2019年3月8日。いきなりすごいことになった。
- 2019/03/08
- ステンドグラスに描かれたプレインズウォーカーたち
- マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト
『灯争大戦』トレイラーでおぼろげに見えていた「プレインズウォーカーのステンドグラス」、その詳細が明かされました。なんとプレインズウォーカー36体大集合!こんなのすぐにでも取り上げるしかないじゃん!3月掲載分は別の内容で進めていたのですが急いで書きます!ネタバレももう構いませんよね!!
この先には2018年1月初旬発売の書籍『The Art of Magic: the Gathering: Ravnica』(もしくは「ラヴニカアートブック」と表記します)を資料とする「ネタバレ」が含まれていることをご了承下さい。
※一部画像はマジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイトより引用しました。
1. ここに至る経緯
まずこの「プレインズウォーカー大集合」に至る経緯は?実は、ラル・ザレックとニヴ=ミゼットが深く関わっています。第74・75回では核心を回避しつつ触れていましたが、今度こそきちんと取り上げなければいけないようです。ラヴニカアートブックにて明かされていた内容を説明します。
ラルは頑なに隠し通していましたが(隠し通せていると思っていましたが?)、ニヴ=ミゼットは多元宇宙やプレインズウォーカーの存在を把握していました。そしてニコル・ボーラスの手がラヴニカに伸びつつあることも。その陰謀を阻止するために、ニヴ=ミゼットはふたつの計画を始動しました。
ひとつはギルドパクトを改訂して自らその座につき、ギルド間の緊張に対応すること。そしてもうひとつが、多元宇宙のあらゆる場所からプレインズウォーカーを呼び寄せること。そしてニヴ=ミゼットはこれらの計画にかかりきりとなり、その間ギルドの運営をラルに任せました。
《嵐の行使》フレイバーテキストに「ニヴ=ミゼットが消失」とあったのはそういうことです。消失、というよりは引きこもって姿をくらます、くらいですね。
今ここで重要なのは後者の計画です。まず、ニヴ=ミゼットは「電光虫計画」の拡張を命じました。『戦乱のゼンディカー』前日談で語られたこれは元々、プレインズウォーカーのラヴニカへの出入りを追跡するようなものでした。このシステムを改造して多元宇宙のあらゆるプレインズウォーカーに合図を送り、ラヴニカに来てもらう。《千年嵐》はそのためのものだったのです。ちなみに、アートブックにはこう書かれていました。第74回冒頭で紹介したものですが、その続きも少し。
書籍「The Art of Magic: The Gathering – Ravnica」P.209より訳
結局のところ、ギルドマスターへと他次元の存在を隠すというラルの試みは完全に不必要なものだった。多元宇宙はラヴニカよりも広大でありその間を旅する能力を持つ者達が存在することを、自称「竜英傑(ドラコジーニアス)」ニヴ=ミゼットは既に知っていたのである。そのため彼は打倒ボーラスのために多元宇宙のあらゆる場所からプレインズウォーカーを呼び出す必要性を見出し、その合図とすべくラルへと電光虫計画の強化と拡張を命じた。
「打倒ボーラスのために多元宇宙のあらゆる場所からプレインズウォーカーを呼び出す」。これを読んで私はそのスケールに驚くとともに心を打たれました。何だよ……やっぱりこのドラゴンはラヴニカを守りたいってことじゃん……『ギルド門侵犯』の迷路レース開催演説の時もそう思いましたが、今回もやられました。
人知を超えた知性を持ち、気まぐれに満ちてギルド員にも様々な無茶を強いる齢一万五千歳のドラゴン、ということで普段ニヴ=ミゼットから「地元愛」がイメージされることはあまりありませんよね。けれど貴方こそがラヴニカの守り手だ。
