USA Legacy Express vol.79 -SCGO Worcester-

Kenta Hiroki

皆さんこんにちは!

先週末は千葉、Las Vegas(アメリカ)、Utrecht(オランダ)の世界3会場で同時に『モダンマスターズ 2015年版』のGPが開催されました。そのうちの一つ、GP千葉も事前受付者4000人以上と、まさにお祭りと呼ぶのに相応しいイベントだったようです。

さて、今回の記事では久々に行われたレガシーオープンであるSCGO Worcesterの結果を見ていきたいと思います。




SCGO Worcester トップ8

~Grixis Delverが多種多様なデッキが集まるレガシーオープンを制する~


2015年5月24日

Noah Walker


1位 Grixis Delver/青黒赤ジャンク
2位 Elves/エルフ
3位 Lands/土地単
4位 Grixis Control/青黒赤ジャンク
5位 Death and Taxes/デス&タックス
6位 Infect/感染アグロ
7位 Jeskai Stoneblade/白青石鍛冶
8位 Miracles/白青奇跡

Lands、Death and Taxes、Elvesといった《渦まく知識》を使ったデッキ以外の活躍が印象的だったSCGO Worcester 。Miraclesに次いで高い二日目進出者を輩出したOmni-tellはプレイオフには一人も勝ち残れず、上位8名が異なるアーキタイプを使用しての入賞となりました。

3位入賞のDave Longや6位入賞のZachary Kochは過去のオープンでも同じデッキでの入賞経験があり、カードプールの広大なレガシーはデッキや環境の理解度が勝敗を分けるフォーマットであることが分かります。



SCGO Worcester デッキ解説

「Grixis Delver」「Lands」「Death and Taxes」
「Miracles」「Jeskai Stoneblade」





Noah Walker「Grixis Delver」
SCGO Worcester (1位)

3 《Volcanic Island》
2 《Underground Sea》
1 《Tropical Island》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《汚染された三角州》
4 《不毛の大地》

-土地(18)-

4 《秘密を掘り下げる者》
4 《死儀礼のシャーマン》
3 《若き紅蓮術士》
1 《真の名の宿敵》
2 《グルマグのアンコウ》

-クリーチャー(14)-
4 《渦まく知識》
4 《稲妻》
4 《思案》
3 《ギタクシア派の調査》
1 《二股の稲妻》
1 《紅蓮破》
1 《呪文貫き》
4 《目くらまし》
4 《Force of Will》
2 《時を越えた探索》

-呪文(28)-
2 《陰謀団式療法》
2 《紅蓮破》
2 《墓掘りの檻》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《暗黒破》
1 《狼狽の嵐》
1 《二股の稲妻》
1 《真髄の針》
1 《呪文貫き》
1 《古えの遺恨》
1 《四肢切断》
1 《水没》

-サイドボード(15)-
hareruya


今大会見事に優勝を収めたNoah Walkerが使用したデッキはGrixis Delverでした。前環境のUR Delverに黒をタッチした型でハンデスによりコンボに対して耐性ができているのが特徴です。禁止カードに指定された《宝船の巡航》の代わりに《時を越えた探索》を使用しており、『運命再編』から黒い「探査」クリーチャーも加わって強化されたこともあり、Delver系のバリエーションとして現在でも第一線で活躍しているデッキの一つです。

他のDelverデッキと比べると爆発力があり先ほども挙げた《時を越えた探索》のおかげで中盤以降も息切れがしづらくなっています。基本的に序盤からクリーチャーを展開してプレッシャーをかける速攻系のアグロデッキなので《終末》を使うMiraclesは苦手なマッチとなります。


☆注目ポイント

このタイプのデッキで良く見かける《黄金牙、タシグル》よりも《グルマグのアンコウ》が優先されています。《黄金牙、タシグル》は伝説のクリーチャーであるため《Karakas》で容易にバウンスされてしまい、起動コストも4マナとレガシーでは少し遅くあまり使う機会がないので、5/5で伝説のクリーチャーでない《グルマグのアンコウ》の方が使い勝手が良さそうです。

UR Delverのバリエーションでは珍しく《不毛の大地》が4枚採用されており《目くらまし》《呪文貫き》などソフトカウンターの使い勝手が増しています。メインのカウンターの多さから他のGrixis Delverと比べると爆発力は抑え目でコンボとの相性の改善を優先しているようです。

秘密を掘り下げる者グルマグのアンコウ不毛の大地







David Long「Lands」
SCGO Worcester (3位)

1 《森》
2 《Taiga》
1 《霧深い雨林》
1 《吹きさらしの荒野》
1 《樹木茂る山麓》
1 《新緑の地下墓地》
4 《燃え柳の木立ち》
2 《平穏な茂み》
1 《Karakas》
4 《リシャーダの港》
4 《演劇の舞台》
4 《不毛の大地》
3 《暗黒の深部》
3 《Maze of Ith》
1 《Glacial Chasm》
1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》

