Translated by Kenji Tsumura
(掲載日 2018/03/17)
やあ、また会ったな。
俺は今、3人構築戦で行われるグランプリ・マドリード2018 (3月10日~11日) の2日前にこの記事を書いている。俺の担当はスタンダードだ。そろそろみんな気付いている頃かもしれないが、俺は典型的なミッドレンジプレイヤーで、グランプリ前の2週間でスタンダードに存在するありとあらゆるミッドレンジデッキを試してきた。
本日は、そこで学んだこと全てを読者諸君に共有していきたいと思う。俺の目的は各デッキの長所と短所、それぞれのデッキリストに関する見解、アドバイスやトリック、今現在のメタゲームにおける各デッキの立ち位置などをお見せすることだ。
それでは、早速はじめよう!
4 《山》
4 《隠れた茂み》
2 《まばらな木立ち》
4 《根縛りの岩山》
3 《陽花弁の木立ち》
3 《感動的な眺望所》
-土地 (25)- 4 《マーフォークの枝渡り》
4 《導路の召使い》
4 《翡翠光のレインジャー》
3 《再燃するフェニックス》
4 《栄光をもたらすもの》
-クリーチャー (19)-
どんなデッキか?
このデッキは軽量除去呪文と神話レアで構成されている。経験上、このデッキは十分に安定しているとは言えない。もしも理想通りに動けるならば、「ナヤ・モンスターズ」は最高のデッキだ。俺が最初に参加したMagic Onlineの大会では、3ターン目に《反逆の先導者、チャンドラ》→4ターン目に《不撓のアジャニ》と動いたために、スタンダードにおいて群を抜いた最高のデッキを発見してしまったと思ったもんさ。だがそのような展開は頻繁に起こるもんじゃない。
「ナヤ・モンスターズ」は非常に脆く、3色目をタッチする代償も高くつく。白を加えることで「追放」系の除去が手に入るが、今では皆がそれを知っていて準備を施しているため、それほど素晴らしいというわけではないんだ。
《スカラベの神》を使ったデッキは《徙家+忘妻》や《暗記+記憶》を使うようになったし、緑のデッキは《帰化》効果を持ったいずれかのカードをサイドボードに採用している。これらを考慮したならば、今現在は《排斥》や《イクサランの束縛》といったエンチャント除去呪文に頼るべきではないということに気が付くはずだ。
《反逆の先導者、チャンドラ》、《再燃するフェニックス》、《栄光をもたらすもの》は明確に優れたカードだが、仮にそれらのカードを使いたいのであれば安定性に勝る「赤緑」の方が良い選択だろう。
長所
短所
今後の展望
《再燃するフェニックス》の適正枚数は4枚だと信じている。率直に言ってこのカードはとんでもなく強いカードだし、《栄光をもたらすもの》よりも優秀な展開だってままある。
ほぼどんなときでも《排斥》をサイクリングしようとは思わないはずだし、対「赤単」戦をより良いものにしてくれるため、メインボードではおそらく《イクサランの束縛》の方が優れているだろう。どの道対象は《熱烈の神ハゾレト》や《再燃するフェニックス》だろうし、 “追放されたカードと同じ名前を持つ呪文を唱えられない” 効果は《排斥》の持つ「瞬速」効果の埋め合わせとして十分すぎる効果だ。
サイドボードに追加のエンチャントカードを採用してしまうと《帰化》系のカードに対して隙だらけになってしまうので、サイドボードにエンチャントを用意するのは好きじゃない。これが今俺が使用している「ナヤ・モンスターズ」のリストだ。
4 《山》
4 《隠れた茂み》
2 《まばらな木立ち》
4 《根縛りの岩山》
3 《陽花弁の木立ち》
3 《感動的な眺望所》
-土地 (25)- 4 《マーフォークの枝渡り》
4 《導路の召使い》
4 《翡翠光のレインジャー》
3 《再燃するフェニックス》
4 《栄光をもたらすもの》
1 《殺戮の暴君》
-クリーチャー (20)-
2 《アゾカンの射手》
2 《貪る死肉あさり》
2 《殺戮の暴君》
2 《チャンドラの敗北》
2 《帰化》
2 《捲土+重来》
1 《造命師の動物記》
-サイドボード (15)-
