Translated by Takuma Kusuzawa
(掲載日 2018/03/23)
こんにちは!ペトルです。今回もいつもどおり、スタンダードの話です。
禁止改定で混乱していた環境もゆっくりと落ち着き始めて、おおよその結論も出つつあるように感じていますが、だからといってもう話すことがないという訳ではありません。
今のスタンダードは3つの勢力に分かれていると思います。《スカラベの神》を活かしたデッキ、赤単、その他の3つです。
僕だけかもしれないけど、今の環境は珍しいというかおかしく思えて、こんな環境になると想像したことはないかもしれません。
《スカラベの神》はとんでもなく強いカードで、みんながお互いにスカラベをねじ伏せようとして、ミラー戦に対応できる《スカラベの神》デッキを持ち込めるかどうか、というスタンダードに普通はなると思います。一部で実際に起きている現象ではあるのですが、その一方で赤単からの突撃をもらうかもしれず、あまりデッキをミラー用に尖らせることができていないのです。このことがおもしろい緊張感を作っていて、軽めの妨害をある程度は強いられるんですが、長々としたゲームではいらないカードになるわけです。
さて、簡単に思いつく結論がいくつか出てきている頃じゃないでしょうか。例えば、メインでは遅いデッキ相手にしっかり合わせた《スカラベの神》デッキを使い、赤いデッキ相手にはサイドボード15枚を使って勝つという戦略を取れなくもないです。この戦略の問題点は、どんなデッキを持ち込んでもいいからこそ、実際にはメタゲームを見て更に有利だと思う別のデッキを使う人たちが多数いるということです。
これは前回のMOPTQで優勝したデッキで、今の話のちょうどいい例になります。対応の限られる脅威をドンドン繰り出したり、倒す目標である《スカラベの神》デッキに特定の動きを要求しますが、いつも思い通り動ける訳でもありません。
このデッキが環境を支配したり、一大勢力になると考えているのかと問われれば、その答えはノーだと考えています。一度、デッキが想定されて動きに合わせられてしまうと、勝利には届かなくなってしまいます。1対1交換の後、神か機械巨人が続くのはものすごく強力です。
もうすでに結論が予想できていると思いますが、今《スカラベの神》を使っていないのであれば、それは間違いだと信じています。そこにたどり着けたならば、次に考えるべきは《スカラベの神》を入れるのにベストなデッキはどれか、ということです。
色んな意見を聞きましたが、大体は青黒ミッドレンジかグリクシス・エネルギーに落ち着きました。もちろん、青黒コントロールのようなデッキが勝ち上がっている大会もありますが、赤単との相性を補うために、長期戦を選んだ他のデッキへの優位を失ってしまっていると思うのです。人気のデッキと相性が良いという理由でデッキを選び大会に臨むのは、裏切られることが多いのです。重要なことは、唯一気にするべきなのは全体に対しての勝率だ、ということを理解することです。
これが分かりやすくなる、とてもいい例を出しましょう。55%で勝てるけれど特定の一人にだけ最悪な相性であるデッキと、52%で勝てるけれどコントロール相手には少しだけ相性が悪いデッキ、どちらを選びますか?
