バントヨーリオンコントロール ~デッキガイド~

Piotr Glogowski

Piotr Glogowski

Translated by Nobukazu Kato

原文はこちら
(掲載日 2020/4/30)

はじまり – 4色ヨーリオンファイアーズ

先週末、私はバントヨーリオンを使い、マジックフェスト・オンラインのウィークリーチャンピオンシップのトップ4に入賞しました。

“バントグッドスタッフ”は『イコリア:巨獣の棲処』の発売前から非常に強力なアーキタイプでした。ただ、新セット発売から数日間は強化が目に見えて明らかだったジェスカイファイアーズやサクリファイスデッキにプレイヤーたちの注目が集まっていたため、このアーキタイプが話題にあがることはあまりありませんでした。そのようななか、マジックフェスト・オンラインで使用するデッキを探していた私は、ある時に姿を現した4色ヨーリオンファイアーズの調整をしてみようと思い立ちました。

4色型はなかなか強いという印象を受けました。その強さの大部分は、《創案の火》《空を放浪するもの、ヨーリオン》のシナジーにあります。《創案の火》が戦場にある状態でターンを迎え、その効果で《空を放浪するもの、ヨーリオン》を2枚目の呪文として唱えると、《創案の火》を一時的に追放したことにより、残ったマナを使って好きなように呪文を唱えられるようになるのです。

デッキの核となっているこのシナジーに触れ、私は考えるようになりました。《創案の火》というカードについて。そして、《創案の火》を利用しようとしたデッキがことごとく失墜する一方で、なぜジェスカイファイアーズだけは環境のトップデッキとして結果を残し続けられるのかを。

創案の火

《創案の火》が非常に強力であることは明白です。その強さの源は、実質的に追加のマナを生成している点にあります。この強みが発揮されるのは、《創案の火》で唱える呪文の合計マナコストが土地の数よりもはるかに大きいときです。もし《創案の火》を理想通りの4ターン目に設置したとすると、そのカードパワーが最も跳ね上がるのは5ターン目になります。

炎の騎兵帰還した王、ケンリス巨智、ケルーガ

実質10マナ分を余すことなく使い、《創案の火》を徹底的に利用しようとするのがジェスカイファイアーズです。《巨智、ケルーガ》が加わったことを一因として、ジェスカイファイアーズは《風の騎兵》などの追加のカードアドバンテージ源を必要としなくなり、即座に大きなインパクトを与えるカードだけに焦点を当てるようになってきています。

確かにジェスカイファイアーズは長期戦を戦う力がありますが、勝つのは多くの場合中盤戦です。相手はまだ手札にカードを抱えているものの、ジェスカイファイアーズの猛烈なターンの動きについていけないという展開にするのです。ゲームが長引き、相手が土地を伸ばして1ターン内に呪文を2枚唱えらえるようになると、ジェスカイファイアーズの立場は危うくなっていきます。

マジックの記事における”テンポ”という言葉の意味を本当に理解している人は誰もいませんが、私からすればこの用語はジェスカイファイアーズのゲームプランに凝縮されていると思います。わずかながらの妨害を駆使して発展段階の序盤を生き抜き、4~6ターン目に急上昇するデッキパワーで相手を叩き、それらのターンで展開した脅威を全て対処されないことを祈るのです。

空を放浪するもの、ヨーリオン時を解す者、テフェリーエルズペス、死に打ち勝つ創案の火

ではここで4色ヨーリオンファイアーズの視点から考えてみましょう。ゲームが長引くと、ランプ呪文を採用していることから、いずれは《創案の火》がなくとも2枚の呪文を唱えられるほどに土地が並ぶことになるでしょう。このデッキはコントロールデッキであり、ジェスカイファイアーズに比べればインパクトが低く、マナコストの軽い呪文が多くなっており、自然とゲームは長引いていきます。

