第7期モダン神決定戦: 松田 幸雄(東京) vs. 大池 倫正(東京)

晴れる屋

By Genki Moriyasu



 モダン神・松田 幸雄。




 前回の【第6期モダン神決定戦】にて、当時のモダン神であったゴールドレベル・プロの市川 ユウキを打ち倒して見事、神の世代交代に成功した立役者だ。

 【第3期スタンダード神挑戦者決定戦】も制しており、2度に渡る神討ちの舞台への登壇は、過去に彼1人しか経験していない。“中野の最終兵器”とも称される確かな実力を持ち、また大一番に強いことをハッキリと世界に知らしめたのが【前回】だ。

 しかしそれだけではなかった。松田はその神の座を活かし、中野コミュニティから進出して晴れる屋トーナメントセンターでの大会出場を繰り返した。

 8月期の【晴れる屋TC番付表】にてスタンダード部門1位を獲得している。端的に言えば、今年の8月、晴れる屋で最もスタンダードを勝利した男だ。その期間勝利ポイントにして実に331点。1か月の間に、100勝以上の勝ち星を挙げていた。

 主に黒単色のエルドラージストンピィを用い、【3戦全勝は14回】にも及んでいる。

 松田は大一番に強い“ビッグゲーム・ハンター(大金星)の男”ではなかった。“強く、巧く、そしてマジックにのめりこむ才覚を持った男”だったのである。

 ちなみに【事前インタビュー】では「モダンの大会に出る頻度は落としている」と答えていたが、直近の10/28付けの晴れる屋モダン大会にて、勝利者としてその名をしっかりと刻み込んでいた。そのデッキは【第6期モダン神挑戦者決定戦】を勝ち抜いたときと同様に「親和」とカテゴライズされているが――



松田 幸雄「挑戦者よ、これが冥府親和だ!」
平日モダン20時の部 – 2016/10/28(3-0)

4 《霊気拠点》
4 《ちらつき蛾の生息地》
4 《ダークスティールの城塞》
3 《空僻地》
4 《墨蛾の生息地》
1 《島》

-土地 (20)-

4 《電結の荒廃者》
4 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
1 《約束された終末、エムラクール》
3 《搭載歩行機械》
3 《メムナイト》
1 《羽ばたき飛行機械》
2 《信号の邪魔者》
4 《大霊堂のスカージ》

-クリーチャー (22)-
4 《霊気池の驚異》
4 《頭蓋囲い》
4 《オパールのモックス》
2 《密輸人の回転翼機》
4 《バネ葉の太鼓》

-呪文 (18)-
2 《呪文滑り》
2 《古えの遺恨》
3 《感電破》
2 《思考囲い》
2 《鞭打ち炎》
2 《ギラプールの霊気格子》
1 《墓掘りの檻》
1 《大祖始の遺産》

-サイドボード (15)-
hareruya



 その実態は、最速で展開したアーティファクト・パーマネントを《電結の荒廃者》で生け贄にし、《霊気池の驚異》で貯めたエネルギーで《引き裂かれし永劫、エムラクール》を唱えるという脅威のデッキリストであった。


引き裂かれし永劫、エムラクール霊気池の驚異


 デジタルカードゲーム『シャドウバース』に存在する類似(?)したデッキタイプから「冥府親和」と名付けられた、新デッキだ。正しいデッキ名は「挑戦者よ、これが冥府親和だ!」であり、明らかに今回の戦いを意識した命名となっている。

 実際に【事前インタビュー】でも《霊気池の驚異》の活用方法がないか模索している”と話している。情報に敏いものたちのなかでは松田が今回「冥府親和」を本当に持ち込むかどうかが議論されていたようだ。

 なお、4期~6期を務めたモダン神・市川ユウキは嘘デッキを予告先発するジョークを愛用していたが、果たして(真偽を問わず)この“予告先発制度”はモダン神の役割として引き継がれていくのだろうか。(なお【前回】のみ、市川ユウキは嘘予告ではなく予告通りの「親和」を持ち込んでいる。)

 相対する大池 倫正の人となりは【事前インタビュー】にて少しばかりつまびらかにされたばかりだ。




 こよなくハンデスを愛する男。インタビューの受け答えから読者へ与える印象は、“柔らかい物腰と一貫したサディズムの追究”だろう。《燃え立つ調査》をモダン版《トーラックへの賛歌》と呼ぶ男を、筆者は彼の他に知らない。


