紙一重の敗北から学ぶ

Marc Tobiasch

Marc Tobiasch

Translated by Atsushi Ito

原文はこちら
(掲載日 2018/02/15)

イントロダクション

スペイン・ビルバオで開催されたプロツアー『イクサランの相克』については、残念なことに今回僕自身は大失敗に終わってしまった。ドラフト1-2、モダン2-3の初日3-5という成績で、実に数年ぶりに2日目に進出することができなかったのだ。特に構築とリミテッドのどちらも負け越しというのが手痛いところで、この環境のドラフトがあまりに嫌いすぎて十分な練習をしなかったことの結果だと思っている。それでもモダンについては、結果はうまくいかなかったとはいえ、僕のデッキは平均よりやや上くらいのポテンシャルはあったと信じて疑わない。

トーナメントがうまくいかなかったときに良い部分があるとすれば、「どうすればより良い成績が残せたのか」と反省する機会が増えるという点にある。誰であれ……全員ではないかもしれないがほとんどの人は一般的に言って、全然ダメな一日やひどい成績というものに見舞われてしまうことがあるものだ。そうなってしまう理由はたくさんあるだろうけれど、そういうときに大事なのは、きちんと原因を把握して次こそはそうした事態をもっとうまく回避できるよう、一歩ずつ前に進むことだけなのだ。そうやって僕たちは成長していく。失敗は成功のもと、とも言うしね。

Marc Tobiasch

マルク・トビアシュ

今回の僕の敗因は調整過程にあったと思っている。大会における重要な部分は実際の開催日よりもずっと前に終わってしまう。構築に関して言えば、環境に対する最適なデッキを見出せるかどうかが好成績を残せるどうかのそもそもの分水嶺だし、メタゲームや相手のデッキの構成、どのターンが重要か、どんなサイドボードが必要かなどを、きちんと理解していることも重要だ。これらすべてが勝敗を分けるわずかな差を生み出す要素となるのであり、こういったことを理解するために調整というものが存在する。リミテッドに関してなら、すべてのカードの点数やパワーレベルを知っているだけでなく、その環境のゲーム自体が通常どのように進行するのか、ターニングポイントとなりがちな点はどこか、どれくらいの速度か、クリーチャーのタフネスがいくつ以上なら越えづらいのかといったことをも、しっかりと理解しておく必要があるのだ。

けれどもこのプロツアーの調整に関しては、僕はかなりの苦戦を強いられた。モダンというフォーマット自体は結構好きでそれについて心配はなかったけれども、一方の『イクサランの相克』環境のドラフトははっきり言って大嫌いだったのだ。その理由について掘り下げることもできるけれど、あまり意味がないことなのでやめておこう。毎回どんな大会でも勝ちたいと思っているのであれば当然、理由はどうあれ誰であっても、肌に合わない環境とも向き合わなければならないときが来るものだからだ。最近では多くの人にとって禁止改定前のスタンダードがそうだっただろうし、もしくは『イクサラン』のリミテッドなんかもそうかもしれない。モダンやレガシーあるいはそれ以外のフォーマットについても、結局はその人のスタイル次第で、何であれ苦手なものとなりうる。それでも勝ちたいと言うのであれば、どのフォーマットにせよあらん限りの時間をかけて最善の努力をする以外に方法はないんだけれども、今回僕はそれを怠った。

今回のプロツアーにおける試合はどのゲームも紙一重で、ほんのもう少しだけツイてさえいればはるかにマシなスコアが残せたはずだったろうとも思う。けれど幸運を当てにすることはできないし、同様に不運を不出来の理由にするべきでもない。より良い調整と確かな実践こそが勝敗を分けるのであり、そしてそれらは自分の努力次第で変えられるものだ。自分のコントロールできない事象を嘆く前に、何をどうすれば良かったかと考えることに集中するべきなのだ。

不運のせいで何らの技術介入の余地なく負けてしまうこともあるだろう。それはこのゲームの一部として誰でも受け入れる必要がある。しかし往々にして、大会が始まる前、ゲーム中、あるいはサイドボード中でさえ、自分が選んだ行動次第で、試合の結果は有利に変わりうるものなのだ。負けたときはいつでも、どうすれば結果が変わりえたかを考え、次の機会のために失敗から学びを得るようにするべきだ。失敗は誰にでもありうるものだが、その回数を最小化することこそが、上達するための最大の方法なのだから。