《アゾカンの射手》は「赤単」、「マルドゥ・機体」、「赤黒ビートダウン」といったデッキに対して素晴らしいものの、「白黒吸血鬼」や「白緑トークン」に関しては《焼けつく双陽》の方が優れている。したがって、後述したデッキが君のメタゲーム上に多いようであれば、気兼ねなく《アゾカンの射手》を《焼けつく双陽》に変更してくれ。
《貪る死肉あさり》は実に様々な用途で使用でき、「赤単」、「青白《王神の贈り物》」、《スカラベの神》/《アズカンタの探索》の入ったデッキなどにサイドインされる。
《殺戮の暴君》は「グリクシス・エネルギー」や「青黒コントロール」に打ち勝つ唯一の術であり、75枚に3枚は入れたいと考えている。
アドバイスとトリック
対戦相手が《熱烈の神ハゾレト》をコントロールしている状況で、君が《殺戮の暴君》で攻撃したとしよう。そこでトランプルによるダメージを増やす目的で、《熱烈の神ハゾレト》に対して《栄光をもたらすもの》の「督励」能力や《削剥》を使うことができる。
トランプルを持ったクリーチャーが《熱烈の神ハゾレト》にブロックされた場合、君は《ハゾレト》のタフネスの値に等しいダメージのみを彼女に割り振ればいいんだ。つまり、《栄光をもたらすもの》を「督励」して《熱烈の神ハゾレト》に4点のダメージを与えていれば、《殺戮の暴君》のトランプルダメージ7点全てを対戦相手に割り振ることができる。
《凶兆艦隊の向こう見ず》は、例え対象に取った呪文をキャストせずともそれを墓地から追放する。ときに、来る《奔流の機械巨人》に備えて、ただ単に墓地からカードを追放しておくことが良いこともあるだろう。
《翡翠光のレインジャー》は、戦場に出たときに1度だけ誘発する「探検」能力を持っている。これが意味するところ、《翡翠光のレインジャー》は2/1の状態で戦場に登場し、どのプレイヤーも「探検」に対応することができるということだ。対戦相手が《狂信的扇動者》を出している際には注意しよう。また、これは君自身にも同じことが言える。対面の《翡翠光のレインジャー》が4/3になってしまう前に《マグマのしぶき》で殺せることを忘れないように。
7 《森》
4 《隠れた茂み》
4 《根縛りの岩山》
2 《ハシェプのオアシス》
-土地 (25)- 4 《マーフォークの枝渡り》
4 《地揺すりのケンラ》
3 《立て直しのケンラ》
4 《翡翠光のレインジャー》
2 《不屈の神ロナス》
1 《ピア・ナラー》
4 《再燃するフェニックス》
4 《栄光をもたらすもの》
-クリーチャー (26)-
2 《貪る死肉あさり》
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《殺戮の暴君》
2 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《マグマのしぶき》
1 《チャンドラの敗北》
1 《顕在的防御》
1 《帰化》
1 《捲土+重来》
-サイドボード (15)-
どんなデッキか?
俺の中で「赤緑モンスターズ」は「ナヤ・モンスターズ」の上位互換という認識だ。マナカーブは整っているし、「赤緑モンスターズ」の脅威はただ強力なだけでなく、7枚もの墓地から舞い戻るカードのおかげで粘り強さも併せ持っている。マナ基盤も「赤緑モンスターズ」の方が安定しているしな。
「赤緑モンスターズ」の唯一の欠点は《熱烈の神ハゾレト》への解答を失ってしまったことで、これにより対「赤単」は明確に分が悪くなってしまっている。ただしその他の点に関しては「ナヤ」と比較して見劣りするところはないな。
「赤緑モンスターズ」は、古典的なミッドレンジデッキというよりかはむしろアグロ寄りのデッキだ。守りに向いたカードや遅れを取り戻すようなカードは少ないため、盤面が劣勢になりすぎないように、マナカーブ通りに展開することを心がければ全てが上手くいくだろう。
長所
短所
今後の展望
グランプリ・メンフィス2018を制した上記リストは良くできていると思う。だがもしメタゲームがより多くのミッドレンジやコントロールデッキで溢れかえるようであれば、メインボードに《反逆の先導者、チャンドラ》を2枚採用することを検討してみてもいいだろう。
