スタンダード・デッキ・ピックアップ! -青黒コントロール-

晴れる屋メディアチーム



■ 『霊気紛争』環境開幕!!

 いよいよ最新セット『霊気紛争』が発売されました! 1月9日(月)に告知された【禁止改定】を受け、まっさらな新天地となったスタンダード環境を切り拓くのはいったいどのデッキなのか。世界中が固唾を飲んで動向に注目していました。

 その最中、先々週末に開催された【SCG Open Columbus】と先週末の【SCG Open Richmond】では、さっそく『霊気紛争』のカードを使った新しいデッキたちが大活躍していたようです。

 本連載では、2月3日(金)~5日()にアイルランド・ダブリンの地で開催されるプロツアー『霊気紛争』までの2週間に世界各地で活躍したデッキや注目のカードを毎日ご紹介していきます。

 さて、新環境も目隠し手さぐりの一週目が終わり、いよいよプロツアーに向けて環境の輪郭は整ってきたようです。今回ご紹介するデッキは、「黒緑アグロ」と「サヒーリ・コンボ」が支配する新世界に疑問符を投げかける「青黒コントロール」です。長期戦では敵なし、と名高い古典的なコントロールの強さの秘密に迫ります!

1. 「青黒コントロール」とは?


Jim Davis「青黒コントロール」
SCG Open Richmond(28位)

9 《沼》
8 《島》
4 《窪み渓谷》
4 《詰まった河口》
2 《水没した骨塚》

-土地 (27)-

2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
4 《奔流の機械巨人》

-クリーチャー (6)-
3 《致命的な一押し》
4 《闇の掌握》
3 《否認》
1 《手酷い失敗》
4 《不許可》
3 《殺害》
2 《破滅の道》
4 《天才の片鱗》
1 《疑惑の裏付け》
2 《秘密の解明者、ジェイス》

-呪文 (27)-
3 《払拭》
2 《死の重み》
2 《深水の大喰らい》
2 《破滅の道》
1 《荒廃した瀑布》
1 《致命的な一押し》
1 《否認》
1 《餌食》
1 《ゲトの裏切り者、カリタス》
1 《終止符のスフィンクス》

-サイドボード (15)-
hareruya

 「青黒コントロール」とは、《不許可》など青のカウンター呪文や《闇の掌握》といった黒い除去呪文でゲームを長引かせ、消耗した対戦相手を《奔流の機械巨人》で倒す、古典的な青系コントロールデッキです。

不許可 闇の掌握 奔流の機械巨人

 遡ること数か月前。プロツアー『カラデシュ』の決勝戦を飾ったのは、2つの《奔流の機械巨人》デッキでした。《霊気池の驚異》が大流行したことが背景にあったとはいえ、しばらく「ドローもカウンターもフィニッシャーもなんにもない」と蔑まれていた青系コントロールが一躍大成功を収められるだけの推進力《奔流の機械巨人》には秘められていたのです。

 しかし、その 栄光の日々はわずか数日で終わってしまいます。プロツアー以後は「白青フラッシュ」や「黒緑昂揚」といった強力なデッキタイプが台頭し、早い時間帯は《密輸人の回転翼機》に、遅い時間は《約束された終末、エムラクール》に脅かされる世界に変わってしまったのです。《密輸人の回転翼機》のスピードには間に合わず、《約束された終末、エムラクール》にはスケールで歯が立たず、青系コントロールは再び姿を消してしまいました。

密輸人の回転翼機 約束された終末、エムラクール

 ところが1月9日(月)に告知された【禁止改定】により、憎き《密輸人の回転翼機》《約束された終末、エムラクール》がスタンダード環境から去りました。この変更によって多くのカードが息を吹き返しましたが、なかでも一番恩恵を受けたのは、もしかしたら《奔流の機械巨人》だったのかもしれません。

 すでに【サヒーリ・コンボ】では元気な姿を見せている《奔流の機械巨人》ですが、まだまだ他のデッキでも活躍する余地は残されているでしょう。そこで《致命的な一押し》《不許可》で強化された「青黒コントロール」には、青系コントロール復権の第一歩として大きな期待が寄せられているのです。

2. 注目カード3選!

不許可

 《取り消し》もどきばかりが印刷される2010年代に、なんと《虚空粘》の完全上位互換が突然登場しました。かつての《虚空粘》がすごく強かったかというと、別にそんなことはないのですが、うっかり戦場に出てしまった《霊気池の驚異》《ゴンティの霊気心臓》の起動型能力も打ち消せると考えると頼もしい限りです。

 また、《不許可》はプレインズウォーカーの”奥義”も打ち消せることもお忘れなく。コントロール同士の対戦では、序盤に出たプレインズウォーカーが一目散に”奥義”を目指して勝ってしまうことも珍しくありませんでしたが、《不許可》があれば心配無用です。

