Translated by Yoshihiko Ikawa
(掲載日 2017/10/23)
やぁ、また会ったな。グジェゴジュだ。今日は『イクサラン』リミテッドについて話していこうと思う。
このセットが発売されてから約1ヶ月が経ったので、最も普遍的な(部族の)アーキタイプの組み方についてはきっとみんな知っているだろう。もし知らなかったとしても、すでにたくさんの記事が世界中にあるので、きっと容易に知ることができるはずだ。
今日俺が話題にしようと思っているのは、Wizardsがセットをデザインするときには意識していなかったであろう、もし意識していたとしてもそれが一目見て分かるのを望まなかったものだ。そう、『イクサラン』リミテッドにおける“部族”ではないアーキタイプ・トップ5について、簡単な説明と構築のコツ、そしてサンプル3-0デッキリストと共に紹介していこうと思ってるんだ。
だがその前に、この環境の基礎知識についていくつか話しておこう。まずこの環境はテンポ指向で、マナカーブ通り展開してタイミングよくコンバットトリックをプレイするのが最良の勝ち筋である、超攻撃的な環境だ。これは全てのデッキがテンポ指向であるという意味ではなく、変わったコントロールデッキを組みたいと思うなら、このことを忘れずに、しっかりと対応できるようにする必要があるというだけだ。
次にドラフト中に覚えておく必要があることだ – 除去は普段の環境よりも価値が低く、一方、コンバットトリックは非常に優秀だ。優れたアグロデッキをピックしているときに、《弱者成敗》《依頼殺人》よりも《吸血鬼の士気》《卑怯な行為》を優先してピックすることは容易に想像ができる。またこのこともあり、強化オーラは通常の環境よりも使い勝手が良い。普通のリミテッドだったら《向こう見ず》は使いたくもないが、この環境においてはまともなコモンであり、これを集めることで簡単に3-0デッキを組むことだってできる。
それでは、『イクサラン』の隠されたアーキタイプ・トップ5について話していこうか。
#5 黒緑探検
「探検」クリーチャーの大部分と、「探検」シナジーカードが黒か緑なので、正確に言えばこれは”隠されたアーキタイプ”ではないのかもしれない。「探検」といえば、きっと黒緑を頭に浮かべるだろう。ただ、そうは言ってもこのアーキタイプはどの部族にも属してはいないので、ここで書く価値があると俺は信じている。
個人的にこの環境全体の中で一番パワフルな戦略だと俺は思っている。「ならどうして5番なんだい?」と君は聞くだろう。この答えはシンプルだ。このアーキタイプは組むのが本当に困難なんだ。「探検」を持っている黒と緑のクリーチャーのほとんどが一般的に良いカードなので、「探検」デッキにしたいかどうかに関わらず、誰だって《ティシャーナの道探し》《マーフォークの枝渡り》《探求者の従者》をプレイしたいに決まっている。そして最高の「探検」デッキを組みたければ、これらのクリーチャーを大量にピックする必要があるんだ。
黒緑探検の組み方:
いつ黒緑探検をやるべきか?
「探検」クリーチャーを狙ってピックするのは難しいので、このアーキタイプを決め打ちするのはほぼ不可能だ。俺が黒緑探検をやるときは、黒か緑のカードからスタートして、4-8手目で《野茂み歩き》が取れたときだ。これが取れたとしても「探検」デッキを決め打つわけではなく、少しだけ「探検」カードの優先度を上げて普通にドラフトを進めていく。そして2パック目で黒か緑の強力なカードを初手で取れたり、2枚目の《野茂み歩き》をピックすることができたら、上記のガイドの通り黒緑探検に焦点をあててピックをしていくんだ。
3-0サンプルデッキリスト:
8 《沼》 8 《森》 -土地 (16)- 1 《這い回る心止虫》 2 《探求者の従者》 2 《野茂み歩き》 2 《イクサーリの卜占師》 1 《帆凧の掠め盗り》 1 《マーフォークの枝渡り》 3 《ティシャーナの道探し》 1 《群棲する猛竜》 1 《隠れ潜むチュパカブラ》 1 《皇帝の先兵》 1 《不死の古き者》 1 《巨大な戦慄大口》 1 《轟く棘背びれ》 -クリーチャー (18)- |
1 《卑怯な行為》 1 《弱者成敗》 1 《依頼殺人》 1 《吸血鬼の印》 1 《継ぎ当ての翼》 1 《宝物の地図》 -呪文 (6)- |
#4 青多色コントロール
『破滅の刻』ドラフトのときの緑多色ランプによく似ているアーキタイプだ。緑のランプ呪文の代わりに《宝物トークン》を生み出せる青のカードを用い、メインカラーではない色のカードであれ、どんなカードでも使用することが可能になっている。
このアーキタイプを組む最良の方法は、メインの2色とタッチする価値がある強力なカードに焦点を絞ることだ。メイン2色のうち1色は青なのは間違いなく、2色目は何色でも構わない。ただし俺の経験から言うと、防御的な序盤のクリーチャーがあり、壊れた神話レアたちでゲームを終わらせるまでの時間を稼いでくれるので、2色目としては白か緑がベストだと思う。
青多色コントロールの組み方:
いつ青多色コントロールをやるべきか?
