Translated by Kenji Tsumura
(掲載日 2018/07/27)
やあ、グジェゴジュだ。今日は新環境のスタンダードについてお話ししたいと思う。
『基本セット2019』が発売してから3週間が経とうとしているが、いまだにプロツアーが開催されていないというのは奇妙だよな。「マジック25周年記念プロツアー」はこれまでのプロツアーとは違ったものになるだろう。このプロツアーはチーム戦であり、各プレイヤーはスタンダード/モダン/レガシーの中からひとつのフォーマットを選んで戦うことになる。
マイケル・ボンデ、マキス・マツォウカス
俺のチームメイトはマイケル・ボンデ/Michael Bondeとマキス・マツォウカス/Makis Matsoukasで、俺の担当フォーマットはスタンダードの予定だ。したがって、ミネアポリスの練習合宿でチームメイトと合流する前までの間に、俺は今新しいデッキを試し、それらに関する理解を深めようとしているところだ。
本日はそこで学んだことであったり、『基本セット2019』が登場したことで新たに誕生したデッキや明確に強化されたデッキなどを読者諸君に共有していきたいと思う。
グリクシス・ミッドレンジ
グリクシス・ミッドレンジは、新たに誕生したデッキを除けば最も強化されたデッキだろう。このアーキタイプにはふたつのバージョンが存在する。
ひとつは古き良き「青黒ミッドレンジ」に強力な《破滅の龍、ニコル・ボーラス》のみを足したもの。もうひとつは《エネルギー》を基調としたこれまで通りの「グリクシス」で、《致命的な一押し》の代わりに赤い除去呪文を採用し、《エネルギー》の使い道として《つむじ風の巨匠》を用意している。
いまだにどちらのバージョンが優れているのか確信が持てていないものの、《破滅の龍、ニコル・ボーラス》、《死の権威、リリアナ》、そして《スカラベの神》の組み合わせがどれほど強力なのかは理解している。さらには《光袖会の収集者》、《機知の勇者》、《奔流の機械巨人》といったカードのおかげで、このデッキは無限のようなアドバンテージを供給してくれるし、おそらく今現在のスタンダードで最も長期戦に強いデッキだろう。
『基本セット2019』から加入したカード : 《破滅の龍、ニコル・ボーラス》
緑単ストンピィ
「緑単ストンピィ」はここ最近かなり人気のあるアーキタイプだったが、『基本セット2019』の加入は大きな影響をもたらした。メインデッキに入る2種類のカードが手に入ったし、サイドボードには強力なプレインズウォーカーが加わったんだ。
《蔦草牝馬》は「緑単ストンピィ」が直近のスタンダードで抱えていた最大の問題への解答となるし、それにより相性が悪いとされていたマッチアップの多くを改善してくれる。こいつは「グリクシス」や「黒単ゾンビ」のように黒を基調としたデッキに対するMVPで、対戦相手はこれをブロックすることも殺すことも叶わない。つまりこの馬は完璧な4ターンクロックなんだ。
《茨の副官》はそれほど大きなインパクトを持たないが、とはいえ堅実な2マナ域だ。2マナのカードは「赤単」とのマッチアップを良いものにしてくれるし、仮に殺されたとしても必ずトークンを残してくれる。このトークンは将来的に《原初の飢え、ガルタ》を軽くキャストするためであったり、《不屈の神ロナス》の相方として役立つだろう。
《ビビアン・リード》は素晴らしいサイドボードカードだ。もはや《押し潰す梢》のような弱いカードを使わなくて済むし、《黎明をもたらす者ライラ》に脅かされることもない。なぜなら《黎明をもたらす者ライラ》が着地した返しのターンで《ビビアン・リード》で撃ち落とすことができるし、その後戦場には強力かつ継続的なアドバンテージ源が残るんだからな。
4 《花盛りの湿地》
4 《森林の墓地》
4 《ハシェプのオアシス》
-土地 (24)- 4 《ラノワールのエルフ》
3 《緑地帯の暴れ者》
4 《茨の副官》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《鉄葉のチャンピオン》
3 《不屈の神ロナス》
2 《打ち壊すブロントドン》
3 《蔦草牝馬》
3 《原初の飢え、ガルタ》
-クリーチャー (30)-
2 《打ち壊すブロントドン》
2 《霊気圏の収集艇》
2 《ビビアン・リード》
1 《蔦草牝馬》
1 《帰化》
1 《造命師の動物記》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《生命の力、ニッサ》
1 《秘宝探究者、ヴラスカ》
-サイドボード (15)-
『基本セット2019』から加入したカード : 《茨の副官》, 《蔦草牝馬》, 《ビビアン・リード》
青単ストーム
俺にとって「青単ストーム」は新しいデッキだし、『基本セット2019』によって生まれたデッキだと思う。もちろん、何名かのプレイヤーが『基本セット2019』が出る前からこのデッキに挑戦していたのは知っているが、正直に言って《霊気貯蔵器》は競技レベルでプレイするだけの十分な強さを持ちあわせてはいなかった。
だが、《練達飛行機械職人、サイ》が登場したことで世界は変わった。《練達飛行機械職人、サイ》は時間稼ぎにもなり、カードの引き増しもできれば、《モックス・アンバー》がマナを出せるようになる条件も達成してくれる。それに《飛行機械トークン》と《鼓舞する彫像》を組み合わせれば実質的にマナ加速もしてくれるし、もしもコンボプランが上手くいかなかった際には堅実なフィニッシャーにだってなってくれるんだ。
