スタンダード情報局 vol.21 -ヨーリオン ~欲望の80枚~-

晴れる屋メディアチーム

新スタンダード開幕!

みなさんこんにちは。

シーズン・グランドファイナル直後、10月12日の禁止制限告知によって、3枚のカードがスタンダードを去ることになりました。

創造の座、オムナス僻境への脱出幸運のクローバー

ミッドレンジデッキの心臓部といえるカードが消え、スタンダードは大きな変革期を迎えています。4色アドベンチャーが環境から消える一方で、これまでも存在したディミーアローグやラクドスエスケープは無傷のまま残ることとなったのです。

新環境は黒を基調とした2つのデッキがリードすることになりましたが、1週間を経て新しいデッキは生まれたのでしょうか?今回は禁止改定後のスタンダードデッキをご紹介していきます。

環境の主役たち

空飛ぶ思考盗み死の飢えのタイタン、クロクサ

環境に残ったものの、ディミーアローグとラクドスエスケープの間には明確な相性差が存在していました。エスケープにしてみれば、ローグの「切削」は「脱出」コストを献上してくれているに等しく、マナと手札を使わずとも繰り返し《死の飢えのタイタン、クロクサ》を「脱出」できるようになっていたのですから。逃げるローグと追うエスケープ。この追いかけっこに終止符を打ったのは、クリーチャーの質で勝り、消耗戦に強い緑単フードでした。

緑単フード

マナクリーチャーからジャンプアップし、《意地悪な狼》《貪るトロールの王》といった複数交換できるクリーチャーで攻めるミッドレンジデッキになります。《カザンドゥのマンモス》のような初速に優れたカードも採用されていますが、土地の引き過ぎ(以下、マナフラッド)を緩和する意味合いが強く、あくまでも中盤以降のクリーチャーとカードアドバンテージを絡めるリソース勝負を狙っていきます。

貪るトロールの王

規格外のサイズと復活能力により除去に強い、このデッキの主力である《貪るトロールの王》。警戒を持つため攻防一体のカードであり、手札からプレイすれば食物・トークンを3つ生成してくれます。自身の復活に使用するだけでなくライフ回復もできますが、《パンくずの道標》と組み合わせればほかのカードへと交換できます

パンくずの道標金のガチョウグレートヘンジ

緑単色ということでリソース不足に陥りそうですが、《金のガチョウ》+《パンくずの道標》エンジンを採用することで補っています。《金のガチョウ》は時間こそかかるものの、戦場にいる限りパンを届けてくれます。

デッキの半数近くがクリーチャーで占められているため、《グレートヘンジ》は途切れることなくカードを提供してくれますね。あらかじめ《恋煩いの野獣》のようなパワーの高いクリーチャーを先に出しておき、早期着地を狙っていきましょう。

漁る軟泥

《漁る軟泥》は、今もっともメタゲームにかみ合った1枚といえるでしょう。マナカーブを埋めつつ、ラクドスエスケープを自由にさせません。《死の飢えのタイタン、クロクサ》を筆頭に墓地に依存するカードは多く、さまざまなマッチアップで活躍してくれる1枚です。

中盤以降に引いたとしても、サイズアップできるため無駄になりません。《無情な行動》で除去されにくいのもポイントでしょう。

《ヨーリオン》

空を放浪するもの、ヨーリオン

肉質のいい中量級のクリーチャーがゲームの主体になったことで、対抗馬が生まれてきました。ここでは《空を放浪するもの、ヨーリオン》を軸にした、2つのボードコントロールデッキをご紹介します。

アゾリウスブリンク

MPL(マジック・プロリーグ)所属のジャン=エマニュエル・ドゥプラ/Jean-Emmanuel Depraz選手はアゾリウスブリンクでミシックランク1位を達成しました。

アゾリウスといえば、打ち消し呪文と全体除去が売りの伝統的なコントロールカラーですが、このデッキの戦略はクリーチャーと「明滅」のシナジーを活かしたものとなります。ローテーションにより姿を消していたアゾリウスヨーリオンですが、「戦場に出たときに効果を発揮する」クリーチャーと《深海住まいのタッサ》を加えて、アゾリウスブリンクとして蘇りました。