俺が青多色コントロールを始めるのはいつも同じ手順だ。まず強力なレアを初手で引き、そしてそのレアと色が違う優秀なレア/アンコモンを2手目に流れてくる。その後なるべく広いピックをしながら上家のシグナルを読み取り、青が空いていると確信したときに一直線って感じだな。
このアーキタイプに必要な青いカードは他のアーキタイプにとってはあまり良いカードではないので、遅い順目で確保できることを期待できるし、そのため早い順目では色を気にせず各パックのベストカードをピックすることに注力できる。上家からの明確なシグナルがなく、なるべく手広くピックしたときには良い保険になる。この手法なら、早い順目で取った優秀なカードを腐らせずに使うことができるんだ。
3-0サンプルデッキリスト:
7 《平地》 7 《島》 1 《山》 1 《沼》 1 《未知の岸》 -土地 (17)- 2 《司教の兵士》 1 《軍団の飛び刃》 2 《日の出の使者》 2 《財力ある船乗り》 1 《駆り立てる僧侶》 2 《大気の精霊》 1 《裕福な海賊》 1 《マガーンの鏖殺者、ヴォーナ》 -クリーチャー (12)- |
1 《鉤爪の切りつけ》 1 《川の叱責》 1 《稲妻の一撃》 1 《見張りによる消散》 1 《航路の作成》 1 《海賊の獲物》 1 《残骸の漂着》 1 《イクサランの束縛》 1 《崇高な阻止》 1 《ヴァンスの爆破砲》 1 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -呪文 (11)- |
#3 白黒ミッドレンジ
俺を含めたくさんのプレイヤーが、この環境の初期は白黒=吸血鬼だと考えていたと思う。しかし実際はもし十分な数の吸血鬼が取れなくても、他の部族のカードを使って容易にデッキを組むことができる。そして部族シナジーが薄くなったとしても白と黒にはそれぞれ優秀な除去と強力なクリーチャーがいるので、良い白黒のデッキを組む際はそこまでシナジーを気にして組む必要がないということが分かったんだ。
一般的な強力なミッドレンジデッキを組むためのパーツを白黒は持っている。パワフルな爆弾カード、確定除去、ライフゲイン、カードアドバンテージ、そのすべてがコモンとアンコモンだけで揃うんだ。
白黒ミッドレンジの組み方:
いつ白黒ミッドレンジをやるべきか?
特筆するべき点はない。白と黒の両方の色が空いているときにやるだけだ。シナジーも必要ないので、少し遅い順目からでも参入することができる。
また、他の色から路線変更してこの白黒にするのも容易だ。なぜならクリーチャータイプが関係ないのでで、《凶兆艦隊の船長》のための海賊だったり、《ティロナーリの騎士》のための恐竜だったりが足りているかどうかを気にする必要もないからだ。
3-0サンプルリスト:
9 《沼》 8 《平地》 -土地 (17)- 1 《這い回る心止虫》 2 《探求者の従者》 1 《司教の兵士》 1 《指名手配の獄道者》 1 《凶兆艦隊の貯め込み屋》 2 《日の出の使者》 2 《流血の空渡り》 1 《無情な無頼漢》 1 《帝国のエアロサウルス》 1 《輝くエアロサウルス》 1 《薄暮の賛美者》 1 《不死の古き者》 -クリーチャー (15)- |
1 《卑怯な行為》 1 《弱者成敗》 1 《ヴラスカの侮辱》 1 《饗宴への召集》 1 《依頼殺人》 1 《イクサランの束縛》 1 《崇高な阻止》 1 《宝物の地図》 -呪文 (8)- |
#2 白青飛行ビート
俺はこのアーキタイプをドラフトするのが大好きだ。戦略は至ってシンプルで、地上をタフネスの高いクリーチャーで守り、飛行クリーチャーで対戦相手を倒すだけだ。
マナカーブを整えるためのクリーチャー、コンバットトリック、回避能力持ちのクリーチャーに焦点を当てて早い順目で取り、他のデッキで使いづらいようなブロッカーを遅い順目で確保することが重要だ。何度も14手目で取ったことがある、《聳えるアルティサウルス》ですらこのデッキでは優秀なんだ。
白青飛行ビートの組み方:
いつ白青飛行ビートやるべきか?
