スタンダード情報局 vol.73 -五体合体-

富澤 洋平

はじめに

みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。

前回は増加傾向にあるラクドスサクリファイスとセレズニアミッドレンジをご紹介しました。セレズニアミッドレンジはメタデッキ的な立ち位置にありながら、デッキパワーも高く、ほかのデッキに対しても当たり負けしない仕様となっています。カードパワーの上昇を感じますね。

さて、今回は第19期スタンダード神挑戦者決定戦の大会結果を中心に振り返っていきます。

先週末の注目トピックは?

先週末に開催されたスタンダード神挑戦者決定戦ですが、トップ8に残ったのは個性豊かな面々でした。メタゲームの最前線を走るナヤルーンやラクドスサクリファイスは当然として、黒単ミッドレンジやアゾリウステンポなどアーキタイプは7種類にも分かれました。近年は一強になりがちだったスタンダードですが、ついに多様性を取り戻したのです。

その挑戦者決定戦を制し、勢いのまま神の座まで手中におさめたのは宮田 健太郎選手。使用デッキはオリジナルのバント機体でした。

勢団の銀行破り電圧改竄メカ

《密輸人の回転翼機》《霊気圏の収集艇》が空を支配していた頃の機体デッキとは違って、バント機体は戦闘を介さずにアドバンテージを生み出し続けます《勢団の銀行破り》は追加のドローをもたらしてくれますし、《電圧改竄メカ》は攻防の切り返しの起点となります。『神河:輝ける世界』よりもたらされた機体はミッドレンジ戦略に適していたのです。

削剥プリズマリの命令

機体は非クリーチャーでありながら「搭乗」することでクリーチャーとなるパーマネント。この特性が適切なタイミングでの処理を難しくしています。「搭乗」されなければ《消えゆく希望》の対象となりえませんし、無色のアーティファクトであるため《消失の詩句》も効かず。さばく側は後手に回らざるを得ません。

ひとたび戦場へ着地した機体は《ドゥームスカール》《家の焼き払い》に巻き込まれず、逆にタップアウトを咎める存在として戦場に残り続けます。《削剥》《プリズマリの命令》が減りつつあったメタゲームを上手く読んだデッキだったのです。

前置きが長くなりましたが、それでは大会結果をみていきましょう。

第19期スタンダード神挑戦者決定戦

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 宮田 健太郎 バント機体
準優勝 齋藤 伸太郎 ナヤルーン
トップ4 横川 裕太 エスパーミッドレンジ
トップ4 秋山 太知 アゾリウステンポ
トップ8 細川 侑也 ラクドスサクリファイス
トップ8 原 康貴 ナヤルーン
トップ8 棟方 昭平 緑単アグロ
トップ8 ニシムラ ヒロシ 黒単ミッドレンジ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

第19期スタンダード神挑戦者決定戦を制したのは宮田 健太郎選手のバント機体。トップ8にイゼットや白単アグロの姿がなかったことで、その力を存分に発揮しました。

大会ページはこちら

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バント機体

バント機体

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戦略の中核を成すのは低マナ域から始まるクリーチャーと、アドバンテージ獲得手段である機体の組み合わせです。コンボデッキの多い現環境において1マナ域から始まるビートダウン戦略は効果的であり、序盤に稼いだダメージを機体でもって後押します。逆にボードコントロールの強いデッキ相手ならば、機体を軸にアドバンテージを稼いでいくことになります。

巧妙な鍛冶継ぎ接ぎ自動機械

ゲームのスタートをきるのは《巧妙な鍛冶》《継ぎ接ぎ自動機械》。前者はカード面で、後者はテンポ面でアドバンテージをもたらし、どちらもアーティファクトをプレイすることで瞬く間にサイズアップしていきます。特に《継ぎ接ぎ自動機械》「護法」があるためクリーチャーの少ないミッドレンジやコントロールでの対処が難しく、毎ターン育てるだけで勝利の方から近づいてきてくれます。