となれば、《創案の火》が足手まといになる段階までもつれ込むのは避けられません。この段階まで至ってしまうと、《創案の火》を毎ターン「明滅」させて3アクション以上をとるには《空を放浪するもの、ヨーリオン》《時を解す者、テフェリー》《エルズペス、死に打ち勝つ》のループに大きく依存することになります。それで万事うまくいけば良いですが、この動きは妨害に脆く、特に相手の《エルズペス、死に打ち勝つ》《空を放浪するもの、ヨーリオン》を追放されるとループが途切れてしまい、《創案の火》が戦場に残ったまま鈍い動きをとることになります。

バントヨーリオンコントロールへ

とはいえ、全体的に見れば4色ヨーリオンファイアーズは気に入っていました。ただこのデッキに《創案の火》が合っていないと思っただけです。《創案の火》を不採用にすれば1色減らしてデッキを再構築できるようになるため、その不採用の決断は簡単でした。

《創案の火》を使おうという気はなくなりましたが、「相棒」としての《空を放浪するもの、ヨーリオン》は極めて強力で、このようなタイプのデッキでは採用するかどうかを悩む必要すらないと思います。80枚という枠を埋めるために四苦八苦しながら弱いカードを採用することは全くありません。《空を放浪するもの、ヨーリオン》をスタンダードのメインデッキに入れようという気はありませんが、「相棒」としてならばデッキ内に採用した「明滅」と相性の良いカードたちの価値を高めます。それらとシナジーを形成するカードが毎ゲーム使用できるからです。同様に、《エルズペス、死に打ち勝つ》を引き込めれば、それを好きなときに「明滅」できることを確約してくれます。大きく強化された《火炎舌のカヴー》みたいですね。

世界を揺るがす者、ニッサ夢さらいハイドロイド混成体

当初は、『イコリア:巨獣の棲処』の発売前からバントの主力であったカードたち – 《世界を揺るがす者、ニッサ》《夢さらい》《ハイドロイド混成体》を使いながら、《中和》《サメ台風》といった試してみたい新カードたちを組み合わせた構築に挑戦していました。ただ、調整をし始めてすぐにわかったのは、既存の戦力と新戦力が全く異なるアプローチをとるカードだということです。

一方は、毎ターンタップアウトしながらソーサリータイミングでマナコストの重いカードを展開していくバントヨーリオンランプ。そしてもう一方は(ランプ型が採用するランプ呪文がとても効率の良いものであることから)同様のランプ呪文を採用し、タップアウトする機会も多いものの、特にサイドボード後にドロー・ゴー戦術も巧みに操れるようになるバントヨーリオンコントロール。

中和

そのドロー・ゴー戦術を可能にしているのが《中和》です。現在のスタンダードでは、高マナ域の呪文を複数採用しているデッキが多く、アグロはほとんど使われていない状態にあります。《取り消し》はそのような環境においては非常に強力なカードです。打ち消し呪文に比重を置いたデッキが活躍しない理由は、言うまでもなく《時を解す者、テフェリー》にあります。今日のスタンダード環境を形作っているカードを問われれば、《時を解す者、テフェリー》こそが単体で最も影響を与えているカードではないでしょうか。

《中和》は打ち消し呪文でありながら「サイクリング」が付属しているため、相手が《時を解す者、テフェリー》を着地させたとしても完全に腐ることはありません。《時を解す者、テフェリー》の常在型能力があるなかでも《霊気の疾風》《中和》《サメ台風》は効果的であるため、このプレインズウォーカーをほぼ無視することができるのです。

2マナの「サイクリング」はやや重く、打ち消し呪文が頼もしい終盤戦になれば当然打ち消し呪文を「サイクリング」しようとは思いませんので、実際に「サイクリング」するのはごくごく限られた状況だけですが、《時を解す者、テフェリー》がいる世界では「サイクリング」という選択肢を持っておく価値は、《吸収》のライフ回復や《悪意ある妨害》の「諜報1」よりも明らかに上だと思います。

サメ台風

《サメ台風》も感銘を受けたカードの1つです。打ち消されない脅威であり、マナ加速先のカードとしても使え、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の墓地コストにもなり、構えていた打ち消し呪文を使わなかったときの代替のプレイとなる。さらに、自分の《時を解す者、テフェリー》の常在型能力は上手く味方につけながら、相手のそれは無視できるという性質を持っています。《サメ台風》の役割はこれほどにも多いのです。