今現在は、「赤単」とのマッチアップを改善するために《マグマのしぶき》を4枚に増量して《削剥》を3枚に減らしている。2マナのクリーチャーや呪文が多いこのデッキにおいて《マグマのしぶき》と《削剥》の1マナの差は非常に大きく、《マグマのしぶき》であれば3ターン目の2アクションを可能にしてくれる。
サイドボードにも非常に好感が持てる。《アゾカンの射手》と《貪る死肉あさり》は現時点でかなり過小評価されているカードだし、近い将来より多くのプレイヤーがこれらのカードを使うようになるだろう。
アドバイスとトリック
「探検」と「永遠」は素晴らしいシナジーで、「探検」でいずれかのケンラを墓地に落いておくのは基本的に良いアイディアだ。
君は各「探検」に対して異なる決断を下すことができる。例えばもし《翡翠光のレインジャー》に4/3になってほしい状況で、土地でない不要なカードが捲れたとしよう。その際に一度目の「探検」では不要なカードをトップに置き、二度目の「探検」でそれを墓地に落とすことができるんだ。
《マグマのしぶき》は《スカラベの神》を倒すための素晴らしい手段だ。《栄光をもたらすもの》の「督励」との組み合わせは最高だし、単に《神》が攻撃やブロックに参加した後にキャストしてもいい。《マグマのしぶき》単体では2点のダメージしか与えられないものの、《スカラベの神》を殺すことにさえ成功すれば《神》は永遠に追放される。
3 《島》
4 《異臭の池》
4 《水没した地下墓地》
4 《霊気拠点》
3 《廃墟の地》
-土地 (26)- 2 《歩行バリスタ》
4 《光袖会の収集者》
3 《才気ある霊基体》
3 《機知の勇者》
2 《豪華の王、ゴンティ》
1 《貪欲なチュパカブラ》
3 《スカラベの神》
2 《奔流の機械巨人》
-クリーチャー (20)-
どんなデッキか?
このデッキはありとあらゆる方法でカードアドバンテージを獲得しようと試みている。君の主な目的は対戦相手とリソースの交換を繰り返し、その過程でアドバンテージを稼いで安全に《スカラベの神》を着地させられる状態まで持っていき、そして《神》の力でゲームに勝利することだ。
このデッキはどんなカードにでも対応できる。メインボードの5枚の接死クリーチャーと75枚中に2枚採用された《暗記+記憶》のおかげで、本来は「青黒」系のデッキにとって最大の悪夢になりえるはずの《殺戮の暴君》にでさえ対処可能なんだ。
「青黒ミッドレンジ」はとてもプレイするのが難しく、序盤の全ての決定が終盤戦に影響を及ぼしてしまう。2ターン目にキャストするクリーチャーを間違ってしまっただけで、勝敗が変わることだってあるだろう。このデッキには注意深く使用すべき1枚差しのカードがたくさんある。それに「青白《王神の贈り物》」デッキなんかと比べて、《機知の勇者》で捨てるカードの選択も難解だ。「青黒ミッドレンジ」はマナ食い虫なもんだから、ただ土地を捨てればいいってわけじゃあないんだ。
俺が思うにこのデッキは現スタンダードで最も複雑なデッキではあるものの、間違いなくその分やりがいのあるアーキタイプだ。俺がこのデッキに挑戦したときは、多くのゲームを自分自身のミスプレイによって落としてしまったために、グランプリまでにこのデッキを極めるだけの十分な時間はないと判断して諦めてしまった。もし君に十分な時間があり、それでいて学んでいる最中に自身のミスによって数ゲームを落としてしまうことを厭わないのであれば、このデッキに挑戦することを強くお勧めする。
長所
短所
今後の展望
まず初めに、俺は現時点でこのデッキに大きな変化を加えられるほどしっかりと理解できておらず、それに関して話すことも憚られると思っていることはあらかじめご了承いただきたい。
このデッキの《歩行バリスタ》に関してはあまり満足していないため、何か新しいものを試すためにスロットを捻出するなら最初にこいつを抜くだろう。《歩行バリスタ》が強いのは対「赤単」のみで、「トークン」系のデッキに対しても《巻きつき蛇》や《新緑の機械巨人》がなければ輝きを放つことはない。
