第6期統率者神決定戦、その現場へ。テキストカバレージ・インタビュー

いってつ

第6期統率者神決定戦、その現場へ。

晴れる屋メディアのいってつです。

先日開催された第6期統率者神決定戦。第3期統率者神のタカハシ選手が脅威の8連勝の末に神の座にかえってきた。

あの日あの時、現場では何が起こっていたのか。カバレージとインタビューを通して皆さんを伝説の現場へお連れしよう。

選手紹介

神タテツ「パコハル」

秘儀を運ぶもの、パコ熱心な秘儀術師、ハルダン

まったく無名ながら、第5期統率者神決定戦では冷静でクリティカルなプレイでわれわれを魅せたタテツ選手。使用するのは前回と同じく《秘儀を運ぶもの、パコ》&《熱心な秘儀術師、ハルダン》

ぐんぐん育っていく《秘儀を運ぶもの、パコ》でライフを脅かしながら、対戦相手の打ち消しや除去でガードし、隙あらば追加ターンで一気に畳みかける。《秘儀を運ぶもの、パコ》に一度殴られただけで取り返しのつかないアドバンテージ差を広げられてしまうことも珍しくない。

挑戦者タカハシ「ティムクラ」

織り手のティムナルーデヴィックの名作、クラム

第3期統率者神、タカハシ選手が神決定戦のテーブルに戻ってきた。その統率者戦にストイックに向き合う姿勢から、「1日に30時間プレイしているらしい」「邪神」とささやかれる。前日の予選ラウンドを無敗で突破し、「8-0」をかけたゲームに挑む。

使用するのは今回も《織り手のティムナ》& 《ルーデヴィックの名作、クラム》 。青のアドバンテージ、黒のサーチ、赤のマナ加速と《死の国からの脱出》。いま競技統率者戦でもっとも強いデッキのひとつだが、そのあまりの選択肢の多さでプレイ難度も非常に高く、多くのプレイヤーが「ティムクラから逃げた」といわれる。

挑戦者カスガ「ティヴィット」

秘密売り、ティヴィット

グランプリ優勝など、競技シーンでも輝かしい成績を残してきたカスガ選手。ここ数年は競技シーンから離れ、統率者戦を中心にプレイしてきた。

選択したデッキは《秘密売り、ティヴィット》。統率者自身は重量級だが、そのスタッツと破壊耐性でボードで存在感を放ちながら、《時の篩》との1枚コンボ、豊富なサーチとドローでコンボパーツをかき集めてのオラクルコンボなど、さまざまな角度からリーサルを狙う。

挑戦者ナカムラ「ローアン」

戦争の世継ぎ、ローアン

プレイヤーズコンベンションで行われる日本レガシー選手権で二連覇を果たしたエターナル界の強豪が統率者戦でも存在感を放つ。 《ロフガフフの息子、ログラクフ》&《愚者滅ぼし、テヴェシュ・ザット》 ターボの開発者としても知られ、統率者神のメタゲームの中心人物の一人ともいえるだろう。

選択したのは 《戦争の世継ぎ、ローアン》《色あせた城塞》 などで自分のライフを犠牲に呪文のコストを大幅軽減し、ドロー呪文、儀式呪文と連打、最後には《ドラゴンの嵐》がゲームを終わらせる。登場から1カ月程度の統率者だが、そのデッキの開発状況を秘匿していたため、参加者のほとんどはこのデッキを知らず、文字通りなすすべなく嵐に巻き込まれたのだった。

ゲーム

ゲーム順
※以下文中ではプレイヤー名を「」内の統率者の略称で呼称する。

神タテツ「パコハル」
挑戦者タカハシ「ティムクラ」
挑戦者カスガ「ティヴィット」
挑戦者ナカムラ「ローアン」

魔力の櫃赤霊破ガイアの揺籃の地

パコハルは《魔力の櫃》《ジェスカの意志》《赤霊破》《ガイアの揺籃の地》を含む土地4枚でキープ。《秘儀を運ぶもの、パコ》を早期に着地させてマウントを取って行ける手だ。

