こんにちは、若月です。
2018年もまもなく終わろうとしています。今年もマジックの背景世界には多くのトピックがありましたが、中でも一番は、やはりドミナリア次元への帰還でしょう!!
『未来予知』から11年を経て再訪したドミナリアは、復興と再生の新時代を満喫していました。ドミナリア次元を舞台にしたセットはいくつも発売されてきましたが、ここまで明るく楽天的な雰囲気のものは初めてだったかもしれません。
その『ドミナリア』で私が個人的にとてもありがたかったのが、「これまで曖昧であった情報が色々と確定した」ことです。その一つが「ドミナリアの歴史」。恒例のアートブックが『ドミナリア』版も発売されたのですが、何とドミナリア次元の歴史的な出来事の大まかな説明が、年代順に、それも暦と合わせて掲載されている!!
「年表」的な記事は私自身何度もリクエストを受けていたのですが、裏を取ることの難しさからこれまで見送ってきました。それが今回正確な年代と「正史である」ことが特定できた、これは大きいですよ。そういうわけで、今回の記事ではそのデータからドミナリア史を大まかに辿ります。また、として他の次元における大イベントをわかる&思い出せる範囲で記しています。
……が、ドミナリアとその次元での年月の経過が同じではない可能性がありますので、参考程度に留めておいて下さい。また次元によって暦は当然異なるのですが、ドミナリアの時代との比較をわかりやすくするため、ドミナリアの暦である「AR」を計算して併記しています。
※AR:Argivian Reckoning/アルガイヴ暦。ウルザとミシュラの生年を起点の0年としている。それ以前はマイナス表記にて記される。
1. 神話時代(-20000AR~-15000AR頃)
エルダー・ドラゴンの誕生と隆盛
ドミナリア次元で記録に残っている最古の出来事が、エルダー・ドラゴン関係です。アートブックには、「(ボーラスの)オリジンと真の性質は他のエルダー・ドラゴン同様に謎に包まれている」とありましたが、これは『基本セット2019』において展開されました。彼らは祖とする存在が翼を羽ばたかせ、そこから産まれ落ちた卵から孵った兄弟姉妹や従兄弟の関係。物語からは、『基本セット2019』の友好三色エルダー・ドラゴンの他にもいたことがわかります。孵化できずに地面に落下して絶命したもの、孵化してすぐに人間に狩られたもの(そう、ドミナリアには既にこの時代にある程度の文明が存在した)、そして……はい、ウギンが。
そう、ウギンとボーラスの話であるのに『基本セット2019』には肝心のウギンが影も形もなかった……。物語に合わせて解釈するなら、プレインズウォーカーとしての覚醒がとても早かったためドミナリアに記録が残っていない、とかでどうでしょうか。マロー曰く「物語にウギンが関わってくることが決まったのはセットデザインも最後の頃で、入れるのは間に合わなかった」(※参考)とのこと。色々難しいのはわかりますが、やっぱりこれは惜しかったよなー。 そしてボーラスのオリジンとして、その後一般的に信じられている内容としては、
というものです。とはいえ『基本セット2019』バンドル付属小冊子には、ボーラスによるエルダー・ドラゴン殺害を疑うような記述もあります。どうなっているんだ。この「リバイアサンのプレインズウォーカー」についても昔から噂はされていますが謎に包まれています。実はウギンとの戦いが目撃され、それがリバイアサンとの戦いとして伝わったのでは? とも個人的に思いました。
そして「時の裂け目」はドミナリアの現実の構造にできた傷であり、そこからゆっくりとマナが流出していきました。ドミナリアにて大災害が起こる度にその地に時の裂け目が形成され、やがて『時のらせん』の時代に至ると非常に深刻な影響を世界にもたらすことになります。
上古族とNumena
エルダー・ドラゴンとはまた違う、そしておそらくもう少し後の時代に現れたドラゴンがいます。「Primeval Dragons」、彼らの存在も昔から語られてきました。そして『ドミナリア』にて「上古族」という訳語が振られました。そう、こちら。
彼らは古代のドミナリアを支配する神のごとく強大なドラゴン達でしたが、Numenaと呼ばれる定命の魔術師3人に打倒され、幽閉されました。そしてここも後々に大きく関わってくる長ーい話になります。ご存知の方も多いでしょう、『インベイジョン』にて登場した友好三色の伝説ドラゴンたち。彼らこそが上古族のドラゴンです。正確に言うとデアリガズは元の上古族の転生、もう四体はオリジナルなのだとか。
