この先には2018年1月初旬発売の書籍『The Art of Magic: the Gathering: Ravnica』(もしくは「ラヴニカアートブック」と表記します)を資料とする「ネタバレ」が含まれていることをご了承下さい。
こんにちは、若月です。
相変らずラヴニカは書きたいことがたくさん。今回もアートブックと『ラヴニカの献身』のカードを見ていくことにします。また引き続き、便宜上各ブロック・セットを以下のように表現することがあります(公式の呼称ではありません)。
- ○『ラヴニカ:ギルドの都』ブロック(2005-2006年):ラヴニカ一期、もしくは単に「一期」
- ○『ラヴニカへの回帰』ブロック(2012-2013年):ラヴニカ二期、もしくは単に「二期」
- ○『ラヴニカのギルド』『ラヴニカの献身』『灯争大戦』(2018-2019年):ラヴニカ三期、もしくは単に「三期」
1. シミックのクリーチャーと守護者計画
『ラヴニカの献身』プレビューでは、シミックの新たなクリーチャーが公開されるたびに笑いが起こっていました。そう三期のシミックはクリーチャー・タイプのものすごい混合がこれでもかと目立ちます。まるでB級映画。私は常々「ラヴニカには混血種族もたくさん見られる」と書いていますがそういう意味じゃねーから!
ギルド間の冷戦で緊迫したラヴニカ(のカードを見る私達)にある意味笑顔を提供してくれています。
実はこの気配は昔からありましたので、むしろこの路線を突き詰めてきたということなのでしょうか。せっかくですのでシミック連合のクリーチャー・タイプ魔改造の歴史を辿ってみましょう。
■ラヴニカ一期のシミック
元々、シミック連合はラヴニカの都市が拡大する中で自然を保持するためのギルドでした。そして文明と自然が、共に生き延びるためには互いに適応することが必要だと考えるようになります。なおギルドパクトで定められたシミック連合の役割は「公衆衛生」。ラヴニカにおいて医療を担当しているのはシミックであり、ボロス軍へは軍医を派遣しています。多くのギルドがそうであるように、カードでははっちゃけていてもこの都市世界において堅実かつ不可欠な役割を担っているんですよ?
初出の『ディセンション』におけるシミック連合のクリーチャーは、多くが半透明の青緑色をした組織を保有しています。これは当時のギルドマスターである《シミックの幻想家、モミール・ヴィグ》が発明した「細胞質/Cytoplast」と呼ばれる魔法的人工生体組織です。
「移植/Graft」の能力を持ち、クリーチャー・タイプに「ミュータント」が含まれているものが、この細胞質を付加された生物になります。そもそも「ミュータント」とは?つい最近、マローの記事に説明がありました。
「ミュータント」は「遺伝子的に何らかの調整を受けた単一種族のクリーチャーで、他のクリーチャー・タイプと混血していないもの」とします。例えば、鳥・ミュータントやマーフォーク・ウィザード・ミュータントなどがこれです。それはもととなった種の一種ですが、調整されたもので、「ミュータント」を追加することで調整されていることを示しています。対照的に、複数の種族タイプを持つクリーチャーは、遺伝子実験の結果であることが明らかなので、ミュータントというタイプは追加しません。例えば、《シュラバザメ》や《速足ウツボ》は単に魚・カニとなります。
つまり、細胞質は言うなればクリーチャーをミュータント化するものということ。これは一体何なのか。上で「魔法的人工生体組織」と書きましたが、細胞質は医療目的に、例えば義手や義足のように使用され、もしくは既存の組織や部位の強化に用いられました。シミック連合はこの細胞質を広く売り出しており、『ディセンション』当時のゴルガリ団のギルドマスターである《ジャラド》は、あるとき細胞質を用いてゾンビを強化しないかと営業を受けました。
小説「Dissension」チャプター5より訳