マナ吸収

妨害札が《赤霊破》のみで、防御の面でやや不安はあるものの、一発目のドローは《マナ吸収》。対戦相手の呪文を打ち消しつつ、除去された《秘儀を運ぶもの、パコ》を唱えなおすのに必要なマナを稼げる、最適なカードを手に入れた。

Mystic Remora

パコハルが《魔力の櫃》をプレイしてターンを回すと、ティムクラは少し悩んでから《神秘的負荷》を唱える。《水蓮の花びら》はあるものの、1ターン目に《神秘的負荷》をプレイしてそれを維持する選択を取り続けると、毎ターン土地を置けても使えるマナが増えなくなってしまう。

「――だから、難しいですよ。2ターン目に《織り手のティムナ》だして、それから《神秘的負荷》をだすのか、《神秘的負荷》を先に出すのかの判断は」

パコハルは予定どおり2ターン目に《秘儀を運ぶもの、パコ》を発進。そのめくれたカードは……

思考停止セヴィンの再利用ヴァラクートの覚醒

ティムクラ「はぁ~~~~????」

《思考停止》を奪われ、抗議のような悲鳴がティムクラからあがる。コンボパーツをひとつ失ってしまったことになる。

ティムクラは受け取ったターン、《神秘的負荷》を維持し、《水蓮の花びら》を使いながら《滅ぼし》《秘儀を運ぶもの、パコ》を除去。《秘儀を運ぶもの、パコ》の脅威は見過ごせないが、それにしてもマナアーティファクトが他にまったくない中で思い切った選択だ。

このエンド前、ティヴィットからは《オークの弓使い》が着地!ティムクラの戦場には《神秘的負荷》があり、ゲームが一気に難しくなった。《神秘的負荷》は「ドローしてもよい」という能力なので、《オークの弓使い》の能力を誘発させないためにあえて引かないという選択もありうるのだ。

オークの弓使い

すでにローアンの《戦争の世継ぎ、ローアン》《オークの弓使い》から1点のダメージが与えられており、もう一枚のカードを引けば《戦争の世継ぎ、ローアン》は撃墜されかねない。ただでさえ4番手である

画像のタイトル

《オークの弓使い》の着地で緊張するプレイヤーたち

さて、このままゲームの主導権を握りたいティヴィットだが、《秘密売り、ティヴィット》にパコハルの《マナ吸収》が命中。パコハルはティヴィットの追撃をかわしつつ《秘儀を運ぶもの、パコ》を再び唱えるマナを得た。

次のターン、《秘儀を運ぶもの、パコ》がさっそくの再登場。速攻を持っていることもあり、テンポロスは全く感じさせない。《熱心な秘儀術師、ハルダン》まで着地させ、他を圧倒する。

前回の第5期統率者神決定戦ではパコハルことタテツ選手は勝利こそしたものの、そのプレイの仕草には「恐る恐る……」というかんじで覇気が感じられなかったが、今日は違う。のびのびとプレイしているし、逆に力強ささえ感じる。

《オークの弓使い》は何度も誘発しているが、《熱心な秘儀術師、ハルダン》《秘儀を運ぶもの、パコ》もスタッツが大きく、有効ではない。

自然の怒りのタイタン、ウーロディープ・ノームの地形術師

さらに《自然の怒りのタイタン、ウーロ》をプレイするパコハル。ティムクラはこのテキストを確認し、《ディープ・ノームの地形術師》をプレイ。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》の能力に反応して土地が伸びる。

この展開はティムクラが第3期統率者神となったゲームに似ている。そのゲームでは《リスティックの研究》で手札を、《ディープ・ノームの地形術師》で土地を伸ばしていた。

さて、受け取ったターン。ティムクラは4マナを支払い《神秘的負荷》の維持を選択。《織り手のティムナ》をプレイしてターンを終える。

むかつき

が、ここでティヴィットから《むかつき》《神秘的負荷》はまだ戦場にあるが突っ張ってきた。ローアンは土地が伸びず統率者も除去されなすすべなし。さて、マナを伸ばしているパコハルは……