ブラッド・ネルソン/Brad Nelsonはグランプリ・メンフィス2018でこのデッキを使用して26位に入賞し、翌週のMOCSでも6-2という好成績を収めた。その間に彼が施した変更は、サイドボードの《失われた遺産》を1枚抜いて《ジェイスの敗北》を1枚入れたのみだ。これが意味するところ、このデッキは今のままで十分に良くできているということだろう。
アドバイスとトリック
《奔流の機械巨人》を使えば、対戦相手のターン終了時に《記憶》をフラッシュバックすることができる。《暗記》がインスタントであるために《奔流の機械巨人》の適正な対象とみなされ、《記憶》側を唱えることができるんだ。
《スカラベの神》と《死の権威、リリアナ》があるため、ときにクリーチャーを戦場よりも墓地においておく方がいいことがある。もし《死の権威、リリアナ》をキャストする予定があるのならば、《貪欲なチュパカブラ》でのチャンプブロックを躊躇わないように。
決して攻撃的になりすぎないように。攻撃的なプランは、このデッキが思い描く勝ち筋ではないからだ。君は頻繁にクリーチャー同士を相打ちにさせ、盤面を更地にしておこうとするだろう。例外は第2メインフェイズに《航路の作成》をキャストしたいときくらいのもので、序盤に真に攻撃に向かわせたいクリーチャーは《光袖会の収集者》のみだ。
1 《沼》
1 《島》
4 《泥濘の峡谷》
3 《異臭の池》
4 《竜髑髏の山頂》
2 《水没した地下墓地》
4 《尖塔断の運河》
4 《霊気拠点》
1 《廃墟の地》
-土地 (26)- 4 《光袖会の収集者》
4 《つむじ風の巨匠》
2 《機知の勇者》
1 《ピア・ナラー》
1 《再燃するフェニックス》
3 《スカラベの神》
-クリーチャー (15)-
4 《蓄霊稲妻》
1 《削剥》
1 《徙家+忘妻》
4 《ヴラスカの侮辱》
1 《慮外な押収》
3 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《死の権威、リリアナ》
-呪文 (19)-
2 《豪華の王、ゴンティ》
2 《チャンドラの敗北》
2 《アルゲールの断血》
2 《否認》
1 《削剥》
1 《焼けつく双陽》
1 《至高の意志》
1 《川の叱責》
-サイドボード (15)-
どんなデッキか?
これは「青黒ミッドレンジ」と全盛期の「ティムール (青赤緑)・エネルギー」を合わせたようなデッキだ。「グリクシス・エネルギー」は、あらゆる要素を内包している。
「グリクシス・エネルギー」は「青黒ミッドレンジ」よりも能動的で、《反逆の先導者、チャンドラ》を起用できる点は素晴らしい。だが「ナヤ」と同じ問題を抱えており、3色のデッキをプレイする対価はとても深刻なものなんだ。純正の「青黒」と比べると、マナ基盤は遥かに劣る。このデッキには3色全てのダブルシンボルを擁するカードが入っているし、7枚採用された “サイクリングランド” はいついかなるときでもタップインだ。それに状況次第でタップインになってしまう土地がまだ他にもあるな。
環境に存在する他のミッドレンジデッキと比較して、「グリクシス・エネルギー」は事故で負けてしまう可能性が高い。だがその一方で、ミッドレンジデッキの中で最も大きなポテンシャルを秘めているであろうデッキもまた、「グリクシス・エネルギー」なんだ。「グリクシス」なら環境に存在する最高のカード群をまとめて使用することができる。《反逆の先導者、チャンドラ》、《スカラベの神》、《奔流の機械巨人》、《アズカンタの探索》といったカードは全てスタンダードにおける “ぶっ壊れカード” だ。
個人的にはこの手のデッキにとって安定性は非常に重要だと考えているため、「グリクシス」よりも「青黒」の方が好みだ。だが、「グリクシス」はまだまだ十分に研究されてはいないように思える。「グリクシス」というアーキタイプには異なるたくさんのバリエーションが存在するし、より良い構築ができるはずだし、より磨きをかけることができるだけの余地がある。
長所
短所
今後の展望
「グリクシス」は構築の幅が非常に広い。このデッキは環境内の多くの優秀なカードを採用することができるし、いまだ誰1人として各カードを何枚ずつ採用すべきか正解を導き出せていない。全てはメタゲームと君がどのようなプレイスタイルを好むか次第だ。