-土地(34)-


-クリーチャー(0)-
4 《ギャンブル》
4 《輪作》
4 《罰する火》
4 《壌土からの生命》
4 《踏査》
2 《マナ結合》
4 《モックス・ダイアモンド》

-呪文(26)-
4 《抵抗の宝球》
4 《クローサの掌握》
2 《三なる宝球》
1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》
1 《窒息》
1 《ボジューカの沼》
1 《すべてを護るもの、母聖樹》
1 《暗黒の深部》

-サイドボード(15)-
hareruya


コンボやMiraclesは苦手としますが《罰する火》エンジンや 《Glacial Chasm》《The Tabernacle at Pendrell Vale》といったカードを採用しているためDelverを初めとした青いフェアデッキ、Death and Taxes、Elvesなどクリーチャーデッキに対して有利が付きます。そのため使用者はそれほど多くありませんが、最近の大きな大会では必ずと言って良い程よく見かけるデッキです。

《暗黒の深部》《演劇の舞台》のコンボで瞬殺することも可能で《不毛の大地》《リシャーダの港》など妨害要素を持つ土地が多いため、対戦難易度の高いデッキと言えます。


☆注目ポイント

サイドには他のリストではあまり見られないカードがいくつか採用されていました。《すべてを護るもの、母聖樹》は主にMiraclesに対してサイドインされる土地で 《相殺》によってロックされている状態でも《壌土からの生命》を通すことを可能にします

追加の勝ち手段である《引き裂かれし永劫、エムラクール》はPainterに対してライブラリーアウト対策にもなります。David Longは今年の1月に開催されたSCGO Philadelphiaで入賞した時には追加の勝ち手段の枠に《突撃の地鳴り》を取っていたこともあり、フレキシブルな印象です。メタや好みに合わせて色々と試してみるのも面白そうです。

暗黒の深部罰する火すべてを護るもの、母聖樹







Michael Derczo「Death and Taxes」
SCGO Worcester (5位)

11 《平地》
3 《Karakas》
4 《リシャーダの港》
4 《不毛の大地》
1 《ミシュラの工廠》

-土地(23)-

4 《ルーンの母》
4 《ファイレクシアの破棄者》
4 《石鍛冶の神秘家》
4 《スレイベンの守護者、サリア》
3 《セラの報復者》
4 《ちらつき鬼火》
2 《ミラディンの十字軍》
1 《コロンドールのマンガラ》

-クリーチャー(26)-
4 《剣を鍬に》
4 《霊気の薬瓶》
1 《梅澤の十手》
1 《火と氷の剣》
1 《殴打頭蓋》

-呪文(11)-
2 《封じ込める僧侶》
2 《エーテル宣誓会の法学者》
2 《安らかなる眠り》
2 《議会の採決》
2 《大変動》
1 《迷宮の霊魂》
1 《真髄の針》
1 《太陽の槍》
1 《漸増爆弾》
1 《解呪》

-サイドボード(15)-
hareruya


《二股の稲妻》のようなElvesや《若き紅蓮術士》対策の巻き添えを受けて最近数を減らしていましたが、このデッキの主力クリーチャーの一枚である 《スレイベンの守護者、サリア》はこのフォーマットの多くのデッキにとって厄介な存在です。特にDelver系のデッキに対しては《スレイベンの守護者、サリア》とマナ基盤を拘束する《リシャーダの港》《不毛の大地》が強く、《エーテル宣誓会の法学者》など多くのヘイトベアーを採用しているためコンボに対しても強いなど、単色ながら環境の多くのデッキに対して互角以上の勝負ができるデッキです。


☆注目ポイント

Miraclesを意識していたのかメインに《ミシュラの工廠》が採用されています。
サイドの 《エーテル宣誓会の法学者》は特にOmni-tellに対して1ターン稼ぐことが可能で、Omni-tellが流行っている現在のメタではメインに昇格の可能性も十分あり得ます。

スレイベンの守護者、サリアリシャーダの港エーテル宣誓会の法学者







Joe Spanier「Miracles」
SCGO Worcester (8位)

5 《島》
2 《平地》
3 《Tundra》
2 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《沸騰する小湖》
2 《乾燥台地》

-土地(22)-

1 《瞬唱の魔道士》

-クリーチャー(1)-
4 《渦まく知識》
4 《剣を鍬に》
2 《思案》
1 《紅蓮破》
2 《対抗呪文》
2 《天使への願い》
1 《議会の採決》
4 《Force of Will》
4 《終末》
1 《時を越えた探索》
4 《相殺》
4 《師範の占い独楽》
4 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(37)-
2 《僧院の導師》
2 《ヴェンディリオン三人衆》
2 《呪文貫き》
2 《血染めの月》
1 《青霊破》
1 《紅蓮破》
1 《赤霊破》
1 《墓掘りの檻》
1 《安らかなる眠り》
1 《議会の採決》
1 《至高の評決》