「えー……パスですね。パス」
「パスぅ!?」

ティムクラからは驚きの声があがる。この時点でパコハルが握っていた妨害は《紅蓮破》のみで、これは《むかつき》に当たらない。

紅蓮破激情の後見

ティムクラはここまで《神秘的負荷》でドローを重ねており、当然ここは介入する。《激情の後見》《むかつき》をカウンター。

《むかつき》が打ち消されゲームは続く。が、「頼みますよぉ!ねえ!」というティムクラに、パコハルはばつが悪そうに「いやー、すみません」とはにかむ。

この《むかつき》へのリアクションがゲームを決する分岐点のひとつになってしまった。

「あの《むかつき》のやり取りで透けちゃいましたね、手札が」

まわるティヴィットのターン、打ち消しを1枚使わせて《秘密売り、ティヴィット》の再着地を狙うが、ここにパコハルから《紅蓮破》が放たれ、失敗。ローアンはここまで土地が伸び悩み、思うように動けない。

約束された終末、エムラクール

さあ、ここでふたたびパコハルのターン。なんと引いたカードは《約束された終末、エムラクール》手札が膨れ上がったティムクラをコントロールすれば勝利できる可能性もある。唱えるマナは十分ある。

ここで私はあらためて全員の手札を確認した。ティムクラの手には《願い爪のタリスマン》《ギャンブル》。マナも十分。ティヴィット、ローアンの手には妨害らしいカードがない。

これは勝つ!勝ってしまう!勝ったッ!第6期完!パコハルの防衛だ!

さる8月の歴代神4人によるエキシビションマッチでは《約束された終末、エムラクール》でティムクラ(タカハシ選手)のコントロールをとったエドリック(第4期統率者神ヨシダ選手)が勝利している。その隣にはパコハルが座っていたのだ。

私も当時そのゲームを見ていた。今度はパコハルが勝つんだ。そう思ったが、《約束された終末、エムラクール》はプレイされないままターンが回ってしまった。《ジェスカの意志》を唱えたがこれはティムクラに消され、《秘儀を運ぶもの、パコ》で奪った《一つの指輪》をプレイ、プロテクションを得てターンを終えた。

偏向はたき精神壊しの罠

確かに、《戦争の世継ぎ、ローアン》から《偏向はたき》《秘密売り、ティヴィット》 から《精神壊しの罠》が飛び出て仕掛けに失敗すると敗北に直結しかねない。それならボードの有利を確実に維持して次の機会を待つ……という判断だろうか。

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ティムクラことタカハシ選手。

一方、思案するティムクラ。ティムクラの目線からもこのテーブルにほとんど妨害がないことが見えている。

《秘儀を運ぶもの、パコ》は妨害カードを追放できていない。
パコハルは《むかつき》に介入しなかった。
パコハルは《秘密売り、ティヴィット》《紅蓮破》を撃った。
ティヴィットは《むかつき》を通す打ち消しを撃たなかった。
ティヴィットは《秘密売り、ティヴィット》を通す打ち消しを撃たなかった。
ローアン側はフルタップで、《猿人の指導霊》もすでに使っている。

…………。

《神秘的負荷》は(維持コストを)払わない」。《神秘的負荷》を墓地に置くティムクラ。実際は粛々とカードをプレイしていく。トラッシュトークが魅力の選手だが、淡々と手が進んでいく。

ヴァラクートの覚醒

《暗黒の儀式》《魔力の櫃》《願い爪のタリスマン》が素通りしていく。ここでティヴィットの手が《秘儀を運ぶもの、パコ》が追放したカードの束に伸びる。《ヴァラクートの覚醒》のテキストを確認する。ティヴィットもこのテーブルに妨害カードがないと察しているのだろう。「これを使えば打ち消しを引けるかもよ……?」というメッセージなのだろうか。

ティムクラの《死の国からの脱出》に対応してパコハルは《ヴァラクートの覚醒》をプレイ。打ち消しを引かせてくれ。手札の《約束された終末、エムラクール》はライブラリー下に消えていく。「約束された終末」……そう、勝利が。トップから引く3枚に……有効カードはない。

死の国からの脱出

はたして《死の国からの脱出》は解決される!!

そのストイックな姿勢から邪神とも呼ばれた「”元”神」が死の国から還ってくる。

タッサの神託者Demonic Consultation

サーチを繰り返して集めたカードは《タッサの神託者》《Demonic Consultation》

《Demonic Consultation》の指定は……《陰謀団の先手ブレイズ》

勝った!!《タッサの神託者》の能力を解決し、勝利!プロテクション(すべて)も関係ない!第3期統率者神であるタカハシ リュウジ選手が第6期統率者神で神の座に帰ってきた!

