皆さんこんにちは。
いよいよ秋の大イベントである【プロツアー『戦乱のゼンディカー』】の開催まであと数時間に迫っています!プロプレイヤーたちが繰り広げる熱戦。『戦乱のゼンディカー』の新カードたちの活躍。もう今からワクワクが止まりません!
おつまみ、お酒、おっきなモニターも用意して、観戦の準備は万端ですか?さあ、あとは開幕待つだけだー!
……と、ちょっとその前に。
スタンダード環境の予習などはいかがでしょうか?
プロツアーまでのメタゲームの経緯、今大会注目の戦略・カードなどなど。いくつかの事前情報をまとめたトピックを用意してみたので、対戦の合間などの暇つぶしにどうぞ!
■ メタゲームの中心は「緑白大変異」と「ジェスカイブラック」!
【プロツアー『戦乱のゼンディカー』】は発売まもなくに開催されるものの、実はそのちょっと前に大規模のトーナメントが行われています。
毎週のように全米各地で転々と開かれているSCGO (Star City Games Open) というトーナメントで、最近ではプロツアーのメタゲームを占うバロメータとして機能し、「本格的な調整はSCGOの結果がでてからかな」と言うプロプレイヤーもいるくらいです。
つまり、SCGOの結果は、プロツアー参加者たちの共有された事前知識だということ。
SCGOで活躍したデッキたちに勝てない、あるいはそれらを無視するようではプロツアー本戦の成功はありません。
そして、今大会の直前に開催された【SCGO Atlanta】の勝者は、「緑白大変異」と「ジェスカイブラック」でした。この2つの仮想敵をどう倒すのか?それが今大会の参加者に与えられた課題となるでしょう。
◆ 緑白大変異
6 《森》 5 《平地》 3 《梢の眺望》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《樹木茂る山麓》 3 《溢れかえる岸辺》 -土地(25)- 4 《搭載歩行機械》 4 《始まりの木の管理人》 4 《棲み家の防御者》 2 《隠れたる龍殺し》 4 《死霧の猛禽》 3 《巨森の予見者、ニッサ》 3 《風番いのロック》 -クリーチャー(24)- |
4 《ドロモカの命令》 3 《勇敢な姿勢》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(11)- |
3 《正義のうねり》 2 《徴税の大天使》 2 《囁きの森の精霊》 2 《ギデオンの叱責》 2 《悲劇的な傲慢》 2 《進化の飛躍》 1 《龍王ドロモカ》 1 《見えざるものの熟達》 -サイドボード(15)- |
Top8に4人を送り込み、優勝と準優勝を飾った要注目のデッキ。その強さの秘密は、中盤から終盤にかけての粘り強さと、安定したマナベースにあります。
・中盤~終盤の粘り強さ
まずデッキ名にもなっている「大変異」とは、《棲み家の防御者》と《死霧の猛禽》のコンビを指しています。度重なる除去にも耐えて復活するため、お互いのリソースをぶつけあう消耗戦では八面六臂の活躍をみせるパッケージです。
また、《搭載歩行機械》《始まりの木の管理人》《巨森の予見者、ニッサ》《風番いのロック》など、デッキの大部分が中盤以降も脅威となるカードで占められているため、生半可なデッキではすべての時間帯で「緑白大変異」に圧倒されてしまいます。
・安定したマナベース
『戦乱のゼンディカー』が与えた最も大きな影響といえるのが、《梢の眺望》などのBattle Landです。これらは友好色の5枚しか用意されていないため、『タルキール覇王譚』ブロックの代名詞でもある楔の3色 (ジェスカイやアブザンなど) のマナベースはやや不安定になりました。
それに対して「緑白大変異」は友好2色の組み合わせなので、色事故とは無縁の安定したマナベースを持っています。強いカードは数あれど、その強さとは、それらをプレイしたい瞬間にプレイできてこその強さです。「緑白大変異」は、どのデッキよりも忠実にその基本を押さえています。
◆ ジェスカイブラック
3 《平地》 2 《島》 2 《山》 2 《大草原の川》 2 《燻る湿地》 1 《窪み渓谷》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《汚染された三角州》 3 《溢れかえる岸辺》 2 《神秘の僧院》 -土地(25)- 4 《搭載歩行機械》 1 《竜使いののけ者》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《カマキリの乗り手》 1 《僧院の導師》 -クリーチャー(14)- |
