週刊 統率者デッキ を作る 『デッキのレベルを上げてみよう』

いってつ

このデッキ気に入った!もっと強くしたい!

統率者戦のデッキに深い愛着を持つプレイヤーは少なくありません。同じ統率者で何年もアップデートを続けた結果、最適化されたリストを完成させたり、100枚すべてフルFOILになっていたりする方もいます。

あなたはいかがですか?その統率者、好きになってきましたか?

統率者デッキとの付き合い方はそれぞれです。周囲の環境がカジュアルメインだからあえて強化はしないという方もいるでしょうし、カードの柄やデザインを自分の好きなものでまとめて見た目にも「美しく」したいという方も。しかし多くのプレイヤーは「この子をもっと強くするぞ!」と強化する方向へ向かうのではないでしょうか。

今回はカジュアルなデッキをもう少しレベルアップするためのヒントをお届けします。

はやいことはいいこと

鋭い目の航海士、マルコム

非常に強力な《光り角の海賊》との2枚コンボを持ち、カジュアルからガチまで幅広く活躍する統率者、《鋭い目の航海士、マルコム》。普通にゲームを進めれば、3ターン目に唱えて、4ターン目から攻撃開始です。

1ターン目、2ターン目に海賊クリーチャーを出せていれば3ターン目の着地もそう悪くはありませんが、もし《鋭い目の航海士、マルコム》が1ターン目に出たら……当然、非常に有利なゲームになります。

より早くより多くのマナを出すことは、より早くより強力なゲーム展開につながります。強力なマナ加速手段を追加するのはもっともシンプルで、効果が高い強化です。

宝石の睡蓮魔力の櫃

統率者を早く戦場に送り込むことが勝利に直結するデッキなら、《宝石の睡蓮》を握ってスタートするゲームほどワクワクするものはないでしょう。土地のセットと《宝石の睡蓮》からの3マナで、2色までの4マナ以下の統率者のほとんどすべてを唱えることができます。

《魔力の櫃》も強力な一枚です。ほとんどのゲームでは3マナを1度出したら仕事は終了、となってしまいますが、これを握ってスタートすることで2ターン目に5マナの統率者を出すことだってできてしまいます。

宝石の洞窟金属モックスオパールのモックス

ほかにも多くのデッキで採用されている序盤のマナ加速手段として、《宝石の洞窟》やモックスサイクルも挙げられます。いずれもマナを使わずにマナ基盤を整えることができるので、非常に有力。「数千円出してやることはマナ加速か……」と感じてしまいますが、実際に使ってみるとみんなが欲しいと思う気持ちも理解できると思います。

魔力の墓所

《魔力の墓所》はもはや統率者戦の代名詞的存在になりつつあります。非常に強力で汎用性が高く、先に紹介した2枚と比べても継続的にマナを生み出し続けるという点で非常に強力です。

とはいえ。

繰り返しお伝えしてきたことですが――統率者戦で少し高めのレベルに挑戦するぞ!という方には強力なマナアーティファクトが重要になってきます。しかしながら、あなたの普段遊んでいる統率者仲間が誰も《魔力の墓所》を持っていないのなら、あえて買わないというのも前向きな選択肢の一つです。

《魔力の墓所》のパワーの強大さは疑うべくもなく、誰かがコミュニティに「《魔力の墓所》入りデッキ」を持ち込んだなら、やがてほとんど全員が《魔力の墓所》をデッキに入れることになります。それはそれでハイスピードかつスリリングで楽しいのですが、すべてのコミュニティがそうである必要はないでしょう。

ラノワールのエルフ死儀礼のシャーマンティタニアの僧侶

もちろん緑の絡むデッキでは無理にアーティファクトを採用しなくてもマナクリーチャーでマナ加速を行うことができます。緑の統率者を選ぶ理由の一つですね。

こちらの【カードアーカイブ】では安価なものから高額なものまで幅広くマナアーティファクトを紹介しています。ぜひご活用ください。

探せることはいいことだ

コンボを搭載しても、引けなければ意味がありません。7枚の手札でスタートして、毎ターン《選択》などで1枚ずつ追加でドローしたとしても、10ターン経過後もまだ30枚も触れられていません。

せっかくマナ加速をしたのに出すものが無い……これでは困ります。

ガチと言われるデッキがコンスタントに勝ち続けることができる理由は、やはりサーチとドローが多いからです。ドロー・サーチカードをほんの数枚足すだけでゲームの展開がスムーズになるのを感じられるはずです。

サーチカードというと《吸血の教示者》《伝国の玉璽》のような超強力で敷居の高いカードを想像するかもしれませんが、数百円で手に入る優良なサーチカードもたくさんあります。まずはそこそこのカードからサーチカードの使い勝手を感じてみましょう。

自分のテーマを意識する

統率者戦のデッキにはそれぞれテーマがあります。

例えば『統率者列伝』でご紹介した【極楽人間カティルダ】は小粒な人間を並べながらマナ基盤を伸ばしていき、《希望の天使アヴァシン》《クローサの心胆、カマール》など重く強力なカードで全体強化をして殴り勝つというテーマ。