致命的な一押し

 歴代最高の除去呪文として知られる《稲妻》《剣を鍬に》に匹敵するほど優秀なカードとされる1枚です。強力な軽量クリーチャーが多いモダンやレガシーでこそ真価を発揮しますが、スタンダードでも十分以上に活躍してくれます。特に《巻きつき蛇》《残忍な剥ぎ取り》といった強力な2マナ域を擁する「黒緑アグロ」と戦うには欠かせない1枚です。

秘密の解明者、ジェイス

 歴代の強力なジェイスたちには見劣りするものの、十分に強力なプレインズウォーカーです。これまでは「白青フラッシュ」のサイドボードに「黒緑昂揚」対策として2枚ほど採用されていましたが、5マナと重いこともあってか、メインボードから採用されるほど万能な選択肢ではありませんでした。

 それが禁止改定を経た『霊気紛争』以後は、《精神壊しの悪魔》など《反射魔道士》に虐げられていたバウンスに弱い中・重量級のクリーチャーを見かける機会が増えたことに加えて、ドロー勝負になるコントロールとのマッチアップも珍しくなくなったため、メインボードからも自然に採用できるようになりました。《奔流の機械巨人》を戻して再利用したり、”奥義”で完封したりと、何かと応用の利く1枚です。

3. サイドボード・ピックアップ!

深水の大喰らい

 「もしかして、こいつはそこそこやるんじゃないか?」との前評判を裏切って、やっぱり何もしなかった1枚ですが、やっとそこそこやってくれる機会が回ってきたようです。《守護フェリダー》コンボの強さは、それが揃っていようといまいと、相手に備えることを強要するところにあります。おもむろにフルタップするなんて自殺行為なわけです。

 そこで大事になるのは、いかに隙を見せずに仕掛けるか。重いプレインズウォーカーでは大振りすぎます。かといって何も動かないのも構えたマナがもったいない。そこで白羽の矢が立ったのが《深水の大喰らい》でした。2マナと限りなく軽いコストに、余ったマナをドローに変えることができる能力は、ただでさえ余ったマナの使い道に困っていた「青黒」にとっては願ったりかなったりのものだったのです。

餌食

 できれば「黒緑昂揚」で紹介したかったカードではありますが、”昂揚”しにくい「青黒コントロール」でもなかなかの活躍を見せてくれます。ひとつは、コントロール同士のマッチアップにおいて勝敗の鍵を握る プレインズウォーカーに触れるカード であることです。《破滅の道》が合わせて4枚に《否認》も4枚と十分すぎるほどの防壁は築いているものの、いくらあっても足りないのは事実です。インスタントの呪文であることから《奔流の機械巨人》から再利用できたり、”昂揚”すれば《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》《不屈の追跡者》を一気に仕留めることだって夢ではありません。

 もうひとつは、意外と見落とされがちな「緑赤エネルギー」の《逆毛ハイドラ》といった呪禁クリーチャーへの対抗策です。全体除去のない「青黒」は単体除去に強いクリーチャーへの対処に困ることが多く、《餌食》のように生贄に捧げさせたり、《深水の大喰らい》のような接死もちで防ぐほかありません。あくまでも死角を守るための選択ではありますが、1枚あるだけでもギュッとデッキが締まるカードです。

荒廃した瀑布

 さきほど「青黒」は余ったマナを活かす方法が少ない という話がありました。これは深刻な問題であり、それを解消するためにこそ《深水の大喰らい》といったカードが注目を浴びていたりするのです。しかし、マナの使い道が問われる遅いマッチアップでは、それ以前に十分なマナあるいは土地を伸ばし続けられるかが重要だったりします。余ったマナの使い道を用意しつつ、マナを伸ばすための工夫もしなければなりません。この2つの要素を限られたサイドボードの数枚で補うのは、少し考えただけでも難題だということがわかります。

 そんな難題をスマートに解く鍵こそが、この《荒廃した瀑布》なのです。マナが余ったら《荒廃した瀑布》に注ぎ込み、そもそも《荒廃した瀑布》は土地なので、土地を伸ばすための工夫だって同時に担ってくれます。土地が28枚のデッキに違和感を覚える人もいるとは思いますが、それほど「青黒コントロール」は 土地を毎ターン並べる ことが大事なデッキです。6ターン目の《奔流の機械巨人》に辿り着くためにも、土地の枚数はしっかりと用意しましょう。

新環境はいよいよ2週目に!

 さて、「青黒コントロール」については以上です!いかがだったでしょうか?新環境になってから2回目の週末を迎え、デッキリストは進歩し、デッキタイプも選別されてきました。

 【黒緑アグロ】【サヒーリ・コンボ】が一歩抜け出したという声が大きいなか、はたしてプロツアー本戦ではどんなデッキが活躍するのでしょうか。このデッキか、あるいはまったく新しい別のデッキなのかもしれません。

 まだまだ『霊気紛争』スタンダード環境は幕が上がったばかり。このデッキもきっと姿を変えていくことでしょう。これからの環境の動向に注目しつつ、今週末のプロツアーを楽しんで迎えましょう!次回もお楽しみに!

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