3 《焦熱の衝動》 1 《乱撃斬》 1 《払拭》 2 《勇敢な姿勢》 4 《はじける破滅》 2 《オジュタイの命令》 2 《時を越えた探索》 2 《絹包み》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(21)- |
3 《光輝の炎》 2 《フェリダーの仔》 2 《手酷い失敗》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《正義のうねり》 1 《黄金牙、タシグル》 1 《払拭》 1 《影響力の行使》 1 《悲劇的な傲慢》 -サイドボード(15)- |
「ジェスカイブラック」は同じくTop8に4人を送り込んだものの、準決勝で「緑白大変異」に惜しくも敗退してしまいました。ですが敗北したとはいえ、除去やクリーチャーの取捨選択、マナベースの改善など、伸び代は「緑白大変異」よりも大きく、これらの要素からつまりは今大会で最も注目すべきデッキかもしれません。
その強さの秘密は、最強のグッドスタッフ陣と幅広いゲームプランにあります。
・最強のグッドスタッフ
現環境でもっとも強力な行動とは、おそらく2ターン目の《ヴリンの神童、ジェイス》でしょう。3ターン目の《カマキリの乗り手》も捨てがたいですが、おそらくわずかに《ヴリンの神童、ジェイス》が上回るように感じます。
それでは、2ターン目《ヴリンの神童、ジェイス》からの3ターン目《カマキリの乗り手》は?そんなの最強に決まっています。
使えるカードプールが狭い環境では、デッキ全体でシナジーを形成するには役者が足りず、1枚の強力なカードを最速で唱えることが最適な戦略になりやすいのです。そのため、プレイヤーたちは皆「どのカードを最速で唱えたいか」を考えていくのですが、《ヴリンの神童、ジェイス》はその第1候補。そして第2あるいは第3候補であろう《カマキリの乗り手》も加われば、それだけで十分に強力なデッキができあがります。
・幅広いゲームプラン
「《ヴリンの神童、ジェイス》と《カマキリの乗り手》を使いたいなー」と8枚を並べてみると、残りの52枚の自由さに驚きます。《ヴリンの神童、ジェイス》をより強く使うためにインスタントとソーサリーをある程度の枚数は要求されますが、攻防一体の《カマキリの乗り手》も相まって如何様なゲームプランも実践できるのです。
マナベースの都合上4色となっているため、採用する呪文の候補も幅広く、メタゲームの動向に振り回されない柔軟性をもっています。
■ 過去から学ぼう!一年前から考察するプロツアー『戦乱のゼンディカー』!
さて、メタゲームの中心に居座る2つのデッキが出揃ったところで、【プロツアー『戦乱のゼンディカー』】本戦で繰り広げられるであろう戦いに目を向けてみましょう。
今大会のメタゲームを想定するための事例としては、昨年10月に開催された【プロツアー『タルキール覇王譚』】が素晴らしいサンプルになります。「一年前の大会がなんで?」と思う方もいらっしゃるとは思いますが、それは今年のメタゲームの構図が昨年のものと酷似しているからです。
今年の仮想敵である2つは紹介したので、ここでは昨年について触れましょう。昨年のSCGOが終わった後のメタゲームの中心には「ジェスカイテンポ」と「アブザンミッドレンジ」がいました。様々な「緑系ミッドレンジ」も活躍していましたが、どれも2つには一歩劣り、ほぼ2強に絞られたうえでプロツアーを迎えたのです。
【プロツアー『タルキール覇王譚』のデッキ分布】は「ジェスカイテンポ」と「アブザンミッドレンジ」が全参加者の約40%を占め、その2大勢力がトーナメントを牽引しました。最終的にTop8には3名ずつ残るという快挙を果たし、最初から最後まで仮想敵であったはずの2つが勝ち続けたのでした。
「ジェスカイテンポ」と「アブザンミッドレンジ」。
「ジェスカイブラック」と「緑白大変異」。
現在とはカードプールが違うため、厳密な比較は無意味かもしれません。それでも、「ジェスカイ」が3ターン目《カマキリの乗り手》の万能性を武器とし、「アブザン」と「緑白大変異」は大枠である「緑系ミッドレンジ」の中での筆頭として頭一つ抜けだしたことは共通しています。いずれにしても「緑系ミッドレンジ」という環境初期の定番なデッキに対して、《カマキリの乗り手》が活躍しているという構図には注目すべきでしょう。
それでは昨年と似たようなメタゲームだと仮定したときに、今大会ではどのような戦略が活躍するのでしょうか?
