Translated by Ryosuke Igarashi
(掲載日 2019/06/11)
朝礼
『モダンホライゾン』がやってくる!モダンに新鮮さを加えつつも、面白いリミテッド環境を提供しようとデザインされたセットだ。後者がどうかはまだわからないが、構築でも使われそうなイカしたカードが何枚もあるね。
そんな新セットの中でもお気に入りのカードを挙げ、そして(個人的に)最もモダンで活躍しそうなカード、サイクルを取り上げていこうと思う。おまけに、過大評価されていると思っている、避けた方がいいカードも見つけていこうじゃないか。御託はもういいだろう、レビューの時間だ!
『モダンホライゾン』レビュー
《地平線の梢》サイクル
さて、土地から始めていこうか。《地平線の梢》は非常に強力な土地で、序盤はマナを出しつつ、終盤では他にマナを出す手段があればキャントリップにもなる。こういった強力な選択肢はどの色にもあるのが公平なように思えるし、このサイクルがあってよかったよ。
アグロデッキはライフの減少をそこまで気に留めないものだから、最大限にこのサイクルを活用できることだろう。バーンなんかは《灼陽大峡谷》を採用することで息切れを防げるし、5色人間も《地平線の梢》を5枚以上採用できるようになるんだ。
《力》サイクル
モダンで《意志の力》だって!?!?!?……ああ、実質《意志の力》だ。《否定の力》はかなり素敵なデザインだね。《意志の力》の問題点は、1~2ターンキルを仕掛けてくるオールインコンボデッキへの最大の対策である一方、コンボデッキが自身のコンボを守るためにも使えてしまう点にある。《否定の力》は相手のターンにしかピッチスペルとして使えないため、コンボデッキではうまく使えないんだ。インスタントタイミングで仕掛けることができるコンボ、となるとまた変わってくるけどね。素晴らしいリメイクだよ。
それに、このサイクルの形にも気に入っている。モダンで一番困るのはちゃんとマジックを遊ぶことなく、2~3ターン目に死んでしまうことだ。そういった状況が少なくなるようなカードは大歓迎だね!《活性の力》もいくらか使われることになるだろう。相手のアーティファクトやエンチャントに非常に効果的なうえ、対象を2つまで破壊できるため、他の《力》サイクルと違ってカードアドバンテージを失うことはない!
《レンと六番》
《悪鬼の血脈、ティボルト》はおそらく、マジックの歴史の中でも最低のプレインズウォーカーだった……少なくとも競技イベントではね。間違いなく、みんなも新たな2マナのプレインズウォーカーを見たとき、哀れな彼のことを真っ先に思い浮かべたことだろう。しかし今回は……非常に強力なプレインズウォーカーだ!
たった2マナで、場に出れば忠誠度4になりつつ土地を1枚回収できるプレインズウォーカー、こいつはすごいよ!ほとんど全てのデッキが、そしておそらく赤、緑の2色を使うデッキは間違いなく、フェッチランドを多く採用していることだろう。2ターン目にこのカードを場に出せれば、墓地に土地がある確率は相当高いんじゃないかな。
加えて、モダンには《貴族の教主》や《スレイベンの守護者、サリア》など、[-1]能力で除去することのできる小粒なクリーチャーがたくさんいる。既に《レンと六番》に夢中だ!
