Translated by Kazuki Watanabe
(掲載日 2017/11/10)
プロツアー『イクサラン』の結果、これからのスタンダードについて話すことがたくさんあります。
プロツアーが始まるまで、各種エネルギーデッキとラムナプ・レッドが最大勢力となることは明らかでした。「エネルギーデッキが約30%で、ラムナプ・レッドは10-15%くらい」と私は予想していました。ところが、蓋を開けてみればプロツアーのメタゲームはエネルギーデッキが48.5%で、ラムナプ・レッドは20%。そう、およそ半数がエネルギーデッキを使用していたのです。エネルギーに関するカードがどれほど強力かが良く分かりますね。
しかし、トップ8入賞者が発表されたとき、「日曜の決勝ラウンドでの対戦は非常に面白いものになる」と思いました。メタゲームとは異なり、トップ8には合計7つの異なるアーキタイプが入賞していたのです。4Cエネルギーが2人、ティムール・エネルギー、ラムナプ・レッド、スゥルタイ・エネルギー、青白《王神の贈り物》、マルドゥ機体、そしてジェスカイ《副陽の接近》です。
エネルギーデッキとラムナプ・レッドではないデッキがわずか30%であったことを考慮すれば、このように多様なトップ8を見ることは確かに驚くべきことです。
プロツアーに向けたテスト中、スゥルタイ・エネルギー以外のデッキの大半を私たちも試しました。しかし、早い段階で「どのデッキもティムールに劣る」と判断したので、あまり掘り下げませんでした。
しかしながら、Team GenesisとRevelationの大半は、私たちが「ティムールに劣る」と判断したデッキを使用し、セス・マンフィールドのプロツアー優勝を始めとして大きな成果を残したわけですから、私たちは明らかに過小評価をしていたことになります。
私自身はチームメイトの多数と共にティムール・エネルギーを選び、残りのチームメイトはラムナプ・レッドを選びました。
今回は、トップ8すべてのアーキタイプを見て、環境の立ち位置について私の考えを述べて、彼らのカード選択について話をしたいと思います。
ティムール・エネルギー
多くのプレイヤーが“環境のベストデッキ”と判断したデッキで、そう思うのも無理はありません。このデッキはマナベースが優秀で、除去も豊富。そしてこの環境における強力なカードを多数採用しています。
さて、このデッキをテストする中で、先手と後手でゲームがまったく異なるものになると気づきました。
例えば後手の場合、《牙長獣の仔》のようなカードはあまり効果的ではありません。相手のターンが1つ多いので、除去でもブロッカーでも用意できて、対処ができるからです。
先手の場合、相手の戦場に何もクリーチャーがいない状態でプレイできます。攻撃を通すことがはるかに簡単で、これに対する解答はさらに限定されています。また、対ラムナプ・レッド、そして対マルドゥ機体が、予想していたよりも良いマッチアップであることにも気づきました。
《熱烈の神ハゾレト》に対する解答は多くありません。タイミング良く《慮外な押収》を唱えることくらいですが、それでも間に合わないことがあります。
いずれにせよ、このデッキには環境に存在するあらゆるデッキを打ち倒すツールを持っています。クリスティアン・ホークはこのデッキを使用し、プロツアー『イクサラン』のトップ8にたどり着きました。
3 《森》 2 《山》 1 《島》 1 《隠れた茂み》 4 《植物の聖域》 3 《尖塔断の運河》 4 《根縛りの岩山》 4 《霊気拠点》 -土地 (22)- 4 《牙長獣の仔》 4 《導路の召使い》 4 《ならず者の精製屋》 4 《つむじ風の巨匠》 3 《逆毛ハイドラ》 4 《栄光をもたらすもの》 -クリーチャー (23)- |
4 《霊気との調和》 1 《マグマのしぶき》 4 《蓄霊稲妻》 2 《削剥》 1 《慮外な押収》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文 (15)- |
3 《否認》 2 《チャンドラの敗北》 2 《造命師の動物記》 1 《多面相の侍臣》 1 《猛火の斉射》 1 《呪文貫き》 1 《削剥》 1 《人工物への興味》 1 《慮外な押収》 1 《川の叱責》 1 《自然に仕える者、ニッサ》 -サイドボード (15)- |
