年末に開催されるThe Last Sun 2015のフォーマットの一つにレガシーが採用されることに決まり、各地で予選大会も開かれレガシー的に充実した年になりそうです。
さて、今回の記事ではSCG Premier IQ ColumbusとGP千葉のサイドイベントとして開催された晴れる屋協賛 日本レガシー選手権2015・春@The Last Sun 2015予選(以下・日本レガシー選手権)の結果を見ていきたいと思います。
SCG Premier IQ Columbus トップ8
~Noah WalkerがSCGO Worcesterから引き続いて優勝~
2015年6月7日
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1位 Grixis Delver/青黒赤ジャンク
2位 Omni-tell/実物提示教育
3位 Lands/土地単
4位 Grixis Delver/青黒赤ジャンク
5位 Deathblade/デスブレード
6位 Grixis Control/青黒赤ジャンク
7位 Temur Delver/カナディアン・スレッショルド
8位 Miracles/白青奇跡
SCG Premier IQ Columbusはコンボ、コントロール、アグロと異なる戦略ではあるものの、3位入賞のLandsを除いた全ての入賞デッキが青いデッキという結果になりました。
また、5位入賞のDeathblade以外は赤を使っており、アンチ青スペルや効率的な除去にアクセスできるため現環境では青に次いで人気のある色となっています。特にハンデス、カウンター、優秀なクロックと揃っているGrixisカラーのデッキの活躍が目立ちます。
SCG Premier IQ Columbus デッキ解説
「Omni-tell」「Merfolk」
5 《島》 2 《Volcanic Island》 4 《霧深い雨林》 4 《汚染された三角州》 1 《沸騰する小湖》 2 《裏切り者の都》 -土地(18)- 2 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(2)- |
4 《渦まく知識》 4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 4 《定業》 3 《呪文貫き》 1 《衝動》 4 《実物提示教育》 3 《狡猾な願い》 1 《直観》 4 《Force of Will》 4 《時を越えた探索》 4 《全知》 -呪文(40)- |
2 《若き紅蓮術士》 2 《稲妻》 1 《電謀》 1 《狼狽の嵐》 1 《紅蓮破》 1 《赤霊破》 1 《外科的摘出》 1 《エラダムリーの呼び声》 1 《紅蓮地獄》 1 《拭い捨て》 1 《蟻の解き放ち》 1 《嘘か真か》 1 《火想者の予見》 -サイドボード(15)- |
メタに応じてデッキを選択することに長けるBrad Nelsonはスタンダードでの活躍が目立ちますが、レガシーでも環境トップクラスのデッキパワーを持つOmni-tellを選択し、見事準優勝という好成績を残しています(決勝戦はNoah WalkerがSCGポイントを必要としていたためトス)。
GP京都でも八十岡翔太選手が使用し入賞を果たしたことで知れ渡ったタッチ赤は、現在ではOmni-tellの最もスタンダードな型として地位を確立しつつあります。
☆注目ポイント
タッチ赤により、同系を含めて環境に数多く存在する青いデッキへの対策カードである《紅蓮破》にアクセスできるようになりました。
《不毛の大地》への耐性が下がるリスクを考慮しても、Delver系の多くのクロックを除去でき、ヘイトベアー対策にもなる《稲妻》や、追加の勝ち手段にもなる《若き紅蓮術士》も採用できるので十分なリターンを期待できます。
サイド後の《若き紅蓮術士》はGP京都のときと比べるとサプライズ要素はなくなったものの、サイド後は除去を減らされる傾向にあり、対戦相手からしてみればクリーチャーがサイドインされるかどうかは実際にゲームが始まるまで分からないため、現在でも有効な戦略です。
サイドの願いターゲットとして1枚だけ採用されている《嘘か真か》は4マナと少し重いものの、「探査」のために墓地を肥やしつつ一気に5枚ものカードを掘り進めることが可能です。
11 《島》 4 《変わり谷》 4 《不毛の大地》 2 《魂の洞窟》 -土地(21)- 4 《呪い捕らえ》 4 《アトランティスの王》 4 《真珠三叉矛の達人》 4 《幻影の像》 4 《銀エラの達人》 4 《真の名の宿敵》 -クリーチャー(24)- |
1 《蒸気の絡みつき》 3 《目くらまし》 1 《残響する真実》 1 《四肢切断》 4 《Force of Will》 4 《霊気の薬瓶》 1 《梅澤の十手》 -呪文(15)- |