《甦る死滅都市、ホガーク》
なんて魅力的なカードなんだ……。「0マナでトランプルを持つ8/8のクリーチャー」というのはすさまじいものだから、このカードを活かせる構築ができたなら、間違いなく相応の価値を得られるだろう。ドレッジにそこまで自由枠があるとは思えないけれど、少なくとも1枚は入れてみてもいいんじゃないかな。2ターン目に0マナで8/8を出すのが嫌いな人なんていないだろう?ただ、複数枚入れてしまうと、そのスロットのために洗練されたリストを崩してしまうことになる。一貫性に多少ゆがみが出てしまうだろうね。
このデカブツのもう一つの職場としては、自分の山札を削っていくような《復讐蔦》コンボが考えられる。間違いなく注目しておきたいカードだ。
《イーオスのレインジャー長》
そこまでゲームを変えるようなカードではないが、5色人間の3マナ域にはすでに《先頭に立つもの、アナフェンザ》や《民兵のラッパ手》も採用されている。この小さな《イーオスのレインジャー》も、1枚だけ採用しておくにはいいんじゃないかと思っているよ。
《狼狽の嵐》
レガシーでも安定のカードがモダンに登場だ!……正直なところ、私はみんなほど《狼狽の嵐》に期待していない。おそらくストームデッキに対して使うのが一番だが、モダンではそこまでうまくいくわけじゃあない。ストームに勝つには、序盤から妨害していかないといけないんだ。相手がコンボを始め、とどめの《ぶどう弾》を《狼狽の嵐》するって?《ぶどう弾》を《差し戻し》されてもう一度唱えられるだけだね。
大体は《呪文貫き》みたいなもんだろうけど、知ってるかい?モダンでは長い間《呪文貫き》がリーガルだけど、そこまで使われてこなかったんだ。
《厚鱗化》
みんながこのカードにも期待しているのは知っているものの、私はそうは思わないね。間違いなく感染で輝くカードだが、《ギタクシア派の調査》の禁止以降、もはやいいデッキだとは思えない。ブン回りがあるデッキなのはご存知の通りだし、ロンドンマリガンはそういった機会を増やすだろうけど、直線的なオールインデッキを使いたいなら、間違いなく他にもっと良い選択肢がある。感染以外で使われることはないだろうね。
《溜め込み屋のアウフ》
緑の《石のような静寂》だ!親和や《硬化した鱗》の使い手には衝撃的だったんじゃないだろうか。アーティファクトデッキにとって最も厳しいサイドカードが、他の色でも使えるようになったんだ。しかも《大いなる創造者、カーン》の登場からさほど経ってもいない。アーティファクト使いは……ご愁傷様。
《モックス・タンタライト》
ただの劣化《睡蓮の花》だ。左上のカード名には「モックス」って書いてあるから、コミュニティーではなかなか盛り上がってるようだけど……《睡蓮の花》ではなくこっちをわざわざ採用する理由はないように思えるね。フェアデッキにおいては《不屈の自然》をわざわざ「待機」3したくはないし、コンボデッキにおいては《睡蓮の花》が全ての点において優れている。
《最高工匠卿、ウルザ》
この能力にしては、そしてモダンにおいては非常に重いものの、噛み合うデッキでは素晴らしい働きを見せてくれる。《練達飛行機械職人、サイ》や軽いアーティファクトとの組み合わせは驚異的だし、《飛行機械の鋳造所》と《弱者の剣》コンボとの組み合わせも素晴らしい。大当たりかハズレになるカードだろうけど、使われるときはまさにデッキの核となるだろうね。
《永劫のこだま》
こんなところに《覆いを割く者、ナーセット》の親友が!モダンで使われるかは分からないが、より古いフォーマットをぶち壊すかもしれない。モダンでさえ、今や《覆いを割く者、ナーセット》と《テフェリーの細工箱》のコンボはそこまで珍しいわけではないから、もしかしたら《永劫のこだま》を入れるスロットもできるかもしれない……神のみぞ知るところだね。
終礼
色々考慮すると、『モダンホライゾン』にはかなり複雑な心境だね。強力なカードも多少あるし、見出されるのを待っている隠れたカードも何枚かあることだろう。しかし、モダンへ直接カードを追加することに焦点をおいたセットなのだから、もう少し期待していたところはあるね。もちろん、実際に使ったことはないわけだし、カードパワーや既存のカードとのシナジーを過小評価している恐れもあるから、間違いなく見逃しているカードもあるだろう。しかし、モダンホライゾンに期待するところを概観できたのではないだろうか。
さて、私はドラフトでもするかな。宣伝していた通りの、面白いリミテッド環境を強く願っているよ!
また次回の講義で会おう。