ホークはメインボードとサイドボード両方で、とても興味深いカードを選んでいます。
メインボードから見ていきましょう。彼は《栄光をもたらすもの》4枚、《慮外な押収》1枚、そして《領事の旗艦、スカイソブリン》1枚と、5マナのカードを6枚採用しています。
5マナ域が多すぎるように見えるかもしれませんが、《反逆の先導者、チャンドラ》2枚と、2枚目の《隠れた茂み》ではなく4枚目の《根縛りの岩山》を採用していることで、5マナ域をプレイしやすくしていますね。
《慮外な押収》は、先ほど述べた《熱烈の神ハゾレト》や《スカラベの神》を処理する上で、素晴らしい働きをしてくれます。
《領事の旗艦、スカイソブリン》は、ここ最近のティムール・エネルギーのリストではあまり見られなかったカードです。しかし、エネルギーを使用するミッドレンジデッキが多く、《削剥》が少ないメタゲームでは、ミラーマッチを制する良い手段なのです。
サイドボード
サイドボードを見てみましょう。特に私の目を引くのが、《造命師の動物記》と《猛火の斉射》です。
《造命師の動物記》はミラーマッチ、そして青黒コントロールを倒すための素晴らしい手段です。
《猛火の斉射》は奇妙な選択に見えるかもしれません。しかし、大量のタフネス1クリーチャーを採用しているマルドゥ機体と黒単アグロの両方に対しては、1マナの《疫病風》になります。
ティムール・エネルギーはたしかにプロツアーで優勝はしませんでしたが、今後も勝利を重ねるデッキだと思います。私の予想では、これからのメタゲームでもプロツアーに近い25%を占めるでしょう。
4Cエネルギー
ティムールブラックとも呼ばれるデッキで、《栄光をもたらすもの》4枚や他の5マナ域ではなく、黒をタッチして《スカラベの神》や《秘宝探究者、ヴラスカ》を採用しています。
黒をタッチする価値があるかどうか、多くのプレイヤーが長い時間をかけて議論してきました。しかし、《スカラベの神》は疑いようのない強力なカードです。このカードを唱えて次のターンを迎えることができれば、そのまま勝利していることがとにかく多いのです。
間違っているかもしれませんが、現状では私個人としては黒をタッチしない通常のティムールデッキの方が良いと思っています。安定したマナベースで、少し弱めのカードを使用する方が、しっくり来ます。もしもアグロ系のデッキが減少したら、カードパワーの高いカードを採用してミラーマッチを制することができるかもしれません。
トップ8には2つの4Cエネルギーデッキが入賞しましたが、どちらもかなり異なっているように見えました。
4 《森》 1 《島》 1 《山》 1 《沼》 1 《隠れた茂み》 4 《植物の聖域》 3 《尖塔断の運河》 1 《花盛りの湿地》 2 《根縛りの岩山》 4 《霊気拠点》 -土地 (22)- 4 《牙長獣の仔》 4 《導路の召使い》 4 《ならず者の精製屋》 4 《つむじ風の巨匠》 3 《逆毛ハイドラ》 2 《スカラベの神》 -クリーチャー (21)- |
4 《霊気との調和》 1 《顕在的防御》 4 《蓄霊稲妻》 3 《削剥》 1 《至高の意志》 2 《領事の旗艦、スカイソブリン》 2 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -呪文 (17)- |
3 《否認》 2 《貪る死肉あさり》 2 《川の叱責》 2 《野望のカルトーシュ》 2 《自然に仕える者、ニッサ》 1 《チャンドラの敗北》 1 《ジェイスの敗北》 1 《人工物への興味》 1 《慮外な押収》 -サイドボード (15)- |
見てのとおり、ピオトル・グロゴウスキは赤のダブルシンボルである《栄光をもたらすもの》を採用せず、《領事の旗艦、スカイソブリン》2枚を、《スカラベの神》2枚と共に採用しています。その結果、土地事故を減らし、デッキを安定させています。
その他にも2枚、彼は興味深いカードを選んでいます。《至高の意志》と《顕在的防御》です。
《至高の意志》はエネルギーデッキのサイドボードでよく見られるカードです。 《燻蒸》を打ち消すなど、大きな脅威に対処できる柔軟性のあるカードで、デッキを掘り進めて除去を確保することも可能です。