これら全てが1枚のカードで実現でき、しかもそれがたった3マナだなんて信じられない。
俺はまだ誰も「青単ストーム」の正しいリストにたどり着けていないと確信を持っているし、もしも誰かがそれを成し遂げたのならば、そいつはスタンダードを攻略してしまうだろう。プロツアーでそれが起こるかだって?それは誰にも分からない。
4 《逆説的な結果》
3 《バラルの巧技》
2 《暗記+記憶》
3 《モックス・アンバー》
4 《改革派の地図》
4 《予言のプリズム》
2 《金属紡績工の組細工》
4 《鼓舞する彫像》
3 《霊気貯蔵器》
-呪文 (32)-
3 《ウルザの後継、カーン》
1 《遵法長、バラル》
1 《練達飛行機械職人、サイ》
1 《発明の領事、パディーム》
1 《沈黙の墓石》
1 《魔術遠眼鏡》
1 《金属の叱責》
1 《バラルの巧技》
1 《暗記+記憶》
1 《工匠の達人、テゼレット》
-サイドボード (15)-
『基本セット2019』から加入したカード : 《練達飛行機械職人、サイ》, 《工匠の達人、テゼレット》
赤きドラゴン
「(ほぼ) 赤単のドラゴン」デッキは、とても野心的に映る。俺の保守的な脳みそは3ターン目に(赤)(赤)(赤)のカードをキャストし、続くターンに(1)(青)(黒)(赤)のカードを唱えるなんてことは支持できないんだ。とはいえ、このデッキがダメだって言ってるわけじゃない。このデッキはMagic Onlineで定期的に5勝0敗を記録しているし、いくつかの小さな大会を優勝しているからな。
ただ俺にはどうしても理解できないし、このデッキは劣化版「赤黒ミッドレンジ」のように見えてしまう。だがこちらの方が明確に派手だし、もしこのようなスタイルのデッキが好きなら迷うことなく挑戦してみてほしい。俺は多分このデッキを単に過小評価しちまってるんだろう。
スタンダード環境はまだ始まったばかりで、全てのデッキを完璧に理解できるまでの十分なゲーム数をこなせてはいないんだ。
4 《泥濘の峡谷》
4 《竜髑髏の山頂》
4 《尖塔断の運河》
4 《硫黄の滝》
2 《霊気拠点》
1 《屍肉あさりの地》
-土地 (25)- 4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《ゴブリンの鎖回し》
2 《ピア・ナラー》
4 《破滅の龍、ニコル・ボーラス》
4 《栄光をもたらすもの》
2 《厄介なドラゴン》
-クリーチャー (20)-
『基本セット2019』から加入したカード : 《厄介なドラゴン》, 《破滅の龍、ニコル・ボーラス》, 《苦悩火》, 《火の血脈、サルカン》, 《吐炎》
黒単ゾンビ
「黒単ゾンビ」は『基本セット2019』によって産声を上げたもうひとつのデッキだ。《墓地の司令官》と《死の男爵》が加わったことでついに良質な十分な数のゾンビを確保でき、それに伴い「ゾンビ」は競技レベルにまで引き上げられた。
素晴らしいマナカーブ、強力な2マナのパワー3クリーチャー、さらには12枚もの “ロード” 効果を持つカードのおかげで、「ゾンビ」デッキは質の良い攻撃的なデッキとなり、他のクリーチャーデッキを容易に蹴散すことができる。《死の男爵》、そして彼が付加する接死能力は、地上で攻撃しようとする全てのプレイヤーにとって悪夢となる。接死と+1/+1の修正を受けた《戦慄の放浪者》が《鉄葉のチャンピオン》と相打ちになることを想像してみてほしい。
『基本セット2019』から加入したカード : 《戦墓のグール》, 《墓地の司令官》,《死の男爵》, 《死が触れぬ者、リリアナ》
おわりに
これが『基本セット2019』が与えた影響だ。多くのプレイヤーが考えているよりも、このセットが今現在のスタンダードに遥かに大きな影響を与えると確信を持っている。これからのスタンダード環境はどのように変化するのだろうか?
俺が思うに「青単ストーム」こそが伸びしろが最も多く残されているデッキで、もしもいずれかのプレイヤーが正しい構築を見つけ出したならば、プロツアーのスタンダード部門を席捲するだろう。
もしもそうならなかったのならば、メタゲームは健全でバランスの取れたものになるはずだ。最新セットからこれといった収穫がなかったとは言え、「赤単」や「赤黒ミッドレンジ」は依然として健在だし、今でもメタゲームの一部だ。その一方で、2軍に位置していたデッキの多くがたくさんの収穫を手にしており、今回は “プロツアー《ゴブリンの鎖回し》” にはならないと信じている。プレイデザインチームは、スタンダードのバランスをとるために素晴らしい仕事をしたよな。
本日はここまで。これが今シーズンに晴れる屋で執筆する最後の記事になるから、読者諸君、俺を応援してくれたみんな、記事を評価してくれた人、それと同様に建設的な批判を寄せてくれ、俺がより良い記事を書く助けとなってくれた人々に感謝の意を示したい。
こうして記事をお届けできたことは素晴らしい時間かつ素晴らしい経験であり、読者のために記事を書けたことを嬉しく思う。近いうちに再び出会えることを願っている!
1年間ありがとな!
グジェゴジュ・コヴァルスキ
この記事内で掲載されたカード
ポーランド出身。
【グランプリ・リール2012】、【グランプリ・ブリュッセル2015】でトップ8入賞。【グランプリ・サンティアゴ2017】では見事準優勝を果たした。
その高い実力はプロツアーでも発揮され、多数の上位入賞、マネーフィニッシュを経験している。