彼らは遥か後世、ファイレクシア侵略戦争中に覚醒して人もファイレクシアも駆逐しようと暴走しますが、カーンの説得によって我に返ったデアリガズが自ら命を絶つことによって他四体を弱体化し、再び封じられました。このへんは『プレーンシフト』あたりの物語ですので、いずれそこを語るときに詳しくね。
一方Numena(複数形。単数形はNumen)はカードの訳語がずっと存在しない。彼らも後世に転生して再登場し、何とオンスロートブロックの物語に大きく関わっています。2018年現在、青のNumenの転生先のみ伝説のクリーチャーとしてカード化されていまして、実はこの人。
オデッセイブロックは念願叶って記事を書けたのですが、それに続くオンスロートブロックは未だここで書けずにいます。この連載はつくづく「いつか書きたい」ばっかりだ。
2. スランの時代(~-5000AR)
古代ドミナリアの強大な国家、スラン帝国。彼らはパワーストーンにマナを込めて動力源とし、様々な機械装置を動かして高度な文明を築きました。ウルザブロックのカード数枚が示すように、シヴ大陸に大きな遺構が残されており、ウルザは対ファイレクシアのためにそれを利用しました。
《スランのレンズ》フレイバーテキスト
掘削施設の中の器械類はすべてスランの啓発の証拠だ。マナはすべて彼らには同じものだった。岩からのものでも、水からのものでも、成長するものも崩壊するものも、そんな調和のとれた洞察力が想像できるか。
―― ウルザの日記
《スランのタービン》フレイバーテキスト
ウルザがヴィーアシーノにそれが何をするものか聞いたとき、彼らは答えた。「ブンブンうなるものだよ」
スラン-ファイレクシア戦争
そんなスラン帝国を滅ぼしたのがファイレクシアとの戦争です。首都ハルシオンにはびこる謎の病を研究していた医師にして学者(アートブックでの記述は「doctor」)のヨーグモスは、あらゆる機械装置の動力源であるパワーストーンからの放射が原因だと突き止めました。彼は患者の隔離場所を求め、とあるプレインズウォーカーから当時無人であったファイレクシアを紹介されます。ヨーグモスはそこで治療のためにPhyresis(ファイレクシア化)と呼ばれる手法を開発し、やがて生物と機械の完璧な融合を目指すようになります。そしてヨーグモス率いるファイレクシアとスラン帝国の間に戦争が勃発しますが、唯一の出入り口であるポータルを閉じられたことで彼はドミナリアから締め出され、またスラン帝国も滅びました。
ところでドミナリアには月が二つ存在します。大型の一つは霧月(Mistmoon)、小型の一つは輝月(Glimmer Moon)もしくは虚月(Null Moon)と呼ばれています。このうち輝月/虚月はスラン製の人工物であり、元々はアーティファクト兵を制御するために打ち上げられたものでした。そして戦争中にヨーグモスが手に入れようとするもオペレーターの決死の抵抗に遭い、虚月は軌道上まで登っていってやがて落ち着きました。そしてドミナリア第二の月として知られるようになったのです。
ドミナリア次元のほぼあらゆる文化に、第二の月が突然現れた事件について独自の伝説が語られています。いくつかのカードからも二つの月の姿がわかります。
ラヴニカ次元、ニヴ=ミゼット誕生(-11000AR頃)
ニヴ=ミゼットは少なくとも一万五千歳。年月の経過や一年の長さが同じであったなら(実際これはよくわからない)、エルダー・ドラゴンとスラン帝国の間あたりから生きているという計算になります。
ラヴニカ次元、ギルドパクト成立(-5500AR頃)
都市次元ラヴニカ。一万年前、この次元は十のギルドが覇権を争っていました。ですが秩序と平和と繁栄をもたらすべく、アゾリウス評議会の創設者アゾール一世が――今では旧世代プレインズウォーカーだとわかっていますね――ギルド間の紛争を阻止する不戦協定魔法・ギルドパクトを作成し、全ギルドの長が署名を交わすことで成立しました。これもドミナリアで言うとスランの時代なのか。つくづくラヴニカすごい。
3. 伝説の時代(-5000AR~0AR)
スラン帝国と兄弟戦争の間、この期間についてはあまり多くの情報はありません。《シヴィトリ・スカーザム》や《黒き剣のダッコン》といった伝説的な英雄や悪の物語はこの頃からのものだそうです。またジャムーラの王国ザルファーはこの時代に形を成しました。