一方、《顕在的防御》はこういったエネルギーデッキではあまり見られないカードです。しかし、除去や《慮外な押収》から《領事の旗艦、スカイソブリン》や《スカラベの神》を守る素晴らしい手段です。
サイドボード
グロゴウスキのサイドボードを見てみると、彼はさらに黒いカード、《野望のカルトーシュ》を採用しています。
構築でオーラ呪文、というのは不思議に思えるかもしれませんが、このカードはすべてのアグロデッキに対して壊滅的な働きをしてくれます。特に《逆毛ハイドラ》に付ければ、手がつけられなくなります。巨大な絆魂持ちで、呪禁も与えられるわけですから、こうなってしまえば勝ったも同然でしょう。
また、ほとんどのデッキで採用されておらず、多くても1枚しか採用されていなかった《川の叱責》を2枚採用しています。このカードが輝く瞬間を、準決勝で見ることができました。パスカル・メイナードが3ゲーム目を有利に進めていた場面で、Glogowskiは6枚目の土地を探し当て、《川の叱責》を唱えました。結果、メイナードの盤面をすべて戻し、ゲームを決定づける攻撃を決めたのです。
このカードは、《王神の贈り物》やトークンデッキに対して絶大な働きをしてくれます。ミラーマッチでどれくらい良いのか定かではありませんが、1対多交換ができて有利になれることが多いと思うので好きなカードではあります。
それでは、次はマイク・シグリストのリストを見てみましょう。
3 《森》 2 《山》 1 《島》 1 《沼》 1 《隠れた茂み》 4 《植物の聖域》 3 《尖塔断の運河》 3 《根縛りの岩山》 4 《霊気拠点》 -土地 (22)- 4 《牙長獣の仔》 4 《導路の召使い》 4 《ならず者の精製屋》 4 《つむじ風の巨匠》 2 《逆毛ハイドラ》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《スカラベの神》 -クリーチャー (22)- |
4 《霊気との調和》 2 《マグマのしぶき》 4 《蓄霊稲妻》 1 《削剥》 3 《反逆の先導者、チャンドラ》 2 《秘宝探究者、ヴラスカ》 -呪文 (16)- |
3 《否認》 2 《チャンドラの敗北》 2 《人工物への興味》 2 《慮外な押収》 2 《自然に仕える者、ニッサ》 1 《多面相の侍臣》 1 《マグマのしぶき》 1 《呪文貫き》 1 《削剥》 -サイドボード (15)- |
4Cエネルギーを使用したもう一人、マイク・シグリストは《栄光をもたらすもの》2枚、《反逆の先導者、チャンドラ》3枚を採用しています。
私は《反逆の先導者、チャンドラ》の大ファンです。彼女自身の力でゲームを支配できますからね。除去呪文と《つむじ風の巨匠》で守りを固めてしまえば、こちらは彼女の奥義で勝利を目指し、相手には困難なゲームを強いることができるでしょう。
私が考えるこのリストで最も興味深い点は、彼が《逆毛ハイドラ》を2枚しか採用していないことです。
ほとんどのリストでは3枚か4枚採用されていますが、プロツアー以降、私自身も少し落ち着いて考え直すようになりました。複数引いた場合でもあまり良い場面がなく、膠着した盤面を解決してくれることが少ないからです。ラムナプ・レッドとの対戦では、対戦相手の攻撃を食い止める上で役立つカードではありますが、《反逆の先導者、チャンドラ》ほど強力ではありません。
サイドボード
サイドボードで触れておきたいカードが2枚あります。《自然に仕える者、ニッサ》と《多面相の侍臣》です。
《自然に仕える者、ニッサ》は3ターン目に唱える最良の1枚で、特に先手の場合、対戦相手が対処手段を持っていないならば、あっという間にゲームを支配できます。ほとんどの場合、まずは忠誠度を5まで上げて、それから「0」能力を起動して5マナのカードを直接戦場に出す、という動きが好きです。
また、ゲーム終盤では初期忠誠度8で唱えることができ、即座に奥義を起動して10点のダメージを空中から見舞うことが可能となるので、どのような場面からでも対戦相手を倒すことが可能です。