スカイクレイブの亡霊

新戦力の《スカイクレイブの亡霊》はクリーチャーだけではなく、4マナ以下のパーマネントを対象にできる便利なカードです。環境に蔓延る《パンくずの道標》《フェリダーの撤退》、プレインズウォーカーをわずか3マナで対処してくれます。《魅力的な王子》《深海住まいのタッサ》とのシナジーは積極的に狙っていきましょう。

また《ガラスの棺》と違い、一度追放したカードは《スカイクレイブの亡霊》自身が除去されても戻らない点にも注目です。このカード自体が《死の飢えのタイタン、クロクサ》対策となっているのです。

トレイリアの大魔導師、バリンエルズペス、死に打ち勝つ

これら2種類も盤面に影響を及ぼすカードになります。《トレイリアの大魔導師、バリン》《スカイクレイブの亡霊》と似た役割であり、5マナ以上のカードにも対処してくれます。自分の《空を放浪するもの、ヨーリオン》を戻すことで、再度「明滅」することができますね。

真面目な身代わり

《真面目な身代わり》のマナ加速にも注目が集まっています。デッキ自体が重くタップイン土地が多いため、土地を出す効果は見た目以上にデッキにかみ合っています。5マナ域の《エルズペス、死に打ち勝つ》《空を放浪するもの、ヨーリオン》を確実にキャストできるようになるだけでも、十分な意味をもちます。

魅力的な王子深海住まいのタッサ

《魅力的な王子》《深海住まいのタッサ》《空を放浪するもの、ヨーリオン》の3種類の「明滅」カードが採用されています。前者2種類はクリーチャーしか対象にとれないもののマナコストが軽く、「明滅」対象は3マナ域が主力のため、マナカーブに沿ってテンポよくシナジーを形成することができます。

2種類のうちいずれかと《空を放浪するもの、ヨーリオン》が揃うと、相互に「明滅」し合うことで、除去されない限り毎ターン全パーマネントが「明滅」することになります。このループが始まるとマナがかからずに半永久的に続くため、途中で引いてきたパーマネントを追加することも可能です。

セレズニアブリンク

CFB Pro Showdown Octoberを制したのはOndrej Strasky選手のセレズニアブリンクでした(その後、ボス戦でルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargasに敗北)。

アゾリウスブリンクの《深海住まいのタッサ》や打ち消し呪文を、マナ加速へと変えたのがこのセレズニアブリンクになります。《空を放浪するもの、ヨーリオン》とのシナジーを前提に構築されていますが、このデッキでは「相棒」ではなくメインボードのカードとしており、デッキ総数は60枚となっています。

金のガチョウパンくずの道標ラノワールの幻想家

《金のガチョウ》はマナ加速役ですが、中盤以降は《パンくずの道標》と組み合わせることで、わずか1マナで新しいカードに代わる循環エンジンを形成してくれます。ジャンドサクリファイスから続くこのエンジンはメインボードで干渉しにくく、《金のガチョウ》が除去されない限り続くことになります。

さらに追加のマナクリーチャーとして《ラノワールの幻想家》が採用されています。手札を減らさずにマナを増やしてくれて、4ターン目に《空を放浪するもの、ヨーリオン》《エルズペス、死に打ち勝つ》といったパワーカードへと繋げてくれます。

意地悪な狼巨大猿、コグラ

除去枠は《スカイクレイブの亡霊》に加えて、2種類の格闘クリーチャーを選択しています。かつて、シミックフードの《火炎舌のカヴー》と呼ばれた《意地悪な狼》は、新たな居場所を見つけたようです。食物・トークンがある限り戦闘や破壊呪文では除去されず、攻守において盤面を支えてくれます。

《巨大猿、コグラ》は重いものの除去できる範囲が広く、戦場に《魅力的な王子》《太陽の神のお告げ》がいれば、破壊不能を得ることができます。《スカイクレイブの亡霊》で干渉できない《グレートヘンジ》をメインボードから対策できる貴重なカードです。

変わり樹の共生エメリアの呼び声

アドバンテージ獲得手段はあるものの、ほかの色のミッドレンジデッキに比べると少ないため、2種5枚の呪文/両面土地(以下、スペルランド)を採用して土地総数を減らすことで、マナフラッドの受けとしています。《変わり樹の共生》はある程度戦場にパーマネントが並んだ状況で、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を狙ってキャストしていきましょう。もちろん、ほかの必要なクリーチャーがあればその限りではありません。