俺は基本的にアグロなデッキを組みたいので、平均的なプレイヤーよりも2マナ域を早めにピックすることを心掛けている。そのため、《アダントの先兵》や他の白のクリーチャーたちからドラフトをスタートことがしばしばあるんだ。その後、1パック目の中盤で《風と共に》を見かけたら、この卓ではオーラ戦略が過小評価されていると判断して、喜んで白青に向かうよ。
3-0サンプルリスト:
8 《平地》 8 《島》 -土地 (16)- 1 《セイレーンの嵐鎮め》 2 《司教の兵士》 1 《アダントの先兵》 1 《猛竜の相棒》 1 《風雲艦隊の空中要員》 2 《縄張り持ちの槌頭》 1 《日の出の使者》 1 《水罠織り》 1 《セイレーンの見張り番》 1 《財力ある船乗り》 1 《帝国のエアロサウルス》 1 《聳えるアルティサウルス》 1 《大嵐呼び》 1 《大気の精霊》 -クリーチャー (16)- |
2 《潜水》 1 《吸血鬼の士気》 1 《欲望の深み》 3 《風と共に》 1 《崇高な阻止》 -呪文 (8)- |
レアが1枚も入ってないことに注目!
#1 黒赤アグロ
俺の一番好きな「隠されたアーキタイプ」がこれだ。必要なカードが10-14手目で流れてくるので、このアーキタイプはMagic Onlineで非常にピックしやすかった。
クリスティアン・カルカノがこの戦略を片手に世界選手権2017で3-0したあとは、そういうケースは減るだろうし、みんな遅い順目で《向こう見ず》を流してはくれないだろうから、1マナクリーチャーたちや強化オーラを少し早くピックする必要は出てきたが、それでも依然このアーキタイプは強力だ。
黒赤アグロの組み方:
いつ黒赤アグロやるべきか?
白青飛行ビートと同様に、俺は優秀なクリーチャーからドラフトをスタートしたい。そしてすでに黒か赤のクリーチャーを数枚と《向こう見ず》が取れていたり、なんでもいいから1マナ域が1パック目の遅い順目で流れてくるようなら、2パック目と3パック目ではこの超攻撃的なカードたちを優先してピックするだろう。、
3-0サンプルリスト:
ここで紹介すべきサンプルリストは明確にコレだ。クリスティアン・カルカノに敬意を。
9 《沼》 7 《山》 -土地 (16)- 3 《立ち枯れの守り手》 1 《這い回る心止虫》 1 《帆凧の掠め盗り》 1 《女王湾の兵士》 1 《深海艦隊の扇動者》 1 《ティロナーリの騎士》 1 《凶兆艦隊の船長》 2 《巧射艦隊の拷問者》 1 《流血の空渡り》 1 《身勝手な粗暴者》 1 《深海艦隊の殺し屋》 1 《聖域探究者》 -クリーチャー (15)- |
2 《卑怯な行為》 1 《強迫》 1 《板歩きの刑》 1 《依頼殺人》 4 《向こう見ず》 -呪文 (9)- |
読んでくれてありがとう!この記事を楽しんでくれたなら嬉しいよ。もし何か気になる点があったら、気軽に俺のTwitterにリプライを飛ばしてくれよな。1つずつ、すべての質問に回答してみせるさ!
じゃあ、またな!
グジェゴジュ
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ポーランド出身。
【グランプリ・リール2012】、【グランプリ・ブリュッセル2015】でトップ8入賞。【グランプリ・サンティアゴ2017】では見事準優勝を果たした。
その高い実力はプロツアーでも発揮され、多数の上位入賞、マネーフィニッシュを経験している。