私はこのカードを対コントロールデッキ、そしてミラーマッチの先手で使用することが好きです。トークンデッキや《王神の贈り物》デッキとの対戦でも良さそうに見えますが、《排斥》や《賞罰の天使》のような対処手段を持っていると、それらを除去したとしても忠誠度0で戻ってきてしまうので注意が必要です。
ティムールや4Cエネルギーのほとんどが、《多面相の侍臣》をサイドボードに採用しています。ミラーマッチでは、「不朽」で戻して実質2対1交換をすることができます。望ましい対象がいない、という場面はほとんどないので、エネルギーデッキのサイドボードには、ぜひ採用したい1枚です。
もしこの2つの4Cエネルギーから選ぶとするならば、《栄光をもたらすもの》と《反逆の先導者、チャンドラ》が《領事の旗艦、スカイソブリン》と《逆毛ハイドラ》よりも強力なので、シグリストのものを選びます。
これからのメタゲームでは、ティムールよりも4Cデッキの方がわずかに少ないと思っていますが、それほど多くはないでしょう。私の予想では、環境の15%-20%程度だと思います。
マルドゥ機体
このマルドゥ機体が、テスト終盤で一番有力な選択肢でした。ティムールが最大勢力だと予想していたので、環境に《削剥》が少ないと考えるのは当然でしょう。
《キランの真意号》《屑鉄場のたかり屋》、そして《無許可の分解》は相変わらず非常に強力で、ラムナプ・レッドのようなデッキではなく、機体を選択する大きな理由です。
しかしながら、マルドゥには明確な欠点があります。マナベースです。このデッキは《産業の塔》のために、多くのアーティファクトが必要です。結果、安定性は低めですが、デッキ自体は他に劣らない強さです。
《模範的な造り手》から始めて、《キランの真意号》。そして《経験豊富な操縦者》と《致命的な一押し》へ、とテンポよく繋げることが、最高の動き出しです。サミュエル・イレンフェルトはマルドゥ機体を使用し、初めてのプロツアーでありながらトップ4まで駆け上がりました。彼のリストを見てみましょう。
3 《山》 3 《平地》 2 《泥濘の峡谷》 4 《感動的な眺望所》 4 《秘密の中庭》 4 《産業の塔》 2 《霊気拠点》 1 《ラムナプの遺跡》 -土地 (23)- 2 《歩行バリスタ》 4 《発明者の見習い》 4 《模範的な造り手》 2 《ボーマットの急使》 4 《屑鉄場のたかり屋》 3 《経験豊富な操縦者》 2 《ピア・ナラー》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー (24)- |
3 《致命的な一押し》 4 《無許可の分解》 4 《キランの真意号》 2 《霊気圏の収集艇》 -呪文 (13)- |
3 《暴れ回るフェロキドン》 3 《黄昏+払暁》 2 《強迫》 2 《マグマのしぶき》 2 《削剥》 1 《ピア・ナラー》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 1 《平地》 -サイドボード (15)- |
ここで最初に見ておきたいのが、彼が採用したアーティファクトの数です。
彼が採用したのは、《ボーマットの急使》、そして《歩行バリスタ》を2枚ずつのみです。これまで、《歩行バリスタ》を4枚採用しないリストを見ることはありましたが、《ボーマットの急使》が4枚採用されていないリストは一般的ではありませんでした。
この背景には、このデッキの《ボーマットの急使》が、ラムナプ・レッドほど良い選択ではない、という点があると思います。ラムナプ・レッドでは、軽い除去や、《地揺すりのケンラ》や《アン一門の壊し屋》のようなブロックを封じる手段があるため、《ボーマットの急使》が攻撃できる機会が多いのです。
マルドゥ機体が持っているのは、《致命的な一押し》と《無許可の分解》です。したがって、《ボーマットの急使》はマルドゥ機体ではそれほど優秀ではありませんが、《産業の塔》にとって重要な1マナのアーティファクトではあります。
《歩行バリスタ》を採用することはそれほど悪くありません。2ターン目に唱えることができますからね。終盤でも有効なカードですが、《ボーマットの急使》では話が違ってきます。
《歩行バリスタ》はスゥルタイ・エネルギーの《光袖会の収集者》に刺さり、黒単アグロならば《光袖会の収集者》と《夜市の見張り》、ラムナプ・レッドでは《ボーマットの急使》と《地揺すりのケンラ》、そしてミラーマッチの《模範的な造り手》《ボーマットの急使》《経験豊富な操縦者》と様々なデッキに効いてきます。