ゼンディカー次元、エルドラージ幽閉(-1400AR頃)
しつこいですが年代経過が同一とは限らないと前置きした上で。ゼンディカーにてウギン・ソリン・ナヒリの3人によって最初にエルドラージが封じられたのが今から6000年程前になります。
まだ仲の良かった3人の姿が、今となっては少し切なくも感じます。「(『異界月』ストーリーで)『いしのなかにいる』されたソリンはどうなったんですか」という質問を時々受けますが、私が知る限り特にその後の情報はないです……。
4. アンティキティー戦争(0AR~63AR)
もしくは兄弟戦争。マジックのストーリーを追っていればどこかで必ず出てくるこの出来事、工匠の兄弟ウルザとミシュラが引き起こした大戦争です。少年時代、2人は古代スランの遺跡にて二つのパワーストーンを入手するも、互いのそれを手に入れたいという思いに取りつかれて決裂します。やがて成長して再会すると2人の遺恨は再燃し、それはテリシア大陸を二分する戦争へと発展しました。詳しくはこの連載の過去回で何度か語っていますのでそちらを読んで頂けるとありがたいです。
- 2017/04/27
- あなたの隣のプレインズウォーカー ~第55回 兄弟戦争物語もリマスター~
- 若月 繭子
- 2018/04/23
- あなたの隣のプレインズウォーカー ~第66回 カードで分かる! ドミナリア史 その1~
- 若月 繭子
兄弟が手に入れたパワーストーンは、前述のスラン-ファイレクシア戦争が終わる際に閉じられたポータルを封じていたものでした。2人は知らず知らずのうちにファイレクシアへの門を開いてしまったのです。
最終決戦の地アルゴスにて、ウルザは《Golgothian Sylex》の力を解き放つことで戦争を終わらせました。両軍はアルゴスごと壊滅し、ウルザはプレインズウォーカーとして覚醒しました。弟を堕落させるとともに世界へと破滅をもたらしたファイレクシアをウルザは憎み、その打倒を目指すことになります。この破壊もまた時の裂け目を一つ作り出しました。
ところでこの《Golgothian Sylex》、ちょっと気になる描写が『ドミナリア』ストーリーにありました。ヤヴィマヤにて何かを発掘しているカーンにチャンドラは問いかけたのですが、
Magic Story「ドミナリアへの帰還 第9話」より引用
「何を掘ってるの?」 昨日はヤヤとの口論に夢中で、尋ねようという気すら起きなかった。
「サイリクスを。ウルザが、打倒ファイレクシアのために作り上げたものだ。私はそれを新たなるファイレクシアへ持って行き、そこで起爆させるつもりでいる」
「ウルザが、打倒ファイレクシアのために作り上げたもの」というカーンの説明は過去の話と少々ずれています。ウルザが《Golgothian Sylex》を「使用した」のは確かですが、「作り上げた」のではありません。明確な由来は不明ですが、発見者は《第三の道のフェルドン》。カーンの認識違いなのか、もしくはウルザは別のサイリクスを残していたのか、そこはまだわかりません。
5. 氷河期(64AR~2934AR)
アンティキティー戦争が終わるとほぼ同時に、寒冷化が始まりました。文明が衰退する暗黒時代を経て、450AR頃にはドミナリアの広範囲が凍りつきました。これらの時代に活躍した人物は、多くが近年カード化されています。《永遠の大魔道師、ジョダー》、《高位の秘儀術師、イス》、《偽善者、メアシル》、《ヤヤ・バラード》、《屍術師リム=ドゥール》……これも過去回に詳しく書きましたのでそちらを読んで頂ければ。
- 2017/12/11
- あなたの隣のプレインズウォーカー ~第61回 ザ・ダーク物語もリマスター~
- 若月 繭子
- 2018/04/23
- あなたの隣のプレインズウォーカー ~第66回 カードで分かる! ドミナリア史 その1~
- 若月 繭子
- 2018/08/13
- あなたの隣のプレインズウォーカー ~第69回 アイスエイジ物語もリマスター~
- 若月 繭子
また、世界の大半が雪と氷と戦う中、赤道直下のザルファーだけは繁栄していました。そしてケルドの民とセラ教会もこの時代に起源を持っています。ケルドは氷河時代にエローナ大陸(ベナリアやラノワールがある所)から逃れた避難民が元です。地図を見るとケルドの方が北なのですが、ケルド南岸は暖流の影響で比較的温暖とのこと。セラはこの頃初めてドミナリアを訪れ、彼女と彼女が率いていた天使達から信仰が生まれました。