俺はPetrKikacがMOCSで使用したリスト (6勝2敗) が本当に好きだ。
《大災厄》はきわめて過小評価されているカードだ。こいつは君にとって最悪の脅威である、恐ろしい《殺戮の暴君》に対する最良の解答なんだ。それに《再燃するフェニックス》も対処することができるし、決して無駄カードになることはない。マナコストこそ増えてしまったものの、その分効果も強力になった《思考囲い》モードがあるからな。
メインボードに1枚だけ採用された《アズカンタの探索》は素晴らしいと思う。着地すれば単体で勝利をもたらしてくれるし、それがわずか2マナなんだからな。1枚しか採用されていないのは、こうすることで複数枚引いてしまうリスクを回避できるからだ。
少なくとも1枚の《徙家+忘妻》をメインボードに採用したいと考えている。このカードは多くの仕事をこなしてくれるし、戦場に出てしまったエンチャントに触ることができるカード2種類のうちのひとつなんだ (もうひとつは《暗記+記憶》だ) 。
アドバイスとトリック
もし対戦相手の手札がない状態であれば、対戦相手の1番強いパーマネントを《徙家》で手札に戻し、彼らのドローステップに《奔流の機械巨人》をキャストして《忘妻》を使おう。そうすれば5/6のクリーチャーを戦場に出しつつ、最大の脅威を排除しながらドローしたカードも捨てさせることができる。
また、《徙家+忘妻》はエンチャント除去呪文に対しても強いカードだ。対戦相手のターン終了時に《イクサランの束縛》から《スカラベの神》を解き放てば、彼らが再び《イクサランの束縛》をキャストするまでに1体か2体のクリーチャーを墓地から吊り上げておける。
《スカラベの神》でエンチャント除去呪文を打ち破る術についてお伝えしておこう。もし墓地に《スカラベの神》がいる状態であれば、エンチャント除去呪文を警戒するのは容易だ。エンチャント除去呪文が《スカラベの神》を対象に取った後に、それが解決してしまう前に墓地の《スカラベの神》を吊り上げればいい。
そうすれば「伝説ルール」によりエンチャント除去呪文で対象に取られた方の《スカラベの神》を墓地に向かわせることができる。「伝説ルール」で墓地に落ちた《スカラベの神》はターン終了時に手札に戻ってくるし、今しがた手に入れたばかりの《スカラベの神》・トークンを思う存分堪能してくれ!
《死の権威、リリアナ》と《機知の勇者》をフィーチャーしたリストをプレイする場合には、きわめてマナ効率の良いプレイをすることができる。単に《機知の勇者》で《奔流の機械巨人》とフラッシュバックしたいカードをディスカードし、その後に《死の権威、リリアナ》で《奔流の機械巨人》を戦場に戻せばいいんだ!
どんなデッキか?
最後に紹介する重要なデッキは、俺が現環境で最も好いているアーキタイプだ。このデッキは爆発力に優れ、メインボードに採用された4枚の《逆毛ハイドラ》のおかげでいとも簡単にゲームに勝つことができる。それに《逆毛ハイドラ》に+10/+10と飛行を付けてしまえば、それを止める手段はほとんどないよな。
このデッキは他のミッドレンジデッキに対して非常に相性が良いし、《光袖会の収集者》を最も上手く使えるデッキだ。このデッキにはたくさんの《エネルギー》を生成する手段と《巻きつき蛇》があるため、《光袖会の収集者》の燃料を供給することなんて造作もない。
《ハダーナの登臨》も同様に素晴らしい活躍をしてくれる。《巻きつき蛇》、《逆毛ハイドラ》、《歩行バリスタ》と組み合わせれば毎ターン大きな価値を提供してくれるし、ときがくれば対処の難しい3マナのフィニッシャーへと姿を変える。
3色目のカードを3枚に抑える (俺にはサイドボードの《否認》が良いアイディアだとは思えない) ことで、マナ基盤が崩壊してしまうようなことはない。《霊気との調和》が禁止になってしまってからというもの、完璧なマナ基盤を持った3色のデッキを構築するのは明確に不可能になってしまった。そしてそれはこのデッキの大きな欠点だと考えている。誤解しないでくれよ。このデッキのマナ基盤は「グリクシス」や「ナヤ」よりは優れているし、《ハダーナの登臨》は間違いなくタッチするだけの価値がある。