このマルドゥ機体も《熱烈の神ハゾレト》を使用するデッキの一つです。そのため、できる限り早く攻撃できるように、軽いカードが多数採用されています。ティムールのようなデッキに対するテストでは、積極的に動き出し、その結果《熱烈の神ハゾレト》もしくは《無許可の分解》を使用して、あっという間に勝利することもあります。
サイドボード
サイドボードにも、興味深いカードが選択されています。《黄昏+払暁》3枚と、それを唱えるための《平地》です。
《Dusk// Dawn》は、このデッキにとって大きな問題となる《逆毛ハイドラ》、そして《栄光をもたらすもの》や《ならず者の精製屋》を処理するのに役立つので、ティムールデッキと対戦する際に素晴らしい働きをしてくれます。また、《Dawn》側でクリーチャーを戻すのも、エネルギーデッキを打ち倒す上で役立ちます。
マルドゥ機体がスタンダードのトップメタの一角に戻っていることは間違いないと思います。大会の準備をする際には、必ず意識すべきデッキです。プロツアーでは4.4%でしたが、それ以上に多くのマルドゥ機体が現れると予想しています。
ジェスカイ《副陽の接近》
青白《副陽の接近》には見慣れていますが、ギョーム・マティノンとギョーム・ワフォ=タパの2名は、プロツアーにジェスカイ《副陽の接近》を持ち込みました。
このデッキは、《副陽の接近》を2回唱えて勝利するために、7ターン目まで生き残ることを目標とするコントロールデッキです。マティノンは、以下のリストでトップ8に入賞しました。
6 《島》 4 《灌漑農地》 4 《氷河の城砦》 4 《尖塔断の運河》 4 《感動的な眺望所》 4 《霊気拠点》 -土地 (26)- 2 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー (2)- |
4 《選択》 4 《検閲》 4 《蓄霊稲妻》 1 《本質の散乱》 1 《明日からの引き寄せ》 4 《不許可》 4 《天才の片鱗》 4 《残骸の漂着》 2 《副陽の接近》 2 《暗記+記憶》 2 《アズカンタの探索》 -呪文 (32)- |
3 《遵法長、バラル》 3 《焦熱の連続砲撃》 2 《奔流の機械巨人》 2 《ジェイスの敗北》 2 《否認》 1 《蝗の神》 1 《本質の散乱》 1 《明日からの引き寄せ》 -サイドボード (15)- |
私が青白《副陽の接近》を試していたときの感想は、良い除去がなく、あらゆるアグレッシブなデッキに押し切られてしまう、というものでした。
ここに赤を追加したことで、《蓄霊稲妻》のようにな除去呪文を採用できます。また、多くの青白《副陽の接近》のリストが《残骸の漂着》と《燻蒸》を併せて採用している中、Matignonは《残骸の漂着》を4枚採用し、《燻蒸》は1枚も採用していません。
《残骸の漂着》は、皆が待ち望んでいた4マナの《神の怒り》です。クリーチャーを追放する、という能力は、コントロールデッキにとって対処しづらい《熱烈の神ハゾレト》のようなカードを対処できるという大きな利点があります。このカードをケアしながらゲームを進めることもできる、という考え方もあるようですが、容易なことではありません。
彼が使用したジェスカイは、ほとんどのカードがインスタントタイミングで唱えられます。下手にゲームを進めれば、《天才の片鱗》や《明日からの引き寄せ》でアドバンテージを取られてしまうでしょう。
サイドボード
彼のサイドボードには見慣れないカードが複数採用されていて、感銘を受けます。
《焦熱の連続砲撃》はアグロデッキに対する軽い全体除去です。
《遵法長、バラル》は、あらゆる呪文をエネルギーデッキよりも早く唱えるのに役立ちます。こちらはコントロールデッキなので、対戦相手は除去呪文のすべてではないにしても、ほとんどをサイドアウトするでしょう。その結果、《遵法長、バラル》は対処されづらく、素早く《天才の片鱗》、《残骸の漂着》、カウンター呪文、そして最後は《副陽の接近》を唱えることができるわけです。