インタビュー

陰謀団の先手ブレイズ

《Demonic Consultation》で指定したカード

《陰謀団の先手ブレイズ》は統率者戦の禁止カード。そしてタカハシ選手のSNSのアイコン画像でもある。予選ラウンドから数えて、この2日間、24人のプレイヤーを屠って脅威の8-0。次に統率者戦で禁止になるのはタカハシ選手なのかもしれない。

そんなタカハシ選手にインタビューにご協力いただいた。

――優勝おめでとうございます。フィーチャーテーブルにおかえりなさい。

「ありがとうございます」

――予選ラウンドから数えて8連勝。お気持ちはいかがですか。

「いやぁ、なんだかフワフワしちゃって実感ないですね~」

――ゲームを振り返っていかがですか。

Mystic Remora

「70点ってかんじ。パコハルに強いボードを作られちゃったけど 《神秘的負荷》 を維持し続けてカードを集めて勝てた。でも、そもそもパコハルに強いボードを作らせちゃいけないから、そのぶん30点減点」

「タテツさん(パコハル)には悪いことしちゃったね。《約束された終末、エムラクール》があったんでしょ?あれプレイしなかったのたぶん俺のせいだから」

――というと。

「エキシビションマッチのときはパコハル(タテツ選手)が《約束された終末、エムラクール》をプレイして、テーブルの打ち消し枚数が減っちゃって、結果エドリックに追加ターンと《約束された終末、エムラクール》上書きプレイされて負けちゃった。そのあとも彼とゲームする機会あったんだけど、その時も《約束された終末、エムラクール》 で俺を対象にとって、結果負けてるんだよね

約束された終末、エムラクール

「周りの人は《約束された終末、エムラクール》をプレイすべきだったって思うだろうけど、彼は《約束された終末、エムラクール》 で俺を対象に取った結果2回負けてて、”エムラ×ティムクラ=負け”ってイメージがついちゃったんだろうね。だからプレイできなかった。しょうがない。あれは」

――第4期統率者神決定戦では 《トレストの密偵長、エドリック》 を握るヨシダ選手に神の座を譲ることになりましたが、それから今日まではどのように過ごされていましたか。

「あんまり変わらないですが、生活が忙しくなってゲーム数がこなせなくなってしまったので1ゲームの質を高めようと意識していました。ゲーム後の感想戦を必ず行って、ゲーム1回で得るものをなるべく増やそうと」

「出張先でもやれるように機材を宿に持ち込んでましたよ。たくさん練習したくて」

――――

――この神決定戦のあと、私は何度もこんなやり取りをした。

「ティムナ&クラムが勝ったんだって?やっぱあれが最強なんだね」

「いえ、最強なのはタカハシさんですよ」

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ゲーム中のタカハシ選手。
ボードを見つめる視線はまっすぐで、その瞳は深い。

たしかにティムナ&クラムは強い。だが、それ以上にタカハシリュウジ選手が強い。 《フェアリーの黒幕》《オークの弓使い》 が登場して「一段階難しくなった」と言われる環境にいち早くアジャストし、数多の選択肢がある中でもっともミスが少ないのがタカハシ選手だ。これは圧倒的な練習量が生み出した強さである。

――第3期統率者神決定戦では”いっしょにプレイできる仲間が大切だ”とおっしゃっていましたが、それはいまでも変わりませんか。

「変わらないですね!仲間と呑みにいくのもいいけど、統率者戦をもっとやりたい!やろうぜ!

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インタビューにのぞむタカハシ選手
……とその仲間たち

次回は再び神として防衛戦に挑むことになるタカハシ選手。鬼神のごとき強さを誇る彼を破るものははたして現れるのだろうか。

それではみなさん、第7期統率者神決定戦でお会いしよう。

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いってつ 晴れる屋メディアライターです。最近の悩みは記事執筆と動画出演で忙しくて統率者戦が1日2回くらいしか遊べないこと。 いってつの記事はこちら