プロツアー『マジック・オリジン』直前!観戦ガイド・2日目編

高橋 純也




※画像は【mtg-jp】より引用させていただきました。




日程 時間帯 フォーマット 放送ページ
8/2 ()土曜25時~2ndドラフト-3回戦放送ページ
8/2 ()休憩 (※)
8/2 ()休憩終了~日曜13時スタンダード-5回戦放送ページ
8/3 (月)日曜25時~月曜11時トップ8 (スタンダード)放送ページ

※ドラフトラウンド終了後に1時間ほどの休憩時間があります。
※※表記時間はすべて日本時間です。



プロツアーについての説明などは【初日編】を参照して欲しい。





まずは初日のおさらいから始めよう!



■ 初日のおさらい:
【ドラフト】渡辺 雄也の「赤黒ハスク」とWilliam Jensenの「白黒」



 プロツアー『マジック・オリジン』の1stドラフトのフィーチャーポッドには錚々たる面々が揃っていた。

 なんと渡辺 雄也、市川 ユウキ、Bram Snepvangers、Jeremy Dezani、William Jensenという各地域のトッププレイヤーを一堂に集めたようなテーブルだったのだ。同卓にはプロツアー上位入賞常連の彼らのほかにも、Mark Jacobson、瀧村 和幸と実力者が続き、初っ端から激しいゲームが期待された。



※画像は【MAGIC: THE GATHERING】より引用させていただきました。


 そんなフィーチャーポッドでビデオカバレージに写されたのは、なかでもリミテッダーとしての評価が高い渡辺 雄也とWilliam Jensenの2名だった。


渡辺 雄也の「赤黒ハスク」 [動画時間 00:11~00:34]

(以下、動画時間は全て「時間:分」表記)


 初手で《心酔させる勝者》をピックし、2手目は《ナントゥーコの鞘虫》。有力なデッキタイプである「赤黒ハスク」へと渡辺は手を進める。その結果なんと1パック目で《心酔させる勝者》が3枚も集まり、コンボパーツである《ナントゥーコの鞘虫》の頭数も順調に揃えていくのだが、どうしても2マナ域が埋まらない。


心酔させる勝者ナントゥーコの鞘虫反逆の行動


 3パック目の初手で《よろめくグール》を手に入れるが、それでもやや重い作りに仕上がってしまった。とはいえ強力なシナジーは十分に揃っている良いデッキだ。初志貫徹した丁寧なピックに注目してほしい。


William Jensenの「白黒」 [動画時間 00:36~00:58]


 渡辺の上家に座るJensenは、《搭載歩行機械》《トーパの自由刃》《トーパの自由刃》という白中心のピックでロケットスタートを切った。2色目への渡りをつけるよりも白のカードを下に流すことを嫌った徹底した色主張でドラフトを進めていく。


搭載歩行機械搭載歩行機械牢獄の管理人、ヒクサス


 2パック目の初手は2枚目の《搭載歩行機械》、3パック目の初手は《牢獄の管理人、ヒクサス》とレアにも恵まれる。さらに1パック目の主張が功を奏したのか、《トーパの自由刃》をさらに2枚、合計4枚も確保して恐ろしく強力な白黒アグロを組み上げた。

 レアに恵まれた派手な展開に埋もれがちだが、1パック目の正順で好調だった白を活かすための色主張など、リミテッド巧者らしい燻し銀なテクニックは見逃せない。



■ 初日のおさらい:
【プロプレイヤー】殿堂者発表!八十岡、Froehlich、Edelの3名が選出!



 プロシーズン最後のプロツアーでは「プロツアー殿堂顕彰者」が発表される。プロシーンで活躍、地域のコミュニティに貢献してきた背景など、プレイヤーとしてマジック社会に与えてきた功績が表彰される称号だ。

   そんな栄誉ある殿堂者に今回選出されたのは、Eric Froehlich、八十岡 翔太、Willy Edelだった。[動画時間 03:57~04:05]


 殿堂得票率66.35%と高い支持率で選出されたのは、現役の強豪かつアメリカのプロシーンを牽引してきたEric Froehlich。Channel Fireballの一員として活躍し、常にプロツアーでは上位争いに食い込んでいる実力者だ。今シーズンもPlayer of the yearレースの先頭を走っている。まさに殿堂入りするにふさわしい強豪だろう。

 そんなFroehlichに次ぐ殿堂得票率62.50%で選出されたのは、世界中に多くのファンを抱える八十岡 翔太だった。MOPOY、POYの両方を獲得している確かな実力と、誰もを魅了する独創的なデッキ、そして素早く正確なプレイ。とにかくゲームを観戦していて楽しいプレイヤーだ。少し前から「八十岡に足りないのは、個人戦のプロツアーのTop8だ」と言われていたが、先日の【プロツアー『タルキール龍紀伝』】で見事にクリアした。殿堂入りに対する八十岡自身のコメントは[動画時間 09:59~10:11]で見られる。

 3人目の選出者はブラジルの英雄ことWilly Edelだ。長い間ラテンアメリカのプロシーンを支え、自身もプロツアーのTop8に何度も入賞する実力者として活躍してきた。その実力を買われて多くの調整チームから声をかけられるなか、自国のプレイヤーの実力向上のためにどれを断っていたというエピソードには感動させられた。



■ 初日のおさらい:
【スタンダード】最大勢力は「緑赤信心」「赤系アグロ」「アブザンコントロール」!



