Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2020/03/23)
朝礼
みなさん、おはよう。
今回の授業は特別な内容をご用意した。スゥルタイ《ウーロ》コントロールのデッキガイドだ!もしみなさんがスタンダードを遊ぶプレイヤーにスゥルタイの評価を尋ねれば、おそらく「良いデッキだ」という返答が返ってくるだろう。だが実際は赤単にこっぴどくやられるため、プレイアブルなデッキではない。
そこで私は3週間をかけ、有利なマッチアップの相性を変えることなく、赤単との相性を改善することに力を注いだ。先生はこの宿題を見事にやってのけたと思っている!本日はそのスゥルタイの詳細なデッキガイドをお届けしよう。きっとみなさんも使ってみたくなるはずだ!
今現在はプレミアイベントが少ない状況であり、競技シーンにおいてデッキの強さを証明することは難しい。そんななかでも、みなさんの興味をそそるような結果を出してきた。
デッキリスト
では、私のデッキリストをご覧いただこう。
3 《森》
1 《沼》
4 《繁殖池》
4 《草むした墓》
4 《湿った墓》
4 《寓話の小道》
2 《欺瞞の神殿》
2 《疾病の神殿》
-土地 (27)- 4 《ハイドロイド混成体》
4 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》
1 《半真実の神託者、アトリス》
1 《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》
2 《虐殺少女》
-クリーチャー (12)-
4 《暴君の嘲笑》
2 《霊気の疾風》
2 《成長のらせん》
3 《戦争の犠牲》
1 《伝承の収集者、タミヨウ》
1 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》
3 《世界を揺るがす者、ニッサ》
1 《戦慄衆の将軍、リリアナ》
-呪文 (21)-
デッキの構造
シミックカラーの定番カード
シミックカラーを含むデッキにおいては常に採用したいカード群だ。《世界を揺るがす者、ニッサ》が3枚しかないのは、《虐殺少女》を採用したためである(赤単対策)。
スゥルタイは《暴君の嘲笑》や《思考消去》といった2マナの妨害呪文が豊富にあり、バントなどと違って2ターン目に手すきになりづらい。そのため、《成長のらせん》を4枚も運用する理由はない。3ターン目以降になると急速に価値が下がる呪文であるし、2ターン目に手札破壊呪文とマナ加速呪文があるなら通常は前者を優先するからだ。
赤単対策
(サイドボートにも対策があるが、それはサイドボードガイドの項で詳しく解説する)
対アグロ戦で頼りにしている呪文たちだ。私が変更した点のなかでも、突出して良かったのは《暴君の嘲笑》を4枚にした点である。《壮大な破滅》2枚に加えて《暴君の嘲笑》を2枚採用しているリストもあれば、なんと1枚しか採用していないリストもある!私からすれば、4以外の数値は誤りだ。
《暴君の嘲笑》の汎用性を甘く見てはいけない。赤単やそのほかのアグロに対しては質もマナの軽さも優れた除去になるが、絶対に腐らないという点で《壮大な破滅》とは一線を画する!アゾリウスコントロール戦では除去に対応して《ハイドロイド混成体》をバウンスし、ラクドスサクリファイス戦においては《自然の怒りのタイタン、ウーロ》や《ハイドロイド混成体》が《初子さらい》で奪われるのを防ぐ。ジェスカイファイアーズ戦では「騎兵」や《帰還した王、ケンリス》をたったの2マナでバウンスしてくれるのだ。
メインデッキにおけるもうひとつの大きな変更点が《霊気の疾風》である。スゥルタイを調整し始めるときに目標として掲げたのは、ほかのマッチアップの相性を悪化させることなく、赤単とある程度戦えるようになることだった。《霊気の疾風》はこの目標に見事に適ったカードである。赤単対策として有用なだけでなく、ジェスカイファイアーズやシミックベースのランプデッキ(スゥルタイ、バント、ティムール)にも非常に有効なのだ。
また、《虐殺少女》は《鍛冶で鍛えられしアナックス》が戦場にいても盤面を一掃できる(《鍛冶で鍛えられしアナックス》を自分のターンに除去すると、トークンが生成された後に全体に-1/-1修正の効果が解決される)。
4マナ域