ドーンハルトの主導者、カティルダ踊りへの参加希望の天使アヴァシン

イニストラードの人間がアヴァシンを戦場へ呼び出す。
フレーバーも最高。

さて、ここに1枚のカードがあります。

猛り狂うベイロス

《猛り狂うベイロス》は構築済みデッキでたびたび収録されているポピュラーなカード。継続的に4/4トークンを生み出し、大きなアドバンテージを得ることができます。《円渦海峡の暴君、アシー》の構築済みデッキにも採用されていましたが、このデッキの「ランプ戦略」と非常に相性が良く、圧倒的な盤面を構築するのに貢献します。

しかしながら、すべてのデッキに入るカードではありません。

もしデッキのテーマが「上陸」「ランプ」で早期に強力な盤面を作って制圧する!というものならこんなにいいカードはありません。《東の樹の木霊》《ギルド無しの公共地》との組み合わせでは4/4のトークンを好きなだけ生み出すこともできます。

東の樹の木霊ギルド無しの公共地

《猛り狂うベイロス》は確かに強いカードです。しかし、マナ加速をクリーチャーに頼るデッキに似合うでしょうか?

私は【極楽人間カティルダ】を強化するにあたり、6マナ以上の強力なカードをストレージから探し出す作業を行いました。《巨大猿、コグラ》《クローサの心胆、カマール》と一緒に《猛り狂うベイロス》を見つけて、一瞬手を止めました。

人間に混ざって4/4のトークンが次々出てきたら強そうだ――しかし【極楽人間カティルダ】人間によるマナ加速からファッティを叩きつけたり全体強化したりするのがテーマです。土地加速によるマナ加速手段はこの時点でほとんど採用していませんでした。このデッキでは2マナ使って《三顧の礼》を撃つより、2マナの人間を出したほうが強そうです。

そうして《猛り狂うベイロス》は僕の《ドーンハルトの主導者、カティルダ》デッキを去りました。カジュアルなゲームで大きな存在感を放っていますが、それも相性のいいデッキあってのこと。《猛り狂うベイロス》には《円渦海峡の暴君、アシー》デッキで引き続きトークンを出してもらうとしましょう。

このように、「強い」という印象で何気なく採用したカードがデッキのテーマにそぐわずいまいち活躍できないということはしばしばおこるものです。(特に構築済みデッキからデッキ作成をスタートしたとき!)名残惜しく感じるかもしれませんが、そのカードには別のもっと活躍できる場所を用意してあげましょう。

“クリティカル”なカードを探そう

【オズワルド“ブライトハース”フィドルベンダー】は毎ターンアーティファクトをサーチできる統率者を使ってアーティファクトコンボでの勝利を目指すのがテーマ。

オズワルド・フィドルベンダーブライトハースの指輪玄武岩のモノリス歯車組立工

《オズワルド・フィドルベンダー》の能力をコピーすると、
無限コンボパーツと無限の注ぎ口を同時に用意できる。

さて、いわゆるガチ統率者……いわゆるcEDHと呼ばれる世界ではよく「最適化された」という言葉が使われます。採用した作戦を遂行する上で必要なカードを吟味厳選し、存在するすべてのカードから最良のものを採用したとき、そのデッキは「最適化された」と言えるでしょう。

すべてのデッキが「competitive/競技的」である必要は全くありませんが、より強くしたいのならカジュアルなデッキもガチなデッキも方法は同じです。デッキのカードを一枚一枚見つめ直して「なぜこのカードが必要なのか」再考するのです。

特に、対戦相手によって強さが変わる妨害カードは非常に調整が難しいです。

【オズワルド“ブライトハース”フィドルベンダー】をもっと強くすることを念頭に置いて再考してみましょう。

このデッキはアーティファクトコンボでの勝利を目指すデッキです。戦闘ダメージでの勝利は全く考えていないのでクリーチャーが少なく、対戦相手との殴り合いのゲームになればかなり分が悪いです。その弱点をカバーするために全体除去《審判の日》《激変の機械巨人》《弱者の石》を採用していました。

審判の日激変の機械巨人弱者の石

デッキを強くするということは同時に「いままでより強いデッキと戦う場面が増える」ことでもあります。フォーマットごとに強いカードが異なるのは当然ですね。スタンダードとリミテッドだって強いカードは必ずしも一致しません。統率者戦は同じフォーマットでもテーブルのパワーレベルが変われば強いカードも変わるのです。

「クリーチャーの殴り合いでゲームが決することが多く」「手札回復手段の少ない」カジュアルなゲームでは全体除去は非常に強力に働きます。一方で、テーブルのレベルが上がっていくと「コンボでの決着が多く」「アドバンテージを得る手段が増える」傾向があります。

神の怒り剣を鍬に

すると4マナと「非常に」重いソーサリーである《神の怒り》よりも、1マナと軽くインスタントである《剣を鍬に》のほうが強くなっていきます。
※執筆時現在、クリーチャー主体のスタックス戦略がハイレベルなテーブルでも台頭しつつあり、今後の流れ次第では《Fire Covenant》《毒の濁流》などの全体除去が再評価される可能性もあります。環境は常に変化するものです。

