Translated by Kazuki Watanabe
(掲載日 2018/04/11)
やあ、みんな。またスタンダードの記事でお会いすることになったな。グジェゴジュ・コヴァルスキだ。前回の記事を書き上げて以降も、このフォーマットでさらに経験値を積んだ。その過程で、自分好みのデッキを見つけることができたんだ。もっとも重要なのは、このデッキが環境における最高のミッドレンジ、ということだ。
さて、前置きはこれくらいにしておこう。それでは、この数週間で俺が身につけた青黒ミッドレンジに関するすべてをお届けするよ。最後まで楽しんでくれ。
青黒ミッドレンジ
このデッキには、ミッドレンジ愛好家が夢見るすべてが詰まっている。カードアドバンテージを得る手段が豊富で、優秀なカードだらけだ。現スタンダード最強の除去である《ヴラスカの侮辱》の二の矢として、軽量な《致命的な一押し》も控えている。それに加えて、多角的に相手を攻めることができるので、終盤は無敵と言っても良いだろう。
そういった「ミッドレンジ愛好家が欲しいもの」をすべてを詰め込んでいるから、このデッキのほとんどのカードは1枚、もしくは2枚差しだ。結果、この青黒ミッドレンジは使い手の腕を試すデッキと化している。その分、使い方をしっかりと学べば応えてくれるデッキであり、対戦相手を凌駕する機会を何度でも提供してくれるだろう。
メインデッキの紹介
除去
お馴染みの除去呪文たちだ(厳密には《本質の散乱》を除去とは言わないかもしれないが)。《ヴラスカの侮辱》はスタンダードにおける最良の単体除去呪文だ。青黒が持つ強固なマナベースのおかげで、この最良の呪文を容易に4枚積むことができる。
《致命的な一押し》は劣るが、必要悪といったところだ。ここ最近のメタゲームで大した働きはしていないように思えるが、序盤からアグレッシブに動き出してくるデッキに対抗するためには不可欠なんだ。《廃墟の地》を3枚採用しているので「紛争」を簡単に達成できることは特筆に値するだろうね。
《本質の散乱》はミッドレンジを相手にする際に必要なカードだ。吸血鬼や赤系のアグロが数を減らして青黒、グリクシス、赤緑といったミッドレンジが増えてくるようだったら、メインデッキに3枚採用することを検討しても良いくらいさ。
アドバンテージ源
アドバンテージを稼ぎ、手札の質を高めてくれる。俺が青黒コントロールより青黒ミッドレンジの方が優れていると思う理由は、これらのカードが存在するからさ。現在のスタンダードのような1対1交換が主流である環境で、戦場にクリーチャーを投下しながら、様々な能力を誘発させて恩恵を受けられる。これが、このデッキの素晴らしさだ。
フィニッシャー
後半戦の主役たちだ。驚くべきことに、現在のスタンダードでは青がベストなフィニッシャーを使えるんだ。あまり相手に遅れを取らなければ、上記のカード単体で勝利を掴むことができる。
《歩行バリスタ》
《歩行バリスタ》の第一印象はあまり良くなかったんだ。とりあえず試してみた結果、後悔するような結末にはならなかったよ。2ターン目にプレイした場合はまずまずと言ったところで、《光袖会の収集者》を除去できる。赤系アグロを相手にした場合はブロッカーになれるし、ブロックしながら他の攻撃クリーチャーにダメージを飛ばすことでダメージを受けることなく処理可能だ。「探検」の誘発に合わせてダメージを飛ばすこともできるから、《翡翠光のレインジャー》のキャストを渋らせることもできる。
ゲーム終盤になればもっと色々なことが可能で、ほとんどの場面で2対1交換に持ち込むことができる。これはあくまでおまけだが、《致命的な一押し》の「紛争」が必要な場合にも役立ってくれるだろう。白緑トークン、そして吸血鬼との対戦では、《歩行バリスタ》が紛うことなきMVPだよ。
脇を固めるカードたち
《暗記+記憶》は決して目新しいカードではないが、エンチャントやクリーチャー以外のパーマネントを捌く上で最高のカードだ。もちろん、「打ち消されない7/6の恐竜」……《殺戮の暴君》に対してもね。それから、《豪華の王、ゴンティ》、《廃墟の地》との相性も抜群だ。《暗記》で戻したパーマネントが有用なものならば《豪華の王、ゴンティ》で奪うことができるし、《廃墟の地》でライブラリーをシャッフルする効果は拒否できないからね。
《アズカンタの探索》は、最近追加した1枚だ。たしかにアグレッシブなデッキに対する相性の悪さは気になるが、ミッドレンジやコントロールに対しては計り知れない価値があるんだ。
同じことが《天才の片鱗》に関しても当てはまる。最も輝くのは《奔流の機械巨人》の対象になったときだから、1枚で良いだろう。《天才の片鱗》が墓地にあれば、マナを効率的に使用できる。《本質の散乱》や《ヴラスカの侮辱》を再利用するために待つことなく、6ターン目に《奔流の機械巨人》を唱えることができるわけだからね。
さて、メインボードに関してはこんなところだ。ここからサイドボードについて話していくわけだが、マッチアップごとにどのカードをどういった目的でサイドインするのか説明していくことにしよう。それと同時に、みんなの周囲で繰り広げられているメタゲームに対して「どのようにデッキリストを改善していくか」ということについても触れておくよ。
グリクシスエネルギー / 相性:とても良い
今回紹介している青黒ミッドレンジとほとんど同じようなデッキだが、向こうの方がマナベースが悪く、《廃墟の地》も採用していないことがほとんどで、こちらよりも弱い1対1交換の除去を使用してくる。このマッチアップは気にかける必要もないだろうね。
改善点
このデッキはグリクシスを倒すための調整が既にされている。だから、まったく変更する必要はないだろう。手を加えるとすれば《致命的な一押し》を1枚抜いて、3枚目の《本質の散乱》を入れる、といったところだが、グリクシスと青黒がメタゲームの60%以上を占めるようなことにでもならない限りは、おすすめできないな。
サイドボード
対グリクシスエネルギー(先手)
対グリクシスエネルギー(後手)
ミラーマッチ / 相性:良い
ミラーマッチについて「相性が良い」と言うのもおかしな話だが、まあ聞いてくれ。《アズカンタの探索》と《天才の片鱗》を増やしたことでミラーマッチの相性は良くなっているが、そんなことを説明したいわけじゃないんだ。
ミラーマッチを左右するのは、使い手の力量差だ。ゲームはとにかく長くなるし、その中で重要な決定をいくつも下して、自分の決めたゲームプランに沿って行動する必要がある。ミラーマッチを制する技術を身につければ、他の”平均的”なプレイヤーに対して75%以上の勝率を叩き出すことも可能だと、俺は信じている。ただしこれはこのデッキに関しての話だ。環境に存在する他のデッキが繰り広げるミラーマッチでは、こんな数字は出ないだろうね。
改善点
グリクシスエネルギーと、まったく同じだ。
サイドボード
ミラーマッチ(先手)
ミラーマッチ(後手)
赤単 / 相性:悪い
このマッチアップはたしかに勝てるが……正直に言おう。対戦相手に《山》を置いてゲームを開始されるのは望ましくない。こちらは相性の悪い《アズカンタの探索》と《天才の片鱗》をメインボードに採用しているからね。
改善点
《アズカンタの探索》と《天才の片鱗》をメインボードに残しておく必要はない。「赤単が環境に多い」と考えたならば、これらを《薄暮軍団の盲信者》や《探求者の従者》に変更しよう。《渇望の時》をメインボードに入れるのも悪くない選択だ。
サイドボード
赤単(先手)
赤単(後手)
スゥルタイ《巻きつき蛇》 – 五分
このマッチアップは、実に奇妙だ。青黒ミッドレンジは普通の緑デッキに対しては良い立ち位置にあるが、このスゥルタイ《巻きつき蛇》に関しては事情が異なるんだ。《逆毛ハイドラ》と《ハダーナの登臨》は悪夢そのものだが、実際のゲーム中は相手がコンボを決められないこともあるし、どういうわけかうまく対処できて有利に立てることもある。
改善点
まず思いつくのは、《アズカンタの探索》を3枚目の《本質の散乱》に変更することだ。他にも《禁制品の黒幕》を抜いて《才気ある霊基体》を増やすことも考えられる。赤系のアグロやマルドゥとの相性が多少悪くなってしまうが、緑系のデッキに対する勝率が数%向上するだろう。
