敗北に不思議の敗北なし

原根 健太

序: 突然の告白

お久しぶりです。原根です。

突然ですが、最近絶不調です。

直近で3つのプレミアムイベント(グランプリ・京都2018とグランプリ・シアトル2018。シアトルはレガシースタンダードのダブルGP)に参加したのですが、6勝8敗(個人成績)・5勝3敗・4勝3敗と散々な結果でした。

レガシーはスタンダードのついでに参加した程度なので練習量から言っても妥当な結果だと思っていますが、得意フォーマットでありしっかりと練習を積んできたスタンダードで連敗したのはかなりこたえましたね。

そして今回の敗北は「非常に問題のある内容」を含んでおり、このままでは今後のプロ生活に支障を来すことが予想されたため、腰を据えて改善に努めることにしました。

渦まく知識

今回の記事では思考過程から問題点を抽出し、解決案を見出すことをテーマとします。

自身の現状打破が目的ですが、問題解決に向けたアプローチの掛け方として皆さんの一助になれば幸いです。

それでは早速本題へと移ります。

問題のある内容

まずは上記に挙げた「問題のある内容」についてですが、端的に言って「調整時は勝っていた」ことです。

現在僕はMagic Online(以下MO)での調整を中心としているのですが、正直言ってここ最近は勝ちまくっていました。

Rating

※クリックで拡大します。

MOにはレーティング機能があり、現在のコンディションを数値化して見ることができます。

ザックリになりますが、1700を割ると負けている状態、1700~1800が並で、1800を超えると勝っている状態、2000は怪物の認識です。

この基準は個人の感覚によるものですが、少なからず原根的にはかなり調子の良い状態だったと言えます。特にGP直前は競技リーグを15-0(3連続5-0)するなどして「これはトップ8もあるのでは」と調子に乗ったりもしていました

呆然

しかし蓋を開けてみれば本番はボロ負け

練習段階でまったく勝てず、本番もダメと言うなら理解できます。ですが今回はそうではありませんでした。

本番に向けてやれることと言えば、やはり練習が中心になってきますよね。ここでの成果が当てにならないとなると、一体何を信じて行けば良いのでしょうか?

今回の結果は単に負けてしまったことよりも「今のやり方を続けていくことで今後成果を出すことができるのか」が問題となっています。

非効果的な取り組みは改善して然るべきです。本番に向けて行ってきた準備や思考をまとめ、分析を進めていきます。

本番に向けての動き

重点的に練習を行った2大会に焦点を当て、本番までの動きをまとめます。

▼ グランプリ・京都2018の場合

今大会、僕はスゥルタイ《巻きつき蛇》をプレイしています。

巻きつき蛇

大会の1週間前までは青白《王神の贈り物》をプレイするつもりでいました。構成を決めてからのリーグは6連続で4-1、勝率は8割丁度。5-0こそないものの安定感があります。当時《スカラベの神》を用いた青黒系のデッキが幅を利かせており、それに相性の良い《王神の贈り物》は明確に良いポジションに付けていました。

唯一の懸念点はスゥルタイ《巻きつき蛇》にまったく勝てなかったことで、上記6敗のスコアの内4敗は《巻きつき蛇》に負わされました。当日が蛇のフィールドだった場合、リスクが生じます。

これを受け、念のためスゥルタイ蛇をテストしたところ、驚くことに勝率は90%をマーク(4リーグで5-0、4-1、4-1、5-0) 。試行回数が少ないのでやや不安もありますが、この後少し負けが込んでも8割は出ることから「《王神の贈り物》と同等かそれ以上」の選択肢として認識しました。

王神の贈り物巻きつき蛇

直前の選択肢の浮上に頭を悩ませます。最終判断を下すために、僕は以下の思考を辿りました。

  • 《スカラベの神》デッキが人気を誇る現在のフィールドにおいて、《王神の贈り物》デッキは非常に良いポジションに付けている。
  • スタンダードをやり込んでいるプレイヤーなら、この状況には気付いているかも。
  • もしそうなった場合、いざ直接対決になった際有利が付く方が好ましい。

その結果で、《巻きつき蛇》を選択しました

しかし本番のフィールドに《王神の贈り物》はほとんど存在せず、一度だけあったマッチングを圧勝した以外、スゥルタイ《巻きつき蛇》を選択した利点は活かされませんでした。