その答えの鍵は、昨年の【プロツアー『タルキール覇王譚』】以後のメタゲームの推移を参考に探すことができます。似通ったメタゲームにおいて、昨年のプレイヤーたちはどのような回答を示したのか。そして、その戦略が何だったのかを見つけるのです。
少しばかり探したところ、幾つかの戦略が見つかりました。
1. 「得意なゲームの時間帯を意識した」戦略
2. 「飛行+除去」戦略
3. 「トークン」戦略
4. 「ボードコントロール」戦略
2. 「飛行+除去」戦略
3. 「トークン」戦略
4. 「ボードコントロール」戦略
早速これらを詳しく掘り下げていきます。
1. 「得意なゲームの時間帯を意識した」戦略
昨年のプロツアー以後のデッキたちは、「コントロール」はより遅く、「アグロ」はより攻撃的に、それぞれが得意とするゲームの速度帯を意識した作りにシフトしていきました。例えば「アブザンミッドレンジ」は、「アブザンコントロール」と「アブザンアグロ」へと二極化の分岐を見せ、半端な速度感をもつデッキは淘汰されてしまったのです。
これは環境に存在するデッキの弱点と強みが明らかとなったことで、「そのデッキでなければならない理由」をそれぞれが追求した結果だといえるでしょう。「攻防一体」や「万能」という言葉は便利ですが、攻撃的なスタンスのデッキには押し負け、防御的なスタンスのデッキには消耗戦で負ける可能性も孕んでいるのです。
今回のプロツアーだと「ジェスカイブラック」が、得意な時間帯にやや無頓着な構成をしています。《カマキリの乗り手》を重ねて引けば素早いゲームも挑めますが、そうでなければ相手のライフが半端に残ることになり、防御的に振る舞うこともできるものの、それは真に遅いゲームを狙うデッキには明らかに力負けしてしまうのです。そのため、今大会で活躍する「ジェスカイブラック」は、火力呪文や飛行クリーチャーを増量した「テンポ型」か、除去をふんだんに放り込んだ「マルドゥ+青型」になるでしょう。
「緑白大変異」は序盤から終盤まで安定したゲームプランを持っていますが、同系統の「アブザン」にはやや不利です。勝負を左右する《搭載歩行機械》を巡る戦いを、《先頭に立つもの、アナフェンザ》などで「アブザン」が有利にすすめることができるからです。そのため、「アブザン」にない強みを「緑白大変異」は探さなければならないでしょう。それは2色ならではの強固なマナベースを活かしたものが合理的なので、より早い時間帯で有利を作れるような《鎌豹》や、同系対策を兼ねた《徴税の大天使》や《風番いのロック》を追加する形が登場すると思われます。
2. 「飛行+除去」戦略
昨年のプロツアーでは、多くのトッププロが選択した「マルドゥミッドレンジ」が良い具体例です。使用者数の問題でプロツアー本戦では振るわなかったものの、プロツアー以後に開催された多くのトーナメントで好成績を残した戦略です。
上で紹介した「ジェスカイブラック」のリストを見ていただくと一目瞭然なのですが、「緑系ミッドレンジ」に強いはずの飛行のクロックは《カマキリの乗り手》4枚とわずかな《龍王オジュタイ》しか採用されていません。これでも一応「飛行+除去」戦略ではあるのですが、これでは《カマキリの乗り手》を対処されてしまうと手詰まりになってしまうことは目に見えています。
そこで2つの戦略が考えられます。
「《カマキリの乗り手》+追加の飛行クリーチャー」あるいは「《カマキリの乗り手》を廃して、より重い飛行クリーチャーを採用」することです。前者はわかりやすいと思うのですが、後者は少し不思議に思うかもしれません。まだ飛行で殴るのに重いクリーチャーにするの?と。
この理由は、《カマキリの乗り手》が対処されるようなメタゲームを想定するならば、《カマキリの乗り手》への除去が効かない飛行クリーチャーである《雷破の執政》や《軍族の解体者》を採用したほうが効果的なことが多いからです。《カマキリの乗り手》は3ターン目に登場して殴り続けられれば強いのですが、軽く捌かれてしまうと、3マナを使って3点のライフを削ったことがあまりにも勝利に貢献しません。それならば3ターン目に除去をして4ターン目に《雷破の執政》を展開したほうが、除去しながら飛行クリーチャーで攻撃する戦略に”結果的に”マッチするのです。
《ヴリンの神童、ジェイス》にも《カマキリの乗り手》にも効果的な除去として《龍詞の咆哮》は昨今のスタンダードの記事上で注目を浴びているカードです。そのため、《カマキリの乗り手》に頼らない「飛行+除去」の戦略が、今回のプロツアーでは活躍するかもしれません。
3. 「トークン」戦略
個人的には昨シーズンのベストデック賞だった渡辺 雄也の「ジェスカイトークン」がいい例かもしれません。なぜトークンなのか?その理由は、ミッドレンジ偏重の環境にあります。
そもそもミッドレンジとは、3~5マナ帯の強力なパーマネントで先手後手をひっくり返し、戦場の優位を武器とする戦略です。プレインズウォーカーの登場以後に一般的となった単語で、コントロールと一線を画するのは、呪文ではなくパーマネントで優位を作る点です。
それでは何故ミッドレンジ偏重の環境では「トークン」戦略が強いのか?
