はじめに
みなさんこんにちは。晴れる屋メディアチームの富澤です。
かつてのPTQ(プロツアー予選)を彷彿させるように各地で開催されているチャンピオンズカップ予選。プレイヤーとプロツアーの最短距離を繋ぐこのルートには、毎週末多くの参加者が集まっています。
本稿は、毎週末に各地で開催されているエリア予選へと可能な限り帯同し、デッキ分布(メタゲーム)の分析とトップ8デッキを紹介していく企画となります。執筆にあたり、各店舗様にご協力をいただき公開へといたっています。改めて感謝申し上げます。
今回は長らく続いたエリア予選を振り返っていく総括回となります。
エリア予選を振り返る
先週末にカードショップ BIG RED様で開催された大会を最後に、国内で1ヵ月間続いてきたエリア予選がすべて終了しました。権利を獲得した人数は120名にのぼります。改めてチャンピオンズカップファイナルへの出場権獲得おめでとうございます。
エリア予選は『団結のドミナリア』の発売後に開催されたわけですが、力関係は大きく変化していました。元々トップメタの一角であったラクドスミッドレンジは比類なき最強デッキへと変貌を遂げたのです。以下は、エリア予選で権利を獲得したデッキ一覧となります。
デッキタイプ | 使用者数 | 増加人数 |
---|---|---|
ラクドスミッドレンジ | 42 | +5 |
緑単信心 | 19 | +1 |
アブザンパルヘリオン | 12 | +1 |
アゾリウスコントロール | 9 | +0 |
ロータスコンボ | 4 | +1 |
白単人間 | 4 | +0 |
バントスピリット | 4 | +0 |
《不屈の独創力》コンボ | 3 | +0 |
エスパーコントロール | 2 | +0 |
青単スピリット | 2 | +0 |
黒単アグロ | 2 | +0 |
セレズニア人間 | 2 | +0 |
イゼットフェニックス | 2 | +0 |
ラクドスサクリファイス | 2 | +0 |
赤単アグロ | 1 | +0 |
アゾリウスフラッシュ | 1 | +0 |
セレズニア天使 | 1 | +0 |
オルゾフ人間 | 1 | +0 |
イゼットコントロール | 1 | +0 |
バント人間 | 1 | +0 |
ジャンドサクリファイス(城塞型) | 1 | +0 |
ジェスカイエンソウル | 1 | +0 |
マルドゥミッドレンジ | 1 | +0 |
《奇怪な具現》デッキ | 1 | +0 |
5色ニヴ | 1 | +0 |
合計 | 120名 | 8 |
一部のデッキにつきましてはBIG MAGIC様から引用しています。
突破者総数42名と、最後の最後まで安定した成果を残したラクドスミッドレンジ。スタンダードでも活躍中の《黙示録、シェオルドレッド》と《ヴェールのリリアナ》はパイオニアでも採用されています。苦手としていた緑単信心やアゾリウスコントロールとのマッチアップを改善し、どちらも定着すれば継続的にリソースを削ってくれるカードです。
ミッドレンジ戦略にフィットする新たな攻め手を獲得したことで、ラクドスミッドレンジは対ほかのデッキから対ミラーマッチへと進んでいきます。終着地点となった《領事の旗艦、スカイソブリン》や《栄光をもたらすもの》はラクドスミッドレンジの主力除去では対処の難しい選択肢であり、ゲームを決定づけるパーマネントとなったのです。
前環境では王者的な立場にいた緑単信心ですが、エリア予選ではやや落ち着いた印象です。ラクドスミッドレンジとは正反対に対ミラーから対ほかへと方向転換しています。ミラーマッチを制するべく工夫されていたプレインズウォーカー枠には《日没を遅らせる者、テフェリー》や《龍神、ニコル・ボーラス》など緑以外のプレインズウォーカーの姿もありました。
一時期はメタゲームの最大仮想敵まで成長していたアブザンパルヘリオンでしたが、過度な対策がしかれた結果伸び悩んでいます。ラクドスの《真っ白》はコンボと後続を立たれる致命的な1枚ですし、《未認可霊柩車》はどのデッキのサイドボードにも見た顔。それでも急角度で強襲する爆発力は健在でした。
ほぼ同数で並ぶのはアゾリウスコントロール、伝統的な防御的なデッキです。打ち消し呪文と全体除去でテンポ、カード面のアドバンテージを稼ぎ、整えた戦場へプレインズウォーカーを着地させゲームを掌握します。新戦力はありませんでしたが、構築の最適化が課題であるため、大会が進むにつれて数を伸ばしたアーキタイプです。
ほかにも低コストのアタッカーを確保した白単人間や追加の勝ち手段を手にしたイゼットフェニックスが一時的に復活するなど、どのデッキにもチャンスがあるといった感じでした。
代表的なデッキ紹介
ラクドスミッドレンジ
ラクドスミッドレンジは1枚で何役もこなすクリーチャーと手札破壊、クリーチャー除去にプレインズウォーカーとミッドレンジの王道をいくデッキ。軽量除去が多いことから速度で押すアグロデッキに強く、クリアになったボードを骨太なクリーチャーで制圧します。この手のデッキにありがちだった引きムラも《鏡割りの寓話》の加入により改善されています。
最近のカードが多く、直近1~2年のスタンダードで遊んでいた方にはお馴染みのカードばかりかもしれません。
前回もご紹介しましたが、広島店のエリア予選を突破したラクドスミッドレンジは非常に優れた構築でした。採用率の高い除去呪文で対処されず、一瞬のうちにアドバンテージをもたらす《栄光をもたらすもの》は、その名の通り勝利をもたらすクリーチャーなのです。