みなさんが最も違和感を覚える部分だろう。これらのカードは重複するのが好ましくなく、決して2枚引きたくない。しかし、それぞれが特異な効果を有しているため、スゥルタイのようにドロー呪文が多いデッキならば入れておく価値があるものでもある。
《ゴルガリの女王、ヴラスカ》は《パンくずの道標》や《幸運のクローバー》を対処するだけでなく、終盤戦にはドローをもたらし、奥義の存在をちらつかせる”放置できない”脅威となる。しかし最悪の場合、アグロ相手に多少のライフを回復する単体除去となってしまう(回復というのはヴラスカがプレイヤーの代わりにダメージを受けてくれるってことだ)。
《伝承の収集者、タミヨウ》は、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と抜群の相性を誇る。単体でもカードアドバンテージの供給源となる。
《半真実の神託者、アトリス》は《伝承の収集者、タミヨウ》を少々弱体化させた存在であるが、攻撃やブロックに回れる点で異なる。
アグロ戦で頼りになるサイズを持つのが《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》である。《夢さらい》に対する解答としては2番目に優れている(念のために言っておくと、1番の解答は《戦慄衆の将軍、リリアナ》)。
6マナ域
《戦争の犠牲》はこのデッキを使う理由だ。あらゆるミッドレンジに対して極めて強力である。ジェスカイファイアーズに対してこれほど有効な呪文は環境にないし、ティムールアドベンチャー、バントランプ、《魔女のかまど》デッキに対しても非常に効果的だ。《戦慄衆の将軍、リリアナ》は《夢さらい》への最善の解答でありながら、攻め手としても運用できる。
サイドボードガイド
赤単(互角/やや有利)
vs. 赤単
再三お伝えしているとおり、私が特に懸念していた相手であり、スゥルタイを優れたデッキ選択とするには赤単との相性改善が求められていた。そして今、私はこのマッチアップに自信を持っている。1ゲーム目は良くも悪くもないが、サイドボードは万全の準備を期している。《永遠神の投入》は《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を探し出し、その「脱出」コストを確保してくれる。墓地を肥やす対象は必ず自分にしよう。
相手のクリーチャーは間髪を入れずに除去し、不要なダメージはもらわないようにする。除去を使うタイミングは、攻撃クリーチャー指定後よりも戦闘開始前が良いだろう。そうすれば《エンバレスの宝剣》のマナコストを軽減させず、場合によっては唱えさせないこともできる。2ターン目に《暴君の嘲笑》と《霊気の疾風》の両方が選択肢にある場合、たいていは《暴君の嘲笑》から先に使った方が良い。《鍛冶で鍛えられしアナックス》や《朱地洞の族長、トーブラン》を対処するなら《霊気の疾風》の方が適しているからだ。
赤単のサイドボードには《初子さらい》が入っていることがある。一般的な選択肢ではないため、常に気をつける必要はないが、ケアすることに裏目がないならケアしない理由はない。たとえば、こちらのライフが5点、《ハイドロイド混成体》を巨大なサイズで唱えなくとも次のターンに致死量のダメージを与えられる状況。本当に《ハイドロイド混成体》を(X)=10で唱える必要があるか考えてみて欲しい。
ラクドスサクリファイス(有利)
vs. ラクドスサクリファイス
ラクドスサクリファイスは赤単よりも速度が遅いため、スゥルタイが得意とする終盤戦に持ち込みやすくなる。6マナの《戦争の犠牲》でさえも《魔女のかまど》を擁するこの相手には有効だ。
唯一の問題点(我々に最も有効なカード)は《初子さらい》である。赤単と違って75枚のなかに4枚入っていることがほぼ確定しているので、できることならケアしたプレイを心がけたい。準備を整える時間さえあれば、ケアできるツールが揃っているデッキだ。
最善の解答は間違いなく《暴君の嘲笑》である(《初子さらい》に対応して対象のクリーチャーをバウンスする)。《霊気の疾風》でもケアできる。《初子さらい》を対象にして遅延させても良いし、対象となった自分のクリーチャーを戻して実質的に打ち消しても良い。正しいプレイの定石を示すことはできないが、与えられた状況下で自分により有利に働くものはなんなのかを必ず考えるようにして欲しい。《ハイドロイド混成体》を唱える際は(X)の値を慎重に決めよう。このマッチアップでは必ずしも(X)の値が大きいほど良いというわけではない。