サイドボードの中で最も驚いたのが、《蝗の神》です。これまでスタンダードでこのカードを見ることはほとんどありませんでしたが、即座に対処されずにその他の呪文や《明日からの引き寄せ》を唱えることができるようになったならば、あっという間に対処不能な存在になるでしょう。
今後は、ほとんどの《副陽の接近》デッキが赤をタッチし始めるでしょう。このデッキには8枚のファストランドだけでなく、《霊気拠点》が4枚あるので、色をタッチしたリスクはほとんどありません。メタゲームの一角だとは思いますが、ラムナプ・レッドの存在が気になります。
ラムナプ・レッド
ラムナプ・レッドは、疑いなくこの環境のベストアグロデッキです。赤単色であるお陰で安定していて、その上、対戦相手を仕留めるために土地さえも有効活用されます。
軽いクリーチャーと除去呪文を多数採用されているので、早ければ4ターン目に《熱烈の神ハゾレト》で攻撃することを可能にしています。
プロツアーに向けたテストの最終盤、私は選択肢をラムナプ・レッドとティムールの2つまで絞りました。その安定性とパワーレベルの両方で、ラムナプ・レッドはティムールに対抗し得る唯一のデッキであることが分かっていました。
また、ティムール対策を考えた場合、大抵のデッキはゲームの終盤に重きを置きます。その結果、ラムナプ・レッドのような素早いデッキに、あっという間にやられてしまうでしょう。グランプリ・デンバー2017でトップ8に入ったジョン・ロルフがこのデッキを知らないはずがありません。彼はこのデッキを選択して、初めてのプロツアーでトップ8入賞を果たしました。
14 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 2 《屍肉あさりの地》 -土地 (24)- 4 《ボーマットの急使》 4 《損魂魔道士》 4 《地揺すりのケンラ》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 2 《過酷な指導者》 3 《アン一門の壊し屋》 2 《暴れ回るフェロキドン》 4 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー (26)- |
4 《ショック》 4 《稲妻の一撃》 2 《削剥》 -呪文 (10)- |
3 《ピア・ナラー》 2 《暴れ回るフェロキドン》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《チャンドラの敗北》 2 《削剥》 2 《霊気圏の収集艇》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード (15)- |
このデッキの興味深い部分は、オンライン上で目にし始めたものです。《削剥》と《アン一門の壊し屋》を減らし、メインボードに《暴れ回るフェロキドン》を採用しています。
エネルギーデッキとの対戦で《スカラベの神》をタップする、といったように、《アン一門の壊し屋》を後で唱えたい場面があります。そのため、マナカーブを良くする意味でも異なる3マナ域を採用して、《アン一門の壊し屋》の代わりに唱える選択肢――《暴れ回るフェロキドン》が必要なのです。
その他の興味深い選択肢は、2枚の《屍肉あさりの地》です。軽いコストで起動でき、《王神の贈り物》デッキとの対戦では、予想どおり良い働きをしてくれます。
サイドボードにはマルドゥ機体と《王神の贈り物》デッキのために3,4枚目の《削剥》が採られています。また、ティムールやミラーマッチのために複数のカードが採用されています。
ラムナプ・レッドがこの環境で最高のデッキであることは間違いありません。《熱烈の神ハゾレト》は今後も長期間スタンダードで使用できるので、このデッキを目にすることは多いでしょう。プロツアーの20%という数値は少し多すぎると思うので、おそらく少し減るでしょう。しかしながら、ラムナプ・レッドを倒す準備が必要だ、ということに疑いの余地はありません。
青白《王神の贈り物》
この環境には、コンボデッキが存在します。このデッキはルーター能力(《航路の作成》《機知の勇者》)と、ライブラリーを削る能力(《巧みな軍略》《査問長官》《イプヌの細流》《アズカンタの探索》)によって速やかにクリーチャーと《王神の贈り物》を墓地に送り込みます。