シャード/Shardの形成
600AR頃、ドミナリアともう十一の次元の集合が多元宇宙から切り離されました。これはShard of Twelve Worlds(訳語未確定、ひとまず「十二世界のシャード」とでも書きましょう)と呼ばれています。これもまた《ウルザの殲滅破》の影響であり、何人ものプレインズウォーカーがこの内に囚われて脱出不能となりました。
6. 洪水の時代(2934AR~3285AR)
2934AR、プレインズウォーカー・フレイアリーズが「世界呪文」を放って氷河期を終わらせました。ですが旧世代プレインズウォーカーの絶大な力によって無理矢理環境が変化したことで、急激な雪解けによる洪水や海面上昇、疫病の蔓延といった多くの災害もまた起こりました。
『アライアンス』はこの頃の物語です。急速に変化する環境の中で再び現れる屍術師リム=ドゥールの気配、そしてキィエルドー・バルデュヴィアの連合成立からの新アルガイヴ建国。こちらは前回詳しく書きました。
- 2018/11/27
- あなたの隣のプレインズウォーカー ~第72回 ヤヤ・バラードとアライアンス物語もリマスター~
- 若月 繭子
また、前述のシャードも世界呪文によって消失し、多くのプレインズウォーカーがドミナリアや周辺次元を去りました。
イクサラン次元、不滅の太陽創造(3280AR頃)
ここはまだ記憶に新しい物語ですね。精霊龍ウギンとスフィンクスのアゾール、2体のプレインズウォーカーは「多元宇宙の巨悪」ニコル・ボーラスを牢獄に封じる計画を立てました。アゾールはその地としてイクサラン次元を選び、自らのプレインズウォーカーの灯を用いて次元渡りを防ぐアーティファクト《不滅の太陽》を創造しました。
タルキール次元、運命再編(3280AR頃)
そしてウギンがボーラスをタルキール次元におびき寄せ、彼の合図でアゾールはボーラスをイクサラン次元へと召喚し幽閉する……という手筈でした。ですがウギンはボーラスに敗北してしまい、アゾールは灯を失ったままイクサランに取り残されました。そしてそのままウギンが死亡した未来が『タルキール覇王譚』、サルカンの介入によってウギンが生き延びた未来が『タルキール龍紀伝』となります。ところで「運命のきずな」っていうカード名がすごく良いと思うのですよ。サルカンは「ウギンのきずな」を通って「運命再編」へ向かったのですから。
7. 近代(3285AR~4205AR)
トレイリアのアカデミー
長い放浪を経てウルザはドミナリアに落ち着き、ファイレクシアの侵略に対抗すべく壮大な計画を始動します。3285AR、彼はトレイリアのアカデミーを設立しました。ここからドミナリアの近代が始まるとされています。カードでも多くの歴史的な出来事が語られています。
ザルファーの神童テフェリーや工匠ジョイラを教育し、
ファイレクシアの成立そのものを阻止すべく「時間遡行実験」に挑み、そして失敗し、
トレイリアを再建すると決戦兵器ウェザーライト号の製作に取りかかり、
シヴで現地民の協力を得てスランの遺構を再建し、ヤヴィマヤのムルタニと和平を結び、
崩壊が迫るセラの聖域から多くの避難民をドミナリアへ連れ出すとともに、次元そのもののエネルギーをパワーストーンに閉じ込めてウェザーライト号の動力源としました。現在、セラ教会にとってウルザは破壊者と救世主の二つの面で認識されています。
トレイリアの背信者ガーサの反乱(3450AR)
一方で問題も起こります。トレイリアの魔術師ガーサは非人道的な血統実験を行い、アカデミーを追放されてしまいました。彼はケルドへと渡って実験を続け、多くの失敗を経てギャサン/Gathanと呼ばれる強大なケルド人を創造することに成功しました。ですが3800AR頃、その技術はファイレクシアに発見されてしまいます。ガーサと彼の完成体は禁忌の研究を渡すよりはと崖から身を投げ、そしてファイレクシアはケルドへの興味を失いました。
こういったトレイリアの諸々の物語はウルザブロックのメインになりますので、そのうち詳しくね! そして、いやむしろ「現代トレイリア」もじっくり語りたい。ドミナリアアートブックを読むと色々書かれているんですよ。世界各地にキャンパスが設立されていて、それぞれ周辺に学生街ができていて……とかあるんですよ! 絶対楽しいやつでしょこれ!!
