Translated by Kenji Tsumura
(掲載日 2017/11/29)
やあみんな、グジェゴジュだ!
これが晴れる屋に寄稿する3つ目の記事になるが、これまでにスタンダードとリミテッドについて書いてきた。そしてこの度、いよいよモダンについて話すときがきたんだ!
モダンのプロツアーとグランプリを控えた今こそが、モダンの記事を執筆する完璧なタイミングではないかと思う。ここ数週間で大いに人気を博したデッキがふたつあり、それはジェスカイテンポと5色人間デッキだ。もちろんどちらも試してみようと考えていたんだが、先にジェスカイに挑戦してみてからというもの俺はすっかりこのデッキに魅入られてしまい、5色人間を手に取ることはなかった。
ジェスカイは素晴らしいデッキで、たくさんのオプションのおかげでプレイするのも最高に楽しい。このデッキは古典的なテンポデッキのようにプレイすることもできれば、全力のコントロールデッキとして振る舞うこともできる。もしも対戦相手が遠慮なく “フェッチランド” や “ショックランド” にライフを支払うようであれば、バーンデッキのように立ち回ることだってできるんだ。
今日は読者のみんなに、俺がマジックオンラインで20回以上のリーグをこなし、現実世界でもいくばくかのテストを終えたこのデッキに関する思考を共有していきたいと思う。
デッキリスト
1 《山》
1 《平地》
2 《蒸気孔》
2 《神聖なる泉》
1 《聖なる鋳造所》
4 《沸騰する小湖》
4 《溢れかえる岸辺》
4 《天界の列柱》
2 《硫黄の滝》
-土地(24)- 4 《瞬唱の魔道士》
4 《呪文捕らえ》
3 《聖トラフトの霊》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
-クリーチャー(12)-
2 《大祖始の遺産》
2 《軽蔑的な一撃》
1 《イゼットの静電術師》
1 《ヴェンディリオン三人衆》
1 《仕組まれた爆薬》
1 《外科的摘出》
1 《払拭》
1 《否認》
1 《天界の粛清》
1 《神々の憤怒》
1 《至高の評決》
-サイドボード(15)-
これが現在のデッキリストだ。モダンはあまりにも広大なフォーマットであり、どのリストが最適かだとか、全てのデッキに勝てるようになんて進言することはできない。全てはメタゲームと大会で実際に当たったデッキに依存するんだ。
まずは目標を設定し、75枚のデッキを作る際にそれを胸に止めておかねばならない。俺は自分のリストをミラーマッチとコントロール、さらには青赤ストームやタイタンシフトにも少しばかり相性が良くなるようにしたかった。メインボードに《ヴェンディリオン三人衆》が1枚、そして《呪文嵌め》が2枚入ってるのはこれが理由さ。
アブザンやジャンドといったミッドレンジデッキに勝とうとするのならば、《謎めいた命令》を増量するなりプレインズウォーカーを採用するといいだろう。
ここからは各カードチョイスについてお話ししよう。
デッキの中核
これらはこのデッキの中核であり、ジェスカイテンポをプレイしようと思うのなら上記カードを抜いたり枚数を減らしたりするべきではない。青白赤の中核カードの大半は親和や5色人間に強いからな (《ぬめるボーグル》のことは一旦忘れておこう) 。大量の軽量除去呪文は《瞬唱の魔道士》と上手く噛み合うし、《聖トラフトの霊》のために道を切り開くことも容易だ。
その他のスロット
《謎めいた命令》2枚
最初は3枚から始めたものの、軽いデッキに対してたくさんの重い呪文を引くことは許容できない。したがって3枚目の《謎めいた命令》は抜いてしまい、軽い呪文と入れ替えた。
《電解》2枚・《稲妻のらせん》の3枚目
どちらもクリーチャーデッキに対して素晴らしいカードだ。また、これらのカードは “バーン戦略” を現実のものにしてくれる。それは1ゲーム目に驚くほどの頻度で起こるんだ。
《論理の結び目》3枚・《呪文嵌め》2枚
《差し戻し》0枚・《マナ漏出》0枚
これが俺たちの打ち消し呪文だ。8枚のフェッチランドと大量の1マナ呪文があるため、《マナ漏出》よりも《論理の結び目》の方が好きだ。《論理の結び目》は《マナ漏出》と同様に2ターン目の “確定カウンター” として機能するし、終盤戦で力を失ってしまうこともない。《謎めいた命令》がデッキに入っている関係上フェッチランドで積極的に青マナを探すこともあり、(青)(青)というコストもほとんど問題にはならない。
《呪文嵌め》はマナ効率の良い打ち消し呪文で、メタゲーム上の大部分を占めるデッキには《呪文嵌め》の対象となる呪文が含まれている。テンポデッキにおいて《瞬唱の魔道士》、《頭蓋囲い》、《安堵の再会》、それにタイタンシフトのマナ加速呪文をわずか1マナで打ち消せるなんて素晴らしい気分だ。さらに《呪文嵌め》はストームデッキのクリーチャーを対処する手段としても最適だ。《稲妻》なんかと違って、それに対応して《捨て身の儀式》を唱える機会を与えたりすることはないからな。
