『マジック・オリジン』、来る。
この瞬間をどれほど待ちわびたことか。
新しいカード、新しい活力。それはクソデッキにこそ大いなる力を与える。
発売したばかりのエキスパンションがもたらす、メタゲームという名の秩序。そこに君臨する資格を持つのは、カードリストの中でも一握りの
だが零れ落ちたカスレアたちは、叛逆のときを待っている。
秩序が覆されるときを。決まりきった、お仕着せのトップメタが、ストレージの片隅に眠っていた50円レアに駆逐される瞬間を。
世界は、クソデッキを待っている。
■ 1. 妄想編
クソデッキ、一瞬で出来上がる。
これまでにないパターンである。
それは津村 健志の代理で【ニコニコ生放送】「まつがんのだらだら!MO生活」を放送していたときに起こった。
視聴者 「次のクソデッキは何ですか?」
まつがん 「いや、まだ考えてないんですよ。やはりクソデッキというのはメタゲームという『課題』を与えられてはじめてその擬似的な『解決』に乗り出すために作られることが多いものですから、プロツアーの結果待ちなんですよね」
視聴者 「はぁ。 (何言ってんだこいつ……) 」
まつがん 「でも試しに何か考えてみますか。(【『マジック・オリジン』のカードリスト】を見る) うーん、どれどれ……」
視聴者 「(とある1枚のカードを指して) そいつ、どうですか?」
まつがん 「あー、こいつね。でもやっぱ『トランプル』がないとなぁ……ん、待てよ?こいつに《ティムールの激闘》を撃つとまさか、18点!?この符合……!!」
ここで思い出して欲しいのだが、【Super Crazy Zoo】は《野生のナカティル》に《強大化》と《ティムールの激闘》を撃つと不可避の18点を叩きこめるというデッキだった。
ところが、実はそれと全く同じことが『マジック・オリジン』のとあるカードによって、スタンダードで達成できることがわかったのだ。
しかもSCZと違って、たったの2枚コンボである。
その最強カードが、これだ。
《辺境地の巨人》。
『マジック・オリジン』の新キーワード能力「高名」を持ち、攻撃が通ると12/12になるという圧倒的なインパクトがありながら、「こんなん『トランプル』もなしに攻撃が通るわけねーだろ!」という容赦のない当然のツッコミによってカスレア扱いされているこのカード。
しかし実はそれは、開発陣からのメッセージだったのだ。
カードの単体の性能に「A」という不足があるとき、プレイヤーは「『A』がないから弱い」と考えがちだ。
だが、デッキビルダーは違う。
「このカードが『A』を持ったら最強だから、『A』を持たせるデッキを作ればいい。」
これを《辺境地の巨人》の場合に則して翻訳すると、つまりこういうことになる。
「『トランプル』がなければ『トランプル』を付ければいいじゃない。」
そして「トランプル」を付けるカードといえばもちろん。
《ティムールの激闘》。
そう、これこそが【前回】から私が追い求めてやまなかった、スタンダード版『Super Crazy Zoo』そのものであった。
《アーティファクトの魂込め》に脱線したりもしたが、長い回り道を経て今ようやく辿りついたのだ。
具体的に説明すると、《辺境地の巨人》に《ティムールの激闘》を撃てば、「二段攻撃」の一段目で「高名」が発生するため、6点→12点という規格外のダメージを叩きだすことが可能となる。
つまり《辺境地の巨人》はその身に《強大化》を内包した《野生のナカティル》と言える。
まさにCrazy。この大いなる可能性に気づいてしまったからには、デッキを作るしかあるまい。
「トランプル」も持っておらず体がでかいだけの不器用な巨人と、パワー4以上のクリーチャーに撃てなければ本来の力を発揮できない使い勝手の悪いインスタント。
N極とS極。いや、アダムとイヴ。
互いに欠けたピース同士が惹かれあって今、がっちりとハマった。
■ 2. 爆誕編
クソデッキ、オリジン(原点)へ回帰する。
そう、それは誰しもがマジックをはじめたばかりのころに使っていたであろうデッキとよく似ていた。
マナ加速してデカブツを出し、力の限り殴る。
それだけのコンセプトがしかし、我々が本能として持つ「野性」に訴えかけるのだ。
蹂躙せよ、と。破壊の限りを尽くせ、と。すなわち。
ゴリラになれ、と。
それではお見せしよう。人間の究極の武器である「知性」を完膚なきまでに放棄した、今回のクソゴリラデッキを!