-サイドボード(15)-
hareruya


現在のレガシーで最も人気のあるデッキの一つで、今大会でも多くの二日目進出者を輩出しました。《思案》を4枚採用したPonder Miraclesや 《ヴェンディリオン三人衆》《造物の学者、ヴェンセール》といった伝説のクリーチャーをメインから多数採用したLegend Miraclesなど、異なるバリエーションが存在します。


☆注目ポイント

Joe SpanierのリストはPonder Miraclesをアレンジした型で、《瞬唱の魔道士》《思案》の枚数を減らし《精神を刻む者、ジェイス》をフル搭載した上に《紅蓮破》をメインから採用するなど、ミラーマッチを強く意識した構成です。

サイドの2枚の《血染めの月》はこのデッキが苦手とする12Postなどに有効なカードで、特殊地形に頼ったデッキの多いレガシーではこれ一枚で勝てるマッチも存在します。また、最近様々なデッキに投入されている《すべてを護るもの、母聖樹》対策にもなります。

追加の勝ち手段である《僧院の導師》も定番化しつつあります。サイド後は相手も特にスイーパー系の除去をサイドアウトしていることが多いので対策されづらいのが魅力です。今後はミラーマッチでも《終末》を数枚残しておいた方が良いかもしれません。

精神を刻む者、ジェイス血染めの月僧院の導師







Kevin Jones「Jeskai Stoneblade」
SCGO Worcester (7位)

2 《島》
1 《平地》
4 《Tundra》
3 《Volcanic Island》
4 《溢れかえる岸辺》
3 《沸騰する小湖》
2 《乾燥台地》
1 《Karakas》

-土地(20)-

4 《石鍛冶の神秘家》
2 《瞬唱の魔道士》
2 《真の名の宿敵》
1 《ヴェンディリオン三人衆》

-クリーチャー(9)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
2 《稲妻》
2 《呪文貫き》
2 《呪文嵌め》
2 《対抗呪文》
1 《議会の採決》
1 《至高の評決》
4 《Force of Will》
2 《時を越えた探索》
1 《梅澤の十手》
1 《殴打頭蓋》
1 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(31)-
2 《翻弄する魔道士》
2 《狼狽の嵐》
2 《赤霊破》
2 《安らかなる眠り》
2 《血染めの月》
1 《墓掘りの檻》
1 《紅蓮破》
1 《摩耗+損耗》
1 《饗宴と飢餓の剣》
1 《石術師、ナヒリ》

-サイドボード(15)-
hareruya


現在SCG Player Champiomshipのランキングの首位で、今シーズン好調のKevin Jonesは、今大会Jeskai Stonebladeを選択し見事にトップ8入賞を果たしています。

Stonebladeは《石鍛冶の神秘家》と装備品を採用した中速デッキとして根強い人気のアーキタイプで、《時を越えた探索》によって強化されたデッキの一つです。ハンデスのために黒を足したEsper Stoneblade、《死儀礼のシャーマン》を活用したDeathbladeなどバリエーションが多く存在するデッキですが、最近は青対策の《紅蓮破》や環境の効率的な除去の一枚である《稲妻》にアクセス可能な赤をタッチしたJeskaiカラーが人気のようです。


☆注目ポイント

《時を越えた探索》は中盤以降のアドバンテージソースとして多くの青いデッキに採用されており、《紅蓮破》《稲妻》を使ったデッキが多く存在する現在の環境では《精神を刻む者、ジェイス》よりも優先して採用されています。

Miraclesと同様に基本的には青白なので他のデッキと比べると基本地形を多く採用しやすいためアンチ特殊地形の《血染めの月》に強く、逆に《血染めの月》を使って特殊地形に頼った多くのデッキに対して有利を得ることができるのが強みです。

『統率者2014』のPWである《石術師、ナヒリ》は他のリストでは見られないカードです。5マナと重いコストがネックとなりますが、白いPWなので《紅蓮破》に引っかからず、コントロールや他の中速デッキ相手に追加の勝ち手段として活躍が期待できそうです。

石鍛冶の神秘家稲妻石術師、ナヒリ





総括

優勝こそGrixis Delverという《渦まく知識》を使った青いフェアデッキでしたが、ElvesやDeath and Taxes、Landsといったデッキが勝ち残っていることからも、レガシーが《渦まく知識》デッキ以外にも十分にチャンスのあるフォーマットであることが分かります。

ですがその反面、Omni-tell、Miracles、Delverといったデッキは《渦まく知識》《思案》といったドロースペルで毎回同じような動きを実現させることが容易で、その安定度の高さから使用人数も多く結果上位に多く勝ち残やすい戦略なので、すぐに人気が衰えることはなさそうです。


以上USA Legacy Express vol.79でした。
次回の記事ではSCG Premier IQ Columbusの結果をカバーしていく予定です。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!



※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『StarCityGames.com』
http://www.starcitygames.com/index.php


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