エスパーの歩哨三なる宝球

そこで、このデッキを強化して、よりハイレベルなデッキと戦えるようにするために全体除去を減らし、アドバンテージ装置である《エスパーの歩哨》、コンボデッキへ大幅なスピードダウンを強いる《三なる宝球》を追加しました。

《エスパーの歩哨》はテーブルのレベルが上がると強くなるカードの好例で、カジュアルなゲームでは1ターンに複数回呪文を唱えることは少なく、マナも半端に余らせがちなため、1マナを簡単に払われてしまいます。
ところがハイレベルなテーブルではアーティファクトでマナ加速をしてからもう一つ行動をとる、といった動きが序盤によく行われ、コストが軽く強力なカードがたくさん登場するので、たった1マナの支払いの重さがカジュアルなテーブルとはまったく違うのです。

デッキのレベルを初めて「準ガチ」くらいに上げる!となると、どんなカードが強力で、どんなカードがイマイチ機能しないのか、なかなか想像しにくいと思います。しかし数ゲームもプレイすれば、徐々に必要なカード不要なカードが浮かび上がってくるはずです。デッキ構築はゲームプレイの様子を想像しながら行うものですが、ゲームもまた次のデッキ構築・改良を考えながら行うといいかもしれませんね。

統率者を変える

……正直なところ、最も避けたい手段です。しかし、「統率者そのものではなく色やカード、戦略に思い入れがある」方はより強いデッキを求めて統率者を挿げ替えることも検討してみてもいいかもしれません。

織り手のティムナルーデヴィックの名作、クラム眷者の神童、キナン

統率者をランク付けした表はインターネット上でたくさん見つけることができます。いわゆるtier表です。それらの意義や有意についての議論はさておき、どんなリストでも上位に上がる統率者の多くに共通して言えるのは、「統率者自身がアドバンテージを得る(ドローできる、マナ加速できる、戦場にパーマネントを出すなど)」エンジンであったり――

刃を咲かせる者、ナジーラギトラグの怪物鋭い目の航海士、マルコム

――「自身が強力なコンボのパーツになる」、ということです。

統率者はサーチカードを使わずとも必ず唱える機会を得ることができる、特別な立ち位置のカードであることを今一度意識してみましょう。統率者が毎ターン追加のドローを供給してくれるならそれだけ多くの強力なカードや妨害札を引き込むことができますし、コンボパーツを探せます。統率者が2枚コンボのパーツだったなら、あとたった1枚のカードを見つけることができればゲームに勝利できます。

他方で、こんな金言もあります。「どんな統率者でもマックスパワーで組めばレベル7~8までは挑戦できる」と。もし、「どうしても《今田家の猟犬、勇丸》で勝ちたいんだ!」という熱い想いがあるのなら、やってやれないことはありません。

次の手は?

統率者戦デッキのレベルを上げる方法や意識するべきことについてお話してきました。

統率者戦はどんなデッキにも存在意義があります。競技トーナメントに持ち込むわけでないなら、ハイレベルを目指す義務なんて全くありませんし、カジュアルな統率者戦、構築済みデッキでの対戦でのみ得られる楽しさもあるのです。でも、よりたくさんの人と一緒に楽しめるように、レベルの違う複数のデッキを持つのはおすすめですよ!cEDHにも、特有の面白さがありますしね。

さて、ガチを目指そうと思っているあなたも、カジュアルでワイワイ楽しみたいあなたも一日楽しめるイベントがやってきます。コマンダーサミットです!

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コマンダーサミットは朝から晩までさまざまなレベルの統率者戦、各種変則フォーマットを楽しめる機会です。それは同時に、まだ見ぬ統率者、デッキ、そしてプレイヤーと出会う機会でもあります。コマンダーサミットでの出会いから新しいコミュニティが生まれることを私たちは期待しています。

晴れる屋では各店舗でスタンダードやパイオニアなどの大会が毎日開かれています。統率者戦は――そうではありません。しかし、晴れる屋のフリースペースで統率者戦が遊ばれていない日などありません。仲間内で始めた人たち、SNSで仲間を見つけた人たち、そしてイベントで知り合った人たち。そうやって生まれた小さなコミュニティが次第に盛り上がっていく様子を私たちは目撃しています。

この日ならきっと仲間が見つかるはずです。11/03、ぜひ刺激的な体験を晴れる屋トーナメントセンター東京でお楽しみください!

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この日は晴れる屋チャンネルのメインパーソナリティーであるトロピ大塚や僕自身もたくさんのデッキを持ち込んで参加予定です!参加賞はなんと最近話題のアンパサンドカード。参加するしかない!

みなさん!(今回はただのあいさつではありませんよ)統率者戦のテーブルでぜひお会いしましょう!

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いってつ 晴れる屋メディアライターです。最近の悩みは記事執筆と動画出演で忙しくて統率者戦が1日2回くらいしか遊べないこと。 いってつの記事はこちら