それはそれとして、ちょっと気になることもあります。「次元を超えて合図を送る」という考えは、1280年前にウギンとアゾールがボーラスを《不滅の太陽》でイクサランに閉じ込めようとしたそれを思い出すのですよね。ニヴ=ミゼットとアゾールはギルド創設者同士面識があるはずですし、何か関係あるのか否か。私もわからない。
2. メンバーの顔触れ・既存キャラクター
36人のバックストーリーは様々です。ゲートウォッチの面々と協力者、そしてラヴニカ出身者はもちろんのこと、ボーラスとの因縁持ち、ゲートウォッチ及びその個人と過去に関係のあった面子、はたまた全く縁のなかった所からも登場しています。死亡したキャラクターやほかの世界にかまっている余裕のないキャラクターがいないのは当然としても、驚くほど多様です。全員とはいきませんが、気になったところを取り上げてみました。
■ゲートウォッチ
ギデオン・ジュラ、ジェイス・ベレレン、リリアナ・ヴェス、チャンドラ・ナラー、ニッサ・レヴェイン
『ドミナリア』以来なので1年ぶり!ギデオンの手には、ドミナリア次元から持ち込んだ《再鍛の黒き剣》が。ジェイスはイクサランの海賊衣装(半脱ぎ)ではなくいつもの装束で身を固めていますね。秋のラヴニカは寒いのと、ジェイスは同じ服を何着も持っている(公式設定)ようなので。それとチャンドラの周りに飛行機械が飛んでいるのが気になります。カラデシュ人にとって飛行機械は馴染み深いものですが、これまでチャンドラはむしろ飛行機械を壊す側でした。なにかあるのでしょうか?
悪魔四体を倒したものの、ボーラスに契約が移ってしまったリリアナ、「誓い」を破棄して去ったニッサの姿もあります。とはいえそれほど驚くことではないかな?リリアナが心からボーラスに従うわけはありませんし、ニッサもラヴニカに愛着はないまでもボーラスの悪辣さを憎んでいることは確かですからね。
黄金のたてがみのアジャニ、テフェリー
ゲートウォッチでも、ボーラスと一際深い因縁を持つのは創設メンバーではなくむしろ新しい方の2人です。兄の仇としてアラーラ次元にてボーラスを追い求めたアジャニ、60年前にドミナリア次元にてボーラスの復活に関わったテフェリー。特にテフェリーは『時のらせん』当時、旅の仲間を守るべく旧世代プレインズウォーカーのボーラスと戦ったことすらあります。その時は敵うべくもなく敗れましたが、同じく旧世代プレインズウォーカーでしたので死にはしませんでした。このあたりの話も「大修復」やその周辺の色々に関わっているのでいつか詳しく取り上げたい。
ところでアジャニの左には、セレズニアの狼乗りの姿がありますね。同じ白緑だ。
カーン、ヤヤ・バラード
『ドミナリア』の物語を経て、この2人もゲートウォッチには加わらないながらも協力を申し出ていました。これまで明かされている限りでは、カーンとヤヤはボーラスと直接の因縁はありません。直接の因縁は……
Mythic Edition版《ウルザの後継、カーン》の絵を見た時は最初「なんだろうこのポーズ」と思いましたが、一瞬後に「そこになにが入っているか」を思い至って私は泣き崩れました。そこには、カーンを新ファイレクシアから救い出した彼の……心臓が……またその話か、と言われようとも。
『アポカリプス』にてプレインズウォーカーとなったカーンでしたが、『次元の混乱』にてプレインズウォーカーの灯を失い、身体の内にあったファイレクシアの油に侵食されてしまいました。
そして、『新たなるファイレクシア』にて自らの命と引き換えにカーンを救い出したのが工匠ヴェンセール。物語上は最初の新世代プレインズウォーカーです。『時のらせん』ブロックにてテフェリーに見出され、ボーラス復活にも直接関わりました。この連載で最後に彼を詳しく取り上げたのはもう6年以上も前になりますが、是非読んで頂けたらと思います。
- 2012/10/25
- あなたの隣のプレインズウォーカー ~第12回 ヴェンセールの内緒じゃない話~
- 若月 繭子
■ゲートウォッチ繋がり
ゲートウォッチが物語中で出会った、共闘した、敵対したプレインズウォーカーも顔を見せています。
キオーラ