この十年の間に、彼らの細胞質は非常に多くの産業に取り入れられてきた。オルゾフはそれらを用いて奴隷の値段を釣り上げていた。イゼットはその機能性を評価していた。他ギルドはもっと様々な、時に不法な目的に使用していた。あの生物マナ科学的付属体は身体組織に付加されると、シミックのみが理解する方法でその部位の機能を増大させる――透明で不定形の塊が、例えば上腕と手を覆い、そしてずっと機能的で有用な上腕と手へと必要に応じて成長するのだ。
少なくとも、シミックは彼にそう言っていた。確かに、細胞質を付加されたゾンビは素早く能率的に動くのだろう。だがジャラドはそれを全くもって信用しておらず、とりわけ自身のギルドがシミックによってそのように変化させられるという考えが嫌だった。
ジャラドが細胞質を信用しなかったのは正解でした。モミール・ヴィグはこの細胞質を用いて人工生物、クラージ実験体を作り上げていたのです。細胞質は付加した相手に機能を与えると同時に、「宿主」の性質を取り入れて自身に保存します。そして宿主から細胞質を除去しても、その保存状態は維持されたまま。クラージは細胞質の親玉的存在として作られ、それが起動されたなら、ラヴニカ中のあらゆる細胞質が宿主から離れてクラージへ付着し、究極的な能力を得た細胞質の怪物が誕生する……という目論見でした。
この設定は《クラージ実験体》のカード能力へと忠実に再現されています。ここで+1/+1カウンターが乗るクリーチャーとはすなわち細胞質を付加された生物。クラージは確かに、全ての細胞質の宿主が持つ能力を得ています……これはフレイバーとの一致が本当に素晴らしい。こういうのがあるから背景世界を追うのはやめられません。
そして話中でクラージ実験体は起動されてしまうのですが、モミール・ヴィグが殺害されたことでクラージは制御を失って暴走を始めます。クラージは本拠地ノヴィジェンを壊滅させただけでなく街で暴れだしますが、同じ頃に目覚めた悪魔ラクドスと戦って機能を停止しました。
思わず長々と書いてしまいましたが、これが一期のシミックになります。現在のようなクリーチャー・タイプの混ぜこぜは物語では見られず、カードでもその路線が現れているものはわずかでした。
とはいえこちら、有用なETB能力持ちクリーチャーとして現在もモダン・レガシーにて使用されています。
■ラヴニカ二期のシミック
上記のような経緯によって、一度シミック連合は壊滅状態となりました。ですがそれからしばらくして、ラヴニカの辺境に巨大な陥没孔が次々と開き始めました。その下には長いこと都市に埋もれて忘れ去られていた古の海があり、マーフォーク種族がそこに生きていたのです。彼らは地上人の前に姿を現すと、シミック連合を受け継ぎました。
もちろんこの新たなシミックにはマーフォークだけでなく、引き続き人間やエルフやヴィダルケンも所属しています。ですが彼らはかつてギルドを壊滅へと追いやったモミール・ヴィグの二の舞とならないよう、シミック連合の理念から離れすぎてしまわないよう注意を払っています。そして「共生していくための適応」を目指すのです……が、その手法の一つが「異なる生物の長所を組み合わせる」です。
結果、私達がカードで見るような面白クリーチャーが誕生するわけです。ラヴニカ二期からは海が登場したこともあり、水棲生物が素材として多く用いられるようになりました。これによってビジュアル的にも独自性が際立つようになります……こう……言ってしまえばサメ映画的な。カオスなラヴニカが更にカオスに。
そして「異なる生物の長所を組み合わせる」というのは、それを研究する彼ら自身にも及びます。最終的には自分を改造するのはマッドサイエンティストの定番ですが、それを生物科学系ギルドがやったらどうなるかというと。
《甲虫体の魔道士》フレイバーテキスト
「シミックが『自分のことは自分で決めろ』と言うとき、その意味するところはお前の職業にとどまらない。」 ――育殻組のヴォレル
