2 《造反者の解放》 2 《闇の掌握》 3 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 2 《最後の望み、リリアナ》 -呪文 (17)- |
3 《精神背信》 3 《没収》 2 《豪華の王、ゴンティ》 2 《不帰+回帰》 1 《不屈の追跡者》 1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《闇の掌握》 1 《大災厄》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード (15)- |
「昂揚」型の黒緑はプレイに自信がなければできない選択だが、「ラムナプ・レッド」と黒単ゾンビが上位を支配していたこのプロツアーにおいては、確かにソリューションとなりうるデッキタイプだった。
メインからしっかり4枚ずつ搭載された《致命的な一押し》と《歩行バリスタ》、さらに《最後の望み、リリアナ》と《ゲトの裏切り者、カリタス》が赤単の隆盛を見越していた事実を裏付けている。
「昂揚」した《ウルヴェンワルド横断》から《ハシェプのオアシス》をサーチしての奇襲というオプションも見逃せない。サイドボードには《大災厄》が採用されており、《ウェストヴェイルの修道院》やランプデッキの《絶え間ない飢餓、ウラモグ》といった破壊不能のクリーチャーにも対処手段を用意している。
14 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 3 《陽焼けした砂漠》 -土地 (21)- 4 《ファルケンラスの過食者》 4 《村の伝書士》 4 《ボーマットの急使》 4 《地揺すりのケンラ》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アン一門の壊し屋》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー (26)- |
4 《ショック》 4 《焼夷流》 2 《集団的抵抗》 3 《激情のカルトーシュ》 -呪文 (13)- |
4 《削剥》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《ハンウィアー守備隊》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《チャンドラの敗北》 1 《ハンウィアーの要塞》 1 《陽焼けした砂漠》 -サイドボード (15)- |
クリーチャー部分はテンプレートだが、土地が21枚と切り詰められており、《激情のカルトーシュ》が採用されている点が特徴的だ。
1位のリストと比べると、メインの攻撃的度合とサイドのミッドレンジプランの攻撃的度合の割合が、1位は「8 : 6」なのに対してこちらは「9 : 7」くらいのイメージだろうか。放置できないパーマネントとして《ハンウィアー守備隊》も採用されており、単体でも強力な《ハンウィアーの要塞》との「合体」チャンスもありそうだ。
14 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 1 《海門の残骸》 -土地 (23)- 4 《ファルケンラスの過食者》 4 《ボーマットの急使》 4 《損魂魔道士》 4 《地揺すりのケンラ》 2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アン一門の壊し屋》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー (25)- |
4 《ショック》 4 《焼夷流》 4 《集団的抵抗》 -呪文 (12)- |
4 《削剥》 3 《マグマのしぶき》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《歪める嘆き》 1 《アクームの火の鳥》 1 《カーリ・ゼヴの巧技》 1 《屍肉あさりの地》 -サイドボード (15)- |
Lee Shi Tian率いる”Team Mint Card”の赤単は《村の伝書士》の代わりに《損魂魔道士》を採用している。「ラムナプ・レッド」同型戦では互いに対処できない《熱烈の神ハゾレト》の有無が勝負を決するところ、《損魂魔道士》がいれば《ショック》や《焼夷流》でサイズを縮め、あるいは除去することすら可能になるというのが狙いだ。
また、《海門の残骸》は手札消耗の激しいこのデッキなら積極的に起動できるので、中~長期戦を戦い抜くサポートとなる。サイドボードの《歪める嘆き》は無色マナが少なく序盤に打つには信頼性が少ないことから考えると、青赤コントロールの《氷の中の存在》/《焼けつく双陽》/《破滅の刻》ケアと思われる。
7 《山》 2 《沼》 4 《燻る湿地》 4 《凶兆の廃墟》 4 《ラムナプの遺跡》 2 《イフニルの死界》 -土地 (23)- 4 《ファルケンラスの過食者》 4 《ボーマットの急使》 2 《損魂魔道士》 4 《地揺すりのケンラ》 2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アムムトの永遠衆》 2 《エルドラージの寸借者》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー (25)- |
4 《ショック》 3 《集団的蛮行》 2 《焼夷流》 3 《木端+微塵》 -呪文 (12)- |
3 《削剥》 2 《アクームの火の鳥》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《猛火の斉射》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《屍肉あさりの地》 1 《エルドラージの寸借者》 1 《熱烈の神ハゾレト》 -サイドボード (15)- |