ウィークリーチャンピオンシップからアップデートしたデッキリスト

今のところおすすめするデッキリストはこちらです。

サイドボードガイド

ジェスカイファイアーズ

対 ジェスカイファイアーズ

Out

ガラスの棺 サメ台風
伝承の収集者、タミヨウ

In

神秘の論争 神秘の論争
霊気の疾風
神秘の論争霊気の疾風

ジェスカイファイアーズの理想とするゲーム展開は先述しました。テンポが全てのデッキです。バント側は終盤戦になってからが本番になります。つまり、生き残ることが求められるのです。ターニングポイントは、楽々と2アクションをとれるようになったときです。《神秘の論争》は、相手のデッキに2マナ分の割引がきく青の呪文が少ないものの、序盤から2アクションをとれる便利なカードです。相手の《神秘の論争》に対して使うのも非常に良いでしょう。《創案の火》を打ち消す3マナの呪文としても悪くはありません。

《霊気の疾風》をフル投入しているのは、《軍勢の戦親分》が投入されることを見越しているからです。ほとんどのプレイヤーはこのプランを採用してきますが、ウィークリーチャンピオンシップではこの枠に《ラバブリンクの冒険者》を採用しているプレイヤーと一度対戦しました。《軍勢の戦親分》よりもはるかに対処が難しいため、このカードを確認した場合は3ゲーム目に4枚目の《空の粉砕》《ガラスの棺》を2~3枚追加した方が良いでしょう。

《秋の騎士》はサイドインしないようにしています。カードのテキストに「エンチャント」と「破壊」という言葉が入っていますが、それだけのために汎用性の乏しいソーサリータイミングの解答を入れたくないのです。実際、《秋の騎士》をサイドインせずにこのマッチアップに何度も勝っています。《秋の騎士》の強みは相手の《エルズペス、死に打ち勝つ》を破壊できることです。どうしても入れたいという場合は、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と追加で《サメ台風》をサイドアウトしましょう。ただ、《サメ台風》はマナ効率こそ良くないものの、打ち消し呪文を構え続けさせてくれます。

ティムール再生

対 ティムール再生

Out

空の粉砕 空の粉砕 空の粉砕
裏切りの工作員 裏切りの工作員 エルズペス、死に打ち勝つ

In

ドビンの拒否権 ドビンの拒否権 霊気の疾風
神秘の論争 神秘の論争 ガラスの棺
神秘の論争成長のらせん

《秋の騎士》を投入しない理屈はここでも同様ですが、このマッチアップの方が顕著です。サイドインすることが許容できません。その効果の対象となるのが本当に《荒野の再生》しかないのです。

サイドボード後は青のコントロール対決になりますから、打ち消し呪文が重要になります。《サメ台風》はお互いが打ち消しを構えているなかでエンドフェイズに「サイクリング」できる貴重なカードであるため、土地を伸ばしてマナアドバンテージを確保することが普段よりも一層重要です。《神秘の論争》は序盤の《神秘の論争》を対象に取れます。逆に言えば、相手のターンに構えるメリットがなければ《成長のらせん》はソーサリータイミングで唱えましょう

《ガラスの棺》はサメトークンと《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を対処できるため、見た目は違和感のある採用になりますが、私は評価しています。ティムール再生に《厚かましい借り手》が採用される機会はすっかり減っているので、特に1ゲーム目は積極的に《時を解す者、テフェリー》の[+1]能力を起動し、《焦熱の竜火》や小型のサメトークンから生き残れるような忠誠度にしておきましょう。ただし、サイドボード後は《丸焼き》にされる可能性があります。

ラクドスルールスサクリファイス

対 ラクドスルールスサクリファイス

Out

エルズペス、死に打ち勝つ エルズペス、死に打ち勝つ エルズペス、死に打ち勝つ エルズペス、死に打ち勝つ
神秘の論争 神秘の論争 伝承の収集者、タミヨウ
覆いを割く者、ナーセット 覆いを割く者、ナーセット

