USA Modern Express vol.107 -まだ死んでいない-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさん、こんにちは。

禁止改定から数週間が経ち、大規模なテーブルトップのイベントがいくつか開催されました。

今回の連載では、禁止改定直後に開催された『Grand Open Qualifier Barcelona 2023』『MMM Finals 2023 in Osaka』の入賞デッキを見ていきたいと思います。

Grand Open Qualifier Barcelona 2023
Rakdosはまだ死んでいない

2023年12月9日

  • 1位 Rakdos Scam
  • 2位 Living End
  • 3位 Temur Rhinos
  • 4位 Amulet Titan
  • 5位 Living End
  • 6位 Living End
  • 7位 Golgari Yawgmoth
  • 8位 Izzet Murktide

トップ8デッキリスト

ヨーロッパで開催されたモダンの予選大会を制したのはなんとRakdos Scamでした。

《激情》が禁止になったことで弱体化を強いられたデッキでしたが、それでも700人以上のイベントで優勝するという高いポテンシャルを見せます。

今大会で多く入賞していたのは、Living EndやTemur Rhinosといった「続唱」デッキでした。また天敵の《激情》が退場したことで、台頭してくることが予想されていたGolgari Yawgmothも勝ち残っています。

デッキ紹介

Rakdos Scam

今月初めの禁止改定によって《激情》が禁止され、Rakdos Scamは環境から姿を消すと予想されていました。しかし、多くの予想に反して新環境用に調整されたRakdos Scamが優勝するという快挙を成し遂げました。

悲嘆まだ死んでいない

《まだ死んでいない》の対象が減ったことで安定性が下がったのは確かですが、1ターン目の《悲嘆》《まだ死んでいない》のコンボは依然としてモダンで強力なアクションになります。

デッキの動きは禁止改定前と変わらず、ハンデスで相手のプランを妨害しつつ《鏡割りの寓話》《敏捷なこそ泥、ラガバン》といった脅威を《オークの弓使い》や効率的な除去でバックアップしていきます。

☆注目ポイント

致命的な一押し稲妻終止

《激情》の禁止により「不死」系スペルとのコンボを狙いづらくなったため、《まだ死んでいない》《マラキールの再誕》の計5枚にのみになっています。また、《激情》の役割を埋めるために除去の枚数が増加されました。

コラガンの命令ダウスィーの虚空歩き

《コラガンの命令》は環境に増えるであろうGolgari Yawgmothに対して有効で、《アガサの魂の大釜》とクリーチャーを同時に触れる優秀なカードです。

《ダウスィーの虚空歩き》はメインから採用できる墓地対策であり、今回プレイオフに3名もいたLiving Endとのマッチアップで有効なクリーチャーです。

Molten Collapse

『イクサラン:失われし洞窟』からの新カード《溶鉄の崩壊》は、《終止》と比べるとソーサリーであることがネックになりますが、ラクドスカラーでエンチャントに触れるのは大変貴重なので重宝します。

Temur Rhinos

「続唱」系のデッキも禁止改定による影響を受けず、予想通り今大会で結果を残していました。

断片無き工作員衝撃の足音暴力的な突発

Temur Rhinosは《断片無き工作員》《暴力的な突発》といった「続唱」から《衝撃の足音》をプレイし、ビートダウンするデッキです。3ターン目から展開される4/4トランプルを2体対処することは容易ではなく、デッキもそれほど複雑でないためモダン初心者にもオススメできるデッキになります。

構築に制限があるため、《死亡/退場》《火/氷》といった分割の除去カードを使ったり、《緻密》《否定の力》といったピッチスペルで自分の動きをバックアップしていきます。

☆注目ポイント

Tishana's TidebinderFlame of Anor

《ティシャーナの潮縛り》は『イクサラン:失われし洞窟』からの新戦力で、《一つの指輪》の能力をカウンターしつつ無効化したり、「続唱」デッキの天敵である《虚空の杯》も無力化することができるなど、さまざまなデッキに対して有効です。クリーチャータイプがウィザードなので《アノールの焔》の恩恵を受けることができるところも重要で、2つのモードを使用できるようになります。

神秘の論争Brotherhood's End

メインから採用されている《神秘の論争》は、主に「続唱」を無効化してくる《時を解す者、テフェリー》対策です。相手のカウンターに対して唱えやすく、《衝撃の足音》を通しやすくなります。

Golgari Yawgmothなど小型クリーチャーを多用するデッキ対策として《兄弟仲の終焉》もメインから採用されています。このカードもアーティファクト対策になるため、全体的に《虚空の杯》など置物対策が徹底しています。

Izzet Murktide

今回の禁止改定によってRakdos Scamが弱体化したため、Izzet Murktideが現環境最高の《敏捷なこそ泥、ラガバン》デッキとして有力視されています。