そして、《王神の贈り物》に《復元》を唱え、即座にクリーチャー(中でも《発明の天使》がベストでしょう)を釣り上げ、ゲームを終わらせることができます。これは環境から《削剥》が減っている恩恵を受けているデッキの一つで、エネルギーデッキと渡り合い、ラムナプ・レッドの素早い動き出しに対処できるデッキです。
パスカル・メイナードはこのデッキで2回目のプロツアートップ8入賞を果たしました。
7 《島》 6 《平地》 3 《灌漑農地》 4 《氷河の城砦》 2 《イプヌの細流》 -土地 (22)- 4 《査問長官》 4 《聖なる猫》 4 《機知の勇者》 4 《発明の天使》 -クリーチャー (16)- |
2 《選択》 4 《航路の作成》 4 《巧みな軍略》 4 《復元》 2 《アズカンタの探索》 2 《排斥》 4 《王神の贈り物》 -呪文 (22)- |
4 《博覧会場の警備員》 3 《賞罰の天使》 2 《ジェイスの敗北》 2 《否認》 1 《燻蒸》 1 《領事の権限》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 1 《敵意ある砂漠》 -サイドボード (15)- |
《来世への門》を採用したエスパーカラーのリストには見慣れていますが、十分なクリーチャー数を確保するために、《歩行バリスタ》や《探求者の従者》といったデッキとあまり相性が良くないクリーチャーを採用しなければなりませんでした。
青と白の二色のみであるこのデッキは、ルーター能力とライブラリーを削る能力が、コンボのパーツを確保することを助けると同時に、墓地を肥やせます。《復元》によって、《来世への門》よりも1ターン早くコンボを成立させることができるのです。
サイドボード
サイドボードは、このデッキで最も好きな部分です。メイナードは《博覧会場の警備員》4枚、《賞罰の天使》3枚を採用しています。
サイドボード後は、コンボパーツを減らすか、もしくはすべてをサイドアウトして、本格的な青白ミッドレンジに変えることができます。これにより、《発明の天使》や《賞罰の天使》、「永遠」を使用した《機知の勇者》を利用し、コンボ対策のために《削剥》や《人工物への興味》のようなカードをサイドインしたエネルギーデッキと戦うことができます。
全体的に見て、私はこのデッキが大好きです。そして、今後はさらに広まっていくでしょう。ティムールとラムナプ・レッドの両方を倒すことができるデッキがあるとするならば、間違いなくこのデッキです。しかしながら、《王神の贈り物》とマルドゥ機体の復権によって、今後は《削剥》が増えてくるだろう、とも考えています。
スゥルタイ・エネルギー
最後になりましたが、重要なプロツアー優勝デッキを紹介します。
最初に述べたとおり、テストの段階でスゥルタイ・エネルギーについてはあまり考えていませんでした。理由は、《巻きつき蛇》と《歩行バリスタ》は、単独では脅威ではない、と考えていたのです。
しかしながら、このデッキのカードは互いに大きなシナジーを発揮します。 その最たる例は、《牙長獣の仔》と《巻きつき蛇》のコンボです。
2ターン目の《牙長獣の仔》はそのままでも対処が難しいのですが、《巻きつき蛇》と組み合わせると手に負えなくなります。
また、このデッキには《光袖会の収集者》と《人質取り》という強力なカードも採用されています。
《光袖会の収集者》は雪だるま式でカードアドバンテージを稼ぐカードであり、《人質取り》は除去としてもアドバンテージとしても機能します。では、 自身初のプロツアータイトルを獲得した、セス・マンフィールドのリストを見てみましょう。
4 《森》 2 《沼》 1 《島》 2 《異臭の池》 4 《花盛りの湿地》 4 《植物の聖域》 4 《霊気拠点》 -土地 (21)- 3 《歩行バリスタ》 4 《光袖会の収集者》 4 《牙長獣の仔》 4 《巻きつき蛇》 4 《ならず者の精製屋》 2 《ピーマの改革派、リシュカー》 3 《人質取り》 1 《スカラベの神》 -クリーチャー (25)- |
4 《霊気との調和》 4 《顕在的防御》 4 《致命的な一押し》 2 《ヴラスカの侮辱》 -呪文 (14)- |