このデッキに含まれる大量のシナジーも好きだな。基本的にどの2種類のカードの組み合わせであっても、それ単体よりも多くの価値を提供してくれる。このデッキはたくさんの計算が巻き起こるため、スタンダードの経験が浅いプレイヤーにとって非常に厄介なデッキだ。俺がこのデッキをMagic Onlineでプレイしていると、対戦相手は多くのミスプレイをした。ダメージ計算を間違えたなどの理由から、ブロックするクリーチャーを間違えたりってな具合にな。
長所
短所
今後の展望
このデッキはマドリードで使用しようと考えているデッキだ。したがってかなり多くの時間をこのデッキに費やした。
まず初めに、75枚の中に《否認》は1枚も必要ないと思う。このデッキは古典的なタップアウト型のミッドレンジのように振る舞うし、比較的重いカードも多いので《否認》を構えておく余裕なんかないんだ。前のめりなカードが多い、こういった能動的なデッキで何を成し遂げたいのかを考えてみれば、《強迫》の方が優れているのは明白だ。
1ターン目の《強迫》ならば《光袖会の収集者》の道を切り開いたり、後手であっても《アズカンタの探索》が出てくる前にそれを落とすことができる。《燻蒸》や《残骸の漂着》を取り去りながら、同じターンに更なる脅威を追加することだってできるんだ。これらは《否認》にはできない芸当だよな。
他に変更を施したのは、メインボードに追加の《ヴラスカの侮辱》を用意したことだ。《ヴラスカの侮辱》は現環境において素晴らしいカードだし、ほぼ全てのマッチアップで必要になる。環境内で最も攻撃的なデッキに対してでさえ、《熱烈の神ハゾレト》、《再燃するフェニックス》、《反逆の先導者、チャンドラ》を対処しなければいけないため、頻繁に3~4枚の《ヴラスカの侮辱》が欲しくなるだろう。
「トークン」絡みのデッキには軒並みとても相性が良いため、サイドボードに多くのエンチャントを破壊するカードは必要はないだろう。そこで《打ち壊すブロントドン》を1枚抜いてしまい、他にも数枚のカードを削って《貪る死肉あさり》、《アゾカンの射手》といった過小評価されている緑のカードを採用した。
下記がマドリードで登録するものにかなり近いであろうリストだ。まだ調整する時間が1日あるし少しは変更を加えるかもしれないが、現時点で75枚中70枚は確定だろうと思っている。
1 《沼》
2 《異臭の池》
4 《花盛りの湿地》
4 《植物の聖域》
2 《穢れた果樹園》
2 《ハシェプのオアシス》
1 《イフニルの死界》
4 《霊気拠点》
-土地 (24)- 4 《歩行バリスタ》
4 《光袖会の収集者》
4 《導路の召使い》
4 《巻きつき蛇》
3 《翡翠光のレインジャー》
1 《ピーマの改革派、リシュカー》
4 《逆毛ハイドラ》
2 《新緑の機械巨人》
-クリーチャー (26)-
2 《貪る死肉あさり》
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《野望のカルトーシュ》
1 《アゾカンの射手》
1 《殺戮の暴君》
1 《致命的な一押し》
1 《造命師の動物記》
1 《ヴラスカの侮辱》
-サイドボード (15)-
アドバイスとトリック
戦場に《エネルギー》を使用するカードがない限り、最後まで《霊気拠点》を温存しておくように。そうすれば《巻きつき蛇》を引いた際に、無料で追加の《エネルギー》を得ることができる。
このターンに対戦相手を倒せないのならば、《ハダーナの登臨》は基本的に「変身」させない方がいい。《ハダーナの登臨》の「変身」能力は強制なので、対象に取ったクリーチャーに3つ以上の+1/+1があると必ず「変身」しなければならない。要領よく+1/+1カウンターをばらけさせるようにしたり、《歩行バリスタ》で過剰な+1/+1カウンターをダメージに変換することで《ハダーナの登臨》の「変身」を妨げられることを覚えておこう。