このデッキのフィニッシャーは十分に育った《意地悪な狼》《空を放浪するもの、ヨーリオン》となりますが、《エメリアの呼び声》もエンドカードとなっています。副次効果である「あなたの次のターンまで、天使でないクリーチャーは破壊不能を得る」の一文は白系全体除去に対するカウンターであり、ライフレースが大きく狂うことから勝負を決めるカードにもなり得ます。

ナヤランプ

アグロに強いミッドレンジ、ミッドレンジを食うボードコントロールと紹介してきましたが、ボードコントロールに強いデッキは何でしょうか?それはマナ加速からボードコントロールの影響力以上のビッグスペルを連打するランプとなります。

ここではCFB Pro Showdown Octoberでトップ4に入賞した、Hareruya Hopesの浦瀬 亮佑選手のデッキをご紹介します。

水蓮のコブラ絡みつく花面晶体狼柳の安息所

2マナに厚く12枚のマナ加速を採用していることで、必ず3ターン目に4マナへ到達できるように構築されています。3マナ以上でも12枚のマナ加速が採用され、安定して2→4→6のジャンプアップの動きがとれるようになっていますね。ランプデッキというと序盤はノーガードになりがちですが、《真面目な身代わり》のように盤面を支えながらマナを伸ばすクリーチャーも採用されています。

フェリダーの撤退世界を彫る者、ファイラス

このデッキでは3種類のフィニッシャーが採用されていますが、ボードコントロールに強い《精霊龍、ウギン》を除いた、ほかのカードに注目してみましょう。《フェリダーの撤退》は4マナと1番お手軽なカードであり、最速3ターン目にキャストすることが可能です。このため打ち消し呪文をすり抜けやすく、特にディミーアコントロールにはこの1枚だけで勝つこともあるほど。アグロデッキ相手には堅牢な防御壁となってくれます。

《世界を彫る者、ファイラス》が参照するのは基本地形の枚数であり、おおよそ6~10体程度の植物・トークンを生成することになります。1度の「上陸」で1体しか強化できないため、できれば《フェリダーの撤退》と組み合わせることで、横並びのトークンすべてを強化していきたいところ。2枚が揃った場合には狙っていきましょう。

寓話の小道進化する未開地

《世界を彫る者、ファイラス》の効果を最大化し、中盤以降も基本地形が途切れないようにするため、フェッチランドを除き、一切の特殊地形が排除されています。フィニッシャー展開後はフェッチランドは多重「上陸」スペルとなり、《耕作》《真面目な身代わり》も同様の役割となるため、一切の無駄がありません。

直近の大会結果

直近の大会結果

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10月12日から10月18日までの大会結果(最低参加人数8人以上)になります。禁止改定告知からわずか1週間ですが、メタゲームは目まぐるしく動きました

ディミーアローグを起点に、相手の「切削」を有効活用するラクドスエスケープ、クリーチャーサイズとリソースゲームで勝負する緑単フード、そしてパーマネント除去に特化した《空を放浪するもの、ヨーリオン》へと移り変わっています。今後は《空を放浪するもの、ヨーリオン》を仮想敵として、どんなデッキが出現するでしょうか?

精霊龍、ウギン

やはり鍵となるのは、環境随一の盤面掌握能力を持つ《精霊龍、ウギン》でしょう。今回紹介したナヤランプのように、高速で《精霊龍、ウギン》へと繋げるデッキは対抗馬となりえそうです。

空飛ぶ思考盗み

気になるのは、環境が遅い方へとシフトしてランプデッキが最適解となりつつあるなかで、アグロデッキがどの程度増加するかです。ランプデッキがマナ加速時間を費やしているノーガードの間に展開し、後詰めのカードを持つディミーアローグや赤単アグロなどにはチャンスがありそうです。来週はどのように変化していくのでしょうか?

どうなる来週のスタンダード!?

現状、《空を放浪するもの、ヨーリオン》を頂点としてメタゲームが形成されていますが、安心はできません。メタゲームの動きは早く、ランプデッキが登場し、そのランプデッキ自体もディミーアローグや早いアグロデッキにより駆逐される可能性を秘めているのですから。

まさにメタゲームは1周し、混沌を極めつつあります。最強ではなく、最適なデッキを選ぶ時期なのです。

半年近くかけて行われてきたRed Bull Untapped Qualifierも大詰めとなっています。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。

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