キオーラは『戦乱のゼンディカー』ブロックにてゲートウォッチと共に戦いました。ゼンディカーを救ってもらったお返しにとラヴニカに駆け付けるのでしょうか?『ゲートウォッチの誓い』の物語、エルドラージとの最終決戦でキオーラは割とやらかしてしまった所があり、株を下げてしまうような結末でした。とはいえキオーラはいつでも場を明るくしてくれるキャラクターですので、個人的に再登場はとても嬉しいです。
短編もメインストーリーも救いのない話揃いだったテーロスブロックにて、彼女の存在にどれほど救われたことか。ちなみに『デュエルデッキ:エルズペスVSキオーラ』について、物語中では全く戦っていないというのは繰り返し伝えて行きたい。
オブ・ニクシリス
一方ニクシリスはゼンディカー次元そのものを憎むことから、それを救おうとするゲートウォッチ(厳密には結成前ですが)に立ち塞がりました。《連結面晶体構造》を破壊した上にそのエネルギーを利用して自らの灯を再点火させ、また地中に潜んでいた《大いなる歪み、コジレック》を呼び覚ましました。最終的には敗北して退散しましたが、策士でありながらどこか堂々としていて、妙にポジティブ思考なニクシリスはなかなか他にない悪役として深く印象に残っています。
物語ではギデオンとタイマン格闘戦をする場面があるのですが、それがまた少年漫画のように熱い展開でした。「戦いの中、このような瞬間というものがある。時が静止する。闘争の喜びが感覚と時の流れを圧倒する」「この男は我と同じく、実に戦いを愛している。良いことだ。他では感じえぬ喜びだ」、いいよねこういうの……。ここは是非とも「ゲートウォッチよ、貴様らを倒すのはこの我だ!」みたいなベッタベタな感じで再登場して欲しいです。それこそステンドグラスの絵のように高い所から。
タミヨウ
タミヨウの初出は『アヴァシンの帰還』。神河次元の出身としてだけでなく、メインストーリーと関係ない所で「観光客」的にプレインズウォーカーを登場させることもできるんだ、と話題になりました。そして『イニストラードを覆う影』では、世界を次第に蝕む狂気の正体を解明していくための重要な立ち位置で再登場しました。再登場、といいますかどうやらずっとイニストラードで月の研究を続けていたようですが。
エムラクールを銀の月に封印する際にはゲートウォッチと共闘しましたが、彼らと固い友情を結んだというほどではなかったと思います。アジャニとは昔から友人同士のようなので、むしろそちらの繋がりでしょうか?
サヒーリ・ライ
『統率者(2018年版)』でも新規カードが登場したサヒーリ。カラデシュ次元を象徴するような、明るく活気溢れる工匠のキャラクターです。『カラデシュ』ブロックにて、チャンドラの母であるピアが率いる改革派に力を貸して共に戦いました。そういえば、『霊気紛争』の物語中にチャンドラからゲートウォッチへ勧誘されるという場面があったのを思い出しました。
Magic Story「起死回生」より引用
「いいじゃん」 飛空船の視界が晴れ、チャンドラは言った。「その才能をさ、カラデシュの外で振るってみたくない? 私達の力になってみない?」 彼女はそして片手で額を打った。「あちゃ。私ギデオンみたいな事言ってる」サヒーリは微笑み、今やはっきりとした姿の霊気塔を遠くに見つめた。「わからない。今はここの、この世界の戦いだけが心配だから」
ここのチャンドラが可愛くて好きです。サヒーリはラヴニカからの「呼び出し」を聞きつけたとき、このことを思い出して駆け付けた……とかだったらいいな。
サムト
個人的に今回のラインナップで一番意外だったのがサムトです。アモンケット次元はボーラスによって完膚なきまでに荒らされ、わずかな生き残りが同じく唯一生き残った神である《熱烈の神ハゾレト》に率いられて砂漠へと脱出しました。サムトもその一人です。彼女は『破滅の刻』にてプレインズウォーカーとして覚醒したものの、故郷を離れてはいませんでした。過酷な環境で力を合わせて生き延びるのに精一杯だったと思うのですが、ボーラスに一矢報いたいという気持ちも間違いなくあるでしょうね。
■エルドラージ封印の3人組
君たちが揃って来るのか!!!