反対に、このデッキの欠点である「3色デッキゆえの事故」が目立つ結果となり、度重なるマリガンとマナトラブルによりチームの足を引っ張り続けたのでした。正直ここまで事故るデッキだとは認識できておらず、試行回数の少なさが仇となる結果に。不運もありますが、このデッキはマナベースにかなりの無理を強いているため、マナトラブルは一種の仕様です。リストの見た目から危険を感じはしたものの、それを確かめるためのテストでは快調に回ってしまったため、リスクを軽視していました

▼ グランプリ・シアトル2018の場合

グランプリ・京都2018から2週間後のイベントである本大会。

グランプリ・京都2018で渡辺 雄也さんが、その1週間後のMagic Online ChampionShips予選ではオーウェン・ターテンワルド/Owen Turtenwaldさんが青白《王神の贈り物》を選択して好成績を収めたことを知り、悔しさを噛みしめながらも同デッキを選択し直すには十分過ぎる後押しになりました。偉大なる2人の殿堂プレイヤーがこの選択を行ったことは加点要素としては非常に大きいです

しかし、何もかもがプラスに働いたわけではありません。オーウェンさんが《王神の贈り物》をプレイした同大会では、以下のデッキが全勝をマークしました。

メインボードから4枚の《削剥》と2枚の《捲土+重来》、これだけなら既存の赤緑モンスターにも見られる構成ですが、このリストではそれらに加えて4枚の《貪る死肉あさり》と2枚の《打ち壊すブロントドン》、これを探り当てる《恐竜との融和》まで採用されています

貪る死肉あさり打ち壊すブロントドン恐竜との融和

正直、正気の沙汰とは思えませんでしたが、メタゲームの先端を走るMOプレイヤーたちにとって《王神の贈り物》デッキがそれだけ驚異的存在だったということでしょう。それこそ、前述した両名が同デッキを選択するほどですからね。

その他上位に複数のスゥルタイ《巻きつき蛇》を確認し、《王神の贈り物》デッキに対するヘイトが上がってきていることを実感します。事実、この結果が発表された直後に参加したリーグでは5戦中4戦メインボードに《貪る死肉あさり》を採用したデッキと戦いました

普通ならここで気後れするところなのかもしれませんが、ワールド・マジック・カップ2017の頃から《王神の贈り物》をプレイし続け豊富なノウハウを持つ僕は、この事態に対応するためのアイデアを引っ張り出してきました。激しくメタられることを前提とした《王神の贈り物》を構築したのです

《貪る死肉あさり》のような用途の狭いカードを大量に用いるやり方は、本来サイドボードから行うのが適切でしょう。言わば「相手だけサイドボーディングした状態」でゲームが始まっているので、不利になるのは当然です。

と言うことで、相手がその気ならこちらもその気になることで状況を変えることにしました

アズカンタの探索燻蒸

《アズカンタの探索》を増量しつつ《燻蒸》を複数枚搭載することで、コントロールデッキとしての立ち振る舞いを可能としました。

《アズカンタの探索》で土地を伸ばしながら《燻蒸》を打ち、続くターンに変身させて7マナのカード(《王神の贈り物》《機知の勇者》の永遠)をプレイする動きは非常に相性が良いです。

これらのカードを採用するために外されたのは《聖なる猫》《査問長官》と言った1マナ域のクリーチャーたちです。

聖なる猫査問長官

《聖なる猫》は黒入りのミッドレンジデッキが環境に台頭し始めたことで数を増した《光袖会の収集者》に無力であり、代替案として《歩行バリスタ》が使われるのはここ最近のトレンドですが、《査問長官》まで抜かれているリストは恐らく他にないことでしょう。

これはこのリストが《燻蒸》によるコントロール戦略でゲームを長引かせることを目的としているからで、早いターンでのコンボ達成を見ている《査問長官》とは方向性が合わないためです

サイドボード後にミッドレンジ戦略やコントロール戦略を取る際《査問長官》はサイドアウトの対象となりますが、それと同じことですね。

少し話が逸れましたが、上記リストを作成しMOリーグに参加したところ、前述のとおり15-0をマークしました

リストをシェアした友人らからも続けざまに5-0の報を受け、満を持して上記リストをプレイすることに決めたのです。

呆然呆然呆然

しかし当日の結果は惨敗

特に2度マッチアップした赤アグロに連敗を喫したのが致命的でした。高速アグロデッキにとって1マナクリーチャーを排した僕の構築は格好の獲物だったことでしょうね。赤アグロはここ最近MOで見掛けることがほとんどなく、意識的にガードを下げた対象だったので必然的な敗北と言えます。その上で、今大会は赤アグロが大隆盛した大会でした。