モダンの準備

モダンについては心配していなかったと書いたけれども、実際にはモダンの調整についてもそこそこ難航した。というのも、モダンの調整を行うのは現実的にかなり難しいという理由で、僕たちのチームは今回いつものように一緒には調整しないことを決めたからだ。何らかのトーナメントに出たときに現実に出くわす可能性があるデッキや戦略が無数に存在するせいで、まとまった調整を行うことは非常に困難かつ無駄に時間がかかる工程となってしまう。最適な調整方法は、リアルでもMagic Onlineでも、とりあえずデッキを選んで大会に出てみることだ。そうすることで競技の環境における自分自身のアーキタイプの立ち位置を知ることができると同時に、多種多様なマッチングを体感することができるからだ。

Marc2

けれども今回僕が使うことを決めたデッキは、Magic Onlineではとてもじゃないけど回せない上に、競技大会での活躍も知る限りではごくわずかというものだった。それでも僕はこのデッキは間違いなく強いし、これ以上なくプロツアー向きだと信じていたのだ。とはいえ、通常ならある程度実際にプレイしてみたり、「どのような動きで・どのカードが不要で・どのサイドボードが重要か」といったことを理解したりすることで可能となるような、デッキ細部の最適なチューニングが不足していたことで、プロツアーにおける有意な値の勝率の低下を招いてしまった可能性は否めない。どのゲームも本当に接戦だったこともあり、そうした勝率の低下が、僕のプロツアーの結果を劇的に変えたであろうありうべき5-0の代わりに、2-3という成績をもたらしてしまった大きな原因となってしまったのだろうと考えている。

モダン黎明期を開拓したデッキ

今回使用したデッキは、僕自身の初めてのプロツアーにして初めてのモダンのプロツアーだったプロツアー・フィラデルフィア11にその起源がある。少し前の記事でも書いたように、僕はモダンにおいてはコントロールであってもゲームを速やかに終わらせるコンボ手段が必要だと考えているけれども、その性質をきちんと兼ね備えていたデッキだ。もともと黎明期のモダンを開拓するためのデッキだったこともあり、《定業》《思案》《ギタクシア派の調査》《罰する火》といった、今では禁止カードとなってしまったカードをも当時は搭載していたものだった。

定業思案ギタクシア派の調査罰する火

少なくとも《罰する火》と、おそらく《ギタクシア派の調査》も、それぞれ禁止してしかるべき強さを持っていた。それだけに、それらの穴埋めをする必要があっただけでなく新しいカードを盛り込んだり現在の環境に合わせたりする必要性から、当時とは全然様変わりすることを強いられてしまった。

そんなわけでこれが僕のプロツアーでの使用デッキだ。メインとサイドのそれぞれ数枚ずつは最適ではなかったかもしれないとはいえ、それでも今回のプロツアーにおいてかなり良い選択だったと思うし、今後のモダン環境においても同様にそうなるだろうと信じている。

デッキの動き

このデッキの動きは多少複雑だが、主な勝ち方は以下の通りだ。

紅蓮術士の昇天

探索カウンターが2つ乗った《紅蓮術士の昇天》を用意し、手札に1枚の《有毒の蘇生》と手札か墓地にもう1枚の《有毒の蘇生》、それと手札か墓地に合わせて2枚の《魔力変》があれば準備完了となる。

有毒の蘇生

まずはアップキープに《有毒の蘇生》をプレイし、コピーで2枚目の《有毒の蘇生》を乗せてから、オリジナルですぐ次のドローに《魔力変》を乗せて引き込む。

魔力変

そこから《魔力変》をプレイすると、コピーの解決で2マナ得られるとともに《有毒の蘇生》が手札に入るので、オリジナルの《魔力変》の解決前に浮いたマナからその《有毒の蘇生》をプレイし、最初と同様に《魔力変》《有毒の蘇生》をトップに積み込む。