7 《森》 2 《山》 4 《樹木茂る山麓》 4 《奔放の神殿》 4 《岩だらけの高地》 2 《ならず者の道》 -土地(23)- 4 《エルフの神秘家》 4 《爪鳴らしの神秘家》 4 《発生器の召使い》 4 《失われた業の巫師》 4 《クルフィックスの狩猟者》 4 《辺境地の巨人》 2 《歓楽の神、ゼナゴス》 4 《龍王アタルカ》 -クリーチャー(30)- |
3 《レインジャーの悪知恵》 4 《ティムールの激闘》 -呪文(7)- |
4 《マグマのしぶき》 4 《霊気のほころび》 2 《破壊的な享楽》 2 《自然に帰れ》 2 《書かれざるものの視認》 1 《ナイレアの弓》 -サイドボード(15)- |
などという野暮なツッコミは置いておいて、まずデッキ名の由来は、《辺境地の巨人》がバットらしきもの(?)を持っているからである。
まさしく4番バッターにふさわしい風格。打者1人で18点も持っていけばコールドゲーム不可避であろう。
なおあまり知られていないがマジックは「DH制」を採用しており、《辺境地の巨人》君は守備力が皆無なため、指名打者として守備回(サイドボード後)になるとよく《ティムールの激闘》と合わせてベンチに引っ込むのだが決して要らない子というわけではない。
またこのデッキの魅力は、《辺境地の巨人》と《ティムールの激闘》のコンボだけにとどまらない。
「デッキのコンセプトが成立するためには、同じ役割のカードが8枚必要」というのが私の持論だ。それは1種類4枚だけのカードをコンセプトにしてしまうと、引かなかったときにデッキではなくなってしまうからだ。
しかし《辺境地の巨人》の2スロット目は《龍王アタルカ》でいいとしても、《ティムールの激闘》の代わりとなるとなかなか見つからなかった。「二段攻撃」と「トランプル」を同時に付けるスペルなどそうそうあるはずもない。
だから私は考え方を変えることにした。必要なのは速やかに「高名」を達成、12/12を作ってワンパン入れることであり、「二段攻撃」による必要は必ずしもない。
つまり《辺境地の巨人》に「速攻」を与えればいいのだ。
そう考えたとき、最強の2枚に辿り着いた。
《辺境地の巨人》の5マナという何とも言いがたい重さを何とかしてくれる上に「速攻」まで付けてくれる《発生器の召使い》。
さらに【バトルワーム】以来の《歓楽の神、ゼナゴス》で《辺境地の巨人》を走らせた上で《ティムールの激闘》をぶち込めば、12点+18点=30点シュート。この符合……!!
あとはこのガバガバな戦略をサポートするべく《レインジャーの悪知恵》と《ならず者の道》でコーディネートすれば、この夏のイチオシファッションはこれで決まりだ。
ちなみにサイドボードは、【プロツアー『マジック・オリジン』】で大活躍した青赤《アーティファクトの魂込め》デッキを「親の仇」と思って激烈にメタっている。基本的に自分より楽しそうなデッキは全部許さない教に入信しているのだ。「星座」デッキも楽しそうなので《自然に帰れ》は外せない。
だが何より青赤《アーティファクトの魂込め》デッキは【プロツアーで山本 賢太郎を1没させた】、いわば「やまけんの仇」でもあるのだ。
そんなわけで《アーティファクトの魂込め》デッキに対してアーティファクト破壊をぶち込むときは、怒りを込めて「そして次のもやまけんのぶんだ、その次も次のも、その次の次の次のも……その次の次の次の次のも」 「次の!次も!」 「やまけんのぶんだあああーッこれも!これも!これも!これも!これも!これも!これも!これも!これも!」と言いながら撃つと実にスカッとするが非紳士的行為でDQになるので心の声にとどめておいた方がよい。
■ 3. 実戦編
クソデッキ、《血清の幻視》プロモ欲しさにFNMに出場する。
◆第1回戦 VS 青黒コントロール
・1戦目 対戦相手のアーキタイプを見た段階で賢明なる読者諸君には既におわかりのことかもしれないが、相性差 1 : 9 である。鈍重なビッグアクションに対して《究極の価格》《英雄の破滅》《解消》のいずれかを当てられたのち、マナクリーチャーが《衰滅》されるだけの作業だ。
・2戦目 《悪夢の織り手、アショク》から相手の場に出てきた《辺境地の巨人》で死んだ(笑) まさか記念すべき《辺境地の巨人》の犠牲者第一号が自分になるとは思ってもみなかった。
××
◆第2回戦 VS 青赤《スフィンクスの後見》コントロール
・1戦目 「速攻」を持たせた《龍王アタルカ》で変身できるよう構えていた《ヴリンの神童、ジェイス》をEtB能力→アタックで倒し、次のターンには《ティムールの激闘》を叩き込んで勝ち。
・2戦目 相手はエンチャントを主軸にしたデッキなのでここぞとばかりに「やまけんの仇」成分を大量投入したがそんなこととは全く関係なく《歓楽の神、ゼナゴス》が《辺境地の巨人》を相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!
〇〇
◆第3回戦 VS マルドゥミッドレンジ
・1戦目 《龍王アタルカ》を走らせるも、一撃入れた返しで《はじける破滅》で処理され、その後頑張ってゴミの寄せ集めで《ならず者の道》を駆使してビートするが残り2点が削れずに負け。
・2戦目 《辺境地の巨人》と《ティムールの激闘》で18点入れても相手のライフが残った返しで《雷破の執政》と《嵐の憤怒、コラガン》の強烈な一撃を受けて負け。コンボ決めても勝てないとか、構造的欠陥がありすぎた。
××
結果:1-2。
■ 4. 後悔編
クソデッキ、当然の解体。
やはり人はゴリラになってはいけないということか。
そもそも構成パーツの50%以上が緑信心と被っているという段階で結論はお察しであった。いつハンドに《ティムールの激闘》が来てもイライラするので、どう考えてもSCZ成分がノイズだった。
さて最後に、せっかくなのでこのデッキを完成させるにあたって (脳内または実戦で) 通過したパーツを列挙して記事の締めとしたい。
なぜ俺はあんなムダな時間を……
今回はGerry ThompsonとTravis Wooをぎゃふんと言わせるデッキにならなかったが、次こそは。
また次回!
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