《波乱の悪魔》の能力はこちらのパーマネントが生け贄に捧げられたときでも誘発する(《寓話の小道》と《自然の怒りのタイタン、ウーロ》)。《ウーロ》が戦場に出たときの能力は適切な順序でスタックに積むように気をつけよう(ライフ回復を先に解決し、その後に生け贄に捧げる)。“3点のライフ回復”がスタックにある状態で《波乱の悪魔》の1点ダメージで負けたら目も当てられない。
ティムールアドベンチャー(互角/やや有利)
vs. ティムールアドベンチャー
甲乙つけがたいマッチアップだ。2ターン目《幸運のクローバー》から3ターン目《豆の木の巨人》と動かれると負けしてしまうことが多いが、序盤を難なく過ごせれば勝てるだろう。気をつけるべきカードはたったの3つ。《エッジウォールの亭主》《幸運のクローバー》《僻境への脱出》だ。そのほかのカードは大したことはない。
《エッジウォールの亭主》は大量の除去で対策し、《僻境への脱出》は手札破壊と《霊気の疾風》で対策できる。問題は《幸運のクローバー》だ。後手の場合、最初に《幸運のクローバー》を対処できるタイミングは4マナの《ゴルガリの女王、ヴラスカ》であるが、これではたいてい手遅れになる。先手ならば4枚採用された《思考消去》が対抗策に加わるため、対処はしやすくなる。
なんらかの理由で《幸運のクローバー》がしばらくの間展開されないなら、《戦争の犠牲》はそれを除去するために温存しておこう。長引くマッチアップであるから、いずれ相手は《幸運のクローバー》を引き込むはずだ。《戦争の犠牲》をクリーチャー除去と土地破壊のためだけに使わず、常に《幸運のクローバー》を対処できる準備を整えておくのだ!
こちらの切り札は《世界を揺るがす者、ニッサ》だ。相手は彼女に対応する手段が限られている。常在型能力のマナ加速でゲームを支配しやすくなるだけでなく、クリーチャー化された土地による攻めも同時に実現できる。
バントランプ(互角)
vs. バントランプ
ミラーマッチに近しい。デッキの核は互いに同じであり、相手は《エルズペス、死に打ち勝つ》《時を解す者、テフェリー》《夢さらい》のために白を足し、我々は《戦争の犠牲》と手札破壊のために黒を足している(重要なカードのみ取り上げた)。
一方のプレイヤーの引きが強く、相手を圧倒してしまうこともあるが、そのような場合はほとんどなす術がない。我々がすべきは自らの判断が重要となるゲームに焦点を当てることだ。通常、そういったゲームは非常に長引き、リソースがものを言う。《ハイドロイド混成体》を(X)=2で唱えるなど、アドバンテージ獲得の機会を失う行動は避けよう。長い目で見て、最もアドバンテージを稼ぐにはどうすれば良いのかを考えて欲しい。
《世界を揺るがす者、ニッサ》の[+1]能力は必ずしも土地をクリーチャー化する必要はない。《空の粉砕》(あるいは相手の《戦争の犠牲》)をケアする場合に重要な知識だ。
バントランプと一口に言っても構成はさまざまであるため、サイドボードとの入れ替えは柔軟に行う。《夢さらい》を確認したら、4枚目の《戦争の犠牲》を入れるよりも《戦慄衆の将軍、リリアナ》を残すことを検討する。《裏切りの工作員》を含むタイプには、《戦慄衆の将軍、リリアナ》を必ずサイドアウトしよう。
ジェスカイファイアーズ(非常に有利)
vs. ジェスカイファイアーズ
最も得意とする相手であり、もともとスゥルタイに惚れ込んだ理由である。適切な戦い方をご覧になりたい方には、MIQの3回戦の動画を観ることをおすすめする。このときは一般的な「騎兵」型ではなく、プレインズウォーカー型のものであったが、どちらの構成相手にも使えるプレイングが多く含まれている動画だ。
サイドボーディング後、相手は間違いなくアグロプランを選択してくる。《義賊》が投入されることもあるし、《軍勢の戦親分》の場合もある。両方を使う構成すら考えられるため、《暴君の嘲笑》は何枚か残して対応できるようにしておこう。《暴君の嘲笑》は「騎兵」や《帰還した王、ケンリス》をバウンスし、メインのゲームプランを遅延させる利点もある。
例外なくコントロールとして立ち回ろう。打ち消しや除去を構え、タイミングを見計らってフィニッシャー(たいていは《世界を揺るがす者、ニッサ》か《自然の怒りのタイタン、ウーロ》)を展開する。そして常にマナは立たせておこう。必要に迫られない限り、土地をすべてタップしてはいけない。キーカードは《戦争の犠牲》である。《創案の火》が戦場に出ていれば、相手はそれに介入できず、3対1交換や4対1交換ができることが多い。