それは、ミッドレンジがミッドレンジ足りえる強力なパーマネントを狙った単体除去が環境に蔓延るからです。昨年だと《アブザンの魔除け》《英雄の破滅》《はじける破滅》など、すこしばかり重くても確実に強力なパーマネントを捌ききる単体除去が流行しました。
そして、その単体除去への強力なカウンターこそが「トークン」戦略なのです。
トークンはスペックが悪い代わりに枚数のアドバンテージを生むカードが多く、1 : 1以上の交換ができない重い単体除去にとっては厄介この上ない存在です。昨年は渡辺の「ジェスカイトークン」のほか、「赤白系ミッドレンジ」にも《軍族童の突発》が必ず採用されていました。
4. 「ボードコントロール」戦略
ミッドレンジvsミッドレンジの対決はいつだって先手有利です。なぜならパーマネントで優位が生まれるため、その多くがソーサリータイミングなので先出しできる分だけ先手が有利になるのは必然なのです。そんな環境の突破口は、ボードコントロールにあります。
ボードコントロールとは、その名の通り戦場のパーマネントへの対処に長けたデッキタイプです。昨年活躍した「アブザンコントロール」や「マルドゥコントロール」などが良い例で、デッキの構成は除去、除去、そして除去で埋められています。ミッドレンジは呪文でアドバンテージ差をつけないため、パーマネントさえ丁寧に対処していけばそうそうは負けません。
また、パーマネントの代わりに呪文が採用されているため、対戦相手の除去呪文は無駄になります。ミッドレンジ同型戦を見据えて単体除去をしっかりと採用して強力なパーマネントに依存した構成などには、無類の強さを発揮するのです。
今回のプロツアーではパーマネント主体のデッキばかりがメタゲームに登場しているため、ボードコントロールにとって理想的なフィールドとなると予想されています。《破滅の道》や《隔離の場》などの序盤から終盤まで強力な除去が鍵となりそうです。
■ 先シーズンの覇者がピンチ?「赤系アグロ」の運命やいかに!