この3人組も、長い歴史をもって語られてきました。物語中では6000年、我々の現実世界でも「ウギン」の名が初めて出たのは12年前のセット『未来予知』になります。
ソリン・マルコフ、ナヒリ
ソリンとナヒリ。共に旧世代プレインズウォーカーの2人は、師弟のような父娘のような関係を築いてきました。いや本当ゼンディカーアートブックに「(ソリンはナヒリを)ほとんど娘のように思い」って書いてあるんですってば。闇の心ー!
ウギン・ソリン・ナヒリの3人は6000年前、エルドラージの巨人3体をゼンディカーに封じました。そしてその封印が弱まった際には再び集合する、という約束を交わしたのですが、いざその時になってみると誰も現れず、ナヒリは1人で対処します。ソリンを心配した彼女は単身イニストラードへ赴きますが、そこでソリンと口論となった末、彼が創造したばかりの《獄庫》に閉じ込められてしまったのでした。
それから長い時が流れ、《獄庫》がリリアナの思惑から破壊されたとき、ナヒリもまた解放されました。そして故郷ゼンディカーに赴くと、そこはエルドラージに蹂躙された状態。ナヒリはその復讐として、ソリンの故郷であるイニストラードへエムラクールを呼び寄せるのでした……という物語が複数のセットに渡って描かれました。最初の『ゼンディカー』(2009年10月)から『異界月』(2016年7月)まで、エルドラージ関連の物語はその長さと数たるや。
悲しくも2人は決裂し、決闘の果てにソリンはナヒリの技によって石の中に閉じ込められ、プレインズウォークも叶わないまま放置されるという結末でした。以来物語でも現実でも音沙汰はなく、私はソリンが干からびて死にやしないかと冗談半分、本気半分で心配でした(イニストラードの吸血鬼は1ヵ月ほど血を飲まないと死ぬため)。けれどともかく助けられたようで、彼らしくもなく口回りを荒々しく血に染めて戦っています。
で、この2人は和解できたのでしょうか?ゼンディカーは復興への道を歩んでいるでしょうから、ナヒリはそれを見て何か思うところがあったのかもしれません。また仲の良い2人を見たいぞ私は。
ウギン
そして貴方である。ボーラスよりも先に覚醒した、ドミナリア最古のプレインズウォーカー。タルキールの生まれという設定だったのだが……いや、ここで追及する話でもないな。後に彼はタルキール次元を魂の故郷とし、ドラゴンを頂点とするその世界の生態系に密接に関わってきました。タルキールブロックはウギンの生死をフラグとして分岐した歴史であり、『運命再編』にてウギンが死亡した未来が『タルキール覇王譚』、生存した未来(こちらが正史)が『タルキール龍紀伝』です。タイムトラベルをして未来を変える、熱い物語がありました。詳しくは第29・30・32・34回でじっくりと語りましたので是非そちらも!
ところで、ウギンのステンドグラスの背景には2本の角が見えます。すぐに思い出すのはボーラスの瞑想領土。ウギンはかつてボーラスとここで戦い、精霊龍となって蘇りました。
けれどステンドグラスに見える角は、ボーラスの滑らかなそれでなくウギンのごつごつした形状。何でしょうねこれは。ボーラスとは同じ卵から産まれ、誰よりも深い因縁を持ち、壮絶な戦いを繰り広げた……ともあれボーラスとの戦いに決着がつくのであれば、ウギンを外すわけにはいかないのは確かです。
■ラヴニカ組
ここはラヴニカ出身の3人に絞るけどごめん!