燃え立つ調査トーラックへの賛歌


 そしてその自らの嗜虐性をデッキに落とし込むのが上手い男だ。【第7期モダン神挑戦者決定戦】にて御披露目された「ドレッジ」は、強豪ひしめいた決勝トーナメントで彼を優勝へと導いた。そのデッキタイプの完成度が人々に知られるや否や「ドレッジ」はTier 1入りを果たして、モダンの代名詞の1つとなったほどだ。

 【事前インタビュー】にて使用デッキとして名を挙げている「カラスローム」や「ランタンコントロール」も、彼を指し示すヒントだ。どちらも、ハンデスが本来もたらす“1:1交換”という性質を、使用者側により有利に傾くようなシナジーが搭載されているデッキタイプだ。

 じりじりと、じりじりと、じりじりと。

 対戦相手は動きが拘束されて次第に苦悶してゆき、戦場と手札を支配する大池の心にゆっくりと充実感が染みていく。ともにそんなデッキタイプだ。

 精神的な方向性ばかりの話だけではない。「カラスローム」も「ランタンコントロール」も、コンボ要素を含めつつも極めて遅いコントロールデッキに属する。それはつまり、相手の動きを的確に予測していき、コントロールしきるだけの力量がユーザーになければ成立しないデッキということでもある。

 大池の実力の一端は、彼が愛用するデッキタイプの選択肢からも滲み出ているのだ。

 彼が今回撃ち倒すべきモダン神・松田は【第6期モダン神挑戦者決定戦】では「親和」を選択し、【第6期モダン神決定戦】では「バーン」を相棒とした。アグロと呼ばれるアーキタイプが続いているが、予告先発してみせている「冥府親和」はコンボ軸も主張されており、趣きの異なる毛色をしている。

 大池の目線から「松田が選ぶであろうデッキ」と、「それに打ち勝つべく選んだハンデス・デッキ」はいったい何になるのだろうか。

 既に互いに持てる信条と研鑽をデッキに集約させている。そしていま、シャッフルという儀式によってその2つが混ざり合う。卓上で火花を散らし、より強い煌めきで相手を呑み込んで見せるのはどちらとなるのか――


 第7期モダン神決定戦。開幕。







Game 1


 ――幕が、なかなか開かない。

 先手となった松田が7枚を見て、苦渋の表情でマリガンを宣言する。そして6枚を見て、苦渋の表情と一声が漏れてマリガンを宣言する。そして5枚を見て、苦渋の表情と一声と、かすれた笑い声が漏れてマリガンを宣言する。

松田「なんだよこれー……」

 松田もまた、神としての矜持を持っていた。神決定戦にかけた意気込みは他の誰にも劣らない。しかしその意気込みに、初手が応じてくれないことを嘆いていた。

 1枚ずつ引いた4枚の組み合わせは松田に最後の希望ではなく、ため息をもたらした。


 そして長い長い逡巡のあと、決意の面持ちでキープを宣言した。こうして神決定戦史上初の事態を視聴者は観ることになる。


松田「ターン、返します」


 セットランドの宣言の代わりに、松田は何もせずに先手第1ターンの終了宣言を戦場に響かせた。


 大池の後手第1ターン。《花盛りの湿地》から《コジレックの審問》をプレイする。


コジレックの審問


 やはり大池はハンデス・デッキを選択していた。きわめて順調ともいえるセットプレーの始まりだ。

そして、松田が手札を公開する代わりに、いま再びしっかりと宣言する。


松田「投了します」


 神決定戦史上初の1ターンキル。

 Game 1の勝ちを譲る代わりに、松田は大池に一切の自らのデッキの情報を与えなかった。4枚のハンドのうちにあった1枚の土地カードを1ターン目に置かないことを選んででも、松田は”次のメイン戦”の優位性を獲得したのだ。

 メインボードで2回ゲームを行うBO3(3本先取)制度。普段よりもより長期的にマッチを見据えた松田が、勇気ある撤退を選んだ。


松田 0-1 大池




Game 2


 そして再びの松田の先手からGame 2が始まる。今度は充分に戦えるハンドであることは、力強いキープの宣言が訴えている。

 そして先手第1ターン、今度はセットランド権が適切に行使されることとなった。


ウルザの鉱山彩色の星


 《ウルザの鉱山》セット。《彩色の星》プレイ。

 Game 1、松田が負け試合で晒すのを嫌ったウルザ・ランドがついに御披露目となった。デッキタイプ「ウルザトロン」だ。

大池「なるほど!」

 《コジレックの審問》で手札の公開を嫌った理由が、対する大池にも明らかとなった。

 「ウルザトロン」は非常にパワフルなデッキだが、幾つかの致命的な対策カードが存在する。その対策カードがもし大池のメインボードに採用されていた場合、Game 2ではそれを引くマリガンが選択されてしまうかもしれない。