【プロツアー『タルキール龍紀伝』】をMartin Dangが「アタルカレッド」で、【プロツアー『マジック・オリジン』】はJoel Larssonが「赤単アグロ」で優勝し、スタンダードのプロツアーは2大会連続で「赤系アグロ」が制覇しています。
では、今回も?と期待する声もあがっていますが、プロプレイヤーたちの声を聴くと「かなり厳しそう」とのこと。《溢れかえる岸辺》のようなフェッチランドの採用枚数が増え、初期ライフが減ったことは追い風なのですが、それでも尚ライフを削り切る力が不足している、という話でした。
《稲妻の一撃》と《かき立てる炎》という強力な火力呪文を失ったことで、パーマネントでライフを削らなければならないのですが、その行く手には《搭載歩行機械》や《乱撃斬》の雨あられが待っています。おまけに仮想敵の「緑系ミッドレンジ」にはパーマネント同士のぶつかり合いでは分が悪く、たしかにメタゲームを考えると厳しそうです。
6 《山》
3 《沼》 2 《燻る湿地》 4 《汚染された三角州》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《樹木茂る山麓》 -土地(23)- 4 《僧院の速槍》 3 《血に染まりし勇者》 3 《鐘突きのズルゴ》 4 《マキンディの滑り駆け》 4 《炎跡のフェニックス》 4 《雷破の執政》 2 《嵐の憤怒、コラガン》 -クリーチャー(24)- |
4 《乱撃斬》
4 《龍詞の咆哮》 4 《極上の炎技》 1 《残忍な切断》 -呪文(13)- |
4 《森》
4 《山》 2 《燃えがらの林間地》 4 《樹木茂る山麓》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《吹きさらしの荒野》 2 《進化する未開地》 -土地(24)- 4 《鎌豹》 3 《僧院の速槍》 3 《鐘突きのズルゴ》 4 《ケラル砦の修道院長》 4 《マキンディの滑り駆け》 4 《噛み付きナーリッド》 4 《炎跡のフェニックス》 -クリーチャー(26)- |
4 《乱撃斬》
3 《強大化》 3 《ヴァラクートへの撤退》 -呪文(10)- |
これらは簡単なサンプルリストです。《龍詞の咆哮》はサイズが小さい「赤黒アグロ」ではおそらく必須のカード。《稲妻の一撃》を失った今ではパーマネントとライフのどちらもに干渉できるカードが不足しています。《雷破の執政》と《嵐の憤怒、コラガン》はどちらも「緑系ミッドレンジ」に強く、《はじける破滅》を除けばただでは死なない優秀なクリーチャーたちです。
サイズは申し分ない「赤緑上陸」の問題は深刻な単体除去への弱さです。一応《炎跡のフェニックス》+《ヴァラクートへの撤退》という逃げ道はありますが、正直それだけでは物足りません。まだ試していないのですが、「《棲み家の防御者》がかなり良かったよ」との話を聞いたので、《棲み家の防御者》という回避持ち+アドバンテージ源も加わるとより良くなりそうです。
なんだか「駄目そう」と聞いてしまうと心なしか味方してあげたい気持ちになるので、今大会は「赤系アグロ」をこっそり応援していきたいと思います。がんばれー。
■ プロツアー『戦乱のゼンディカー』の注目株はこれ!
それでは今大会注目のカードを幾つか紹介して筆を置くことにします。
1. 《ヴリンの神童、ジェイス》
【プロツアー『マジック・オリジン』】では、「プロツアー《ヴリンの神童、ジェイス》かプロツアー《搭載歩行機械》だ!」って言って、蓋を開けてみたら「赤系アグロ」祭だったので断言するのは怖いのですが、今度こそプロツアー《ヴリンの神童、ジェイス》になると思います。
その理由は単純明快。最高の行動だからです。スタンダードプロツアーのマスターとして知られるOndrej Strasky曰く、「スタンダードでは環境で最高の行動をもったデッキがいい」。【プロツアー『タルキール覇王譚』】では3ターン目《カマキリの乗り手》、【プロツアー『タルキール龍紀伝』】では4ターン目《龍王アタルカ》を乗りこなして、それぞれTop8に入賞した実力者はそう語っていました。
今回は間違いなく2ターン目の《ヴリンの神童、ジェイス》!
2. 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
冒頭で紹介した【SCGO Atlanta】のTop8には19枚も採用されていた期待のプレインズウォーカー。ここまでの話題で全く触れていなかったのは、「緑白大変異」以外の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の評価は未だに定まっていないからです。もちろん弱いカードではないのですが、基本的に有利な戦場を更に有利にする類のカードなので、あれにもこれにも入るようなプレインズウォーカーではないはず。
「+1」能力のプレッシャーや「+0」能力の耐久力がもてはやされますが、その真価は奥義の《栄光の頌歌》紋章にあります。同型のクリーチャーデッキならば戦線が崩壊し、コントロールであっても《搭載歩行機械》のトークンに四苦八苦することになるのです。おまけに《棲み家の防御者》で再利用される始末。「緑白大変異」のようにパーマネントが多く戦線がしっかりとしたデッキや、「トークン」のように横に戦線を伸ばすデッキでは活躍間違いなしの強力なカードです。
3. 《雷破の執政》《龍詞の咆哮》
《稲妻の一撃》を失った今、《カマキリの乗り手》を狩るにはこのパッケージは必須とも言えそうです。「緑赤系ミッドレンジ」「赤黒系ミッドレンジ」「青赤系ドラゴン」など様々なデッキに顔を見せているコンビには一つの疑問が投げかけられています。
それは「《龍詞の咆哮》を使うには何枚のドラゴンが必要か?」というもの。R&DのZac Hillは【「0だとしても優秀すぎる」】と回答していますが、未だにドラゴンを採用していない《龍詞の咆哮》は一般的ではありません。つまり、その構成は誰が試しても明らかに駄目か、未知なる可能性を秘めていることになります。このプロツアーでその謎は解かれるのでしょうか?