自分の種族は自分で決める。交配研究所(アンステーブル)か!!!いやそっちの方が後だけど。そして《実験体》を初めて見たときはかなり驚いた、むしろ引いたのを覚えています。「クリーチャー・タイプの凄い組み合わせ」は過去にもありましたが(例:『アポカリプス』の多色コモンクリーチャー)、「人間・ウーズ」はさすがにそれらを上回る衝撃でした。「実験体」というシンプル極まりない名前もまた逆に不気味です。
一方、迷路走者のヴォレルはグルール一族からの転向というちょっと変わった立場です。彼もまた迷路への挑戦のために自らを作り変えました……「人間・マーフォーク」なのですが、元グルールってことは元人間なんでしょうね。とはいえシミック連合は二期の物語の中軸である「暗黙の迷路」にはさほど興味はなかったようで、ヴォレルの出番もジェイスとイマーラに少し関わった程度でした。あるいは暗黙の迷路から迷路競争開催までもっと日にちがあったなら、イゼット団のようにシミック連合も専用走者を一から開発したのかもしれませんが。
■ラヴニカ三期のシミック
というように二期で「混成生物」路線を確立?したシミック連合。今回はモンスターだけでなく、人間やエルフやヴィダルケンといった知的生物ベースの混成生物の姿が更に顕著に見られます。彼らはカードにもなっている「守護者計画」の産物です。
書籍「The Art of Magic: the Gathering: Ravnica」P.190より訳
「守護者計画」とは知的人型生物ハイブリッド体の増員計画であり、高度に進化した兵士の軍隊を形成するのを目的として主席議長ヴァニファールの指揮下で進められている。各ハイブリッド体は人型生物を元として他種族の様々特性が加えられており、それぞれが異なる姿をしている。加えられる特性は非常に多様であるが、一様に戦闘において利益となるものが選ばれている。迷彩、鰓呼吸、翼、鉤爪、甲殻が最も一般的である。このハイブリッド体は計画名から守護者とも呼ばれ、シミック連合の存続において不可欠なものとみなされている。とはいえ現在の危機をいつ脱するのか、その時彼らがどうなるのかは定かではない。
ラヴニカの情勢が不安定だ!→わかる
だからギルドの守りを固めよう!→わかる
そのためにハイブリッド生物を作ろう!→そこがシミック
そしてこの「守護者計画」を推し進めているのが、新ギルドマスター《首席議長ヴァニファール》。プレインズウォーカーが関わっていないのにギルドマスターが代わったのはここだけです。
この指導者交替は、ギルドパクトの不在によるギルド間の緊張増大を受けたものです。あるとき、ギルドの重要拠点の一つがゴルガリ団の侵入を受けたことから、ゼガーナはその指導力を問われました。そして投票が行われた結果、ヴァニファールが新たな主席議長として選出されたのです。とはいえゼガーナも公的な立場から引退したわけではなく、より伝統的な「楽園党」の思想、自然と文明の緩やかな適応と共存を理想とする党派をまとめています。
上で「人間・ウーズは衝撃だった」と述べましたが、この「人型生物とウーズ」の流れを受け継いだようなヴァニファールもかなり凄い存在です。《実験体》には短編の物語が存在するのですが、こんな台詞がありました。
公式記事「実験体」(掲載:2013年3月1日)より引用
「私の消化器官はもうない。私は床を動くだけで栄養を摂取することができる。考えてみるがいい! 飢えも、アドレナリンも、欲情も、怖れもない」
この短編では、《実験体》は研究者が自らを改造した果ての姿として描かれていました。ウーズと同化したことで消化器官は不要となった……実はヴァニファールも同じです。
『ラヴニカの献身』Bundle付属小冊子P.21より訳
エルフとして生まれたヴァニファールは完璧な自己実験の産物です。ヴァニファールは自らを、シミックの理想の体現とみなしています。彼女は食事も、睡眠も、呼吸も必要としません。その身体が受動的に栄養素や酸素を吸収しているのです。
凄い技術なのはわかりますが、「そ、そこまでしなくても……」と思わないでもない。《実験体》よりも人型生物の姿を保持しているのは研究の進歩なのでしょうか。傍から見るとおぞましくもある、けれどあくまで使うのは自分たちやシミック領域内の生物であって他ギルドの生物は使わない、そこは彼らなりにしっかり線を引いていると感じます。決して他ギルドから実験対象を誘拐してくるわけではないんですね(街へ放ちはするけど)。