セラ再びドミナリアに到来(3780AR)
セラが最初にドミナリアを訪れたのは氷河期のことでしたが、この頃に再訪しました。彼女はエローナ大陸南東部のサーシ/Sursiに現れ、苦難の中にある信者へと素性を隠して尽くし、すぐにセラの聖者もしくは化身とみなされるようになりました。ですがあるとき、セラは何者かの攻撃を受けて致命傷を負ってしまいます。敵はファイレクシアの工作員か、プレインズウォーカーか、只の盗人か、それは伝説によって異なっています。セラはプレインズウォーカーの力を用いて助かるよりも、その祝福を大地に与えることを選びました。僧の一人がセラを看取り、称えるための神殿を築きました。セラの最後の教えは「万物の書」二十の新章として記され、後に広く知られる節となりました。つまりセラは死んで久しかったということ……昔のコミックでこのエピソードが描かれていたらしいのですが(私も実物は未確認)あまり知られていませんよね。3800AR頃には、セラ教会は現在の形に近くなったようです。
このギデオンの背景にセラのステンドグラスがありますが、金髪に白い羽の翼、光輪、包み込むように広げた両腕はセラ教会がセラ本人として描くまさにそのままの姿です。
……ところでご存知の方もいるかと思いますが、後の小説『Scourge』では、《邪神カローナ》とその従者2人がセラの聖域を訪れ、セラを名乗る天使に出会っているのです。一方『ドミナリア』の物語・設定においてセラの聖域は崩壊して久しい世界。これは一体? 実際のところ、カローナ関係の描写については後に多くの矛盾が生じており、また公式に否定されているものも存在します。小説『Time Spiral』では、当時カローナと対面したはずのテフェリーが「カローナとは誰ですか?(原文:Who is Karona?)」と言っていました。その言葉を聞いたフレイアリーズは愕然としていましたが、私も当時愕然とした。
陰謀団成立(4000AR頃)
白の教団があれば黒も、というわけではないですが、ドミナリアの黒組織といえばオタリア大陸の陰謀団。下級貴族の三男であった魔術師にして暗殺者のヴィロット・マグランは富と闇の魔神クベールを信奉し、家族を生贄に捧げて力と寿命を得ました。そして陰謀団を設立し、長きに渡ってオタリア大陸を経済的な面から支配しました。陰謀団の全盛期であるオデッセイブロックについては第65回に、オンスロートブロックについては……もちろんこちらもいずれ書きたい。
ミラージュ戦争、ケルドのジャムーラ侵略(4195-4205AR)
『ミラージュ』『ビジョンズ』そして『プロフェシー』のエピソードになります。プレインズウォーカー・テフェリーが行っていた時間の実験が遠因となって、ジャムーラ大陸に戦乱が勃発します。炎熱の島のケアヴェクがジョルレイルを騙して同盟を組み、軍勢を立ち上げ、コロンドールのマンガラを琥珀の牢へと幽閉しました。やがてジョルレイルは騙されていたと気付いて離反、時間実験の余波であるフェイズ・アウトから戻ってきたテフェリーの助力もあって戦乱は収拾されました。
ですが4205AR、預言を成就して「ケルドの黄昏」を起こすべくケルド人がジャムーラへの侵略を開始しました。ファイレクシアの侵略が間近であることを察し、ドミナリア内の争いは速やかに収める必要がありました。ウルザは親友のバリンへと対処を依頼し、ケルドの軍は彼やテフェリー、キパム連合の力によって撃退されました。……ですがこの戦いで、バリンは妻であるレインを失ってしまうのでした。そして彼の悲しみはこれで終わることはない、それはご存知の通りかと思います。
ウェザーライト号の冒険(4204-4205AR)
「レガシー」を追い求める旅のさなか、ウェザーライト号の艦長であるシッセイが何者かに誘拐されてしまいました。残された乗組員らはドミナリア中を巡り、艦長がさらわれた先である異次元ラースへ向かう手段を求め……とても長い歴史を背景に、「ウェザーライト・サーガ」が始まります。