 松田は自らのデッキの性質も弱点も完璧に把握した上で、Game 1をあえて見捨てていたのだ。全てはマッチに勝たんが為に。




 3枚の《彩色の星》で色マナにも掘るスピードにも不自由しない松田が、《森の占術》を絡めて土地を伸ばしていく。「ウルザトロン」を回すのに必要なのはマナの総量だ。ウルザ3種のそろい踏みこそ遠いが、《ウルザの鉱山》《ウルザの塔》《燃え柳の木立ち》《森》と、セットランド自体は順調だ。

 すでに戦場に置かれている《探検の地図》の起動ができればウルザランドが揃い、爆発的なマナ加速が決定するのだが――

 この間。大池も自らのデッキの全容を、松田と神決定戦を視聴するすべてのプレイヤーに晒していた。

 1ターン目《花盛りの湿地》から《洞察のランタン》


洞察のランタン


 このカードを使用するデッキも、モダンには1つしかない。

 デッキタイプ「ランタンコントロール(ランタンミル)」。

 【事前インタビュー】で使い慣れ親しんでいると答えた、モダン随一の最遅コントロールデッキだ。およそ1年に渡って「ランタンコントロール」の修練を積んできているという。その修練の結果が、今日、最高の舞台で試される。

 互いにデッキをさらけ出したあと、続く2ターン目に《真髄の針》で戦場の《探検の地図》を刺し、松田の足回りを鈍らせてゆく。対「ウルザトロン」との闘い方もしっかりと踏まえている様子だ。

 4ターン目には《幽霊街》セットから《ウルザの塔》を割り、《外科的摘出》でライブラリー中から同名カードを全て抜き切った。これで松田はウルザランドを揃えることができなくなった上に、ライブラリーの構成まで把握されてしまった。


 だがしかし、この膠着状態にあって8ターン目まで松田のセットランドが止まることはなかった。《写本裁断機》でドローの質が多少落とされるものの、初手に3枚あった《彩色の星》のキャントリップ機能がこれと噛み合う。取捨選択の頻度よりもドローを多く重ねることで、松田のハンドに土地も身もしっかりと加えていくことに成功していた。

 7枚の土地がそれぞれ1マナを生み出し、7マナ。至ってシンプルなマジックのルールが適用され、松田は7マナの呪文を唱える。


解放された者、カーン


 《解放された者、カーン》

 ほとんど唯一の松田への干渉手段であった《写本裁断機》が追放されると、返しのターンのドローで《真髄の針》に辿りつかなかった大池は未練なく投了を選んだ。


松田 1-1 大池


 Game 2終了後。ここでこのマッチ、初めてとなるサイドボーディングの時間を迎える。短い時間のなかで終えたGame 1, 2のなかでも、互いが驚きに満ちた展開となっていた。

 そのことを話し合い、若干の笑い声さえこぼれて、朗らかな雰囲気で会話がかわされた。

松田「ドレッジだと思ったんだけどなあ」

 大池が「ランタンコントロール」マスターであることを、松田は重々承知していた。しかし、神決定戦の舞台にそれを持ち込むことはないのでは、とも思っていたのだ。

 【第7期モダン神挑戦者決定戦】を勝ち抜いた「ドレッジ」が第一候補だと踏んで、メインに《大祖始の遺産》を積んだ「ウルザトロン」を選んでいた。

大池【デッキ予想】で、”トロン(ウルザトロン)”は絶対に使ってこないって話したんだけどなあ」

 大池は「ウルザトロン」を名指しこそしていないが、5種の予想で割合100%を埋めているので、実質的に他のデッキを使う可能性はないと踏んでいたのだろう。「冥府親和」こと《霊気池の驚異》も脳裏の片隅には置いていたらしい。

 デッキの意外性について話しながらも、視線は合わせない。カードの入れ替えを非常に慎重に繰り返していく。決定的なまでにすれ違いを見せたお互いのデッキ予想は、どういった相性を生み出しているのか。