ラヴニカの街では、突然妙なことが起こったり、今まで見たことのない生物が現れても人々は「なんだイゼットか」or「なんだシミックか」と納得(した上で対処)するという気風があると感じます。例えばジェイスが初めてラヴニカに来たとき、それを目撃した通行人は虚空から落ちてきた彼を「無謀な瞬間移動」、「イゼットの可哀想な実験体」と解釈してそれ以上は気に留めもしませんでした。
またマーフォークが初めて大々的に市民の前に姿を現して演説を行った際も、人々は呆気にとられながらも異質なものとして拒絶・排除しようとはしませんでした。ラヴニカには本当に多種多様な種族が暮らしています。それでも全てを網羅しているわけではなく、例えば「メジャーな人型種族」でもレオニンやエイヴンはラヴニカに存在しません。けれど、もしそういったプレインズウォーカーがラヴニカを訪れたとしても、きっと人々は「どうせシミックだろう」と大して気にしないのではないでしょうか。都会というのはそういうもの、けれどシミックはある意味ラヴニカ次元の大らかさを担うギルドだと私は思っています。
しかし8年近くこの連載を続けてきて、ラヴニカに関してはそれこそヴィダルケンの両手指でも足りないくらい触れてきたと思います。それでも、ここまでシミックについて長々と書いたのは初めてかもしれない。
2. アゾリウス評議会という存在
現在(『ラヴニカのギルド』、『ラヴニカの献身』)のラヴニカ次元の不穏な情勢は、ギルドパクトの体現者であるジェイスの不在が大きな要因となっています。ギルドパクトとはこの都市世界における各ギルドの役割を定め、公的な紛争を阻止する魔法。「各ギルドの役割」についてはそれぞれが一万年以上に渡って担っていたことなので、今更ギルドパクトがなくなろうが変化しないことが二期でわかりましたが、「公的な紛争を阻止」についてはギルドパクトという抑止力が欠落して大変なことになっているのが現状です。
ギルドパクトはある意味、ラヴニカ次元のアイデンティティーでもある十のギルドをバランスよく存在させてくれるもの。そしてこの魔法に最も深く関わっているのがアゾリウス評議会です。そのためか、このギルドはどうも物語や設定的に重要なポジションに居続けています。2色のカラーホイール順とアルファベット順の両方で先頭に位置する、というのもあるかもしれませんが(なお両方で最後尾に位置するのがシミック連合)。
一期のアゾリウス評議会は「黒幕その2」とでも言いましょうか。ディミーア家の《秘密の王、ザデック》がギルドパクトを崩壊させましたが、アウグスティン四世はそれを利用しようとしました。逮捕されたザデックを殺害し、その幽霊を隷属させてボロス軍の天使を始末させ、混乱した街に戒厳令を布いて新たな統治と秩序を築こうとしました。けれどその野心は《ウォジェクの古参兵、アグルス・コス》や《オルゾフの御曹子、テイサ》の活躍によって阻止されたのです。なおテイサはこのゴタゴタの中で多元宇宙とプレインズウォーカーの存在を知らされました。
そして二期では。ラヴニカの中心街である第十管区にいつしか現れた力線「暗黙の迷路」。二期の物語のキーワードであったこれは、アゾリウス評議会の創設者アゾールがギルドパクト崩壊に備えて用意していた言わば「安全装置」でした。物語にはラヴィニアやイスペリアも登場していましたが、二期アゾリウスのキャラクターで最も存在感があったのはむしろ本人は出ていない、名前と気配のみのアゾールだったと思います。そしてこのとき出た「この人旧世代プレインズウォーカーなのでは」という伏線は時を経たイクサラン・ブロックにて回収されました。