- 2015/05/11
- あなたの隣のプレインズウォーカー ~第33回 テンペスト物語もリマスター~
- 若月 繭子
タルキール次元、ボーラス再来(3298AR頃)
これは『基本セット2019』で語られました。ウギンとの戦いから18年、その死に疑いを抱いたニコル・ボーラスはタルキールを再訪します。そこでボーラスが見たのは、ウギンの亡骸……ではなくそれを包む石の繭でした。
ですがボーラスはそれを自力で破壊はできない模様。彼はかつてウギンを倒す際に利用した《龍爪のヤソヴァ》、そしてその孫娘に対峙します。彼女らはタルキールを守るべく、一世一代の賭けに出ました。ウギンから得た幻視を元に、ボーラスへとはったりを仕掛けたのです。お前を幽閉するために、不滅の太陽が今もここを狙っている。万が一にも本当であったなら……その疑いを捨てきれずボーラスはタルキールを去りました。
ていうか今さら言うけどボーラスにウギン、君たち双子って、双子って、君たち……
8. ファイレクシア侵略戦争と黙示録後の世界(4205AR~4306AR)
御存知の通り、これはインベイジョンブロックにて語られました。ウェザーライト・サーガの集大成は壮大で壮絶な戦いの物語、主要な登場人物も多くが死亡しました。ここではごく概要だけを記述するに留めます。
それまで小規模の潜入工作や斥候的な活動はありましたが、4205AR、ついにファイレクシアの全軍がドミナリアへの侵略を開始しました。世界の至る所に次元の門が現れて艦隊がなだれ込み、各地を壊滅させ、さらにはおびただしい軍勢ごとラース次元をそっくりドミナリアへ「次元被覆」させました。最終的にヨーグモスまでも、死の黒雲の姿となってアーボーグへと顕現しますが、ウルザが用意した最終兵器である《レガシーの兵器》によって倒され、侵略は阻止されました。
ですがドミナリアの被害もまた甚大でした。数百万人が犠牲となり、環境と生態系は破壊され、いくつもの国家が壊滅しました。ですがその中でもセラ教会やトレイリアのアカデミーはこの「第二の暗黒時代」において文明と文化の灯を保ち続けました。
9. 裂け目の時代(4306~4500AR)
ミラーリの騒乱とカローナの戦争
そしてオデッセイ・オンスロートブロックの物語です。オタリア大陸はファイレクシア侵略の戦場にこそなりませんでしたが、疫病が撒かれて人口が著しく減少してしまいました。侵略戦争から百年後、途方もない力を持つアーティファクト《ミラーリ》を巡る争いが勃発します。ミラーリは持つ者に制御不能の力を与え、人々の手を渡り歩きながら破壊をもたらしました。さらには神話の時代から三体のNumenaが再誕し、全ドミナリアのマナが《邪神カローナ》として顕現してオタリアは破壊し尽くされてしまいました。何だかよくわからない? そう、概要だけ書くとこの流れかなり唐突でよくわからないのです。概要じゃなくても色々唐突で……それは詳しく話すときに。
裂け目のネットワーク形成
カローナの顕現と死は巨大な「時の裂け目」を作り出し、既存のいくつもの裂け目を深め、広げ、ドミナリアの現実の構造に傷が広がっていきました。さらに裂け目からはドミナリアのマナが流出し、世界は次第に枯渇していきました。『時のらせん』の土地アートは見るからに荒廃しており、この頃のドミナリアの様子がわかります。
さらにドミナリアは多元宇宙の中心的な位置にあることから、時の裂け目は昔から他のいくつもの次元へと影響を及ぼしてきました。ラヴニカ次元は多元宇宙から孤立して死者の霊が滞留し、《幽霊街》が形成されました。また、神河次元では現し世(人の世界)と隠り世(精霊の世界)の境が弱まり、そのため《永岩城の君主、今田》は《復讐の神、大口縄》の要素を盗み出すことが可能となりました。これが「神の乱」へと繋がることになります。
リリアナ覚醒(4350AR頃?)
