あなたの隣のプレインズウォーカー ~第71回 ラヴニカのギルドのギルド~

若月 繭子

 こんにちは、若月です。

 『ラヴニカのギルド』が発売され、Magic Storyも始まりました。どこか『タルキール覇王譚』以前のような、その世界の様相を語る物語からのスタート。純粋にその世界の内の物語、プレインズウォーカーが関わってこないあたりも当時を思い出します。

 今回この記事では『ラヴニカのギルド』のカードと、現在各所で出ている情報から各ギルドの状況を把握します。また前回に引き続き、便宜上各ブロック・セットを以下のように表現することがあります(公式の呼称ではありません)。

1. ギルドとボーラスとプレインズウォーカー

覚醒の龍、ニコル・ボーラス

 『イクサラン』ブロックの物語で明かされたように、ニコル・ボーラスがラヴニカを狙っています。そしていくつかのギルドがすでにボーラスの影響を受けています。一体どのギルドが? マローの公式記事「支配するギルド その1」に説明がありましたのでまとめますと、

 「ボーラスの息がかかったプレインズウォーカー」。『ラヴニカのギルド』にはたしかにプレインズウォーカーが2人収録されています。それぞれのバックグラウンドもこれまでに語られていましたので簡単ですね。

威厳あるゴルゴン、ヴラスカ嵐を呼ぶ者、ラル

 ヴラスカはボーラスの依頼を受けてイクサラン次元の《不滅の太陽》を入手し、その対価として現ギルドマスターのジャラドを始末する機会を得ました。ラルは『破滅の刻』ストーリーにてボーラスが名指しで呼び出していました。というわけで『ラヴニカのギルド』勢のうちボーラス側のギルドはゴルガリ団とイゼット団、と判断してほぼ間違いないと思います。ここで気をつけたいのは、イゼット(青赤)はともかくゴルガリ(黒緑)は完全にボーラスの色と一致するというわけではないということ。どのギルドが影響を受けているのか、を考えるにあたっては「ボーラスの色に限定されてはいない」というのを念頭に置くのが良さそうです。

蠍の神蝗の神スカラベの神

 『破滅の刻』の神はボーラスの色だったんですけどね。

 ここで一つ。ラヴニカ次元においてプレインズウォーカーという存在はどう見られているのでしょうか? ラヴニカは科学技術がかなり発達した次元ですが、その一方でプレインズウォーカーの存在は一般的に知られていません。「外の世界やそこへ行き来できる存在」についての知識レベルは次元によって異なり、例えばドミナリア(過去に何人ものプレインズウォーカーが歴史に関わった)やゼンディカー(次元外の怪物エルドラージに侵略された)ではそれなりに知られています。とはいえ全く知られていないわけでもなく、一部ギルドの上層部は把握しています。一期・二期のエピソードから「プレインズウォーカーの存在を把握している」ことが確実なのは、

アウグスティン四世大判事ボロスの大天使、ラジア幽霊の特使、テイサ

 アゾリウス評議会のトップは創設者アゾールから代々伝えられており、ボロス軍の天使は「過去には世界の外から訪れる存在があった」ことを知っています。テイサはその諸々の話を『ディセンション』の物語にて聞かされました。そのあたりの詳細は第60回に。

 ラヴニカは今でこそ多くのプレインズウォーカーが訪れる世界ですが、60年前の「大修復」まで閉ざされていました。知識レベルの高さに反して「外の世界」の存在が知られていないのはそれが理由だと思われます。あるいは今ではもう少し知られていたりするかもしれませんね。

 また↑にはあえて入れませんでしたが、ニヴ=ミゼットも知らないわけはないと思います。公式記事では「個人的に接触したことがある」という微妙な書き方ですが、そしてラルは自分の正体を必死に隠しているのですが、絶対もう知ってて知らないふりをしてあげてるだけなんだと思う(個人の感想です)。

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2. 『ラヴニカのギルド』勢

 それでは今回登場の各ギルドを探っていきましょう。一期・二期でどのような扱いだったのかも簡単に説明しますね。まずはプレインズウォーカーのいるところから。

イゼット団

 ラヴニカ一期では『ギルドパクト』にて登場。このセットの主人公はテイサなのですが、彼女が相続して赴いたウトヴァラ地区にはイゼット団が経営するエネルギー工場がありました。その工場長は太古のドラゴンの卵を孵化させて絶大な力を手にしようとしており……。一期でのイゼット団は敵役、それも「世界征服を企むマッドサイエンティスト」という、逆にすがすがしいくらいのベタな役割での登場でした。《コス爺さん》も「三文小説じゃないんだから」と呆れていたくらいに。本当。