 全参加者。そして全ての観戦者が待ち望んだメタゲームブレークダウン(会場のデッキ分布)が発表された。


◆(参考資料) Standard Metagame Breakdown


 使用者が59人(15%)の最大勢力は「緑赤信心」だった。直前のいくつかの大会では対策され、今大会ではどうなるのかと議論を呼んだが、前環境からの人気をそのままに多くの使用者がいた。やはり4ターン目《龍王アタルカ》は大正義なのだろう。

 続く2番手は54人(13.7%)の使用者がいた「赤単アグロ」《極上の炎技》という2種類目の4点火力、優秀なアドバンテージカードでもある《ケラル砦の修道院長》で強化されたデッキだ。タップイン土地による序盤の動きのもたつきやライフ面に不安を抱えるデッキは多いため、2日目以降も活躍が期待できそうだ。

 3番手は47人(12%)の使用者を抱える「アブザンコントロール」だった。「緑赤信心」同様に前環境から存在するデッキだが、それ故の完成度の高さがプレイヤーの信用を勝ち取ったに違いない。あと、やはり《包囲サイ》は強い。


龍王アタルカ極上の炎技包囲サイ


 最大勢力となる3つに続くのは、「青赤《アーティファクトの魂込め》」「青黒コントロール」「スゥルタイコントロール」「アブザン《先祖の結集》」「ジェスカイアグロ」という面々だ。

 実力が不透明だった「青赤《アーティファクトの魂込め》」の数が多かったことには驚かされたが、《アーティファクトの魂込め》《爆片破》の爆発力は多くのプレイヤーの心を掴んだようだ。強豪のLuis Scott-Vargasらも使っているらしく、そのデッキリストを早く見てみたい。

アーティファクトの魂込め爆片破つむじ風のならず者




■ 初日のおさらい:
【観戦】フィーチャーマッチをプレイバック!


 ここでは初日のフィーチャーテーブルを賑わせたマッチアップの数々を紹介する。動画の再生時間も付記するため、見逃した人、見返したい人はタイムシフトからご覧頂きたい。

◆ 【ドラフト】

・渡辺 雄也(赤黒ハスク) vs 市川 ユウキ(黒青白《荒廃唱え》)
【動画時間 01:19~01:40】

・Jon Finkel(青白) vs Gabriel Nassif(緑黒エルフ)
【動画時間 01:40~02:00】

・八十岡 翔太(緑黒エルフ) vs Paulo Vitor Damo da Rosa(白赤)
【動画時間 02:20~02:41】

・Joel Larsson(青白) vs Brad Nelson(緑青エルフ)
【動画時間 02:42~02:51】

★William Jensen(白黒) vs Jeremy Dezani(青緑)
【動画時間 02:52~03:12】

・Josh Utter-Leyton(白赤) vs Gerry Thompson(青黒)
【動画時間 03:25~03:50】


◆ 【スタンダード】

・三原 槇仁(5色《先祖の結集》) vs Shahaar Shenhar(ジェスカイアグロ)
【動画時間 04:40~04:59】

・Scott Lipp(青赤《アーティファクトの魂込め》) vs Seth Manfield(緑赤信心)
【動画時間 04:47~04:50、05:00~05:09】

・Zvi Mowshowitz(アブザン《先祖の結集》) vs Samuel Black(赤単アグロ)
【動画時間 05:48~06:26】

・Scott Lipp(青赤《アーティファクトの魂込め》) vs Mike Bryant(《ジェスカイの隆盛》コンボ)
【動画時間 06:26~06:30】

★Lee thi tian(赤単アグロ) vs Nicolai Herzog(赤単アグロ)
【動画時間 06:59~07:21】

・Paul rietzl(赤単アグロ) vs Christian Calcano(スゥルタイコントロール)
【動画時間 07:21~07:52】

・山本 賢太郎(アブザン大変異) vs Bryan Gottlieb(アブザン《先祖の結集》)
【動画時間 08:03~08:45】

★山本 賢太郎(アブザン大変異) vs Samuel Black(赤単アグロ)
【動画時間 09:15~09:42】

・Antonio Del Moral Leon(黒緑《悪魔の契約》) vs Daniel Cecchetti(赤単アグロ)
【動画時間 09:42~09:57】



 さてここからは2日目の見どころを紹介していこう。


■ 2日目の見どころ:
【プロプレイヤー】山本 賢太郎が初日全勝!藤本と三原もTop8を狙う



 初日を8戦全勝で折り返したプレイヤーはわずかに2人。【Hareruya Pros】の山本 賢太郎と、リミテッドマスターのRich Hoaenだった。


 今回の山本が目標とする成績は11勝3敗2分 以上という困難なもの。それを前に初日を8勝0敗で折り返せたことは、彼にとってこれ以上ないチャンスだといえるだろう。是非ともこの上り調子のまま目標を達成、更にはTop8まで狙ってほしい。明日の幸運を祈るばかりだ。

 山本に続く日本勢には、藤本 岳大(7勝1敗)、三原 槙仁(6勝1敗1分)、松本 友樹(6勝2敗)、行弘 賢(6勝2敗)、朴 高志(6勝2敗)、高橋 優太(5勝2敗1分)らがいる。5勝3敗、4勝4敗にも日本人は大勢いるため、2日目も日本人の活躍を見ることは多そうだ。



■ 2日目の見どころ:
【ドラフト】目指すは「高名」?それとも「シナジー」?