赤単
赤単に触れさえしないというのは、問題がありますね。勘違いしないで欲しいのは、このデッキはとても良いですし、《スカラベの神》デッキを練習していないのならベストな選択肢だと思いますが、真剣にスタンダードに打ち込むのであれば、オススメはしません。このデッキの強みはとても安定していて、ほぼ全てのゲームで同じことをすることであり、対戦相手が少しでも油断したり間違えたりすると簡単に勝ててしまえますが、《スカラベの神》デッキを操る手練れの方が勝率が高いでしょう。
それくらい《スカラベの神》デッキが強力なのです。
青黒か、グリクシスか
さて、残るは青黒ミッドレンジとグリクシスですね。正直に言うと、どちらが良いのかという問いには、確信をもって答えられません。どちらにも強みと弱点があるのですが、少しグリクシス側に偏りはじめました。この二つはとても似ていて、純粋な青黒側はマナベースの良さを訴えてくるでしょう。今のスタンダードには青と黒の強いカードが十分にあって、デッキを高めるために色を加える必要がないことは分かりますが、コンセプト自体に賛同出来ないのです。
そもそも、グリクシスのマナベースは《霊気拠点》を使えるのもあって、そこまで悪くないんです。確かにタップインランドをたくさん使わざるをえませんが、8枚サイクリングランドを使えるのは気に入っています。ただただ強いのです。
サイクリングランドは、マナスクリューを防ぐために土地を増やしつつ、フラッドの際には引き直せるのです。とても当たり前なことなのですが、マジックでは避けて通れない、余分な負け試合の回数を大幅に少なくできるのです。
マナが問題なく出るとなったならば、グリクシスは明確に強者であると結論が出せます。《つむじ風の巨匠》などの赤いカードたちが本当に好きなのですが、一戦目は他のカードに差し替えられてもいいことは認めます。真価はサイドボード後のデッキを良くするところにあります。他のデッキがサイドボードで埋めようとする穴を、メインに入っている赤いカードが自然と埋めてくれるので、サイドボードに対策を用意する必要がないのです。
グリクシス・エネルギーでの選択肢
これが私が使っている今のグリクシス・エネルギーのリストです。
グリクシス・エネルギーについての記事はすでにたくさんあるので、選択肢のある部分について話していきましょう。
3 《マグマのしぶき》、1 《削剥》
《マグマのしぶき》を4枚入れてもいいとは思うのですが、《削剥》を入れるのがお気に入りです。アーティファクトを使うデッキがいるので、ドローカードや《奔流の機械巨人》が入っているとより大きな差が出ます。
3 《スカラベの神》、2 《奔流の機械巨人》
《スカラベの神》を4枚使わないのは間違っているという噂があります。私は4枚でも全然良いと思うのですが、重いカードの少ない枠に対して選択肢が多い中で、《奔流の機械巨人》の2枚目を入れる方がさらに良いと思っています。盤面で負けていて、《スカラベの神》を唱えるには除去が怖い状況が多々あり、殺されなければそのまま勝ちきれてしまうのですが、そんなはずもありません。たくさん追放除去が入っている今、この神は美化された《巨大百足》にすぎない時もあり、何枚も引いてしまうと負ける理由にすらなりかねません。《イクサランの束縛》が存在しているのも、減らす理由になりますね。
2 《天才の片鱗》
長期戦で有利に立てるカードを試してまわっていましたが、色々と試した結果《天才の片鱗》が一番いいという結論に至りました。デッキを全体的に良く循環させてくれますが、唯一メインに入れられない理由は赤単です。理論上はこのカードよりも強い、《アズカンタの探索》や《宝物の地図》も試しましたが、それを使うのに夢中になってしまうことが何度もあって、今はこれらを手にするたびに、いかに《天才の片鱗》が強いかというのを実感します。
2 《焦熱の連続砲撃》
これはブラッド・ネルソンとリストについて議論している時に教えてくれた試みなんですが、ものすごく筋が通っていると言わざるをえません。スィーパーを使えるのはスマートで、今のところはこれがベストの選択肢だと思います。環境に速攻クリーチャーが山ほどいて、ダメージを受ける前に2対1交換できるのは素敵なことですし、《奔流の機械巨人》でフラッシュバックまでできます。《ピア・ナラー》も採用され始めていて、それに対してもキレイな解答になります。
1 《王神、ニコル・ボーラス》
なにか言うことがあるか考えましたが、より制圧的な状況を作りたいなら、ニコルは適任です。しっかりと試して確認できていないのですが、《ヴラスカの侮辱》がたくさん使われていますし、ぶっちゃければとても重いので、《炎鎖のアングラス》や《死の権威、リリアナ》くらいが丁度良いかもしれません。ただ採用する価値は十分あると思います。
あー、もう一つだけ。
《豪華の王、ゴンティ》を入れないこと
他の4マナの選択肢と比べて明確に弱いです。唯一可能性があるとすれば、赤相手に壁となれるアドバンテージ源で、《天才の片鱗》はそういう状況では弱いのですが、それでも十分に仕事をすると思います。
ここまで読んでくれてありがとう。
ペトル・ソフーレク