In

秋の騎士 秋の騎士 秋の騎士 空の粉砕
ガラスの棺 ガラスの棺 ガラスの棺
敬虔な命令 敬虔な命令
伝承の収集者、タミヨウ死の飢えのタイタン、クロクサ

《エルズペス、死に打ち勝つ》《夢の巣のルールス》以外に対象がいませんので、サイドアウトしなければなりません。そのため、このマッチアップでは平凡なカードを2戦目以降も残す必要があります。《裏切りの工作員》《魔女のかまど》を盗んだときのインパクトが大きいので、そこまで弱くありません。

《伝承の収集者、タミヨウ》は優秀なカードアドバンテージ源であり、《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の燃料も確保できるツールですが、彼女と《死の飢えのタイタン、クロクサ》の関係性には気を付けましょう《死の飢えのタイタン、クロクサ》のテキストの書き方からして、常に3点のダメージを受けることになります。《霊気の疾風》は特別強いわけではないものの、いずれ対象が見つかることが多いうえに、2マナと軽いです。また、墓地の《死の飢えのタイタン、クロクサ》が「脱出」するタイミングは読めることが多く、《霊気の疾風》は構えやすいです。

この構成は完璧ではないですが、スタンダードの《夢の巣のルールス》デッキは総じてデッキパワーが十分でないと思っていますので、そこまで心配はしていません。

ラクドスオボシュサクリファイス

対 ラクドスオボシュサクリファイス

Out

神秘の論争 神秘の論争 裏切りの工作員 裏切りの工作員
中和 中和 伝承の収集者、タミヨウ
覆いを割く者、ナーセット 覆いを割く者、ナーセット

In

秋の騎士 秋の騎士 秋の騎士 空の粉砕
ガラスの棺 ガラスの棺 ガラスの棺
敬虔な命令 敬虔な命令
ガラスの棺空の粉砕

《獲物貫き、オボシュ》型の方がアグロデッキとして優れており、より戦いづらいマッチアップとなっています。相手のデッキの大半は黒のカードであり、ここでも《霊気の疾風》の理想的な枚数に明確な答えは出せていません。2ターン目のアクションか《空の粉砕》がある手札を求めてマリガンしましょう

ジェスカイ/ボロスサイクリング

対 ジェスカイ/ボロスサイクリング

Out

エルズペス、死に打ち勝つ エルズペス、死に打ち勝つ エルズペス、死に打ち勝つ エルズペス、死に打ち勝つ
中和 中和 裏切りの工作員 裏切りの工作員

In

秋の騎士 秋の騎士 秋の騎士 空の粉砕
ガラスの棺 ガラスの棺 ガラスの棺 霊気の疾風
ガラスの棺繁栄の狐

《神秘の論争》はジェスカイカラーには悪くないカードです。相手も《神秘の論争》を採用していますし、《型破りな協力》もあります。対して、ボロスカラーに対しては《中和》を残した方が良いでしょう。《覆いを割く者、ナーセット》は[-2]能力を起動しない選択肢も考えられるので記憶しておきましょう。1ターン目に《繁栄の狐》を出されるとたいていは負けるので、それを念頭に置いたマリガンを行います。盤面で劣勢に立たされていなければ《天頂の閃光》で負けることはほぼあり得ないはずです。

おわりに

お付き合いいただきありがとうございました。ではまた次回。健康に気を付けて。

ピオトル “カニスター” グロゴゥスキ (Twitter / Twitch)

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Piotr Glogowski

Piotr Glogowski マジック・オンライン上でkanisterとしてその名を轟かせ、Twitchの配信者としても人気を博す若きポーランドの雄。 2017-2018シーズンにはその才能を一気に開花させ、プロツアー『イクサラン』でトップ8を入賞すると続くワールド・マジック・カップ2017でも準優勝を記録。 その後もコンスタントに結果を残し、プラチナ・レベル・プロとしてHareruya Prosに加入した。 Piotr Glogowskiの記事はこちら