《聖トラフトの霊》の3枚目
3枚が多いことは分かっている。だが《聖トラフトの霊》は相性が悪いマッチへの最高の兵器で、ときにこいつを3ターン目にキャストして打ち消し呪文や除去呪文でバックアップすることでしか勝利できないマッチアップが存在するんだ。《聖トラフトの霊》を引きたくないと思うようなマッチアップは基本的に相性が良いし、どの道勝利するであろう人間デッキとのゲーム中に1枚無駄カードを引こうが気にすることはない。
《ヴェンディリオン三人衆》1枚
ジェスカイテンポを使うのならば、デッキが上手く機能するように序盤から対戦相手にプレッシャーを与えていかなければいけない。ほとんどの場合は3ターン目の《聖トラフトの霊》が最良の一手となるが、マッチアップ次第では3ターン目にタップアウトすることを躊躇してしまうものもあるだろう。そういったマッチで光り輝くのが《ヴェンディリオン三人衆》だ。インスタントスピードでパワー3のクリーチャーってだけでもありがたいが、対戦相手の手札に干渉する能力がこいつをMVP級のカードに押し上げている。
サイドボード
モダンは全てのマッチアップを説明するにはあまりにも広大なフォーマットだ。そこで、モダンの一般的なアーキタイプに対する、俺なりのサイドボーディングを含むマッチアップガイドをお届けしよう。
基本的なゲーム運びとアドバイス&トリック
ジェスカイテンポは様々なゲームプランを内包したデッキで、いつ攻める側に回るのか、どんなときに受ける側になるのかを理解しておくことが非常に重要なんだ。君の役割はゲーム中に頻繁に変わるため、この問いに完璧な解答を用意するのは難しい。
例えば《死の影》デッキと戦う場合、序盤は純然たる受ける側のプレイヤーとしてゲームを始め、対戦相手の重要な呪文は打ち消して全てのクリーチャーを除去することになる。だがゲーム中のいずれかの時点で君は攻める側に回り、対戦相手が自軍のクリーチャーを守れるようになる前にゲームを終わらせなければならないんだ。《死の影》デッキにとって1体のクリーチャーはゲームに勝つために十分であることが多いし、彼らにそれを達成させるだけの十分な時間を与えてはいけない。
攻守のギアを入れ替えるしかるべきタイミングを見つける技術は、このデッキを使うにあたって最も重要かつ習得するのに時間がかかるものだ。
ここからはその他のアドバイスやトリックをお伝えしよう。経験豊富なプレイヤーなら知っているものばかりだろうが、これからジェスカイやモダンの冒険を始めるプレイヤーには役に立つだろう。
マッチアップガイド
ミラーマッチ
ミラーマッチで最高の脅威は《聖トラフトの霊》だが、こいつを解決させるのは容易なことではない。対戦相手が2マナを構えているのならば、3ターン目に《聖トラフトの霊》をキャストするべきではない。なぜならば対戦相手は君の《聖トラフトの霊》を打ち消したあげく、彼自身の《聖トラフトの霊》をプレイできてしまうからだ。
例外としては、2枚目の《聖トラフトの霊》を持っている場合が挙げられる。それならば先ほどの最悪のシナリオにおいても、次のターンにブロックして相打ちすることができる。大多数のジェスカイテンポはメインボードにプレインズウォーカーを採用していない。それゆえに4ターン目にタップアウトしてしまった君を対戦相手が咎める手段は、戦闘後にキャストされる2枚目の《聖トラフトの霊》くらいのものだ。
対戦相手に何かしらのアクションを強いるため、仮に何の呪文も追放できずとも相手の3ターン目のエンドステップに《呪文捕らえ》を唱えるのが好きだ。お互いが除去呪文を大量に擁している以上、《呪文捕らえ》が何らかの呪文を追放したまま殴り続けることなんて稀だし、それゆえに《呪文捕らえ》をただの2/3「瞬速」クリーチャーとしてキャストしても損をしただなんて感じたりはしない。この点において《ヴェンディリオン三人衆》の方が優れているのは明白だが、《ヴェンディリオン三人衆》はデッキに1枚しか入っていないしな。
対 ミラーマッチ
除去呪文は素晴らしいとは言えないものの、《流刑への道》は《天界の列柱》に、《稲妻》は《呪文捕らえ》に対して必要なため数枚は残すべきだ。
基本的に相手のクリーチャーは戦場に出たあとに対処するよりも、打ち消してしまった方がいい。これが《呪文嵌め》を2枚とも残す理由で、例えサイドボード後に《瞬唱の魔道士》しか対象がなかったとしても残すようにしている。
青赤ストーム
このマッチは少しばかりこちらが有利だが、プレイするのがとても難しいマッチでもある。可能な限り素早くプレッシャーをかける必要があるため、俺はほとんどの場合において2ターン目に《瞬唱の魔道士》をキャストするようにしている。
