インタビュー:ベン・ハル ~オールド・ルーキー~

晴れる屋メディアチーム

By 富田 翼

 彼がルーキー・オブ・ザイヤーを獲得した時、1本の映画を思い出した。メジャーリーグベースボール史上最年長の35歳でデビューしたジム・モリスの実話を基にした物語「オールド・ルーキー」だ。

 ベン・ハル。Hareruya Pros所属のアメリカ人プレイヤーであり、現在は最高峰のプラチナ・レベル・プロであるが、彼のキャリアスタートは33歳と他のプレイヤーに比べゆっくりしたものであった。

 そのスタート地点となったのは初出場したプロツアー『カラデシュ』。そこで見事トップ8入賞を果たしたベン・ハルだが、彼のトップ8プロフィールには、驚くべきことが記載されていた。

公式記事プロツアー『カラデシュ』 トップ8プレイヤープロフィールより引用

質問:このプロツアーに向けて、誰とチームを組んで準備しましたか?

地元で特に相手を決めずドラフトした。スタンダードは練習しなかった。   

 決してプロツアーという舞台を軽視しているわけではない。仕事とマジックの両立し、限られた時間を最大効率で使うため、彼が行き着いた一つの結論だったのだ。

 その経験をもとに、彼はHareruya Prosとして最初の記事を執筆した。「リミテッドプレイヤーによるデッキ選択のすゝめ」は彼の体験談を実例として、構築デッキの一つの選択方法を提示してくれている。

 極度にリミテッドへ偏った練習法ながら、結果を残し続けているベン・ハルに話を伺った。

ベン・ハル

ベン・ハルにインタビュー!

――「まずはベン選手のことを教えてください。いつごろからマジックを始めたのですか?」

ベン「最初にマジックを始めたのは、本当に幼い頃だね。確か『アンティキティー』から『ホームランド』ぐらいまでやっていたと思う。一度はそこで少年ベンへと戻ったのだけれど…」

――「マジックは離してくれなかった?」

ベン「そうなんだよ。15年以上の歳月を経て、偶然『アヴァシンの帰還』のころにドラフト動画を見たんだ。それからしばらくして、マジックに復帰してみようと決心したよ。それ以来すっかりマジックに夢中になってしまっているね

リミテッドプレイヤーのすゝめ

――「リミテッドプレイヤーによるデッキ選択のすゝめにあるように、既存デッキから比較的簡単で攻撃的なデッキを選択する方法にいつからなったのですか?何かきっかけがあったのでしょうか?」

ベン「記事で紹介した方法は、初めてプロツアーへの出場権利を得たときから考え始めていたよ。それまでは構築フォーマットをほとんどやったことがなかったけど、それでもできるだけいい成績を残したいと思ったからね。」

ベン「それ以来、間違いなく多くの教訓を得てきたよ。まぁ大体はミスから学んだものだけどね。」

――「ではリミテッドの達人ベン選手に対し、ドラフトについてお聞きします。『ラヴニカの献身』環境のリミテッドにおいて好きなカードとギルドを教えてください」

ベン「実はドラフトをする時間があまりとれなくて、『ラヴニカの献身』は明らかに準備不足なんだ。今のところお気に入りのカードは《刃の曲芸人》だね。ドロー付きでうまくいけば3マナでもプレイできるし最高さ。ギルドはオルゾフが好きだね。「死後」は相打つだけでアドバンテージを得られるし、とても楽しいからね。」

刃の曲芸人傲慢な支配者

――「ドラフトが上達したい読者はベン選手の練習方法が気になります。新しいドラフト環境が始まると先ず何をしますか(考えますか)?」

ベン「その環境を初めてドラフトするなら、目標は知識を得ることにある。判断を下すためにあらゆるアーキタイプを経験する必要があるし、自分で評価がいまいちわからないカード、特にレアは片っ端から試したいね。」

――「まずはあらゆるカードを試すことから始まるんですね。では、ドラフトが上達したいプレイヤーへ具体的なアドバイスをお願い致します」

ベン「比較的経験の浅いリミテッドプレイヤーが上達したいのであれば、ドラフトの動画や放送を観ることを強く推奨する。フィーチャーされたプレイヤーが下した判断を知ることができるし、なぜその判断に至ったのかも教えてくれることがあるからね。」

オールド・ルーキー

――「33歳でルーキー・オブ・ザイヤーを獲得していますが、その1年間は肉体的・精神的に大変なシーズンではありませんでしたか?」

ベン「ルーキー・オブ・ザイヤーを獲得したシーズンは、かなり早い段階からプロツアーとグランプリでトップ8に入ることができた。そのために 序盤で大量のプロポイントを獲得することができ、一時的に安心はできたね。」

ベン「けれども、それ以降はがっかりするような成績が続いたんだ。その時点でルーキー・オブ・ザ・イヤーに向けて十分なプロポイントを獲得できていたけれど、賞金を得たイベントは先ほどのトップ8を除けばひとつしかなかった。プロツアー『破滅の刻』では、最後の2回戦のうち1回でも勝つことができればプラチナレベルに到達するという状況だったけど、どちらも負けてしまった。賞金もあと一歩のところでもらえなかったプロツアーだったんだ」

――「プレイヤーであれば誰もが勝ちたいと思いますし、反面悔しさも大きかったのではないですか?そうした際にはどう乗り越えてきたのですか?」

ベン「この結果で落胆したのは間違いない。でもここでの経験を通じて、より広い視点で物事を捉えられるようになったんだ。狙った大会で結果を出すとも大切だけれど、自分はプロとしてプレイしている。だから大会結果だけにこだわらず、シーズンを通して満足のいく結果出すことを優先しているね。このように考えるているから、運が悪いと思う大会があったとしても大きく取り乱すことは減るんだ。」

――「ありがとうございました」


 ベン・ハルは、貫禄十分に落ち着いた雰囲気で語ってくれた。キャリアこそ短いものの、彼の冷静さとリミテッドで培われた自力の高さ、分析力が強さを支えている。

 そして失敗や構築戦に疎い自身の短所をネガティブにとらえず、新たな教訓と考えて次に活かす姿勢はまさにプロプレイヤーの立ち振る舞いであった。

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