ラル・ザレック
ラヴニカ出身プレインズウォーカーでも、最も早く(『破滅の刻』)からボーラスとの関係が判明していたのがラル。ボーラスの口から彼の名前が発せられた時の衝撃は私も忘れません。とはいえ、彼がボーラスと具体的にどのような関係なのかは未だ明かされていません。ラヴニカアートブックによればどうもボーラスに「借りがある」ようですが、それが一体どういうことなのかもわかっていません。
何にせよ、「地元愛」を体現するような彼が本気でボーラス側についていることはないと信じたいですよ。《千年嵐》の装置を開発・起動したのはラルですし、ありとあらゆる資料を見ても彼の項目に書いてあるのはラヴニカやイゼット団への愛着で、むしろボーラスとの繋がりがあるというのが信じられないくらいなのですから。
ヴラスカ
誰もが楽しみに待っていると思うんですよ、このラヴニカでヴラスカがジェイスに「船長」と呼ばれる日を。ヴラスカはボーラスのために動いていますが、それもジェイスから記憶を返してもらうまでのこと……というのはイクサランブロックの物語を追っていれば誰もが知っています。ヴラスカ本人もボーラスも決して知らない秘密。そう「ボーラスはジェイスがイクサラン次元に辿り着いたことを知らない」とは公式に明言されているので、そこは安心しています。
ドムリ・ラーデ
この3人のステンドグラスのうち、最も気になるのはドムリです。彼が手に持つ武器はどう見てもボーラスの角型、それも随分と出来がいいような。ドムリはボーラスの助言?を受けてギルドマスターの座を手にしたので、ボーラスのために戦っているのでしょうか?はたまたグルールらしく、そのへんの永遠衆を倒して手に入れた武器で戦っているのでしょうか?
そもそも、ボーラスと永遠衆がやって来ることをグルールがどう解釈するのかが気になっています。グルールの伝承にある黙示録、文明の終焉としてか。それとも文明も自然も構わずに破壊してしまう全ての敵としてか。ラヴニカを破壊し尽くすというのは、一見してはグルールの望むところなのでしょうが、その先に何が待っているのかがわからない現状では何とも言えません。
■久しぶりの面々
36人の中にはボーラスともゲートウォッチともラヴニカとも関係がなさそう、それどころかこれまでごくわずかしかバックストーリーが語られていなかったキャラクターもいました。
アショク
アショク!『テーロス』ブロックで少しだけ登場しながらもメインストーリーには特に関わらず、そしてダク・フェイデンのコミックにて敵役として出るもコミック自体の刊行が止まってしまい以来音沙汰なし、というどうにも不遇なプレインズウォーカーでした。
イケメンなダクを変顔にしているこの《強迫》は人気ですね。正体不明種族不明性別はアショク。カラデシュ時に外見の類似からアショクの種族は霊基体なのでは?とも噂されましたがそれも公式に否定されていました。ところで、ステンドグラスの背景には明らかにボーラスの角が見えますよね。それもアモンケットで見たものによく似ています。何かアモンケット次元に関係あるのでしょうか?まさかそこ出身とか?
ティボルト
ティボルト!実は、今年発売予定のコミックの表紙にいることが結構前から判明していました。
いやいやいや、チャンドラ何やられたふりしてるの。ではなくて。カードの弱さから逆に愛されているティボルトですが、実際彼のバックストーリーについて登場時に公表された以上のものはほとんどないというのが現状です。最後に公式情報があったのは2015年8月掲載の記事「プレインズウォーカー達の現状2015」、そこにも「所在は知れない」。けれどティボルトの嗜虐的な性格と半デビルという種族はラヴニカでもラクドス教団によく馴染みますよね。衣装も都会的ですし。
姜旸谷
姜旸谷!……読めない。英語表記はJiang Yanggu、「ジアン・ヤングー」かな? 2018年6月に発売された「Global Series: Jiang Yanggu & Mu Yanling」に収録されていたプレインズウォーカーです。まさかここから来るとは思いませんでした。ステンドグラスの右側に描かれた犬は彼の相棒である默武/Mowu。かわいくてかっこいい両面トークンもありますよ。
彼もこれまでの情報はわずかです。プレインズウォーカー・プロフィールによれば過去の記憶がなく、同じGlobal Seriesのプレインズウォーカーである沐燕灵/Mu Yanlingと共に旅をしているようです。そちらは出ないのね?