サイズが上がれば「搭乗」コストの重い《電圧改竄メカ》へも単体で乗り込めます。序盤はアタッカーとして、中盤以降はドライバーとなる2マナながら無駄にならないクリーチャーなのです。

勢団の銀行破り

ゲームが中盤までもつれ込めばこのデッキの真骨頂、機体の出番となります。定番の《エシカの戦車》に加えて、さまざまな能力持ち機体を採用することで、戦略に幅を持たせています。

《勢団の銀行破り》は最軽量の機体であり、3ターン目から4点クロックを実現してくれます。プレッシャーはダメージ量だけではなく、時間経過とともにもたらされる3枚の手札と2種類のトークンまで及びます。機体ながら自身で乗り手を生成できる自己完結した《勢団の銀行破り》強襲と持久戦のどちらも可能な万能タイプの機体となります。

電圧改竄メカ

ミッドレンジタイプのデッキながら除去呪文がほとんど採用されていないのは《電圧改竄メカ》が大きく影響しています。これ1枚でクリーチャーとプレインズウォーカーの両方を対処できますし、機体に寄せたこのデッキでは4点以上も狙えます。

仮に忠誠度が高いプレインズウォーカーがいたとしてもボードを処理された後での威迫の二文字は、相手にとって重くのしかかることでしょう。《電圧改竄メカ》はこのデッキの攻防の要となるカードなのです。

メカ巨神のコアメカ巨神のコアメカ巨神のコア

そして、このデッキには秘密兵器として《メカ巨神のコア》が採用されています。この機体だけはほかと違い、起動型能力が機能して初めて意味を成します。五体合体よろしく、起動に自身を含めて5枚のアーティファクトを必要とするためとてつもなく重いわけですが、効果も見合ったものとなっています。イラストや能力から合体ロボやエ〇ゾディアを想起した方もいらっしゃるかもしれませんね。

生成されるメカ巨神・トークンは10/10というサイズにこれでもかというほど能力が付加されています。ダメージレースをひっくり返すどころかゲームを決めるには十分な力を持っています。加えて、たとえ除去されたとしても《メカ巨神のコア》以外のアーティファクトが戻るのですからボードの再構築も容易です。むしろ《エシカの戦車》《電圧改竄メカ》など戻って美味しいアーティファクトをコストに当てておきたいところ。

《メカ巨神のコア》は長期戦を見越しての採用だと思いますが、宮田選手のデッキに対する愛を感じる1枚でもありますね。実際に神決定戦ではその姿が顕現しています。

粗暴な聖戦士軽蔑的な一撃

序盤、中盤と隙がなく、アドバンテージ獲得手段もあるとなれば長期戦も戦えます。とはいえ弱点がないわけではありません。むしろ《スレイベンの守護者、サリア》《告別》のような致命的なカードが存在しています。サイドボードにはこれらのカードへの対処手段が用意されています。

《粗暴な聖戦士》《スレイベンの守護者、サリア》に引っかからないことに加え、高タフネスのクリーチャーまで対処してくれます。《傑士の神、レーデイン》《輝かしい聖戦士、エーデリン》も良き的となりますね。

《告別》に対しては《傑士の神、レーデイン》でプレイできるターンを遅らせつつ、打ち消し呪文による二段構えが用意されています。《記憶の氾濫》《放浪皇》といったゲームプランを支えるカードも軒並みコストが増加するため、その間にダメージを稼いでいきましょう。

その他の大会結果

Standard Challenge #12396390

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 Demian77 エスパープレインズウォーカー
準優勝 levunga21 ラクドスサクリファイス
トップ4 LucasG1ggs 白単アグロ
トップ4 SilvergillLord セレズニアミッドレンジ
トップ8 MJ_23 マルドゥイグニッション
トップ8 _against_ ラクドスサクリファイス
トップ8 Thalai セレズニアミッドレンジ
トップ8 BERNASTORRES ナヤルーン

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

ラクドスサクリファイスとセレズニアミッドレンジがにらみ合うStandard Challenge #12396390を制したのはエスパープレインズウォーカーでした。