同じドミナリアでの出来事ですが。リリアナがプレインズウォーカーとして覚醒した時期は『スカージ』と『時のらせん』の間と推測されています。『カラデシュ』時点でリリアナ本人が「229歳」と言っていましたが、確かに一致しますね。
ラヴニカ次元、ギルドパクト崩壊(4484AR頃?)
ラヴニカ次元の十のギルドに立ち位置と役割を定め、また大規模な争いを禁じた不戦協定魔法ギルドパクト。それがディミーア家のギルドマスター、ザデックの遠大な策略によって崩壊してしまったのが恐らくこの頃です。
ラヴニカでは「ZC.(Zal Concordant)」という、ラヴニカ独自の暦が使用されています。ギルドパクトの署名の年を起点とし、9999-10000ZC.が『ラヴニカ:ギルドの都』の年代となります。そして最近発売された書籍「Guildmasters’ Guide to Ravnica」によれば、現在は10076ZC.とのこと。もちろんドミナリアとラヴニカの年代経過が一致するとは限りませんし、この書籍も厳密には『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のもの、そう色々前置きした上でこのくらいです。大雑把に「大修復少し前」くらいの認識に留めておくのが良いかと私は思います。
10. 修復の時代(4500~4560AR現在)
大修復
「大修復」が今から60年前、4500ARになります。太古から幾度も引き起こされた次元規模の大災害によってドミナリアには時の裂け目がいくつも形成され、テフェリーが表現して曰く「ひびの入ったガラスの器に水がなみなみと注がれている」ような、極めて危険な状態にありました。そしてそのテフェリーを皮切りとして多くのプレインズウォーカーが、灯のみならず命までも捧げて時の裂け目を塞いでいったのでした。まるで、自らが次元を痛めつけてきたその行為を償うかのように。最後に残ったオタリアの裂け目が閉じられたとき、世界の治癒が始まりました。そして「大修復」はドミナリアから多元宇宙の全てへと広がっていきました。流出を続けていたドミナリアのマナも大地へと戻り、直ちに再生と復興の時代が始まったのでした。
また「大修復」は多元宇宙へと二つの大きな変化をもたらしました。
プレインズウォーカーが弱体化した
かつてプレインズウォーカーは無限の魔力と不老不死の肉体を持っていました。ですが「大修復」によってプレインズウォーカーの灯の性質もまた変化し、「次元を渡り歩く能力」を持つ以外はそれを持たない人々と変わらないものとなりました。大修復を生き延びたプレインズウォーカーはそれまで持っていた無限の魔力や不老不死性を失いました。とはいえ元々の種族や、それまでに身につけていた能力によって「弱体化」の具合は様々のようです。
灯を用いない次元間移動が不可能となった
「大修復」までに存在していた次元間ポータルや人工的な次元航行手段は全て機能を停止しました。新たなウェザーライト号も、次元航行能力は持っていません。
《航海士のコンパス》フレイバーテキスト
ウェザーライトは次元転換はできなくなったが、ドミナリア中を軽く飛び回ることはできる。
陰謀団の復活
オンスロートブロック以降、陰謀団がどうなったのかははっきりと語られていませんでした。カローナ関係の騒乱でオタリア大陸は荒廃し、陰謀団もまた壊滅状態になってしまいました。総帥は『レギオン』にて死亡、その息子として顕現とした魔神クベールもまたカローナに殺害されてしまいました。つまり陰謀団は主も神も失ってしまっていたのです。彼らは瓦礫の中で細々と生き延びていましたが、大修復にてドミナリアに豊かなマナが戻ってきたことにより息を吹き返します。やがてある一団がクベールとの交信手段を求め、強大な悪魔を召喚しようとしました。
……そして召喚されたのがベルゼンロックだったのです。悪魔はクベールをあざ笑い、陰謀団員の崇拝を求め、その力を示して直ちに陰謀団を掌握したのでした。
近年のセットで語られた出来事
そして近年のセットで語られた出来事が続きます。(順不同)アモンケットの変質、カラデシュの大霊気ブーム、新ファイレクシアの再興、エルドラージの解放と打倒……このあたりはまだまだ記憶に新しい所でしょうから、説明は省きます。
11. 今年もありがとうございました
以上になります。2018年も色々と存分に語ることができました。来年はラヴニカにて、ボーラスとの最終決戦が待っています。果たしてどのような結末になるのか……そしてその後には何が続くのか。見届ける覚悟はできていますか? 私は正直わかりません!!
それでは、少し早いですが良いお年を!
(終)