《光袖会の収集者》と《巻きつき蛇》は、2マナのクリーチャーの中で最高のものだ。したがって、《導路の召使い》を先にプレイして避雷針にするのことがしばしば正解となりえる。そうすることで、《顕在的防御》を構えながら本命の2マナ域を出すことができるからな。
初手に《霊気拠点》か《光袖会の収集者》がある場合には、いついかなるときも1ターン目に黒マナを置くようにしよう。もしも両カードがあるものの、他に黒マナがないという場合には《霊気拠点》からだ。《光袖会の収集者》が2ターン目に最も光り輝くのは、《霊気拠点》から追加の《エネルギー》を得たときだ。そうすれば通常よりも早く《光袖会の収集者》の能力でカードを引くことができるし、万が一2ターン目にこのコンボの片割れ (または黒マナ) を引いた場合にコンボを揃えられるようにいつでも備えておこう。
ミッドレンジデッキにおいて過小評価されているカードたち
《アゾカンの射手》は攻撃的なデッキに対して素晴らしいカードだ。「戦場に出たとき」の効果は軽量クリーチャーを殺すのにうってつけだし、タフネス4という数字は4マナ以下の脅威を抑え込むに十分だ。自身が使用しているのがどのミッドレンジデッキであれ、こちらの後半戦の備えが「赤単」のそれに劣ることはないだろう。つまるところ、対ビートダウン戦で勝つために重要なのはただ単に生き残ることなんだ。俺が思うに《アゾカンの射手》は緑のデッキが「赤単」、「赤黒」、「マルドゥ・機体」と戦うにあたって鍵となるカードだ。
《貪る死肉あさり》は用途が広く、それでいて強力なサイドボードカードだ。メタゲーム上のデッキの多くは墓地を使うし、《貪る死肉あさり》はそれら全てに対して有効なんだ。攻撃的なデッキに対してはライフを回復しつつ《地揺すりのケンラ》を追放することができる。コントロールデッキに対しては《アズカンタの探索》の「変身」を妨害しつつ、《奔流の機械巨人》や《スカラベの神》を役立たずへと変えてしまう。それも4ターン目からパワー4のクリーチャーで攻撃できるおまけ付きでな。
黒という色は概して《殺戮の暴君》に弱いものの、その他のカードに対してはいくらでも除去がある。《大災厄》はその強力な恐竜に対する最高の解答なんだ。《大災厄》は《スカラベの神》や《再燃するフェニックス》に対しても素晴らしい働きをするな。
《慮外な押収》は、青を基調とした「エネルギー」デッキがクリーチャーデッキ対策として採用できる素晴らしいカードだ。これは対ミッドレンンジ戦でMVP級の活躍をしてくれるものの、《熱烈の神ハゾレト》や《スカラベの神》への最良の解答でもある。今日ではあまり多く使用されていないことにとても驚いている。「スゥルタイ」にもなんとか採用できないものかと考えていたんだが、残念ながら「スゥルタイ」のマナ基盤は(青)(青)のカードをキャストできるようにはできていない。
ミッドレンジデッキの行く末
今の環境では、たくさんの実用レベルの選択肢の中からミッドレンジデッキを選ぶことができるし、これは素晴らしいことだよな。今のところ「スゥルタイ」が最高のデッキだと思ってはいるが、近い将来に誰かが正しい構築を見つければ「グリクシス」が最強のミッドレンジデッキになる可能性もあるだろう。
また、スタンダードはとても新鮮でまだまだ開発の余地がいくつもあるし、ひょっとしたらすぐに新しい強力なミッドレンジが現れる可能性だってあるよな。そうなればメタゲームもそのデッキを中心に移り行くだろうし、環境も完全に変わってしまうはずだ。
だが例え何が起ころうとも、いついかなるときだって俺たちミッドレンジプレイヤーがマジックを楽しめるデッキがあると確信している!今のスタンダードはとても健全だし、ほぼ全ての色にビートダウンデッキやコントロールデッキと戦うための術がたくさん用意されている。これこそが俺が今の環境が好きな理由そのものなんだ!
読んでくれてありがとう。
グジェゴジュ・コヴァルスキ
この記事内で掲載されたカード
ポーランド出身。
【グランプリ・リール2012】、【グランプリ・ブリュッセル2015】でトップ8入賞。【グランプリ・サンティアゴ2017】では見事準優勝を果たした。
その高い実力はプロツアーでも発揮され、多数の上位入賞、マネーフィニッシュを経験している。