 そして二期のイゼット団は、物語の中核となる謎「暗黙の迷路」を巡って中心的な役割を果たします。主人公のジェイスが迷路についての自らの記憶や友人イマーラを巡って悪戦苦闘する一方、迷路のルートや正体、その製作者までも解き明かしました。そして本格化するギルド間の争いを、その存在感で有無を言わさず止めたニヴ=ミゼットの格好良さときたら! 最終的に迷路に認められるのはジェイスでしたが、我々読者へとこの物語の謎の多くを解き明かしてくれたのはむしろイゼット団の方だったように思えます。

 では三期のイゼット団はどうなっているのでしょう? 非常に怪しい動きが二つのフレイバーテキストに示唆されています。

嵐の行使イゼットのギルド門

《嵐の行使》フレイバーテキスト

ニヴ=ミゼットが消失した結果、ラルは自分がギルドを指導する立場であることに気付いた。ずっとこの日が来るのを夢見ていたが、どうしても、誰かのゲームの駒にされているような感覚を払拭できなかった。

《イゼットのギルド門》#252フレイバーテキスト

「昨日は自分のギルドが分からなかった。今日はその理由が分かる。明日のために備えなくては。」

――ニヴ=ミゼット

 「ニヴ=ミゼットが消失」。でもこのドラゴン昔からなんかよくどっか行ってる感があるからなあ。あと補足すると一期時点から公式に「ニヴ=ミゼットはラヴニカを離れたことはない」「プレインズウォーカーじゃない」と繰り返し言われているので今さらプレインズウォーカーになるとかそういうのはないと思う。また今回のギルド門は絵違いで各ギルド2種類ずつ存在します。そしてそれらは「表口」と「裏口」。片方は「開かれたギルドそのものと一般的なイメージ」、もう片方は「裏通りにある秘密の入り口で、隠された取引と陰謀にあふれている場所」とのこと(※参考)。ニヴ=ミゼットは裏口側から、つまりは密かに出て行ったのであろうと推測できます。

イゼット副長、ラル

 そして、ラルがイゼット団を指導する立場になる……と。なるほどこれでイゼット団はボーラスの影響下となった、とすんなり解釈できそうですが問題はフレイバーテキストはそう言っていないということ。上記の《嵐の行使》には「誰かのゲームの駒にされているような感覚を払拭できなかった」とありますし、『ラヴニカのギルド』Bundle付属小冊子(いつもお世話になってます)にも「???」となる記述がありました。抜粋して翻訳します。

『ラヴニカのギルド』Bundle小冊子P. 6より訳

ラルはラヴニカを心から愛しており、故郷を守るためにはどんな事をも厭わないだろう。だが他ギルド員との様々な繋がりから、何か恐るべきものがラヴニカに動いているらしいと、未だ判然としない方法で故郷が脅かされていると気づきつつある。

 いやスゲーいいこと書いてあるのですが、どう見てもボーラス配下のプレインズウォーカーの説明文とは思えません。それどころか、ラルの項目のどこにもボーラスについての記述がないのです(本当)。「ボーラスのために動いている」というよりは「自分の知らない所でボーラスに利用されている」とも解釈できるような気もします。例の『破滅の刻』ラストの描写をもう一度見てみましょう。

Magic Story「破滅の刻」より引用

「後でいい。ラル・ザレックを呼んで来るのだ。あれの進展は遅すぎる」

 一応、ラル自身がボーラスのことを知らないとしても辻褄は合う……か?

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ゴルガリ団

 ラヴニカ一期のゴルガリ団は、敵側と主人公側の両方でした。ディミーア家の創設者《ザデック》はギルドパクトの崩壊を目論み、その過程でゴルガリ団を手中にしようとします。そしてギルド内でも野心を持つエルフの《サヴラ》をそそのかしてギルドマスターの地位に就かせ、自らの手下としました。サヴラの弟《ジャラド》はボロス軍の老警官《アグルス・コス》に協力し、ギルドパクトの異変に対処する側に回りました。その騒動が終わるとジャラドは姉の後継としてギルドマスターの地位に就き、組織を立て直しました。

 ですが一期で目立っていた&良い扱いだったためなのか、二期でのゴルガリ団の出番はかなり控えめでした。誘拐されたイマーラを探して地底街へ入り込んだジェイスが《縞痕のヴァロルズ》と少し遭遇した程度で、迷路レースでも目立った活躍はありませんでした。一期ラストで死亡してリッチとなったジャラドは、生前は良いギルドマスターだと思ったのですが二期~三期の幕間エピソードからはどうもギルド内に圧制を敷いているとかそんな内容が読み取れて何があったんだ。死んだら人が変わってしまったのか、私もわからない。