3 《大祖始の遺産》 2 《呪文滑り》 2 《真髄の針》 2 《白鳥の歌》 1 《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》 1 《呪われたトーテム像》 1 《無のロッド》 1 《基本に帰れ》 1 《冬眠》 1 《市長の塔》 -サイドボード(15)- |
惜しくもトップ8には残れなかったものの、久々に上位入賞を果たした青単色のMerfolk。
Merfolkクリーチャーをロードで強化しつつカウンターでバックアップする部族系のアグロです。
《魂の洞窟》と《霊気の薬瓶》のおかげでカウンターを気にせず安定してクロックを展開でき、《アトランティスの王》と《真珠三叉矛の達人》によって島渡りが付与されるので青いデッキに強いのが特徴です。
最近は多くのデッキが赤をタッチしているため少し厳しくなってきている印象ですが、《真の名の宿敵》やサイドの《呪文滑り》、《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》を駆使することで、除去スペルに対してある程度の耐性を付けています。
☆注目ポイント
《無のロッド》や《真髄の針》など、苦手なMiraclesや《梅澤の十手》対策がしっかりサイドに採られています。
《呪文滑り》はレガシーではあまり見かけませんが、環境に数多く存在する《稲妻》系の除去に耐性ができ、カウンターされない《突然の衰微》の対象も変更可能です。
装備品対策の《市長の塔》はUW Stonebladeが幅を利かせていた時期はメインからよく見かけるカードでしたが、最近はStonebladeよりもMiraclesやDelver系のデッキが中心なためすっかり見られなくなりました。
そのStonebladeも今は《真の名の宿敵》を採用しており、Death and Taxesは《不毛の大地》を採用しているためどれほど役に立つかは未知数です。
日本レガシー選手権 トップ8
~12Postが日本国内屈指のElvesエキスパートに勝利し優勝!~
2015年5月31日
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1位 12 Post/12ポスト
2位 Elves/エルフ
3位 Omni-tell/実物提示教育
4位 Lands/土地単
5位 UR Counterburn/青赤コントロール
6位 Sultai Delver/青黒緑アグロ
7位 Miracles/白青奇跡
8位 Nic-Fit/青黒緑コントロール
GP千葉のサイドイベントとして、優勝者には年末に開催される招待制イベントであるThe Last Sun 2015への出場権が与えられる、日本レガシー選手権が開催されました。
優勝を飾ったのはオリジナル要素を加えた無色の12Postを駆るヒヤマ ケンジ選手でした。
日本レガシー選手権 デッキ解説
「12 Post」「Nic-Fit」「UR Counterburn」
3 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 1 《陰謀団の貴重品室》 1 《Karakas》 4 《古えの墳墓》 4 《雲上の座》 4 《微光地》 4 《ヴェズーヴァ》 3 《Maze of Ith》 1 《Diamond Valley》 1 《演劇の舞台》 1 《ウギンの目》 1 《The Tabernacle at Pendrell Vale》 -土地(28)- 4 《磁石のゴーレム》 3 《ワームとぐろエンジン》 1 《隔離するタイタン》 1 《真実の解体者、コジレック》 1 《引き裂かれし永劫、エムラクール》 -クリーチャー(10)- |
3 《全ては塵》 4 《探検の地図》 4 《真髄の針》 2 《Candelabra of Tawnos》 4 《厳かなモノリス》 1 《交易所》 2 《ニンの杖》 1 《精神隷属器》 1 《精霊龍、ウギン》 -呪文(22)- |
4 《墓掘りの檻》 4 《抵抗の宝球》 2 《ファイレクシアの破棄者》 2 《トリスケリオン》 2 《仕組まれた疫病》 1 《イシュ・サーの背骨》 -サイドボード(15)- |
今大会見事に優勝を飾ったヒヤマ ケンジ選手は無色の12 Postを使用していました。本人による解説もブログで公開されています。
《雲上の座》から出る大量のマナを利用しエルドラージクリーチャーや《精霊龍、ウギン》、《ニンの杖》など高コストのパワーカードで相手を圧倒します。
☆注目ポイント
無色デッキなため採用できる除去が限られるので《Maze of Ith》や《The Tabernacle at Pendrell Vale》といった除去として機能する土地が見られます。