パワー・ワード・キルエメリアのアルコン

プレイオフはナヤルーンやマルドゥイグニッションといったコンボ寄りのクリーチャーデッキに対し、単体除去を増やしたラクドスサクリファイスとバーストダメージに待ったをかける《エメリアのアルコン》入りのセレズニアミッドレンジが対応する展開。ゲームレンジが後ろへ伸びたことでエスパープレインズウォーカーは立ち位置が向上していたのです。

メタゲーム

デッキタイプ トップ32 トップ16
白単アグロ 4 2
セレズニアミッドレンジ 4 3
イゼットドラゴン 4 1
ラクドスサクリファイス 4 3
ナヤルーン 3 2
ボロスアグロ 2 1
オルゾフミッドレンジ 2 1
マルドゥイグニッション 2 2
その他 7 1
合計 32 16

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Standard Challenge #12396402

順位 プレイヤー名 デッキタイプ
優勝 ovmlcabrera エスパープレインズウォーカー
準優勝 McWinSauce ラクドスサクリファイス
トップ4 Gul_Dukat ラクドスサクリファイス
トップ4 ConnorM426 ナヤルーン
トップ8 Ignotus97 トレジャーギャンビット
トップ8 bless_von オルゾフミッドレンジ
トップ8 ura_frst 白単アグロ
トップ8 _Batutinha_ セレズニアミッドレンジ

(※デッキタイプをクリックするとリストが閲覧できます。)

Standard Challenge #12396402を優勝したのはまたもエスパープレインズウォーカー。プレインズウォーカーを中心に構築されたこのデッキはデッキ全体のパワーもさることながら、メタゲームの変化の恩恵も受けています。干渉手段の多いこのデッキにとって、相互のシナジーで勝負するラクドスサクリファイスの増加は追い風といえるでしょう。

鏡割りの寓話鏡割りの寓話

3位のGul_Dukat選手が使用したラクドスサクリファイスには興味深いカードが採用されていました。《鏡割りのキキジキ》の英雄譚版である《鏡割りの寓話》はリソース面での枯渇を解消してくれると同時に、追加のフィニッシャーとなっています。

注目すべきはIII章のトークンを生け贄に捧げるタイミングにあります。「次の終了ステップの開始時」とあるため、それ以降に起動することでトークンがターンをまたいで生存できるのです。仮に《キキジキの鏡像》が2枚戦場にいれば、相互にコピーし合うことでマナの続く限りトークンが生成されます。

自身のターンに入り土地がアンタップしたところで攻撃に向かうもよし、ブロッカーがいるならば《ヴォルダーレンの美食家》をコピーして直接本体を狙うこともできます。一撃必殺とまではいかないまでもこれまでと角度の違う脅威を手に入れているのです。

メタゲーム

デッキタイプ トップ32 トップ16
ラクドスサクリファイス 8 3
ナヤルーン 5 3
セレズニアミッドレンジ 5 2
白単アグロ 3 1
ジェスカイコントロール 2 2
オルゾフミッドレンジ 2 2
エスパープレインズウォーカー 3 1
マルドゥイグニッション 2 1
その他 2 1
合計 32 16

トップ8デッキリストはこちら

おわりに

今回ご紹介した機体デッキやラクドスサクリファイスに足された《鏡割りの寓話》のように、『神河:輝ける世界』は興味深いカードが数多くあります。しかもそれはまだ発掘段階にあり、可能性はどこに眠っているかはわかりません。今後はどんなデッキが登場するのか、どんなカードでアップデートされるのか楽しみです。

今週末には第5回 Sekappy COLOSSEUM MTGアリーナ 決勝大会が控えていますね。次回はそれらの情報をお届けしたいと思います。

この記事内で掲載されたカード

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富澤 洋平 晴れる屋メディアチームスタッフです。最近は《黙示録、シェオルドレッド》に夢中な日々です。 富澤 洋平の記事はこちら

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