 全体の75枚は勿論、相手のサイドボーディング後のデッキの姿を予測して、対策の対策まで練っていく。

 【デッキリスト】からは、単純に考えれば松田のアーティファクト破壊の枚数が多いことが特徴に挙げられそうだ。

 メインの《世界を壊すもの》《絶え間ない飢餓、ウラモグ》《解放された者、カーン》はもちろんのこと、《仕組まれた爆薬》まで含めてサイド7枚のカードは、大池のアーティファクト大群に突き刺さることだろう。


古えの遺恨自然の要求仕組まれた爆薬


 大池もまた、サイドインするカードの枚数は多そうだ。松田のアーティファクト破壊から《呪文滑り》《溶接の壺》によって本命のパーマネントを守っていく。追加する《外科的摘出》《失われた遺産》でキーカードを根こそぎ抜きとる。

 サイド後の試合展開を予測しながら枚数調整を重ねていく。


外科的摘出失われた遺産


 より互いを“喰らう”のに適した形への変貌し、Game 3が始まる。


Game 3


 大池はキーカードとなる《外科的摘出》2枚を初手に含めた7枚をキープした。松田は即断の1マリガンから6枚をキープし、占術で見たカードはライブラリートップに置いてスタートする。

 ゲームの開始の合図と共に、大池がアクションを取った。


グール呼びの鈴


 《黒割れの崖》から《グール呼びの鈴》。そのままターンを渡すことなく起動して、松田のライブラリートップを切り捨てた。

大池「占術殺しですw」

 半ば冗談めいた口調であったが、マリガン後の占術の貴重さを知る全てのプレイヤーにとって、この”占術殺し”が強いことは明らかだろう。実際にこれで《解放された者、カーン》というエンドカードが墓地に落ち、大池にとって1枚負け筋が減っている。

 松田は1ターン目《彩色の星》、2ターン目《大祖始の遺産》と、静かな動き出しだ。どこかで一気に動くターンを見計らっているようだ。

 その機先を制するべく、大池が動いていく。《グール呼びの鈴》で墓地に落とした《彩色の星》に対し、《外科的摘出》を仕掛ける。


外科的摘出


 松田はこの動きに対して《大祖始の遺産》の1番目の能力を起動し、自らの《彩色の星》を追放して“逃げた”

 大池はそのまま2枚目の《外科的摘出》を、《解放された者、カーン》に合わせる。今度は松田は《大祖始の遺産》2番目の能力を起動し、墓地ごと追放して再び逃げた。


ワームとぐろエンジン


 この二連打を逃げきった松田が、そのまま戦場の主導権を握り始める。《古きものの活性》でウルザランド3種を揃えて、素早く《ワームとぐろエンジン》を着地させた。

 Game 2同様、”ドロー操作”を信条とする「ランタンコントロール」が、着地してしまったエンドカードに対して持つ対抗策の少なさが顕著となった。

 特に”サイズあるクリーチャーのビートダウン”という戦略は、《罠の橋》でしか止められない。しかし《罠の橋》《解放された者、カーン》《精霊龍、ウギン》のみならず、クリーチャーである《絶え間ない飢餓、ウラモグ》《世界を壊すもの》も止めないという弱みもあるマッチだ。

 どのようなサイドボーディングでこのゲームに挑んでいるのかが勝負の分け目となりそうだ。

 しかし大池が求める打開策がハンドに届く前に、松田が攻勢を守るべく更なる攻勢に打って出る。


古えの遺恨


 《古えの遺恨》

 《洞察のランタン》を割り、未だ引かれていないものの必ずや入っているだろう《罠の橋》を墓地から牽制していく。

 そして、《ワームとぐろエンジン》の行く手を止めるものは何もなかった。


松田 2-1 大池



Game 4



 2度目となる大池の先行で始まるGame 4。ここで「ランタンコントロール」初めてとなる”ロケットスタート”で主導権を握りにかかる。

 1ターン目、《洞察のランタン》《オパールのモックス》をプレイ。2ターン目、《伏魔殿のピュクシス》《写本裁断機》2機をプレイ。


伏魔殿のピュクシス写本裁断機


 これで松田の今後のドローは大池の掌の上……となるはずであった。だが、松田はライブラリーが操作された果てのドローで、《仕組まれた爆薬》に届いた。ロケットスタートに対する最高のパーフェクトドローだ。そのまま「X=1」で設置すると、大池の盤面の崩壊は”予約”されてしまう。

 この”予約”を取り消すべく、大池が迎えたアップキープ、ドローする前にトップ操作を自らのライブラリーに対して仕掛けていく。しかし3枚のトップ変更装置では、アーティファクト破壊カードにも、《真髄の針》にもたどり着けなかった。

 最後の選択肢は、戦略の基軸を支える《洞察のランタン》を起動して犠牲にし、ライブラリーをリフレッシュさせるかどうか。


洞察のランタン


 焦点はそこに絞られた。大池が時間をかけて悩む。ライブラリートップの情報は「ランタンコントロール」にとって、あまりにも大きい情報アドバンテージだ。だが、それと同時にそのトップを操作するカードたちも、ハッキリとした勝ち筋となるカードたちだ。

 少なくとも、どちらかを犠牲にしなければならない。そして《洞察のランタン》起動を選択した。

 ライブラリーはシャッフルされ、トップが隠匿された状態でのドローステップに入る。そして、渾身の力と願いを託して引いたカードは――求めるものではなかった。




 大池が成す術なくターンを返すと盤面崩壊の予約は実行に移され、僅かに残った戦力は《黒割れの崖》《オパールのモックス》のみ。それでも《空僻地》セットから《失われた遺産》と続けて、逆転の芽を手繰り寄せていく。

 《失われた遺産》の指定は《解放された者、カーン》。この”賭け”には成功し、松田のハンドから《解放された者、カーン》が1枚抜き取られていく。


世界を壊すもの絶え間ない飢餓、ウラモグ


 しかし”賭け”に成功したはずの大池は、松田のハンドに残った《世界を壊すもの》《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を確認して、ため息をもらす。

 幸いにもプレイマナはどちらもまだ足りない。セットされたウルザランドは未だ2種類であり、3種類目は全てライブラリーに眠っている状態だ。

大池「ウルザランド揃った瞬間に負けかな」

 ライブラリーのシャッフルを終えて、松田に返しながら微笑む大池。

 松田も笑いながらカードを引いた。そして―…





松田「引きました」



ウルザの塔


 松田がセットランドしながら掛けた声に、大池がたまらず笑い声をあげた。

 リフレッシュされたライブラリーの最上段から松田が引き、そして置いたカードは、《ウルザの塔》。「ウルザトロン」の暴発じみた魔力によって《世界を壊すもの》が呼び出される。

 次のターン。魔力は湧き出したままだ。《絶え間ない飢餓、ウラモグ》が呼び出される。

 次のターン。一度溢れた魔力は止まらない。《ウギンの聖域》によって探し出された《世界を壊すもの》が呼び出される。

 エルドラージたちに食べられ、既に大池の戦場にカードらしいカードはない。それでも大池は最後まで戦場に立つことを決めた。

 土地が枯れようとも。ハンドが枯れようとも。勝ち筋が枯れようとも。ライフが尽きるまでは最後の試合は畳まない。






 それが神討ちに挑んだ者の最後の使命と言わんばかりに――


松田 3-1 大池





 予想のすれ違いが生んだ「ウルザトロン」対「ランタンコントロール」という異色の無色対決。

 「バーン」や「親和」といったアグロのやり込みを示し続けてきた松田が、ランプ戦略にも長けるという新たな一面を魅せた。この引き出しの多さは必ずや、今後の神防衛戦に於いて力強い味方となるだろう。

松田「ランタンコントロール、本当にやったことなくて――今度、一緒に遊んで教えてください」

 そして今、「ランタンコントロール」という、モダンが生んだ怪物デッキの操縦技術をもマスターから学び取ろうとしている。マジックに対する幅広い知識の吸収力。本当の松田の武器はもしかしたらそこなのかもしれない。


 1年。「ランタンコントロール」を使い続けてきたという大池。彼の所属するコミュニティでは「ランタンコントロール」使いが他に2人いるらしく、この希少なデッキタイプにしてミラーマッチのコツさえ彼は掴んでいた。

 その1つは互いの勝ち筋がLO勝ちに限定されるため、サイドボード後ライブラリーを70枚にすることだと話している。普通のマッチではサイドボーディングの調整で端数が出ることはあるが、70枚と思い切りの良い数字には中々たどり着けない。

 それほどに突き詰め、追い求め、磨き上げてきた至高の相方と共に、美しく神決定戦を戦い抜いたのだ。松田が選んだ予想外の「ウルザトロン」に対しても、相性的な不利を肌に感じていながら、決して怯むことなく相対し続けた。


 いま改めて神と挑戦者、2人の健闘を祝いたい。


 しかし、このマッチの勝者はただ1人しかいないのだ。






 第7期モダン神決定戦、勝者は松田 幸雄(東京)!

 「モダン神」初防衛成功おめでとう!




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