《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》と《陰謀団の貴重品室》は他の12Postでは見られませんが、戦場の土地が全て《沼》となる《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》は《Maze of Ith》や《The Tabernacle at Pendrell Vale》といったマナ能力を持たない土地からもマナを捻出することが可能となったり、《古えの墳墓》が痛くなくなるなどこのデッキにとって非常に便利な土地です。
また《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》が場にある状態での《陰謀団の貴重品室》は《雲上の座》に頼らずとも多くのマナを確保することを可能にします。
とはいってもやはり《不毛の大地》はこのデッキにとっては鬼門なので、対策として《真髄の針》がメインからフル搭載されています。
《全ては塵》は除去スペルに乏しいこのデッキの貴重なスイーパースペルです。
7マナという重いコストもマナが大量に出るこのデッキでは問題にならず、無色のパーマネントだけを採用しているこのデッキでは自分への被害は一切なく、相手側の盤面だけを平らにすることが可能です。
サイドの《仕組まれた疫病》と《トリスケリオン》はクリーチャーデッキ、特に《若き紅蓮術士》を使うデッキや、Elvesとのマッチアップで活躍が期待できそうです。
2 《島》 2 《沼》 1 《森》 3 《Tropical Island》 2 《Bayou》 2 《Underground Sea》 3 《霧深い雨林》 3 《汚染された三角州》 2 《新緑の地下墓地》 2 《忍び寄るタール坑》 -土地(22)- 4 《老練の探険者》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(5)- |
4 《渦まく知識》 4 《陰謀団式療法》 3 《思案》 3 《思考囲い》 1 《ギタクシア派の調査》 4 《突然の衰微》 2 《対抗呪文》 1 《対抗突風》 2 《毒の濁流》 2 《時を越えた探索》 2 《破滅的な行為》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 2 《原初の狩人、ガラク》 1 《世界を目覚めさせる者、ニッサ》 -呪文(33)- |
3 《強情なベイロス》 3 《Force of Will》 2 《無垢の血》 2 《外科的摘出》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《青霊破》 1 《払拭》 1 《虚無の呪文爆弾》 1 《水没》 -サイドボード(15)- |
《老練の探険者》と《陰謀団式療法》のシナジーを利用し、相手のプランを妨害しつつマナを伸ばし、大型クリーチャーやPWに繋げていくミッドレンジデッキ。
今大会入賞したSultai以外にも《罰する火》エンジンにアクセスできるタッチ赤や、《アカデミーの学長》経由で《繰り返す悪夢》などを活用するタッチ白などそれぞれのタッチカラーを活かしたバリエーションが存在します。
マナさえ整えばマストカウンターの脅威を立て続けにキャストできるため青いフェアデッキに強く、妨害要素はあるもののデッキの重いところや除去など無駄碑を引いてしまうことも多いため、コンボとの相性はあまりよくないデッキです。
☆注目ポイント
クリーチャーはほぼ不採用で、勝ち手段として《精神を刻む者、ジェイス》、《原初の狩人、ガラク》、《世界を目覚めさせる者、ニッサ》の3種類のPWを採用しているなど、Sultai ControlにNic Fitの要素を取り入れたハイブリットのようにも見えます。
特に非青スペルでマナコストの高い《原初の狩人、ガラク》と《世界を目覚めさせる者、ニッサ》は多くのデッキで使用されている《突然の衰微》や《紅蓮破》に引っかからないのが強みです。
コンボ対策としてサイドには《Force of Will》や《外科的摘出》といった追加の妨害スペルがしっかり採られています。
3 《島》 4 《Volcanic Island》 1 《蒸気孔》 3 《沸騰する小湖》 2 《溢れかえる岸辺》 2 《霧深い雨林》 2 《汚染された三角州》 4 《不毛の大地》 2 《ミシュラの工廠》 -土地(23)- 4 《瞬唱の魔道士》 3 《真の名の宿敵》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 -クリーチャー(8)- |