アーリン・コード
アーリン!狼男(女)らしく両面プレインズウォーカーとして『イニストラードを覆う影』に登場しました。聖戦士として人類の敵に立ち向かっていましたが、狼男(女)として覚醒してしまった非業のキャラクターです。そのため師匠からは破門されるも、天使が狂気に堕ちるにあたって再び戦いへと身を投じました。ジェイスやタミヨウら本筋には関わっていませんでしたが、『異界月』ストーリーの最終決戦の場となった首都スレイベンにて、アーリンかもしれない姿が確認されています。
Magic Story「聖トラフトと空駆る悪夢」より引用
2体の白毛に率いられた狼男の小さな群れが、完全に堕落した群れ仲間へと切り込んでいた。
……2体の白毛。ウルリッチが白いのはその髪くらいですが、この2人かもしれないと当時から思っています。
3. メンバーの顔ぶれ・新キャラクター編
ステンドグラスの36人にはもちろん新しい顔もありました。確かに多元宇宙全体に合図が届いたのであれば、これまで出たことのないプレインズウォーカーだって現れないわけがないですよね。馴染みのない姿は四つ、けれどそのうち2人は名前とある程度の背景が判明しています。
Teyo Verada
「テヨ・ヴェラーダ」?とりあえずそう表記します。4月発売の小説「Ravnica」表紙絵にいたので、覚えはあったという人もいるでしょう。小説あらすじも掲載されましたので、そのまま訳します。
故郷の世界に吹き荒れる金剛嵐から人々を守るべく、テヨ・ヴェラーダ/Teyo Veradaは何よりも盾魔道士であろうとした。初めて真の嵐に遭遇して生き埋めとなった際、この若き魔道士の人生は終わりかけ、そして真に始まったのだった。一瞬にして、未知の力が彼を故郷から運び去り、石とガラスと驚異の世界へ――ラヴニカへと連れてきた。
テヨはプレインズウォーカーであり、この広大な都市世界に呼ばれてやって来た者の一人だった――全員が、古龍ニコル・ボーラスによって誘い込まれたのだった。ボーラスはラヴニカを包囲している。その目的は究極の報奨、神のごときかつての力。その無比の魔法と止まることのない軍勢は、この都市を完全な廃墟に変えようとしている。
盾魔道士/Shieldmage。防御特化のプレインズウォーカーでしょうか?衣装から出身はタルキールかな、と個人的に思っていましたが今のところわかりませんね。このあらすじでもうひとつ気になるのは、「全員がニコル・ボーラスによって誘い込まれた」という記述。ニヴ=ミゼットが多くのプレインズウォーカーを呼び出した、とは書きましたが、プレインズウォーカーをひとつの次元に誘い込むことこそがボーラスの策略だった?ボーラスはニヴ=ミゼットの動きを読んで利用したのでしょうか、それとも……。
Davriel Cane
「ダヴリール・ケイン」?とりあえずそう表記します。記事が発表されるなり「ダースベイダーみたいなの」と言われていました。こちらも登場はかなり新しく、2018年12月公開の小説「Children of the Nameless」(ページ中央、「STORY ARCHIVE」から行けます)。人間の壮年男性であり、悪魔主義者です。表紙絵では仮面を外していますが、ステンドグラスの姿は小説公開時に掲載されていた画像によく似ており(公式サイトで発見できず)、また話中でも彼が公共の場に出る時の装束に一致しています。
小説「Children of the Nameless」P.24-25より訳
彼女は漆黒の外套を取り出した。ぼろぼろの裾は見間違えようもない――まるで苛む幽霊のような。黄金の仮面は悪魔的な形状で、巨大な黒い瞳に不吉な輪郭、そして皮膚を剥がされた顎のような不気味な口。それはこの男が公共の場に出る際に身にまとうものだった。
ダヴリールの出身次元は不明ですが、イニストラード次元のケッシグ州に行きつくと吸血鬼の荘園主を殺害してその座を奪い、けれどごく静かに隠遁生活をしていました。ですがあるとき、彼の偽者らしき存在が支配下の村を襲撃したことで、唯一生き残った少女と共に解決へと立ち上がります。そして現れる「名もなき天使」の気配……結構長い物語ですので、いずれきちんと紹介する機会があると良いな。
新規プレインズウォーカー?