市川 ユウキ

市川 ユウキ

八十岡 翔太

八十岡 翔太

デッキをシェアした市川 ユウキさんと八十岡 翔太さんは共に11勝4敗の成績で同大会を終えています。今回の構築を取った以上、もう少し上手くやれていてもこのあたりのラインに落ち着いたのかなと言う印象です。

問題点の抽出

上記過程を踏まえた上で、問題抽出に取り掛かります

表面上の問題だけをピックアップすれば「《巻きつき蛇》を選ばなければ良かった」「赤アグロをもう少し意識すれば良かった」と言う極端な話になるのですが、今後を考えるのであれば大事なのはその一歩先、「ではどうすればその選択が行えたか」という部分です。

正解を知った上での後付けの反省にはあまり意味がありません。同じような失敗を避けるためには「そこに至るまでの思考・取り組みを正す」のが重要です。物事に対する考え方は自身の癖や趣向が強く反映されがちなので、意識的に己を律していかなければいつまでも同じことを繰り返してしまいます。

さて、それでは肝心の「何がダメだったのか」を考えるフェーズに移りましょう。

今回の敗北からは3つの共通点を見つけました。

① 判断基準が主観に寄り過ぎている

第一に気になったのが、各判断の基準が「自己の予想が先行したもの」ばかりとなっていた点です

GP京都では《王神の贈り物》が、GPシアトルでは緑系ミッドレンジが幅を利かせることで保たれるバリューを、あたかもそれが当然であるかのように選択要因に組み込んでいました。

いずれも己が辿った調整過程を基に導き出した答えですが、誰しもが同じように考えるとは限りませんよね。個々人の趣向や体験、調整過程での出来事、属するコミュニティの人間の意見など無数の分かれ道が存在し、その結果で最終的な判断が下されるのです。

今回の僕で言えば、《王神の贈り物》を元々プレイし、過去に成功を収めていた経験が大きく作用しています。ポジティブな評価を与え続け、時に固執してきたことを否むことができません。

現在のスタンダードは環境に一通りの選択肢(アグロ・ミッドレンジ・コントロール・コンボ)が出揃っており、そこには前環境のティムールや赤単のような突出した性能差もなく、予測立てるのが難しい状態にあったと言えます。自身の高勝率によるバイアスで視界が曇っていました

② 勝率の内訳を考えなかった

調整期間を通して高い勝率を収め続けたわけですが、「なぜ勝てているのか」はあまり深く考えてきませんでした。「やっていることが正しいから勝率に繋がっているのだろう」程度の認識でいたのです。

今こうして振り返ってみると、「メタゲームに対し局所的なチューンを施し続けた」ことが要因として挙げられると思います。

貪る死肉あさり燻蒸

《貪る死肉あさり》デッキを意識して《燻蒸》を採用し始めたのはその典型ですね。MOプレイヤーは特に流行に敏感なので、大きな大会で結果の出たデッキはすぐに流行ります。それらに対して勝てる細工を施せば、直近の勝率が上がるのは当たり前のことです。

本番での成果を望みたくさん練習した結果、練習からも目に見える成果を欲するようになり、数字に固執していたように思います。「勝つための練習」から「勝つだけの練習」に目的がすり替っていました

特定の手段で有利が取れることを認識できたのなら、「では本番はそれが活かせるフィールドになるのか」の検討に進まなければならなかったのです。

③ ほんの少しマジックが上手くなった

これは直接的な要因ではなく、①と②を促進させる要素です。わかりづらいと思うので詳細に説明します。

マジックを始めて3年半が経過しましたが、頑張って打ち込んできた甲斐あって、プレイ技術が向上しました。結果を見てもそうですし、実感もあります。

その結果、少し弱いデッキでも勝つようになってきたなと感じました。もちろん基本的には良いことです。負けそうなゲームを勝利することができるプレイスキルは、トータルの勝率を向上させる上で無くてはならないものだと認識しています。

ただ悪い点もあって、以前は「強いデッキや有利な状況では勝ち、弱いデッキや不利な状況では負ける」と言ったある種期待値どおりの動きすることで妥当なデータを得ることができていましたが、技術を手にするとダメなデッキや不利なマッチアップでも頑張って勝つことでそれが有耶無耶になってしまうことがあります

これは僕がTeam MUSASHIの練習に参加し始めた頃に感じたことです。彼らはプレイスキルが圧倒的に高いので、僕のような何段か劣るプレイヤーが調整相手を務めると有利なはずのマッチアップなのに打ち負かされてしまい、調整の質を下げてしまうことがありました。彼らのレベルにはまだまだ届きませんが、そういったことが起きてくるようになったと感じています。