4 《渦まく知識》 4 《稲妻》 3 《噴出の稲妻》 3 《もみ消し》 2 《呪文貫き》 2 《呪文嵌め》 2 《対抗呪文》 1 《火+氷》 1 《電解》 4 《Force of Will》 2 《時を越えた探索》 1 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(29)- |
2 《狼狽の嵐》 2 《外科的摘出》 2 《粉々》 2 《水没》 1 《イゼットの静電術師》 1 《ヴェンディリオン三人衆》 1 《真髄の針》 1 《紅蓮破》 1 《赤霊破》 1 《紅蓮地獄》 1 《世界のるつぼ》 -サイドボード(15)- |
青赤の2色のカウンターバーンデッキ。
除去されにくい《真の名の宿敵》や瞬速持ちの《ヴェンディリオン三人衆》や《瞬唱の魔道士》、軽いカウンターの《呪文貫き》や《呪文嵌め》など全体的に軽いスペルでまとめられています。
☆注目ポイント
メインからバーンスペルが合計9枚と多めに積まれているので、ある程度ダメージを与えたらバーンスペルと《瞬唱の魔道士》で止めを刺す、というバーンプランに切り替えることも可能です。
土地である《ミシュラの工廠》はカウンターされないため、Miraclesなどのコントロールに強く、環境の主要除去の1枚である《突然の衰微》で除去されないのも魅力です。
サイドに採られている《世界のるつぼ》は《死儀礼のシャーマン》や《突然の衰微》といったカードが刷られて以来見かけることは少なくなりましたが、前者はともかく後者はこのデッキ相手にはサイド後減量されることが予想されます。
《死儀礼のシャーマン》はこのデッキなら比較的容易に除去できるため、《不毛の大地》と《世界のるつぼ》によるロックもまだまだ強力な戦略であることは変わらないようです。
《イゼットの静電術師》は《若き紅蓮術士》を使うデッキやElvesなどに強く、《紅蓮破》されてしまうことを除けば瞬速持ちなので隙も少なく使いやすい対策カードです。
《タルモゴイフ》など高タフネスのクリーチャー対策に難があるためサイドには《水没》が忍ばせてあります。
総括
大会結果を通して目立つのは圧倒的な《時を越えた探索》の使用率です。Grixis DelverのようなアグロデッキからコンボデッキのOmni-tellまで様々な青いデッキで採用されています。
果たして来月にヨーロッパで開催されるレガシーのGP Lilleではどのような結果になるのか要注目です。
以上でUSA Legacy Express Vol.80を終わります。次回の記事ではSCG Premier IQ IndianapolisとSCG Premier IQ Baltimoreの結果をカバーしていく予定です。
それでは次回の記事でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを!
※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『StarCityGames.com』
http://www.starcitygames.com/index.php
『マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト』
http://mtg-jp.com/
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このシリーズの過去記事
- USA Legacy Express vol.79 -SCGO Worcester-
- USA Legacy Express vol.78 -第4期レガシー神挑戦者決定戦 etc.-
- USA Legacy Express vol.77 -SCG Premier IQ Cleveland etc.-
- USA Legacy Express vol.76 -GP京都 etc.-
- USA Legacy Express vol.75 -SCG Invitational Richmond etc.-
- USA Legacy Express vol.74 -SCG Premier IQ Dalas-
- USA Legacy Express vol.73 -SCG Premier IQ Baltimore-
- USA Legacy Express vol.72 -SCG Premier IQ Houston etc.-
- USA Legacy Express vol.71 -SCGO Indianapolis-
- USA Legacy Express vol.70 -SCG Washington Premier IQ-
- USA Legacy Express vol.69 -SCG Premier IQ Columbus etc.-