By Hiroshi Okubo
光安「久しぶりの決勝だわ。緊張するw」
そう漏らしながらフィーチャーマッチテーブルに足を運んだのは光安 祐樹(東京)。BIGMAGICのユニフォーム契約プレイヤーであり、PWCやPPTQなどに精力的に参加する強豪マジックプレイヤーだ。都内のトーナメントに足を運ぶと大抵そこには光安の姿があり、フォーマットを問わずいつでも赤いアグロデッキを握っている。
もちろん、この日の使用デッキも「アタルカレッド」。元は『基本セット2015』で《ゴブリンの熟練扇動者》や《かき立てる炎》がリリースされたことで環境トップに躍り出た赤系アグロデッキは、続く『タルキール覇王譚』で優秀な軽量クリーチャーとトークン生成呪文、そして《強大化》という一撃必殺の呪文を得たことで常にトーナメントシーンを席巻してきた。
無論、「アタルカレッド」はフロンティアでも十分に通用するデッキであり、赤いアグロデッキを愛する光安がこのデッキを使うということはまさに鬼に金棒と言ったところだろう。
試合前の光安に自信のほどを伺うと、「あんまりない。けど、これで勝てば(神決定戦で)Aさん(松本 友樹)とBIGMAGIC格付けマッチだし、おもしろそうだから頑張りたいな」とユニフォーム契約プレイヤーとしての矜持を見せる。
そんな筆者と光安のやりとりを聞きながら、少し遅れてテーブルに着いた“野生のモダン神”が一言挟んできた。
松田「でも、俺が勝った方が晴れる屋的にはおもしろいでしょ」
いつもの調子で飄々と語る彼は松田 幸雄(東京)。第6期モダン神決定戦で市川 ユウキを破って以来、これまで3期連続でモダン神の座に就いている現役の神だ。
野生のモダン神の異名をとるにふさわしく、松田は日ごろからモダンに限らずスタンダードやレガシー、ヴィンテージなどフォーマットを問わず独創的なデッキを組み上げて戦っている。グランプリなどの大型イベントにも精力的に参加しマネーフィニッシュを収めているなどその実力は疑うべくもなく、このフロンティア神挑戦者決定戦の舞台で決勝戦まで駒を進めたことは何も不思議なことではない。
今回はオリジナルの「青黒コントロール」を操り、ここまで1本もゲームを落とすことなく勝利を積み重ねてきていた。
松田の宣戦布告とも取れる強い言葉に、思わず光安も歯を見せながら「きみ、勝ちすぎでしょwここは譲ってもらわないとね」と応じ、松田もまた「いやいや、2階級制覇したいよ。神決定戦攻略中だからねw」と返す。朗らかな雰囲気ながら、互いの闘志は十分なようだ。
ジャッジによる試合開始のコールを待たずして互いにカットを終えた2人は、早くプレイしたいとばかりに初手をめくる。はたして最後に笑うのはどちらになるのか――?
松田 幸雄(東京) vs. 光安 祐樹(東京)
Game 1
《血染めのぬかるみ》をプレイするのみでターンを返す松田。対する光安は《山》から《僧院の速槍》と好調なスタートを切る。
返す松田は手札を繰りながら《沼》をプレイ。光安が再び《僧院の速槍》でクロックを刻みに行くと《闇の掌握》でそのクロックを握り潰す。ならばと光安は《損魂魔道士》を戦場に送り込むが、松田も《巧みな軍略》で手札を整えて《致命的な一押し》で《損魂魔道士》を除去する。
返す光安が《軍族童の突発》でトークンを並べ立て、、松田は《最後の望み、リリアナ》でトークンの1体を除去。光安も《乱撃斬》とゴブリントークンのアタックを合わせて《最後の望み、リリアナ》を除去し、一進一退の攻防が続く。
光安 祐樹(東京)
だが、コントロール相手にいつまでも“一進一退の攻防”を演じ続けるわけにはいかない。光安は2枚の《密輸人の回転翼機》を戦場に送り込むが、松田はどこ吹く風とばかりに脇に出てくるクリーチャーを片端から潰していく。
やがて松田の土地が6マナまで伸びるころには光安は息切れを起こしてしまい、後続が続かない。この隙に松田は《時を越えた探索》をプレイし、光安を一気に突き放す! その様子を眺めることしかできない光安の前に松田が叩きつけたのは《漂う死、シルムガル》!
これによってトークンで攻めることも封じられてしまった光安。苦し気な表情を浮かべながら《鐘突きのズルゴ》を通常プレイ。《密輸人の回転翼機》に「搭乗」し、攻撃に向かう。松田はこの《密輸人の回転翼機》を余裕で対処しつつ、《奔流の機械巨人》で《致命的な一押し》を疑似「フラッシュバック」。《鐘突きのズルゴ》を除去して光安のライフを一気に詰めていく。
万事休す。序盤の攻撃をすべて捌かれてしまった光安はもはやサンドバッグ状態だ。やがて2枚目の《奔流の機械巨人》までもが戦場に現れると、負けを認めてサイドボードへ手を伸ばした。
松田 1-0 光安
Game 2
先攻の光安が7枚の手札を見て、マリガンを選択。続く6枚の手札もライブラリーに戻し、5枚になってしまった初手を見て深いため息をつく。やむを得ないといった表情でキープし占術を行うが、1ターン目のアクションはなく、続く2ターン目に《ドラゴンの餌》で戦場にクロックを用意する。
対する松田は《陰鬱な僻地》2枚を戦場に設置してライフを回復し、光安が《損魂魔道士》を呼び出すと《致命的な一押し》で対処する。さらに《巧みな軍略》で手札を整え、第4ターンに《時を越えた探索》、続くターンに《最後の望み、リリアナ》と徐々にゲームを掌握しにかかる。
松田 幸雄(東京)
土地が2枚で止まってしまっている光安だったが、「召集」能力でなんとか《かき立てる炎》をプレイし《最後の望み、リリアナ》を処理する。だが、返す松田は光安の決死の抵抗をあざ笑うかのように《才気ある霊基体》を戦線に送り込む。
松田のライフはまだ16。光安はこれをいち早く火力圏内まで落とし込まなくてはならないが、《才気ある霊基体》がライフレースを許さない。望まぬドローゴーを強いられる光安の前に、松田がプレイしたのは……
《ゲトの裏切り者、カリタス》、そして《漂う死、シルムガル》。
《漂う死、シルムガル》の毒の吐息によってトークンたちが死に瀕する。1度は《アタルカの命令》で躱した光安だったが、無論根本的な解決にはならない。返すターン、ドローを確認するとその右手を松田へと差し出した。
松田 2-0 光安
第9期フロンティア神挑戦者決定戦、優勝は松田 幸雄!
おめでとう!!
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