Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/09/26)
(編注: この記事は『エルドレインの王権』全カードリストが公開される前に書かれたものです。)
朝礼
みなさんおはよう。世間は新カードの話題でもちきりだ。だからこそ、既存のカードの存在は忘れ去られやすい!本日の講義では、ローテーション後もスタンダードに残り、新環境に大きな影響を与えるであろうカードを取り扱う。記事の執筆時点では全カードリストが公開されていないが、新エキスパンションの大まかな全体像はわかっているし、いくらか予想を立てることもできる。
ここしばらくは「スタンダード2020」に時間を費やしてきた。MTGアリーナで行われていたこのイベントは、『エルドレインの王権』を抜きにしたローテーション後のスタンダードを遊ぶことができ、既存のカードプールの感触をつかめるようになっていた。本日は、このイベントを通じて私が感じたことをみなさんにシェアしていこう!
ローテーション後に期待のカードランキング
10位:《漆黒軍の騎士》
ローテーション前から一定の地位を占めていたカードであり、これからに期待のカードとは言えないかもしれない。しかし、ここで《漆黒軍の騎士》に言及するのは別の理由があるからなのだ。
オルゾフ吸血鬼は数週間前に環境を席巻していたデッキであり、《漆黒軍の騎士》がそこでポテンシャルを遺憾なく発揮していたことはご存知だろう。しかし、ローテーション後は『イクサラン』ブロックが使えなくなり、吸血鬼はほぼ構築不可能になる。《傲慢な血王、ソリン》はローテーションにおける最大の敗者だろう。
だが肝心なのはここからだ。《漆黒軍の騎士》はその名が示す通り、騎士でもある!なぜ重要なのかというと、『エルドレインの王権』では騎士という部族のサポートが豊富に存在しているからだ。騎士は新たな吸血鬼といっても良いだろう!
すでに判明しているだけでも騎士には優秀なカードが揃っているし、全カードリストが発表されるころにはさらに増えているかもしれない!たとえば、《恋に落ちた剣士》、《鼓舞する古参》、《忠誠の円環》といった注目のカードがある。新セットが発売されたらこの新たなアーキタイプを試すのが楽しみで仕方がない!しかも3色のアグロデッキをサポートする優れた土地 ー 《試合場》まで収録されているのだ!
9位:《抽象からの抽出》
《時を越えた探索》を覚えているだろうか?《抽象からの抽出》はかつての類似カードほど異常な強さを持っていないが、それがスタンダードやモダンで禁止されていない理由にもなっている。新たな《時を越えた探索》は非常にバランスが良いのだ。カードパワーは依然として十分に備わっていて、なおかつマナコストも適正である。
《アズカンタの探索》を失えば、青のデッキはカードアドバンテージを確保したり、ライブラリーを掘り進めたりする優秀なカードが必要になるだろう。《覆いを割く者、ナーセット》も十分な質を持っているが、彼女だけでは事足りないと思われる。
8位:ライブラリーアウトのパッケージ(《夢を引き裂く者、アショク》、《神秘を操る者、ジェイス》)
新セットにはライブラリーアウトデッキを強化する良いカードが収録されている!相手の墓地を参照するテーマが存在しているのだ。《ヴァントレスのガーゴイル》、《空想の書物》、《湖での水難》といった呪文が新しいアーキタイプを現実的にする可能性はあるだろう!《神秘を操る者、ジェイス》はライブラリーアウトデッキにとても噛み合っていて、カードアドバンテージをもたらすだけでなく、たった一人で勝利まで持っていくことができる。
《夢を引き裂く者、アショク》は少し異なり、能力の解決とともに相手の墓地を追放してしまう。したがって、相手の墓地を参照するカードとは相性が悪い。ただ、単体で多くの山札を削れる力があるのだ。《夢を引き裂く者、アショク》を採用するかは目指すデッキの方向性次第であろう。相手の山札を削りきって勝つことが主たるプランであれば、この3マナのプレインズウォーカーは素晴らしいカードとなるはずだ。対して、《ヴァントレスのガーゴイル》で相手のライフを削るプランに注力するならば、《夢を引き裂く者、アショク》はサイドボード要員にした方が良いかもしれない。
お忘れかもしれないが、《水没した秘密》や《永遠神の投入》がローテーション後も使用できるため、ライブラリーアウトデッキを構築するツールは十二分に揃っている。本当の問題は、ライブラリーアウトデッキが実際に完成度の高いデッキになるかどうかだ。この問題に答える方法はひとつしかない。それは、『エルドレインの王権』が発売されたら実際に試すことだ!私は絶対に試してみるぞ!