さて詳しくは第20回・第62回あたりを見て頂くとして、二期の物語を経てジェイスが「ギルドパクトの体現者」となりました。ですが彼はプレインズウォーカー。ギルドパクトが復活しても、その本人がラヴニカにいないのであれば効力はないな?案の定彼は『カラデシュ』から『イクサランの相克』(『ドミナリア』にも少々)まで話中時間で数か月もの間、ラヴニカを離れてしまいます。
小説『Dragon’s Maze; the Secretist part three』より抜粋・訳
「でも俺は……俺はこの世界の者じゃないんです」
「アゾールもそうだった。だがあの方の査定においてそれは重要ではない」
これはジェイスがギルドパクトの体現者として選ばれたときのやり取りですが、今思うにそれは重要視した方が良かったんじゃないでしょうか。自由にラヴニカを離れられる人物はいかんでしょう。「ギルドパクトに値するほどの人物ならばそこは配慮するだろう」みたいに判断したのかもしれませんけれど。
そのようにしてジェイスの不在は続き、各ギルドは白昼堂々と対立するようになります。特にグルールは都市の各所で大暴れをしています。アゾリウス評議会は非常事態となり、かつてない程に大胆かつ思い切った治安維持活動が必要であると判断しました。
さてジェイスが長く留守にする一方、ドビンが密かにラヴニカへやって来ていました。彼については初出のカラデシュブロック当時、第52回で触れました。一応主人公たちの敵である領事府側のキャラクターでしたが、その究極的に公平かつ公正な視点と真摯で落ち着きに満ちた態度はたまらなく格好良いものでした。
ラヴニカへの最初の訪問の際にギルドというシステムを知った彼はすぐにその概念に魅せられ、それを改良したいと願うようになっていました。そしてカラデシュ次元での出来事の後、テゼレットの背後に更に黒幕がいると気付いたドビンは、独力でニコル・ボーラスへと辿り着きます。
ボーラスはドビンに幾らかの可能性を見出し、その知的好奇心と欲求を刺激する提案をしました。ラヴニカのギルド制度を改良・改善し、最高の効率での運営を目指すというものです。カラデシュ次元のヴィダルケンとして「完璧なものなど存在しない」という哲学に生きる彼は、だからこそ「それを限りなく完璧に近づける」ことを最上の喜びとしています。
そしてボーラスが求めたのは、忠誠のみ。ドビンはその提案を即座に受け入れ、ラヴニカへ向かうとアゾリウス評議会へと加わったのでした。すると命令系統や機構の抜け穴を次々と用いてギルド内を作り変えながら、瞬く間に重要な地位へと昇っていったのです。
そしてイスペリアが暗殺されたいま、彼がギルドを統べる立場になっています。前回書いたようにイスペリア暗殺はヴラスカの私怨だけでなくボーラスの指示でもあるのですが、同じくボーラスと繋がるドビンがそれを認識していたかどうかはわかりません。カラデシュ領事府での経験を活かして、ドビンは飛行機械の編隊を用いて市民を監視し、犯罪現場を速やかに拘引者へと通報させています。早くに公開されていた《神聖なる泉》のアートに飛行機械が飛んでいたのはそういうわけですね。
ところでアゾリウス評議会といえば重要キャラクターがもう一人います。人混みが苦手なホムンクルス……もそうですが、迷路走者からジェイスの副官となり、しばしば姿を消すギルドパクトから一身に苦労を背負わされていた彼女が。
結構早くに公開されたこのカードには多くのプレイヤーが騒然となりました。能力の強さもそうですが、あの職務に忠実なラヴィニアが造反者とは?今回のアゾリウス評議会の状況を見るに、ドビンの支配によって袂を分かったのだろうか、と推測されていましたがBundle付属小冊子に説明がありました。
『ラヴニカの献身』Bundle付属小冊子P.13より訳
彼女の懸念にも関わらず、ジェイスは姿を消した。ラヴィニアはこの街のギルドを繋ぐ法を脅かすとして、彼の役割を即座に肩代わりすることを拒んだ。それにもかかわらず、彼女は何か恐ろしいものがラヴニカに迫りつつあると推測しており、この街を危害から守るためにはほぼ何をも厭わない――例えそれが自らのギルドを裏切ることを意味しても。
やっぱりジェイスがいないのが悪いんじゃねーか!!!