 【初日編のドラフトの紹介】では、主に「高名」の強力さについて触れ、それが『マジック・オリジン』ドラフト環境の基本だと話した。実際にプロツアー本戦でもJensenの「白黒」やUtter-Leytonの「白赤」のように、「高名」を軸にした強力なデッキが登場している。

 その一方で目立っていたのは、渡辺の「赤黒ハスク」や市川の「黒青白《荒廃唱え》」やNassifの「緑黒エルフ」といった、強力なシナジーを持つデッキたちだった。


ナントゥーコの鞘虫荒廃唱え眼腐りの虐殺


 シナジーデッキの特徴は、純粋な戦闘能力は「高名」には及ばないものの、戦線を突破できない限りはバニラクリーチャーの群れと変わらない「高名」ほどピーキーではないところだ。マナカーブ通りにカードを展開して常に攻勢に回れるならば「高名」は強いが、ちょっとした不都合が挟まるだけでシナジーデッキに軍配が上がるだろう。

 しかし、シナジーデッキも核となるカードの枚数が足りなければただの弱いカードの束となってしまうリスクがある。「高名」のマナカーブか、「シナジー」の核となるカードか。どちらのリスクが大きいかは単純に判断することはできないが、2日目のドラフトポッドではマナカーブのリスクの方が高まるのではないかと思う。

心酔させる勝者領事補佐官


 それはテーブルを囲むプレイヤーのレベルがあがるに連れて、色やデッキタイプの住み分けが綺麗に行われていくからだ。すると、「シナジー」が必要とする特定のデッキのパーツは回ってくるものの、「高名」が求めている大量の低マナ域はどのデッキも欲するため、十分な枚数を確保することが難しくなる。

 もちろん開けたパックと上下のプレイヤー次第なので取り留めもない話ではあるが、2日目のドラフトでは初日以上に「シナジー」デッキを見かける機会は増えるのではないかと思っている。


■ 2日目の見どころ:
【スタンダード】今大会の勝ち組?はたして「赤単アグロ」は勝ち続けるのか?



 【メタゲーム・ブレイクダウン】の分布によると2番手の勢力である「赤単アグロ」は、今大会の台風の目だと噂されている。7回戦終了時点で7勝0敗の4名の内、3名もが「赤単アグロ」を使用していたことからも、その強さが窺い知れる。


鐘突きのズルゴ極上の炎技ケラル砦の修道院長


 まだ初日終了時点とはいえ、「赤単アグロ」が成功している理由は2つ考えられる。1つは、多色のミッドレンジが多いこと。また1つは、ライフのコントロール能力が低いデッキが多いことだ。

 多色のミッドレンジが多いことは、すなわち《砂草原の城塞》《凱旋の神殿》といったタップインの土地が多く採用されているということだ。そのため、1マナ域からしっかりとプレッシャーをかけることは純粋に強みとなる。

 そして、ライフのコントロール能力が低いデッキについては、多色化による《ラノワールの荒原》などのダメージ土地の採用不採用に限らず、戦場のパーマネントのコントロールには長けていても火力呪文という飛び道具に弱いデッキが沢山いるということだ。例えば「アブザン《先祖の結集》」などはその一つだ。《肉袋の匪賊》によるパーマネントのコントロールには優れていても、4ターン目に11点ほど残ったライフを守り切る手段は持ち合わせていない。


稲妻の一撃かき立てる炎


 このように考えると確かに赤単は強そうだということはわかってきたが、2日目もこのまま「赤単アグロ」が勝ち続けるかどうかは意外と難しい問題かもしれない。

 もし「アブザン《先祖の結集》」などが上位に集まるならば、大勢の「赤単アグロ」がTop8まで駆け上る可能性はあるだろう。ただ、《ナイレアの信奉者》《部族養い》《ニクス毛の雄羊》《アラシンの僧侶》《魂火の大導師》《オジュタイの命令》などの対策カードをしっかりと採用したデッキも、トーナメントが進むにつれて上位に集まってくると考えられる。

魂火の大導師ナイレアの信奉者


 それでも勝ち続けることができるのか。「赤単アグロ」の真価が問われるのは2日目に違いない。





 さて、以上のトピックがプロツアー『マジック・オリジン』2日日の観戦ガイドだ。

 山本 賢太郎を筆頭に日本勢の好調が続くことを祈って、また3日目に会おう。


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