7位:《発展/発破》
終盤に強力になるフィニッシャーが抱える最大の問題点は、序盤に腐ってしまうことだ。《発展/発破》はその弱点を見事にカバーしている。マナコストが重い呪文を引きすぎてしまった場合は、何らかの呪文をコピーし、序盤から使い道を見出すことができるのだ。それは相手の火力呪文をコピーしてクリーチャーを除去することかもしれないし、《薬術師の眼識》をコピーしてたったの2マナで2ドローすることかもしれない。選択肢は無数にある!
以前はコントロールの王道といえばエスパーであったが、「神殿」が4枚しか採用できないことで弱体化するだろう。そこでチャンスが巡ってくるかもしれないのが(「神殿」を8枚採用できる)ジェスカイコントロールだ!そして《発破》はジェスカイコントロールに非常に噛み合っている!
前環境に存在したティムール《荒野の再生》はローテーション後も健在だ。「スタンダード2020」で試してみたが、そのデッキの動きは満足のいくものであった。このデッキの主な勝ち筋は、《パルン、ニヴ=ミゼット》に次いでイゼットの分割カードであることは明白である。
6位:青黒コントロールのパッケージ(《永遠神ケフネト》、《戦慄衆の将軍、リリアナ》、《煤の儀式》)
青黒コントロールは『灯争大戦』の発売以降で私が愛用してきたデッキだ。採用されていた大半のカードは『灯争大戦』のものであるため、コンセプトはローテーション後も大きく変わることはない。しかも、『エルドレインの王権』は新たなカードを青黒コントロールにもたらす!ライブラリーアウトの項で言及したように、青黒を復権に導く驚異的なカードが収録されているのだ!
《湖での水難》は終盤になると非常に軽いマナコストで打ち消しや除去として機能するカードであり、スタンダードでは貴重なものだ。《空想の書物》は《覆いを割く者、ナーセット》と抜群の相性であり、遅いデッキに対しては単体で勝利条件になる!青黒コントロールが守備的な立ち回りをするとはいえ、《ヴァントレスのガーゴイル》は飛行持ちの大きな壁として有効だ。時間をたっぷりと稼ぎ、《覆いを割く者、ナーセット》などのプレインズウォーカーを守る。
以前に私はMPLでエスパーではなく青黒を選択したが、この判断は議論の余地があるものだった。エスパーには3色を支えるマナベースがあり、《時を解す者、テフェリー》には異常な強さがあるからだ。しかし今となっては、エスパーは偉大なる二色土地を失ったため、2色への回帰を検討すべきである!青黒のマナベースは《水没した地下墓地》を《陰鬱な僻地》と入れ替えるだけで十分に機能するだろう。
- 2019/05/28
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5位:《乱動の座、オムナス》
ローテーション前のスタンダードにおいて、エレメンタルは重要な立ち位置にいない。しかしローテーション後というのは、ゲームの速度や全体のデッキパワーが若干落ちるものだ。つまり、エレメンタルが頭角を現すときが巡ってきたといえる。一般的なデッキはローテーションでパーツを失うが、エレメンタルは『基本セット2020』でフィーチャーされたテーマであるため、ローテーション落ちするカードは一枚もない。
世間に忘れ去られているものの、《乱動の座、オムナス》の次に好きなカードがある。それは《灯の分身》だ。《乱動の座、オムナス》をコピーすれば、戦場に出た際の能力や、その後に土地をセットした際の能力から莫大なアドバンテージを得ることができる。クリーチャーをサーチできる《新生化》を採用することで、このコンボの達成率は飛躍的に高まる。しかも《発現する浅瀬》や《雲族の予見者》といったクリーチャーを生け贄に捧げれば、アドバンテージを損なうことはない。エレメンタルを試してみたいという人のために、私の最新のリストをご紹介しよう。「スタンダード2020」をやり込むのに使用したものであり、勝率は75%を超えていた。
1 《島》
4 《繁殖池》
4 《蒸気孔》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《神秘の神殿》
3 《天啓の神殿》
1 《茨森の滝》
-土地 (24)- 4 《枝葉族のドルイド》
4 《楽園のドルイド》
4 《雲族の予見者》
4 《発現する浅瀬》
4 《乱動の座、オムナス》
2 《駆け回る物焦がし》
2 《灯の分身》
1 《炎の騎兵》
1 《茨の騎兵》
-クリーチャー (26)-
4位:《戦慄の存在》