この手順は繰り返すごとに好きなマナを1マナ増やしつつ無限に繰り返すことができる。ループにかかるコストが3マナ (《魔力変》《有毒の蘇生》) なのに対して1手順で4マナが生成されるからだ。

無限マナを生成してしまえばあとは何でも思うがままなので、好きな方法で勝利すればいい。最も簡単な方法はループの中の《魔力変》を途中で《思考掃き》に切り替えることで、1手順につき相手のライブラリーを4枚削ることができるようになる。

つまるところこのデッキは、大量の妨害とドローサポートもありつつ、早ければ3ターン目に勝利することすら可能なデッキなのだ。

主要な3種類の戦略に対する相性

モダンにおいては大別して3種類の戦略があるけれども、このデッキはそのどれに対してもそれぞれうまく立ち回ることができるので、環境における強力な全方位型デッキになる可能性を秘めている。

1) 対手札破壊/除去ミッドレンジ

ここに含まれるのは《死の影》マルドゥ・パイロマンサー、それと黒緑系のデッキたちだ。

向こうのゲームプランはこちらの手札のキーカードやそれを機能させるカードなどを、向こうのクリーチャーがこちらがリカバリーする前に殴りきれるように引き剥がすといった点が中心となる。しかしこちらには《瞬唱の魔道士》にバックアップされた大量の除去とカウンターがあり、しかも無数のキャントリップ呪文が相手の手札破壊戦略を幾分無意味なものとすることで妨害がかなり困難な勝ちパターンを持ち合わせていることにもなるので、結論としてマッチアップ相性はかなり良いと言える。

2) 対オールインアグロ

相手を可能な限り早く倒すために最小限の干渉しかしてこないデッキがこれに当たる。具体的にはバーン、親和、5色人間、黒赤ディスカード、ドレッジ、その他諸々で、おそらくこの環境においては最も多種多様なデッキタイプが存在する戦略と言えるだろう。

勝ちが見えてくるまで除去と《瞬唱の魔道士》でいなし続けるのがこのタイプの戦略に対する最良の戦い方 (《罠の橋》を設置しようと言うのでなければだが) と言えるが、このデッキは環境のほとんどのデッキよりも優秀な除去スペルたちを数多く採用しているデッキなのだ。

3) 対ビッグマナ

モダンにおいて典型的なコントロールデッキというものが成立しない理由がここにある。このカテゴリに属するデッキたちは圧倒的なマナ加速によって対戦相手たち一瞬にして置き去りにし、他のあらゆるすべての行動が無意味になるようなフィニッシャーを早いターンから繰り出してくるからだ。最もわかりやすい例はトロンとタイタンシフトだろう。

除去呪文ではこれらのデッキを止めることはできないが、幸いにして対処すべき脅威は往々にして限られている。最初の1~2枚のフィニッシャーをカウンターすることができれば次の1枚を相手が見つけて再びプレイできるまでに勝ちきることができるので、比較的有利なマッチアップと言えるだろう。《欠片の双子》デッキがまだ禁止されていなかった頃にこれらのデッキに対して有利だったのと同じことを、このデッキもすることができるのだ。

終わりに

もちろんモダンには他にも様々な種類のデッキが横行しており、それこそこのフォーマットの魅力の一部と言えるけれども、この3つのカテゴリー分けによって大部分を総括できるのも事実である。そしてこのような環境では一般的に言って、1) 3ターンキルの可能性があり、2) 相手から干渉しづらい勝利手段を持ち、3) タイミングに応じた適切なパーツを探し出すことができる優秀なドロー操作に裏打ちされた大量の干渉材料を自身もまた有していることこそが、僕がモダン環境で唯一信じてやまない、強力かつ弾力的な戦略を指向するものなのである。

僕自身はこのデッキができてから機会があるごとに使用して7年になるわけだが、もしモダンの大会に参加する予定があって練習してみてもいいと思えるのなら、ぜひこのデッキを使ってみて欲しい。

そしてまた、大会における失敗や敗北の扱い方を学ぶことで、自分の力で左右できない事象にとらわれることなく、プレイヤーとして自身と自身のプレイの改良に努めて欲しい。失敗した部分をきちんと振り返り、決して運を慰めの材料にしないように!

ともあれ、君に幸運があらんことを!

マルク・トビアシュ

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