トップ8の中でも異彩を放っているのがこちらの「赤黒アグロ」。といっても構造的にはほぼ赤黒と同一で、違いといえばクリーチャー部分に関しては3マナ域の《アン一門の壊し屋》のスロットが《アムムトの永遠衆》に置き換わっているのと、《エルドラージの寸借者》が足されているくらいである。とはいえ、この形に至る前に「ラムナプ・レッド」を通過していることは明らかであり、その上でのタッチ黒の採用となると、赤単に比して何らかの優位がある以外の理由は考えられない。
スペル部分は《集団的蛮行》と《木端+微塵》が採られており、特に《集団的蛮行》はライフコントロールができるので赤単同型との先手後手をひっくり返せるのが強みだ。ほか、こちらのデッキに関しては後ほどデッキテクインタビューもお届けする予定なので、本人の詳しい解説などはそちらをご覧いただきたい。
15 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 -土地 (23)- 4 《ファルケンラスの過食者》 4 《ボーマットの急使》 4 《村の伝書士》 4 《地揺すりのケンラ》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アン一門の壊し屋》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー (26)- |
4 《ショック》 4 《焼夷流》 3 《集団的抵抗》 -呪文 (11)- |
4 《カーリ・ゼヴの巧技》 3 《過酷な指導者》 3 《マグマのしぶき》 3 《削剥》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード (15)- |
メインボードはテンプレート通りの「ラムナプ・レッド」だが、サイドボードには独特な調整が施されている。
《カーリ・ゼヴの巧技》はサイズの大きなクリーチャーを展開してくる相手に対し、予想外の一打となりうる。また、《過酷な指導者》は機体に対して効果的なカードであり、今後《霊気圏の収集艇》が流行ってくるなら採用を検討してみても良いだろう。
19 《沼》 3 《イフニルの死界》 2 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地 (24)- 4 《墓所破り》 4 《戦慄の放浪者》 4 《無情な死者》 4 《戦墓の巨人》 4 《呪われた者の王》 3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 -クリーチャー (23)- |
4 《闇の救済》 3 《致命的な一押し》 4 《闇の掌握》 2 《リリアナの支配》 -呪文 (13)- |
4 《没収》 3 《屑鉄場のたかり屋》 3 《精神背信》 2 《不帰+回帰》 2 《最後の望み、リリアナ》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 -サイドボード (15)- |
「黒単ゾンビ」は「ラムナプ・レッド」に対して有利であり、そのためにピエール・ダジョンをはじめとしてこのデッキを選択したプレイヤーも多かったが、雑多なデッキとの相性では「ラムナプ・レッド」に軍配が上がるため、最終的にはトップ8に一人しか送り込むことができなかった。
とはいえ、《致命的な一押し》《闇の救済》という豊富な1マナアクションで1ターン2行動がとりやすいのと、《熱烈の神ハゾレト》に対しても《闇の救済》《闇の掌握》という解答があり、《ゲトの裏切り者、カリタス》も無理なく搭載できるこのデッキが赤単にとっての天敵であることは疑いようもなく、今回の結果で勢力を増した赤単に対抗するデッキとして注目を集めそうである。
また、地味ながら《イフニルの死界》が加わったことも、フラッドしがちなこのデッキにとっては重要な新加入だったと言えそうだ。
14 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 1 《海門の残骸》 -土地 (23)- 4 《ファルケンラスの過食者》 4 《ボーマットの急使》 2 《損魂魔道士》 4 《地揺すりのケンラ》 2 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アン一門の壊し屋》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー (23)- |
2 《ショック》 4 《削剥》 4 《焼夷流》 2 《集団的抵抗》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (14)- |
4 《マグマのしぶき》 3 《チャンドラの敗北》 2 《栄光をもたらすもの》 1 《熱烈の神ハゾレト》 1 《現実を砕くもの》 1 《グレムリン解放》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《屍肉あさりの地》 1 《海門の残骸》 -サイドボード (15)- |
カードチョイス自体に特筆すべき点は見当たらないが、テンプレートのラインナップからクリーチャーを1マナ域から2枚と2マナ域から1枚減らし、浮いたスロットを使って《削剥》《焼夷流》をどちらも採用している点が興味深い。《ショック》を減らしていることからしても、メインは黒緑アグロとの対戦を意識していたと見るべきだろう。
その分サイドボードには3枚の《チャンドラの敗北》を採用しているほか、マッチアップのキーとなる4枚目の《熱烈の神ハゾレト》を採用しているのはさすがと言うべきだろう。
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