『モダンマスターズ 2017年版』先行プレビューカード公開!

晴れる屋メディアチーム

By Atsushi Ito

 はじめに、とても主観的なプレビュー記事になることを許して欲しい。もし私という人間に興味がなければ、カード画像が出てくるまでスクロールすることをお勧めする。

 私たちは、何のためにデッキを作るのだろうか?

 今よりもっと勝ちたい。お気に入りのカードを使いたい。自己の承認欲求を満たしたい……その理由はおそらく、人によって様々だ。

 だが突き詰めてしまえばそれらは結局、「何かを変えたい」という変化の欲求に集約される。

 主体的に外部に働きかけることで、世界の一部として参画している実感が欲しい。そんなふうにして私たちの自我は、なぜ自分は生きているのだろうか、という存在意義を求めずにはいられない。

 しかし広い世界に比べれば、個人の力で変えられる領域はほとんど無視していいくらいに小さい。

 変わり映えのしない風景。自身の身の回りすらもままならない日常。そんな狭い箱庭で、「何かを変えた」という幻想を抱きながら、私たちは日々生きている。

 何者にもなれない自分に、苛立ちを覚えながら。

 デッキを作ることに意味など存在しない。

 世界は変わらない。なぜなら情報化が進んだ現代では、一度ネットに載ったリストはすぐさま拡散し、そして大量のコピーを生む。あとに続くのは、集合知による洗練。最後は一握りのプロプレイヤーがその中から最良のものをチョイスして、栄光を掴み取る。

 その栄光は、誰のものだ?

 勝者のものだ。デッキビルダーのものなどでは決してない。断じて!

 無論デッキビルダー自身には、勝者のデッキを作ったことを誇りに思う気持ちはあるだろう。だが叶うことならば、その舞台に立っていたのが自分であって欲しかった。そう願うのが普通なのだ。

 少なくとも、私の場合はそうだった。勝者のデッキを作っても周りの世界は何一つ変わらず、自分自身も何者でもないまま惰性の日々が続く。

 それならば、そんな行いのどこに意味があると言うのだろう?

 だがそれでも、愚かな私はデッキを作り続けている。

 おそらく無意味な行動だろう。そう思いながらも手を止めないのは、後悔をしたくないからだ。

 これまで積み上げてきたこと。マジックをし、デッキを作り、記事を書いてきたこと……それらの経験すべてが、今の私を形作っている。

 その経験を手放して。20年、30年が経ったとき、ふと自分が歩んだ道を振り返ったときに、「あのときああしていれば」と後悔はしないだろうか?

 私にしかできないことだなんて言うつもりはない。しかし続けられた、積み上げることができたということは、すなわち私にとっては「何かを変える」可能性が高いものだった……それだけは確かなのだ。

 そう、世界は変わらないかもしれない。

 しかし、だとしても。

 私がデッキを作るのを止めないことで、それがやがては足跡となり、いつか誰かの道行きを支える轍になればいい。

 ……そんな祈りが、この小さな奇跡を生んだのだと信じたい。

 それでは紹介しよう。

 2017年3月17日(金)に発売となる『モダンマスターズ 2017年版』に収録の、今最もモダン環境で活躍していると言っていいカード……《死の影》を。

 ありがとう、WotC。きっと私は、このプレビューカードを受け取った日のことを生涯忘れないだろう。

 なぜなら、このカードが『モダンマスターズ 2017年版』に収録されたのは、私が【Super Crazy Zooを作った】、まさにそのおかげかもしれないからだ。

 傲慢な考え方かもしれない。1マナであることの価値がどこまでも高いということを知っているモダンプレイヤーたちならば、私がいなくても似たようなデッキをいずれは見出したことだろう。

 けれどもし仮に、「『モダンマスターズ 2017年版』の収録カードを決定する会議」なるものがWotCの内部で開催されたとして……それ自体憶測に過ぎないのだけれども……その会議の場ではきっと、いや間違いなくSuper Crazy Zooのモダンでの活躍もきっかけとなり、《死の影》の収録を決定したに違いないのだ。

 それはバタフライエフェクトとすら呼べない、因果のこじつけに過ぎないのかもしれない。

 しかし少なくとも私が作ったデッキが契機となって、「何かを変えた」のだとすれば。

 私にとってこれ以上の救済はないだろうと、そう思うのだ。

 ビートダウンクリーチャーとして《死の影》を運用する……私が世界に解き放ったアイデアは、【死の影ジャンド】という、もはや私がデザインしたデッキとは似て非なる形で、今も元気にモダン環境を走り回っている。『モダンマスターズ 2017年版』への収録は、このデッキを作りたい人にとってはベストタイミングと言っていいだろう。

 デッキを作っても、きっと世界はすぐには変わらない。だがそれでも、デッキを作ることで。世界はいつかどこかで、確かに変わるのだ。

 今これを読んでいるあなたが作る60枚にも、世界を変える力がある。

 2017年3月17日(金)に発売の『モダンマスターズ 2017年版』で、ぜひあなただけのデッキ作りに挑戦してみて欲しい。

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