3 《貪る死肉あさり》 3 《強迫》 2 《短命》 2 《否認》 2 《自然に仕える者、ニッサ》 1 《スカラベの神》 1 《本質の散乱》 1 《人工物への興味》 -サイドボード (15)- |
メインデッキには、それほど大きな変化がありません。異なるのは、《人質取り》と《歩行バリスタ》が3枚になり、その枠に《ピーマの改革派、リシュカー》《ヴラスカの侮辱》が採用されていることです。
様々な理由で、このデッキの《ピーマの改革派、リシュカー》が大好きです。《牙長獣の仔》をブロッカーよりも大きくするのに役立ちますし、4ターン目に5マナを確保して《顕在的防御》を構えながら《人質取り》を唱えられるように、マナを加速することもできます。そして、余分なマナは《歩行バリスタ》に注ぎ込むことができます。
《ヴラスカの侮辱》は《熱烈の神ハゾレト》や《反逆の先導者、チャンドラ》に対する追加の対処手段です。
私がこのデッキについて好きになれなかった点の一つは、《牙長獣の仔》以外にエネルギーを使用する手段がないことです。たしかに《光袖会の収集者》は居ますが、アップキープ時のみです。また、このデッキに対しては除去が痛烈に効きます。これが、《顕在的防御》が4枚採用されている理由です。
《致命的な一押し》《削剥》、そして《蓄霊稲妻》は、すべて厄介です。なので、《顕在的防御》は《光袖会の収集者》と《人質取り》を守る上で非常に重要なのです。
サイドボード
サイドボードには、《貪る死肉あさり》3枚と《短命》2枚と、2種類の面白いカードが採用されています。
《貪る死肉あさり》は「最大の脅威」と呼べるほどのものではありませんが、ラムナプ・レッドのようなデッキとの対戦では、盤面に出た瞬間から恩恵をもたらしてくれます。2点のライフゲイン、というのは、非常に価値がありますからね。
コントロールデッキとの対戦では《奔流の機械巨人》が対象とする呪文を食いつぶすことができますし、脅威となります。《王神の贈り物》との対戦では、重要となるクリーチャーを取り除くのみならず、《王神の贈り物》も取り除くことができるので、コンボの質を低下させることができます。
《短命》は見慣れないカードではありますが、リー・シー・タンがテスト中に候補として提示したカードです。あまり素晴らしいとは思えないかもしれませんが、このデッキは既に述べたように、エネルギーを使用する先が多くありません。《短命》のようなカードは余分なエネルギーを使用する良い方法で、ソーサリーではありますが、《熱烈の神ハゾレト》や《栄光をもたらすもの》のようなカードを取り除くことができる、軽いカードです。
すべてのエネルギーデッキを見た上で、私はティムールが最高だと今でも考えています。しかしながら、スゥルタイは異なる角度から攻撃を行い、相手の脅威に対する様々な解答を所持しています。ティムール、4C、スゥルタイの中で、スゥルタイは3番手に留まると予想していますが、エネルギーデッキを使用するならば、スゥルタイにとってベストな対処手段である《領事の旗艦、スカイソブリン》を多めに採用するべきだと思います。
まとめ
ティムールとラムナプ・レッドによって、環境が二極化しているように思えましたが、結果としては多数の選択肢がある環境といえるでしょう。白単吸血鬼やトークン、青黒コントロールなどが加わって、これらがメタゲームの数%は占めています。今後、こういったデッキが勝ち上がってくることには何の疑問もありません。これからどのようにメタゲームが進化していくのか、とにかく楽しみです!
この記事が皆さんの役に立つこと、そして、これからのあらゆる大会での幸運を祈っています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
クリスティアン・カルカノ
この記事内で掲載されたカード
グランプリトップ8入賞は7回を数え、【グランプリ・ミネアポリス2012】と【グランプリ・アトランティックシティ2015】では優勝。
プロツアーでのトップ16も3回経験しており、【プロツアー『アモンケット』】で念願のトップ8入賞を果たした。
世界が注目する、トッププレイヤーの1人。親日家としても知られており、日本のアニメが大好き。