赤毛に杖、そして笠の人。私も心当たりがありません。過去にどこかで名前だけ出ているもしくは存在だけ語られているプレインズウォーカー、という可能性は一応ありますが。
4. 全体を見て気になること
ほかにも現スタンダードで活躍中のビビアンや、『イクサラン』ブロックで仲良く喧嘩していた記憶も新しいアングラス&ファートリなどまだまだ取り上げたいのですが、36人は大変!この先なるべくどうにかしますので今は許して。それはともかくステンドグラスからは、どんな戦いが繰り広げられるのか少しわかることがあります。
■あちこちに永遠衆の姿が見える
ステンドグラスのいくつかに、青い肌の人型生物が見えます。ラヴニカなのでヴィダルケンかと一瞬思いますが、これは永遠衆ですね。
永遠衆はアモンケット次元にて登場しました。5柱の神々の試練を乗り越えた英雄が、その能力を保持したままゾンビとして蘇った姿です。ボーラスはこの軍隊を、60年をかけて準備していました。
Magic Story「妨害工作」より引用
「そしてあいつはアモンケットへ行って死体工場を空にした。死んだ次元から出られないゾンビで何をしようとしているんだ?」
ジェイスは青ざめた。ヴラスカが両目を覗き込むと、彼はそれを閉じてうめいた。「あれはもうただの屍じゃないんです。ラゾテプ鉱石で処理されている。永遠衆の有機組織を覆う鉱物で――」
「――次元間の移送に耐えられるように」 ヴラスカはかぶりを振った。「多元宇宙に送り出す軍隊を作ったってのか。そして不滅の太陽は、一度そこに来たなら誰も逃げられないようにする。ジェイス、あのドラゴンが結局何を狙っているのか、わかることはあるか?」
(略)
「あの軍を放とうとしてる。私らの故郷へ。私の力を借りて」
『イクサランの相克』の物語にてジェイスとヴラスカが明かしたように、ボーラスは永遠衆の軍隊をラヴニカへ送り込んだようです。その手段は……と思い当たるプレインズウォーカーが、あれ?
■テゼレットがいない
そう、多くの人が気付いているようにいない。ボーラスの手下としてカラデシュ次元で暗躍し、大修復で失われた「次元を越えて物体を輸送する」技術を手に入れたテゼレットが、いない。永遠衆の輸送にはテゼレットが不可欠であるはずなのに?いやステンドグラスにいないだけで実はいるよ、というオチも十分ありえますがどうも引っかかります。
《機械と共に》フレイバーテキスト
「次元橋を私の中へと移植したとき、プレインズウォーカーの灯が私の身体を越えて燃え上がるのを感じたのだ。多元宇宙は私の遊び道具だった。あれは……最高の気分だった。」――テゼレット
テゼレットはボーラスの忠実な手下ですが、隷属させられている状況を決して喜んではいません。隙あらば出し抜こうと狙っているのは確かであり、「次元橋」という他にない力を手に入れたテゼレットが自分のために何もしないというのは考えにくい……とは思います。
エルドラージが対処され、ボーラスとはこれから最終決戦。多元宇宙に残る巨悪はと考えると、かつてテゼレットが入り込んでいたのは……いや、これ以上は個人的な妄想に過ぎないのでやめておきましょう。
今はそれよりも、目前に迫った『灯争大戦』を。
書籍「The Art of Magic: The Gathering – Ravnica」P.226より訳
ラルはかろうじて合図を起動し、多元宇宙の全プレインズウォーカーへとボーラスとの戦いを呼びかけた。だが遅すぎた……ボーラスが襲来したのである。
(終)