コンボに強かったRakdos Scamの減少で、Living EndやAmulet Titanといったコンボデッキが増えるので、Izzet Murktideはいい立ち位置にあります。

豆の木をのぼれ

また、《豆の木をのぼれ》が禁止になったことで相性の悪い多色コントロールが弱体化したことも、このデッキが勝ちやすくなった理由になります。《豆の木をのぼれ》が通ってしまうと《力線の束縛》などをカウンターしたとしてもアドバンテージを取られ続けてしまうため、旧環境では厳しいマッチアップでした。

☆注目ポイント

帳簿裂き

Rakdos Scamが弱体化して以前よりも《オークの弓使い》の脅威に晒されることがなくなったため、《帳簿裂き》も再評価されるようになりました。

ティシャーナの潮縛り

《ティシャーナの潮縛り》はこのデッキでも採用されています。《一つの指輪》《魂の洞窟》からプレイされた《原始のタイタン》なども対策することが可能など、多くのマッチアップで活躍します。

血染めの月Cursed Totem

土地コンボの増加を見越してメインから《血染めの月》が採用されています。マッチアップによって強さが変動するカードですが、《帳簿裂き》によって有効牌に変換できるため、メインから採用しやすくなっています。

サイドの《呪われたトーテム像》は、相性の悪いGolgari Yawgmoth対策で、マナクリーチャーなどを無力化しつつ《血染めの月》で色マナを制限すればかなり有利にゲームを進めることができます。

MMM Finals 2023 in Osaka
続唱が禁止改定後のモダンを支配する

2023年12月9日

  • 1位 Living End
  • 2位 Temur Rhinos
  • 3位 Esper Control
  • 4位 Amult Titan
  • 5位 Scape Shift
  • 6位 Azorius Control
  • 7位 Izzet Murktide
  • 8位 Goblins

トップ8デッキリスト

日本国内のモダンのイベントで参加者86名で行われました。

プレイオフに入賞したすべてのプレイヤーが異なるデッキを選択しており、Rakdos Scamが支配していた旧環境と違って、禁止改定後はさまざまなデッキにチャンスがある環境のようです。

デッキ紹介

Living End

環境からRakdos Scamが減ることは《ダウスィーの虚空歩き》が減ることでもあるため、Living Endは相対的に強化されたデッキになります。

『指輪物語:中つ国の伝承』から「土地サイクリング」クリーチャーを得たことで安定性が大幅に向上したこともあり、禁止改定後の有力な選択肢になります。

☆注目ポイント

緻密否定の力

《緻密》《忍耐》《時を解す者、テフェリー》《ダウスィーの虚空歩き》といった墓地対策や「続唱」を妨害してくるカードを対策することができます。禁止を免れた《悲嘆》《否定の力》により、キーカードの《死せる生》を無理やり通すという動きも健在です。

気前のよいエントTroll of Khazad-dum

《気前のよいエント》《カザド=ドゥームのトロール》の登場で、土地の枚数を15枚にまで削ることに成功しています。《気前のよいエント》《森》をサーチできるので、《血染めの月》にも耐性がつきました。回避能力持ちの《カザド=ドゥームのトロール》は、Golgari Yawgmothなど小型クリーチャーが多いデッキに対してチャンプブロックを許さないため、信頼性の高いクロックになります。

デッキ紹介

Amulet Titan

もともとRakdos Scam以外で相性が悪かったデッキが少なかったこともあり、『Grand Open Qualifier Barcelona 2023』でも結果を残していました。

《精力の護符》とバウンスランドによるマナ加速を利用することで最速で2ターン目から《原始のタイタン》をプレイすることができ、ほかのコンボに対しても速度で勝負することができます。

☆注目ポイント

一つの指輪

《一つの指輪》は4マナと比較的軽いコストなので、《血染めの月》を置かれてもプレイしやすいアドバンテージ源です。このデッキに対する有力な対策手段である《緻密》で対処されないこともポイントです。

Spelunking

『イクサラン:失われし洞窟』から登場した《洞窟探検》は、キャントリップしつつ追加の土地をアンタップ状態で置くことができるなど《精力の護符》のように機能し、バウンスランドともシナジーがあります。しかし、《精力の護符》と異なり複数置いても効果が倍増されないので注意が必要です。

総括

予想通り、Golgari Yawgmoth、Amulet Titan、Living End、Temur Rhinos、Izzet Murktideなど禁止改定による影響を受けなかったデッキが中心に結果を残しています。

《激情》が禁止になったことでRakdos Scamは衰退すると思われていましたが、今回紹介したイベントで優勝したことにより、健在であることが証明されました。禁止改定後の環境でもRakdosが活躍をし続けるのか、今後の動向からも目が離せません。

USA Modern Express vol.107は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!みなさん良いお年を!

この記事内で掲載されたカード

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら