週刊 統率者戦デッキを作る vol.3 「そのデッキ土地何枚?」

いってつ

週刊 統率者戦デッキを作る vol.3 「そのデッキ土地何枚?」

統率者戦デッキ構築のサポートをする「週刊統率者戦デッキを作る」もいよいよ第3号。

今週からはより具体的なデッキ構築のヒントや素敵なカード紹介が始まりますよ!今回はマジックの基本中の基本、土地を話題にしましょう。

デッキ構築基本中の基本。「土地の枚数」について学んでいこうと思います。統率者戦において、土地を何枚入れるかはアーキタイプやデッキレベル、コミュニティ、時代によって違いがあります。ここでは、はじめて統率者デッキを組む人に向けてお話していこうと思います。ここでのアドバイスが絶対正義ではなく、自分のデッキや周囲の環境に合わせて構築を楽しんでくださいね!

熟練プレイヤーの皆さんは後続のプレイヤーのために、この記事とご自身のデッキのマナベースをぜひシェアしてあげてください!

そもそも土地は何枚入れるべき?

平地

統率者戦に触れる人のほとんどが最初に浮かべる疑問が「デッキに土地を何枚入れるのか?」だと思います。統率者戦は100枚のハイランダー。スタンダードの60枚デッキと同じ理屈で考えてよいものでしょうか。

ラウグリンのトライオーム針縁の小道髑髏砕きの一撃

スタンダードの60枚デッキ構築でよく言われるのは、「土地は4割」だと思います。60枚の4割というと24枚。デッキの重たさによって増減があるでしょうし、近年は「トライオーム」「両面土地」「片面土地」の登場で考え方が変わってきているようですが、「24枚」が一つの基準であることは確かでしょう。

100枚の統率者デッキではどうでしょうか。厳密には統率者デッキのライブラリーは統率者を抜いた99(共闘統率者がいる場合は98)枚。その四割というと39、40枚。

試しにウィザーズが作成した統率者デッキのリストを見てみましょう。いずれも構築済み統率者デッキのものです。

恒久守護のラナールエルフの刃、ラスリル円渦海峡の暴君、アシー鋼の魂、ワイレス

画像左から
『幻影の前兆』土地36枚
『エルフの帝国』土地37枚
『潮流を切り裂け』土地44枚
『戦いに備えよ』土地40枚

やはり40枚前後になっていました。『潮流を切り裂け』は若干土地が多めのようですが、統率者が「土地の追加セット権を得る」、《円渦海峡の暴君、アシー》になっているためでしょう。

ではやはり土地は40枚前後が正しいのでしょうか。

いいえ、スタンダードでもデッキによって土地の多い少ないがあるのと同様、統率者やデッキの内容によって増減があります。例をあげましょう。

虎の影、百合子

晴れる屋でもデッキを好評販売中《虎の影、百合子》のリストを見てみましょう。

こちらは土地が32枚でした。先ほど挙げた4つのデッキと比べると少ないですね。もはや3割程度といったほうが正しいでしょう。なぜこのデッキはこんなに土地が少ないのでしょうか。理由は大きく分けて二つあります。

そもそも毎ターン土地を置けなくても困らないから

《虎の影、百合子》

上忍術{Blue}{Black}({Blue}{Black}, あなたがコントロールしていてブロックされていない攻撃クリーチャー1体を手札に戻す:あなたの手札か統率領域からこのカードをタップ状態かつ攻撃している状態で戦場に出す。)

《虎の影、百合子》たった2マナで何度も戦場へ戻ってくることができる統率者です。《羽ばたき飛行機械/Ornithopter》など、軽量のクリーチャーを置いて2マナ払えれば十分なため、土地が2枚初手にあれば、しばらく土地が引けなくても問題ないのです。実際、このデッキは土地が全体のおよそ1/3なので初手に2枚の土地を持って始めることができそうです。

《虎の影、百合子》

あなたがコントロールしている忍者1体がプレイヤー1人に戦闘ダメージを与えるたび、あなたのライブラリーの一番上のカードを公開してあなたの手札に加える。各対戦相手はそれぞれ、そのカードの点数で見たマナ・コストに等しい点数のライフを失う。

さらに、《虎の影、百合子》自身が序盤から手札を増やしていく能力を持っていることも大きく、デッキの土地枚数が少なくても十分必要なマナを確保していくことができるのです。

二色土地やマナアーティファクトが多数あるから

水没した地下墓地湿った墓汚染された三角州

統率者を出して誘発型能力を使用するまでの行動がとれる目処を、初手の時点でつけておく必要があります。土地32枚では思ったように土地が引けず、マナの色が合わなかったり、単純に足りなかったりするのではないか。そんな懸念を解決するのがフェッチランドや優秀な多色土地の存在です。このリストでは32枚中14枚が二色のマナを出せるか、基本土地を持ってくる土地でした。これなら土地事故でまったく身動きが取れない、ということもなさそうです。

金属モックス

そしてやはりアーティファクトの存在も大きいです。土地よりも高速にマナ基盤を作っていくことができるため非常に強力。土地の枚数を数えるときには、軽量なマナアーティファクトも勘定に入れていいかもしれません。

野生の心、セルヴァラ

同じく晴れる屋通販で販売中《野生の心、セルヴァラ》デッキにいたっては土地が30しか入っていません。

統率者自身をはじめ多くのマナクリーチャーが採用されていること、単色であるため色事故の不安がないことが大きいでしょう。優秀なマナアーティファクトも並んでいます。

リストをたくさん読み、たくさんの人と対戦して僕が気づいたのは、「土地の基準は36枚程度」「より強い土地やアーティファクトを採用することで安定性・速度を上げながら土地の枚数を減らせる」ということでした。

土地はマジックになくてはならないものですが、土地を抜いて呪文を入れるということはそのぶんそのデッキの選択肢がひとつ増えることを意味しています。強力な土地、アーティファクトを採用した結果、より高速で多彩な戦略をとることができるようになるわけです。レベルの高いデッキほど土地が少ない傾向にある理由の一つです。

どうしたら土地の枚数を減らせるのか

例を挙げて説明しましょう。

あなたの手元にウィザーズから発売されている構築済み統率者デッキがあると思ってください。

新たに《魔力の墓所》を手に入れたなら?

魔力の墓所
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《魔力の墓所》1ターン目から3マナの行動を可能にするカードです。どんなデッキに入れても強く、このカードが入っているかどうか、でデッキレベルが計られることもあります。基本土地1枚か《魔力の墓所》か、どちらを引きたいか。後者! という場面が多いでしょう。呪文を抜くのが厳しければ、土地を一枚抜いて《魔力の墓所》を入れてしまっても問題はないと思われます。

新たに《面晶体の記録庫》を手に入れたなら?

面晶体の記録庫

この場合は安易に土地を抜くべきではないと考えています。なぜなら、《面晶体の記録庫》はこれ自体が4マナを要求する、統率者戦としては重いアーティファクトの部類に入るからです。

精神石太陽の指輪

2マナから1マナが出る《精神石》が使われるのであれば、4マナから2マナでる《面晶体の記録庫》も一見すると悪くなさそうです。しかし、このカードを使うためにはまず4マナを用意しなければなりません。実際に使えるマナの量が増えるのは次のターンなのです。基本的にマナアーティファクトを唱えると、そのターンに使えるマナの総量は減ります。《太陽の指輪/Sol Ring》や《オパールのモックス》といったアーティファクトが強いのはこの原則を破るカードだからです。

仮に……アーティファクトのコストを下げるカードが複数枚あるなどアーティファクトシナジーの強いデッキや、大量の無色マナを要求する《真実の解体者、コジレック》デッキなら十分採用を検討できるでしょう。緑を含まないデッキがとにかくたくさんのマナが必要! という場合も考えてみていいかもしれません。しかしそれでも土地一枚をこれと入れ替えてよいものでしょうか。「あと1マナあれば切り札が出せる! ドロー……!」欲しいのは土地でしょうか、《面晶体の記録庫》でしょうか。

土地を減らしてみたけれど、今度はなかなか土地が引けなかった。

当然、その日その日の運にもよるので一概には言えませんが……多くの場合、土地が引けず、統率者も出せないままゲームが終わってしまう原因はドロー不足かもしれません。土地を4枚以上一気に減らしてしまった直後、ということでもない限り、呪文一枚を土地に変えるより、軽量なドローできるカードに切り替えたほうが動きはよくなるでしょう。ゲームが長引くと、土地の必要度は徐々に落ちていきます。一方、ドローできるカードはいつ引いても使い出があります。もしデッキの固有色がドローを許す色なら、土地増やすよりもドローを増やしたほうが良いことも多いのです。

水底のドルイド、タトヨヴァ織り手のティムナトリトンの英雄、トラシオス

手札を増やすギミックを持つ統率者が強いと言われる理由の一つでもあります。よりよい手札を求めて積極的にマリガンすることも可能になるからです。

思案闇の腹心虎の影、百合子

統率者戦で「青」「黒」が強いと言われる理由でもあります。

渦まく知識

余談ですが、統率者戦において「《渦まく知識》があるから土地1枚キープでいいや」は統率者戦ならではのリスクがあることに注意しましょう。もし3枚引いて土地が一枚もなかったら――向こう2ターン土地が引けずろくに行動できない間に対戦相手は2ターン分の行動をしっかりとってきます。しかも、対戦相手は3人いるのです。あるいは――《船殻破り》を出されてしまったら? そうやって何人も倒れるのを見てきました。マリガン判断は慎重に。

構築済デッキから考えてみよう

基本に帰れ

さあこのあたりでちょっと振り返ってみましょう。

恒久守護のラナールエルフの刃、ラスリル円渦海峡の暴君、アシー鋼の魂、ワイレス

『幻影の前兆』土地36枚
『エルフの帝国』土地37枚
『潮流を切り裂け』土地44枚
『戦いに備えよ』土地40枚

いずれもウィザーズが作ったリストなのに、なぜ土地の枚数にばらつきがあるのでしょうか。一緒に考察してみましょう。
※いずれも筆者いってつによる独自の考察です。ウィザーズの監修は受けておりません。

『幻影の前兆』土地36枚、『エルフの帝国』土地37枚

先祖の物語  スケムファーの報奨

36枚,37枚と、どちらも先に挙げた「基準は36枚程度」に合致しています。構築済みデッキとあって、高額なマナアーティファクトはもちろん入っていませんが、前者は青が絡み手札を増やすことができ、後者はマナ加速ができるエルフデッキです。

『潮流を切り裂け』土地44枚

船団の災い魔瓜二つ切り首嵐のハイドラ

先にも述べましたが、《円渦海峡の暴君、アシー》は土地を置くことでドローするクリーチャー。終盤でも土地がそのままドローカードにかわりますし、ゲームの最終盤まで土地が伸び続けることアテにした大きめのクリーチャーも採用されています。序盤はもちろん終盤も土地を引くことにメリットがあるデッキであるため、意図的に土地を多めにしてあるのですね。

『戦いに備えよ』土地40枚

鋼の魂、ワイレス

問題のワイレス君です。大事なのでもう一度画像を載せておきます。こちらは土地が40枚と、基準より少し多めの設定に見えます。なぜなのでしょうか。統率者自身にもドローするギミックがありますし、36枚でもいいのではないでしょうか。

ここで重要になってくるのは「白赤」というカラーです。カラーパイの話はまだ覚えていますか?

白も赤もドローは決して得意なほうではありません。マナ加速についても、白はかろうじて、ほんのちょっとだけ、申し訳程度にしかできません。赤は瞬間的にマナを出すカードが存在しますが、このデッキにはほとんどみられません。マナアーティファクトも必要最小限しか入っていません。

統率者のドロー能力が序盤にはなかなか使えないということです。戦場に出て、装備品を付けて、攻撃して初めてドローができるのです。つまり、マナ加速ができなければ4ターン目にようやくドローできるのです。それまでは、土地を自前で用意しなくてはなりません。だから、このデッキには土地カードが多めに入っているのだと思われます。

せめて3ターン目に《鋼の魂、ワイレス》を出したい。もちろん装備品を出すためのマナも必要。そのために土地をちゃんと引けるよう、多めに入れておいてあげよう、と……。強力なマナ加速が搭載されていないこのデッキにはスタンダードの構築同様、4割程度の土地が必要なのです。

勘違いしないでいただきたいのは、決して《鋼の魂、ワイレス》や『戦いに備えよ』が弱いデッキではないということです。装備品・オーラ戦略のデッキですが、カードパワー自体はなかなか高いので、序盤無害そうに土地を置いて行って、中盤一気にワイレスエンジン起動! とされてしまうと結構やっかいなのです。呪禁や破壊不能を付与するカードも入っているのでなかなか倒せず、全体除去を打たれ、そのまま押し切られるという、「ワイレスは2/2でもピリリと辛い」デッキなのです。ちょっと内容を変えてやるだけでなかなかやるデッキになりそうですね。

本当のまとめ

少し話が長くなってしまいました。今回一緒に学んだことをまとめましょう。

土地の基本枚数は36枚。

コストが軽いマナアーティファクトを採用するなら土地を減らせる。

多色化するなら、しっかりと確率を計算する。

土地が引けないときはドローを増やすのもアリ。

これらはあくまで一例で、軽いデッキ、ドローの多いデッキならもっと少なくてよい。逆に上陸シナジーがあったり、終盤まで土地を伸ばしていきたいデッキならもっと多くてもよい。

初めてデッキを組む方はこれを指針にまず組んでみるのをお勧めします。

フルアートの《島》を40枚買って作り始めた僕の青単統率者デッキもいまや土地は30枚。統率者戦経験者ならみんな似たような経験があると思います。土地が減って、何が増えていったのか。きっとアーティファクトですよね?

というわけで次回は統率者で見かけるアーティファクトを一挙ご紹介していきたいと思います。お楽しみに!

この記事内で掲載されたカード

金属モックス

カード名 (辞書)

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いってつ 晴れる屋メディアライターです。最近の悩みは記事執筆と動画出演で忙しくて統率者戦が1日2回くらいしか遊べないこと。Commander Format Panel メンバー。 いってつの記事はこちら