背景ファンからは「苦労人キャラ」として愛されているラヴィニア、その街への愛と忠誠がきちんと報われると良いのですけれど。
3. ボーラスと戦うギルド
何度か説明されているように、『ラヴニカのギルド』と『ラヴニカの献身』のプレインズウォーカーは全員、何らかの形でボーラスに関わっており、ボーラスのために動いています。とはいえボーラスがそのギルドの全てを掌握しているというわけではなく、あくまで「プレインズウォーカーを送り込んだことで影響力を持っている」程度のようですが。
プレインズウォーカーがいる | プレインズウォーカーがいない |
---|---|
アゾリウス評議会(白青) | ボロス軍(赤白) |
ゴルガリ団(黒緑) | ディミーア家(青黒) |
グルール一族(赤緑) | ラクドス教団(黒赤) |
イゼット団(青赤) | セレズニア議事会(緑白) |
オルゾフ組(白黒) | シミック連合(青緑) |
このギルドの配分は第一に色のバランスから選ばれたとのことで、確かに5色が均等に配分されています。その前提を理解した上で書きますが、もろにボーラスの色である青黒・黒赤が外れているというのが非常に新鮮です。
一期も二期も、この2つのギルドは主人公側に立ち塞がってきました。それが今回は……?という気配に否応にも期待が高まります。実のところボーラスという存在に、それらしいものに気づいている者はわずかであり、アートブックにおいても各ギルドの項目ではほとんど言及されていません。そんな中、明確にボーラスとの対立が示されているのはやはりディミーア家なのです。
書籍「The Art of Magic: the Gathering: Ravnica」P.56より訳
究極的に、ディミーアにとっての真の脅威は、最大の懸念となりうるのはニコル・ボーラスである。ディミーアは熟達の策略家が率いる強大な工作員の組織である――彼らの世界が更に強大な工作員らとそれ以上に優れた策略家に脅かされているのだ。その策略を全て時代遅れのものとしてしまうことで、ボーラスはディミーア家の存在にとって直接の脅威となっているのである。
早くから「今回はあのディミーアがラヴニカを守るのでは」と感じていましたが、ここでも。「ラヴニカは我々のものだ」的な、こういう展開たまりませんよね!
一方ラクドス教団は。
書籍「The Art of Magic: the Gathering: Ravnica」P.103より訳
ラクドス教団は既に暴虐と混沌の悪魔に仕えているため、その構成員は他の誇大妄想的暴君がラヴニカに君臨することに興味はない。彼らが最も恐れるのは、他のどこかのギルドが他の全てを圧倒する力を得て、その価値観を全てに押し付けることである。
ひとまず彼らもボーラスに鞍替えする気はなさそうで安心。そしてディミーア・ラクドス両方にとって昔からの敵とも言えるボロス軍は。
書籍「The Art of Magic: the Gathering: Ravnica」P.146より訳
広大な都市の至る所に配置された駐屯地にて、士気高く勇ましく頑健な兵士らの列また列が、グルールの略奪、ディミーアの侵入、ゴルガリの腐敗、そして更に極悪な敵の捉えがたくも悪意に満ちた影響に立ち向かっている。
やはりラヴニカの正義を守るのはこのギルド!
結局のところ全員立場も思想も違えども、ラヴニカという世界が外からの侵略者に手出しされるのは嫌でたまらないのでしょう。そしてその筆頭が、前回も言及したこのドラゴン。
ニヴ=ミゼットは多元宇宙やプレインズウォーカーの存在を知っており、ラヴニカに悪しき存在の手が伸ばされていることもまた把握しています。そしてそれに対抗するための計画が《火想者の研究》と《千年嵐》……というのは前回も書きましたが、そういればこれは何なのか。
《嵐の行使》フレイバーテキスト
ニヴ=ミゼットが消失した結果、ラルは自分がギルドを指導する立場であることに気付いた。ずっとこの日が来るのを夢見ていたが、どうしても、誰かのゲームの駒にされているような感覚を払拭できなかった。
……とありますが、アートブックを読むにニヴ=ミゼットは特に「消失」はしていないようです。解釈するなら「研究に専念するため全く表に出てこなくなり、その間ギルドの運営をラルに任せた」というくらい。安心して、ニヴ=ミゼットはきちんと元気にしてますよ!
そのへんのメインストーリーにも早くしっかりと言及したいのですが、どうなるんでしょうかね。
それでは、今回はこのくらいに。また次回。
(終)