サイドボード
対スゥルタイ《巻きつき蛇》
赤緑モンスター / 相性:とても良い
赤緑は《本質の散乱》、《ヴラスカの侮辱》、そして《スカラベの神》の影響をとにかく受ける。したがって、基本的に青黒ミッドレンジには不利なんだ。向こうは素早く積極的なスタートを切ることもできない。こちらにはゲームプランを決定するための十分な時間があり、相手より優れたカードを唱えて勝利できるわけだ。
改善点
十分に有利なので、特に改善する点はない。強いて変更点を述べるならば、《アズカンタの探索》を抜いて《本質の散乱》を増やし、サイドボードの《禁制品の黒幕》 を《才気ある霊基体》に変更するくらいか。
サイドボード:
対赤緑モンスター
トークン戦略 (白黒吸血鬼、白緑トークン、白単「昇殿」) / 相性:とても良い
向こうが良いスタートを切ってそのまま押し切られる展開もあり得るが、サイド後はこちらが蹂躙するだけだ。貧弱なクリーチャーに《致命的な一押し》を無駄遣いしてはいけない。クリーチャー同士を積極的に交換して、《致命的な一押し》は《軍団の副官》や、《旗幟+鮮明》の対象となったクリーチャーに使用すべきだ。
改善点
サイドボードに《黄金の死》を追加するべきだ。ただし、2枚で十分だろう。メインボードの《アズカンタの探索》と《天才の片鱗》は、《渇望の時》2枚に変更した方が良い。
サイドボード
対トークン戦略
白黒に対しては、《強迫》2枚をサイドインするのも有効だ。《不敬の行進》、《光輝の運命》、それに《饗宴への召集》があるからね。
新セット、『ドミナリア』で加わる戦力
さて、新セットの発売が目前に迫っている。もうすぐすべてのカードを把握することができるな(編注:この記事は全カードリスト公開前に執筆されました)。興味深いカードも山ほどある。何枚か、青黒に加えられそうなカードもあるようだ。例えば、以下のカードだ。
《喪心》 – 非常に強力な除去呪文だと思うよ。《致命的な一押し》よりはるかに柔軟なので、何枚かは入れ替えることになるかもしれないね。『ドミナリア』によって「伝説」を複数採用したデッキが構築される可能性があるから、そういったデッキと対戦する場合に限り《喪心》は弱いカードになってしまうが、その他の点を考慮して、俺はこの黒の除去が大好きだ。
《不純な捧げ物》 – サイドボードの《渇望の時》と入れ替える可能性がある。赤単と対戦する際、《渇望の時》が持つライフゲインが極めて重要なのは言うまでもないが、それと同様に《熱烈の神ハゾレト》や《栄光をもたらすもの》を対処できる点は魅力的だ。おそらく、その場合は《薄暮軍団の盲信者》をメインデッキに採用するべきだろう。《渇望の時》よりも良いのかどうか確信は持てていないが、試す価値は十分にあるカードだ。
《中略》 – スタンダードにとって、大きな追加だ。この呪文がプレイされる場面を、何度も見ることになると予想しているよ。現在《検閲》や《至高の意志》をプレイしている人も居るが、《中略》は明確なアップグレードだ。
まとめ
俺が今日みんなに伝えたかった青黒ミッドレンジについては、これで終わりだ。もしこういったタイプのデッキが好きならば、使ってみる価値が十分にあるデッキだよ。
このデッキを使った対戦は非常に楽しく、対戦相手に干渉する手段が山ほどある。そして何より大切なのは、このデッキがとにかく強力なことだ。使いこなせば高い勝率を維持できて楽しいはずだ。
俺のように青黒ミッドレンジを楽しめない、という人は、一つ前の記事を読んでみてくれ。そこでは特定のデッキに重点を置くのではなく、それぞれの長所と短所を含めて、さまざまなミッドレンジデッキを紹介しているからな。
では、また会おう!
グジェゴジュ・コヴァルスキ
この記事内で掲載されたカード
ポーランド出身。
【グランプリ・リール2012】、【グランプリ・ブリュッセル2015】でトップ8入賞。【グランプリ・サンティアゴ2017】では見事準優勝を果たした。
その高い実力はプロツアーでも発揮され、多数の上位入賞、マネーフィニッシュを経験している。