4. 《隔離の場》《破滅の道》
中盤から終盤までプレイヤーの期待を裏切らない有力な除去です。《隔離の場》場は「緑白大変異」などが採用している《ドロモカの命令》がガンですが、そのリスクを加味しても十分に強力なカードです。《破滅の道》は、ソーサリーであることに物足りなさは感じますが、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を難なく捌けて、終盤にはゲームを決定づけるには十分なサイズの「覚醒」もあるので文句は言えません。
5. 《包囲サイ》
今さら注目する必要がないほどの人気を集めている《包囲サイ》ですが、現在のメタゲームではやや最適な居場所を見失っている節があります。「4色コントロール」や「アブザンミッドレンジ」では見るものの、それらが現在のメタゲームでどれほど良いデッキなのかという評価は保留されています。
僕は「アブザンアグロ」をとても強力なデッキだと信じているので、《包囲サイ》を全く見ないということはないとは思っているのですが、《はじける破滅》や飛行クリーチャーの流行、そして「緑白大変異」という《包囲サイ》なしでも成立する強力なデッキが登場したことは確実に環境から《包囲サイ》の居場所を奪いました。
果たして《包囲サイ》は追い詰められているのでしょうか?
6. 《地下墓地の選別者》
手放しに強すぎるなんてことは口が裂けても言えないものの、燻し銀かつマナレシオも優良な『戦乱のゼンディカー』からの注目カードです。《ズーラポートの殺し屋》などを鍵とした「黒緑《ナントゥーコの鞘虫》」でも見かければ、「多色コントロール」の中盤の要としても活躍しています。
《棲み家の防御者》とともに緑を代表するカードとしてちらほらと姿を見かけることになりそうです。
7. 《徴税の大天使》
『マジック・オリジン』の白い天使にも注目です!《カマキリの乗り手》には滅法強く、アタックとブロックの両制限効果は難しいクリーチャーデッキ同士のゲームをシンプルに解決してくれます。《風番いのロック》もそうですが、単純に《カマキリの乗り手》に負けないサイズの飛行クリーチャーは今回はよく見ることになりそうです。
白のトリプルコストだけが難点ですが、「緑白大変異」もそれほど緑マナの拘束は強くないので運用できますし、色マナ拘束の強さを考えなければ最高級のカードなので新しい白ベースのミッドレンジも登場するかもしれませんね。「白単タッチ青」みたいな。
8. 《龍王アタルカ》
注目のカードの最後を飾るのは、お供の優秀なマナクリーチャーの大半を失ってしまった《龍王アタルカ》です。かつては4ターン目にゆうゆうと登場していたものの、現在でも無理ではないけれど厳しくなりました。プレインズウォーカーやらクリーチャーならばすべて焼き払う圧倒的な存在感は、未だに「緑系ミッドレンジ」へのカウンターカードとして活躍の余地を残しています。
メインボードで見かける機会は少なくなりそうですが、サイドボード後からはちょこちょこと元気な姿を見せてくれそうです。
■ それではニコ生をつけて観戦しましょう!
これまで紹介したトピックの他にも「青赤系ドラゴン」や「白黒コントロール」を筆頭にメタゲームを彩るデッキはあるのですが、今回は紙面が足りないのでここまでということで筆を置かせていただきます。
簡単に話題をまとめると、「ジェスカイブラック」と「緑白大変異」が話題の中心で、彼らをいかにして倒すのか、あるいは彼らを倒そうとしているデッキをどうやって倒すのか、が今回のプロツアーの見どころです。
昨年は渡辺 雄也がTop8、一昨年は三原 槙仁と山本 賢太郎がTop4&Top8。日本勢はこの時期のプロツアーでは安定して好成績を残しているので、今大会でも大活躍に期待できそうです。果たしてどんな驚きのデッキが登場するのでしょうか。
以上、「プロツアー『戦乱のゼンディカー』直前!スタンダード観戦のしおり」でした。
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