また、《遵法長、バラル》と《ゴブリンの電術師》を即座に除去することも非常に重要だ。ストームデッキはこれらのクリーチャーの有無で動きが大きく異なるからな。幸運にも、ジェスカイにはこれらのクリーチャーを除去できる手段が豊富に含まれている。
いずれかのダメージクロックを用意できている状況であれば、《聖トラフトの霊》をプレイしないように。タップアウトすることはストームプレイヤーへの最高の贈り物にほかならないからな。逆にもしも何もダメージクロックを用意できておらず、なおかつ手札も良くない場合には、リスクを承知で《聖トラフトの霊》をプレイするべき展開が多々ある。対戦相手がすぐに仕掛けられるほど良い手札ではないことを祈ろう。
対 青赤ストーム
サイドボード後には、このマッチはさらに良くなる。無駄カードは全てサイドアウトしてしまえるし、それが素晴らしい対策カードに置き換えられるんだ。大量の打ち消し呪文に加えて《大祖始の遺産》があるため、対戦相手が《ぶどう弾》でこちらを焼き切るのは困難だろう。そして、これこそがたくさんの《巣穴からの総出》対策をサイドインする理由なんだ。一見《イゼットの静電術師》や《神々の憤怒》はひどいカードに見えるかもしれないが、突如として現れる適当な8体の《ゴブリントークン》に負けてしまわないようにするための必要悪だ。
人間
このマッチはとても有利だ。俺のマジックオンラインでの対戦成績は8勝0敗だし、ゲームもわずか2本しか落としていない。また、プレイに関しても比較的やりやすい相手と言える。こちらは単にコントロールデッキとして、対戦相手のクリーチャーを全滅させればいいんだ。
人間デッキへの唯一の負け筋は、対戦相手が《魂の洞窟》をコントロールしている状況で大量の打ち消し呪文を引いてしまうか、とんでもないマナフラッドを起こしてしまったときくらいのもんだ。《呪文捕らえ》の能力は “打ち消す” ではなく “追放する” なので、《魂の洞窟》に対してもしっかりと仕事をしてくれることは覚えておいてくれ。
対 人間
《呪文嵌め》を1枚だけ残しているのは、人間デッキに対してこれ以上サイドボードのスペースを割きたくないからだ。《呪文嵌め》は相手が《魂の洞窟》を引いていると無駄カードになってしまうものの、それ以外の場合は《帆凧の掠め盗り》や《スレイベンの守護者、サリア》を上手く処理してくれる。もしもサイドボードに追加のカードを用意するのであれば、残る1枚の《呪文嵌め》も気兼ねなくサイドアウトしよう。
エルドラージトロン
エルドラージトロンは、ジェスカイにとって相性最悪のマッチアップの1つだ。エルドラージクリーチャーは《稲妻》や《稲妻のらせん》で死なないほどにサイズが大きいし、打ち消し呪文は《魂の洞窟》で機能不全に陥る。そのうえ、ときには《虚空の杯》 (X=1) までもが襲いかかってくるんだ。
勝利するための最善策は3ターン目に《聖トラフトの霊》をキャストし、《流刑への道》で道を切り開くことだ。ゲームが長引いてしまうとほとんど勝機がなくなってしまうため、一貫してビートダウンする側として行動するようにしよう。
対 エルドラージトロン
親和
これも相性が良いマッチアップだ。全力でコントロールデッキとして振る舞い、対戦相手の重要な呪文をしっかりと捌いていこう。ここでいう重要な呪文とは、《電結の荒廃者》、《鋼の監視者》、《刻まれた勇者》、《エーテリウムの達人》、《頭蓋囲い》を指す。これらを対処できたなら、残りのカードは脅威ではない。
《電解》は《信号の邪魔者》や《メムナイト》といった、さして重要ではないカードを処理するのにうってつけだ。必要に駆られない限り、これらのクリーチャーにそれ以外の貴重な除去呪文を使わないようにしよう。
《呪文嵌め》は《頭蓋囲い》への貴重な解答だ。したがって、《電結の荒廃者》や《鋼の監視者》といったカードを他のカードで対処できるようであれば、《頭蓋囲い》に備えて《呪文嵌め》を温存しておこう。
対 親和 (先手)
対 親和 (後手)
おわりに
これらが今現在のモダンで俺が重要だと考えているマッチアップだ。1つの記事にモダンのデッキの全てを詰め込むことは不可能だが、読者諸君がこの記事を楽しんでくれたら幸いだ。
もしも何か質問があれば、遠慮なくTwitterで聞いてくれよな!グランプリ・リヨン2017 → ワールド・マジック・カップ2017の旅が終わり次第、全ての質問に答えたいと思う。
最後まで読んでくれてありがとう。また次回!
グジェゴジュ・コヴァルスキ
この記事内で掲載されたカード
ポーランド出身。
【グランプリ・リール2012】、【グランプリ・ブリュッセル2015】でトップ8入賞。【グランプリ・サンティアゴ2017】では見事準優勝を果たした。
その高い実力はプロツアーでも発揮され、多数の上位入賞、マネーフィニッシュを経験している。