ジャンドサクリファイス(有利)
vs. ジャンドサクリファイス
今現在、ラクドスカラーの方がランクマッチでは人気だ。とはいえ、ジャンドサクリファイスは今もなお侮れないデッキである。幸い、ラクドスサクリファイス戦よりも《戦争の犠牲》の有用性が飛躍的に高まる。ジャンドはラクドスよりも速度が遅く、除去しがいのあるエンチャント(《パンくずの道標》)を抱えているからだ。
念頭に置いておいて欲しいのは《フェイに呪われた王、コルヴォルド》への解答を常に用意しておくこと。《虐殺少女》は思うほど効果的ではない。相手のデッキにはタフネス1のクリーチャーが多いわけではないし、戦場にいたとしても対応して《魔女のかまど》で難なく生け贄に捧げられてしまう。
《フェイに呪われた王、コルヴォルド》との戦い方は少々難しい。特に《霊気の疾風》が絡む場合だ。相手がパーマネントを生け贄に捧げるカード(《金のガチョウ》《魔女のかまど》)を持っていない場合は《フェイに呪われた王、コルヴォルド》を着地させ、その誘発能力に対応して《霊気の疾風》を唱えた方が良い。相手はパーマネントを生け贄に捧げる必要があるが、ドローはできなくなる。
もし《金のガチョウ》か《魔女のかまど》を相手が展開しているなら、《フェイに呪われた王、コルヴォルド》がスタックにあるときに《霊気の疾風》を唱えるのが定石だ。着地させてしまうと《霊気の疾風》に対応してパーマネントを生け贄に捧げられ、複数のドローをされかねない。また、ドロー効果の誘発をさせたくないなら《暴君の嘲笑》で手札に戻すこともできる。
《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》は《金のガチョウ》を3マナ払うだけで除去できる。反面、《波乱の悪魔》の1点ダメージでサイズが縮小してしまうため、うっかり不利な戦闘をしないように注意が必要だ。
アゾリウスコントロール(やや不利/互角)
vs. アゾリウスコントロール
ほかのマッチアップの相性を改善する代償として、いくつか諦めなくてはならないことがあった。その最たるものがアゾリウスコントロールとの相性である。それでも《世界を揺るがす者、ニッサ》《伝承の収集者、タミヨウ》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》といった有効なカードはあるため、ライブラリーのおよそ半数に当たる強い部分を引ければあっさりと勝てることもある。
しかし、《暴君の嘲笑》や《霊気の疾風》といった価値の低いカードが多く、サイドボードにはその全てと入れ替わるだけのカードがない。赤単との相性を引き上げた紛れもない代償であるが、私はそれだけの価値があると思っている。《虐殺少女》を2ゲーム目以降も残しているのは入れ替わるものがないからであり、必ずしも有効ではないが5マナ4/4の威迫クリーチャーとして運用している。
《鎖を解かれしもの、ポルクラノス》は《夢さらい》への見事な解答であるが、アゾリウスコントロールもこのハイドラ対策を多く有している。早い段階でプレイしないようにしておこう。一般論ではあるが、《夢さらい》が着地した後に展開すると良いだろう。
ティムール再生(やや有利)
vs. ティムール再生
ジェスカイファイアーズ戦と似ている。完全にコントロールとして立ち回るのだ。序盤はタップアウトせず、しばらくしたら脅威への解答を唱えるマナを構えつつ、フィニッシャーを1体展開する。相手のデッキに致命的なカードは多くない。《発展/発破》、サイドボードからのアグロカードぐらいだろう(《義賊》《軍勢の戦親分》《夜群れの伏兵》など)。そのほかはキャントリップや打ち消しが中心であるため、致命的なカードだけ対応できれば、苦もなくゲームを進められるはずだ。
もちろん、2ターン目の《成長のらせん》から3ターン目に《荒野の再生》を置かれて莫大なマナアドバンテージを稼がれることがある。しかし、その頻度は決して高くないし、ましてやサイドボーディング後ならこちらも妨害呪文が増えている。
終礼
これでスゥルタイ・ウーロ・コントロールの全貌を明かしたことになる。このデッキは素晴らしいし、ミッドレンジのようなプレイスタイルが好きな人にはおすすめだ!なにか疑問点がある生徒はTwitterまで聞きにくるように。その疑問に全力でお答えしよう!
それではまた次回の講義で。