こうした事態は、ゲーム内容を振り返り「本当は負けていたな」とか「勝ちはしたけど実際は不利だな」を感覚で埋め合わせながら、実際に起こり得たであろうゲーム展開を予測し、取捨選択をこなす必要があります。しかし、上記②で挙げたように今回の僕は勝率の内訳を考えることを怠ったため、数値による安堵感を優先させてしまっていました。

正直なところ、怪しいゲームはいくつかあったのです。

ただ、数字が出ている現状を捨てたくなかったのです。

解決案

取り上げた問題に対し解決案を示します。

ここからは未検証の領域で、まだ成否の判断がついていません。今後試行錯誤を繰り返しながら、より良い方法を探っていくことになります。

I. フィールドに対する客観性を重視する

上記のとおり、各判断が主観に寄り過ぎていました。今回は特に顕著だったことが今になってわかります。

過去にもメタゲームを予測し攻めた構築でイベントに臨んだことがありますが、成功したこともあれば失敗したこともあります。少し振り返ってみます。

▼ 成功ケース

  • RPTQ『カラデシュ』(東京大阪)
  • デッキ:白緑トークン
  • 概要:《首絞め》《悲劇的な傲慢》をメイン搭載し最大勢力であったバントカンパニーを強く意識
  • 結果:自身は5-2で権利獲得には至らなかったが、数人しかいない使用者の中で2人の権利者を輩出した

『異界月』によって追加された《無私の霊魂》《呪文捕らえ》の影響でプレインズウォーカーを守りづらくなっていたこともあり、白緑トークンは下火でした。とは言え《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》のカードパワーが低下するわけではないため、到達持ちのブロッカーである《首絞め》で補い、再建を目指しました。

プロツアー『イクサラン』で対赤単アグロに寄せる構築を行った結果失敗したので、逆側のアプローチである「中速以降のデッキに寄せる」をテーマとしています。

▼ 失敗ケース

MO上でティムール《霊気池の驚異》が大流行しており、マッチングすれどもすれども《霊気池の驚異》。「これはもはやティムール一強環境だ!」と意識し寄せた構築を行ったところ、実際のトーナメントシーンは機体・昂揚・エネルギーアグロ・黒単ゾンビらが存在し、さほど特化した環境になく、当然《否認》が腐り散らかして大敗。

前環境からの生き残りであるティムールは環境の登竜門的な位置づけにあり、後発のデッキはすべて「ティムールに勝てること」を前提としたものばかりでした。

その結果丸い構築を行ったティムールはメインボードの勝率が極端に低く、「それならいっそ何かのデッキに寄せた構築を行い、それ以外のデッキにはサイドボード後を勝ちに行こう」という理念で構築。その対象は当時対抗馬であった赤単アグロに。

本番は赤単アグロに一度も当たることなくドロップ。

まとめます。

成功ケースでは「メタ対象のデッキパワーが非常に高く」「事前下馬評からある程度高いシェアが約束されている」ことがわかります。実際のトーナメントでも4割のシェアを誇っていました(参考資料:RPTQ『カラデシュ』東京予選 メタゲームブレイクダウングランプリ・上海2017 Day2メタゲームブレイクダウン)。

一方失敗ケースでは今回の2GPの結果と合わせても、両方またはどちらかの要因が不足しています

つまるところ、当然と言えば当然ですが、攻めた構築を行う際は見返りの期待値が高いことが求められるわけです。過去例に基づけば40%を狙えるかどうかが基準となりそうです。

マジックのトーナメントにおける40%の数値は支配的といっても差し支えないレベルで、これほどの事態が予想される状況でなければ、特定の選択肢を意識した選択は肯定されないことになります。その観点で考えれば京都で僕の取った《王神の贈り物》への警戒がいかに愚かであったかが伺い知れます。シアトルの緑系ミッドレンジ意識も同様でしょう。

以上のことからフィールドを予想立てるに際しては客観性を重視し、期待値の考慮を怠らないようにします。

II. データを細分化する

今回の調整では、有効な構築を模索し、勝率によってその成否を判断するといった方法を取っていましたが、これは止めようと思います。今回陥った「調整結果を担保したいがために勝率に固執する」ことを避けるためです。今後求めるのはより詳細なデータ、つまりマッチアップ毎の勝ち筋や負け筋、キーカードになります。

数字ではなく「理由」を持って選択を行えるよう、細かなデータに目を向けていくわけです。

これまでの経験から、MOのメタゲームとリアルのメタゲームに開きがあることは間違いないと感じています。

一概にどちらが強い・弱いかの話ではなく、流行に違いがあるのは確かです。MOの練習で好調だからと言って、本番でその成果が反映されるとは限りません。今回の僕を見ていただければそれがお分かりいただけると思います。