世の中のプレイヤーは2つに分けることができる。ひとつは黒単を愛する者。もうひとつはそれを嫌う者だ 。私は前者である。だいぶ前の話ではあるが、《アスフォデルの灰色商人》がプロツアーの参加権利を与えてくれたからだ。
《戦慄の存在》だけでは黒単が返り咲くのは厳しいが、新エキスパンションで新規収録された能力 ー 「一徹」は(黒単を例にすれば)その呪文に支払われた黒マナの数を要求するものとなっている。現状では全カードリストが出ていないものの、《凶兆の果実》のようなカードがさらに存在しているかもしれない。そうでなくても、黒単が本物のデッキになるに当たって魅力的な選択肢がいくつか公開されている。
《悪ふざけの名人、ランクル》は極めて強力で、このカードを軸にしたデッキは容易に構築できるだろう。《残忍な騎士》は効率的な除去であり、カードアドバンテージを獲得する機会を与えてくれる。黒のクリーチャーと相性が良い《ロークスワインの元首、アヤーラ》もいる。3色デッキがマナベースに問題を抱えうる時代ならば、単色であることが大きなアドバンテージになる可能性がある。ましてや《魔女の小屋》や《ロークスワイン城》のような、特殊能力を持つ土地からお手軽にアドバンテージを得られる環境だ。黒単が本物のデッキになるとすれば、《戦慄の存在》は確実にその核になるだろう。
3位:緑単ストンピィのパッケージ(《生皮収集家》、《成長室の守護者》、《アーク弓のレインジャー、ビビアン》)
《ラノワールのエルフ》を失ったのは痛手だが、やむを得ない。1マナのマナ加速はスタンダードには適切ではないのだ。ローテーション後は、マナ加速なしにマナカーブ通りに動くことに注力し、1ターン目は《生皮収集家》でスタートすることになるだろう。幸い、新セットには緑単で使用できる強力でサイズの大きいクリーチャーが何体か存在している。
特に際立っているのが《探索する獣》だ。4マナ4/4で速攻、警戒、回避能力付きだ。どうやってウィザーズはこのカードを思いついたのだろうか。さらには、プレイヤーにダメージを与えつつプレインズウォーカーに対応できるし、接死でダブルブロックを非常に難しくしている。《ギャレンブリグの領主、ヨルヴォ》はパワフルな3マナ域として《鉄葉のチャンピオン》と入れ替わるかもしれない。カードプールに残存するカードと組み合わせれば、質の高いストンピィを組み上げられるだろう。
2位:赤黒のパッケージ(《忘れられた神々の僧侶》、《戦慄衆の解体者》、《炎の侍祭、チャンドラ》)
赤黒アリストクラッツは「スタンダード2020」でお気に入りのデッキだ。自軍のクリーチャーを生け贄に捧げるという全体のテーマはローテーション後も変わらない。《炎の侍祭、チャンドラ》はコストなしで生け贄要員を供給し、2ターン目の《戦慄衆の解体者》はあっという間に手が付けられないサイズへと成長する。《忘れられた神々の僧侶》は、除去されなければゲームを決定づける力を持つ。
現状はこのアーキタイプを強化するカードが新セットには見当たらないが、もはや何の強化もいらないだろうとも思う。安定していて、デッキパワーが高く、脅威に多様性もある。赤黒とマルドゥ騎士がアグロのナンバーワンをかけて争うことになるかもしれない。
1位:《目覚めた猛火、チャンドラ》
そして第1位。今はかろうじて使われているぐらいだが、新環境に甚大な影響を及ぼすと考えている。
《目覚めた猛火、チャンドラ》はコントロールにとって完璧なフィニッシャーだ。打ち消されず、[+2]能力を使う前に除去されることもない。つまり一度でも[+2]能力を起動すれば、生き残ることだけを考えていれば勝つことができるのだ。また、1枚のカードで全体除去と単体除去を担う。したがって、フィニッシャーのために別の枠を割く必要がない。ゲームに幕を引くカードが別の役割も果たせるのは、コントロールにとって申し分がないことだ。
先に言及したように、エスパーが強固なマナベースを失ったことで、ジェスカイが復権する好機となる可能性がある。今のところ《目覚めた猛火、チャンドラ》がジェスカイの最高のフィニッシャーだろう。
このプレインズウォーカーが活躍しそうなデッキにはエレメンタルもあるが、エレメンタルで使用した方が一段と役割が増える。6マナで一方的な全体除去となり、エレメンタルの大軍が通る道を切り開くのだ。しかも初期忠誠度が6であり、1つ目の能力が忠誠度を[+2]するため、非常に対処しづらい。買えるうちに買っておこう!
終礼
私が思うトップ10のカードは以上となる。厳密には10枚を超えていたが、いくつかはパッケージとして解説させていただいた。ローテーションを最も味方につけられるカードやテーマを適切に理解してもらいたかったからだ。
ではまた次回の講義でお会いしよう。