《ヴェールのリリアナ》や《戦慄掘り》に当たらない《領事の旗艦、スカイソブリン》も優れたカードですが、《削剥》などの増加を見るにまだまだこのドラゴンにもチャンスはありそうです。
緑単信心
緑単信心はマナクリーチャーからシンボルの濃いパーマネントを展開していき、「信心」を稼ぎます。集まった「信心」を《ニクスの祭殿、ニクソス》で膨大なマナへと変換し、《茨の騎兵》や《収穫祭の襲撃》へと繋げてより強固なボードを築き上げます。《ビヒモスを招く者、キオーラ》と《大いなる創造者、カーン》を使った無限マナパッケージや必要に応じて持ってこれるアーティファクトなど攻め手が多彩なアーキタイプです。
緑というドローの乏しい色にあって、緑単信心は非常に再現性の高いデッキです。マナさえある程度伸びてしまえば、《収穫祭の襲撃》の表と裏を使って一気にパーマネントを増やせますし、ここで《ニクスの祭殿、ニクソス》が出せればさらなる行動回数が確保できます。
《茨の騎兵》は《ニクスの祭殿、ニクソス》へ繋がる確率を上げ、さらに「切削」時に《収穫祭の襲撃》が落ちることもあります。《収穫祭の襲撃》と《茨の騎兵》があることで毎度同じようなボードができあがるのです。
アブザンパルヘリオン
アブザンパルヘリオンは《パルヘリオンⅡ》を墓地へと落として《大牙勢団の総長、脂牙》でリアニメイトし、そのまま攻撃へと向かうダイナミックなコンボデッキ。マルドゥやエスパー、オルゾフなど複数のバリエーションが存在する自由度の高いデッキです。
アブザンカラーでは最効率の「切削」カードである《忌まわしい回収》とミッドレンジプランの《エシカの戦車》をプレイできるのが魅力です。
一見すると速度へ全振りしたオールインコンボに思えますが、干渉手段が豊富なためコンボとミッドレンジプランの2軸で攻めるデッキです。カードプールが許す限りどんな黒いデッキでも採用したい最高の手札破壊である《思考囲い》、メタゲームにフィットした「切削」カードの《ウィザーブルームの命令》。
後者は対緑単信心でマナクリーチャーを潰しつつ墓地を肥したり、ときには2つのパーマネント破壊したりと使い勝手の良いカードでした。サイドボード後は《未認可霊柩車》や《安らかなる眠り》を狙います。
《不屈の独創力》コンボ
《不屈の独創力》コンボは戦場に宝物トークンを複数個用意し、デッキ名にもなっているソーサリーをX=2以上で唱えて《世界棘のワーム》と《歓楽の神、ゼナゴス》を戦場へ出し、1ターンの内にライフを削りきるコンボデッキです。コンボ自体手札破壊か打ち消し呪文以外では対処が難しくなっています。メタ外に位置するアーキタイプであり、1ゲーム目は特にコンボが決まりやすくなっています。
メタゲームの隙間をぬいながらも大きな戦果を挙げた《不屈の独創力》コンボ。エリア予選最序盤に複数名の権利獲得者を出しています。
《大勝ち》から綺麗に5ターン目に決まってしまえばなす術がありませんし、中長期戦では豊富なインスタントトリックを駆使してコントロールのように立ち回れます。誤ってクリーチャーを引いてしまった場合も《ヴァラクートの覚醒》でライブラリーへ戻せるため一安心です。
基本的には《大勝ち》で宝物トークンを生成してコンボへとむかいますが、万が一のときは《鏡割りの寓話》でも代用できます。ゴブリントークンが攻撃し宝物トークンを生成することが条件ですが、コンボに必要な条件を1枚で満たしてくれます。
白単人間
黎明期より脈々と受け継がれた白単アグロの亜種であるこのデッキは、歴代の優良クリーチャーをベースに構築されています。2マナ域にラインナップされた《スレイベンの守護者、サリア》《光輝王の野心家》《サリアの副官》を見ればうなずけるというもの。いずれのクリーチャーもボードに大きな影響をもたらしてくれます。
低コストクリーチャーによるダメージ効率のみが強みだとしたら、白単人間はそれほど優れたアーキタイプとはいえなかったでしょう。このデッキは単色ながらクリーチャーによる妨害要素と、中長期戦を戦い抜く仕掛けがあるのです。
新戦力である《選定された平和の番人》は《精鋭呪文縛り》と近いものの、起動型能力にも影響を及ぼします。それこそ《パルヘリオンⅡ》などの機体を指定すれば着地から瞬時に「搭乗」することは難しいでしょう。攻防一体のクリーチャーですね。
《焼けつく双陽》や《神々の憤怒》などのダメージ系の除去に対しては《精霊への挑戦》が用意されています。1マナと構えやすい防護カードであり、ときにはブロックを突破して最後の一撃をねじ込む用途の広いカードでもあります。このカードがある限り、ブロッカーが並んだ状況でも安心はできません。
おわりに
今回はエリア予選の総括として環境とデッキを振り返ってきましたが、改めてラクドスミッドレンジの活躍を思い知った次第です。次の環境では絶対王者を脅かすデッキが登場するのでしょうか?
11月にはチャンピオンズカップファイナルとプレイヤーズコンベンションが開催される予定です。フォーマットはパイオニアであり、『兄弟戦争』発売直後ということでどんな変化があるのか楽しみですね。
さて、本稿をもちまして、プレミアム予選から続いてきたパイオニア情報局はひとまず終了となります。各店舗様におかれましてはご協力いただき誠にありがとうございました。
それでは、またいつか!
(本稿ではデッキの詳細解説は行わないため、それにつきましては以下の記事をご覧ください。トッププレイヤー視点での環境解説がございます。 )
- 2022/8/12
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