状況が違えば、そこから生まれた数字に意味はありませんよね。

練習ではデッキのポテンシャルとカードの検証、マッチアップ相性の確認程度に留め、本番に向けてはI.の客観性を考慮に入れて判断を下します。

そしてこの判断材料として、調整過程で得たデータを利用するというのが、今後のスタイルとなる予定です。

III. 人の話を聞く

最後に、今回の敗因を考えるにあたり、どうしても1つわからないことがありました。GPシアトルにおける赤アグロの隆盛です。僕はこの気配をまったく感じ取ることができませんでした。

環境的に赤アグロへのガードが下がっていた実情はあると思います。《王神の贈り物》デッキに限っても、《査問長官》まで抜いてしまった僕はやり過ぎましたが、世間的にも《聖なる猫》《歩行バリスタ》に変わっていったような変化はありました。

ですが前述したようにMOではほとんどマッチングしませんでしたし、たまにリアルの大会に出た際も赤アグロが幅を利かせている様子などは確認できませんでした。

そこで、僕の知る限り身近なところで唯一GPシアトルに赤系アグロを持ち込んだ(実際は先に行われたレガシーGPで好成績を収めたことで不参加)高尾 翔太さんにその選択要因を伺ってみました。

高尾 翔太

高尾 翔太

高尾さんと言えば「コラガン高尾」の愛称を持つほどの赤黒好きで、隙あらば赤黒をプレイしようとするため、アグロをプレイするタイミング、ひいては嗅覚のようなものは人一倍強いはずだと考えました。すると返ってきた答えがこちら。

高尾さんからの返信

理路整然。さすが年間通して赤黒を考え続けているだけあります。実際彼はこの理論を証明するかの如く、当該のデッキを用いて『イクサランの相克』環境名人戦を準優勝しました

僕(=王神)視点では、「トークンデッキの消滅=相性の良い相手が減った」「グリクシスの青黒への移行=どちらも大差ない、《削剥》が減った分ラッキー」程度にしか見えていませんでしたが、赤アグロ視点では劇的な変化であることがわかります

つまるところ、環境の変化が赤アグロの活躍できるフィールドを整えていたのです。僕はこの目線をまったく持ち合わせていなかったため、気配を察知するに至らなかったわけです。

理想は、多角的に環境を見定めて最適解を見つけ出す「目」を身に着けることです

ですがこれは非常に難度が高く、すぐにできるようになったりはしないでしょうし、毎環境それを成功させることも至難の業です。もしかしたら一生かけてもできないかもしれません。個人の視野には限界があり、それゆえプロと呼ばれる人たちも調整チームを組んだりするわけですからね。

この問題において僕ができる最善の解決策は「人の話を聞く」ことです。

もし事前に高尾さんのこの話を聞くことができれば、また違った結果が訪れたかもしれません。意見を参考に赤アグロへのガードを考え直したり、はたまた赤黒アグロをプレイすることを検討したりすることもあったかもしれません。

すべてを自らの範疇で賄うのは非現実的ですし、僕はその必要もないと考えます。目を身に着けるのが理想ですが、見えた結果を知ることができれば同じことだと言えるからです。

マジックを始めて3年半、ここまで培ってきたのは技術や経験だけではありません。「交友関係」もまた、僕が手にした一つの武器だと言えます

偏った知識やバイアスを持たないためにも「人の話を聞く」ことを大事にしたいと思います。もちろん、逆側の立場になれば僕視点で得たノウハウを伝えることで、相互にとって良好な関係を築ければとも思っています。

まとめ

「3年でレベルプロになる」という目標を定め、スタートから駆け足でここまで来ました。

様々な幸運があり現在のゴールド・レベルというステータスを手にすることができましたが、先を急いだ結果本来時間をかけて身に着けていくべきものが備わっていないように感じています。それは漠然とした思いでしたが、今回の振り返りでいくつかが浮き彫りとなりました。

日本のボスからも、茶化されながらも指摘を受けています。今後は一つ一つ考えながらプレイヤーとして足りない部分を補っていく必要があるでしょう。

最終目標である「プロツアーで活躍する」を達成するためにもまずはそれを成せるだけのプレイヤーへと育たねばなりません。今はまだ未成熟、進化が求められる時。

敗北は糧です。無駄になるものなど何もなく、すべてを学びの基として成長に繋げていきます。

長くなりましたが、ご覧いただきありがとうございました。

また次回の記事でお会いしましょう。

原根

この記事内で掲載されたカード

関連記事