ゴルガリの女王、ヴラスカ地底街の反乱

 そして『イクサラン』ブロックにてゴルガリ団のプレインズウォーカー・ヴラスカが大きくクローズアップされてからのラヴニカ三期。そりゃあ続けて登場しないわけがないですよねー。美しき「女王」ヴラスカのもと、これまでギルド内でも虐げられてきたゴルゴンやクロールが力を手にしていることがいくつかのカードからわかります。

クロールの略奪者ヴラスカの従者冷酷なゴルゴン

《クロールの略奪者》フレイバーテキスト

クロールはかつてゴルガリ社会の隅に潜む存在だったが、ヴラスカが権力を得ると、ゴルガリ団の戦力として重宝されるようになった。

《ヴラスカの従者》フレイバーテキスト

墳墓から蘇った往時軍は、そのときからすでにヴラスカの軍隊だった。

《冷酷なゴルゴン》フレイバーテキスト

「ゴルガリ団の時代が始まる。今こそ立ち上がり復讐で着飾りましょう。」

 《ヴラスカの従者》のフレイバーテキストにある「墳墓から蘇った往時軍/Erstwhile were unearthed from their tombs」。これは明らかに『イクサラン』発表の少し前に公開されたMagic Story「クロールの矜持」で語られたものでしょう。ヴラスカは念願通りにギルド内での地位を手にし、同時に『イクサランの相克』ラストで申し出たように今後もボーラス配下として働き続けるのでしょう……ですが私たちは、イクサラン次元で何があったのかを知っています。今のヴラスカが知らない、そしてボーラスも知らない出来事を。

ゴルガリの女王、ヴラスカ

 その手にあるのは……!

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ディミーア家

 いきなり余談ですが、9月に開催されたマジック25周年展ではラヴニカ各ギルドの「設定資料」が公開されており、ネタバレ部分が各ギルド的趣向で隠されていました。中でもディミーアは「黒塗りから目がこちらを見つめ返している」というもの。お前がディミーアを覗くとき、ディミーアもまたお前を覗いているのだ。

 そんなディミーア家はラヴニカが初めて登場したときから敵側でした。それどころかラヴニカ次元の基礎を成すギルド構造、そして不戦協定魔法ギルドパクトにおいてディミーアは「世界の敵」でした。存在しないギルド、ギルドパクトを脅かすことによって逆にそれを強固にするカウンターウェイト。ラヴニカ一期、ギルドパクト成立一万年目にしてザデックはその崩壊を目論み、多くのギルドをその野心に巻き込み、自らは死亡するも結果的にその計画は実を結んでギルドパクトは崩壊しました。

 同時にディミーア家は日の目を見て、二期からはもはや「存在しないギルド」ではなくなりました。引き続き敵側だったけど! ディミーア家も「暗黙の迷路」の存在を察し、その背後にある力を手にしようとしました。目的は同じでもイゼット団は調査研究でそれを行いましたが、ディミーア家は諜報活動で。ジェイスをつけ狙い、各ギルド内に不和を撒いて妨害し、迷路レースの決着寸前ではギルドマスターのラザーヴ自ら現れて走者全員の争いを煽りました……がジェイスの機転と大規模な精神魔法によって《至高の評決》は防がれ、ジェイスを体現としてギルドパクトは復活しました。そして気が付いたらラザーヴの姿はありませんでした。

ディミーアの黒幕ラザーヴ

 ……という敵側一筋のディミーア家だったのですが、どうも今回は事情が違うようです。プレインズウォーカーがトップにいる=ボーラスの息がかかっているギルドはイゼット団とゴルガリ団。

悪意ある妨害

《悪意ある妨害》フレイバーテキスト

「侵入者の影響によって陥落したギルドが出たという情報がある。確認が取れるまで冒険は控えるのだ。」

――ラザーヴ

 前回記事にも書きましたが、ラザーヴはその設定から明らかに正体はボーラスと思わせておいてどうやらそうではありませんでした。このフレイバーテキストでも、何かラヴニカに潜むものを警戒しています。性格的には明らかに一番ボーラスっぽい(ごめん)ディミーア家が逆にそうじゃない……?

万面相、ラザーヴ

 そんな今回のラザーヴ。なんか痩せた? いやシェイプシフターだから。カードだけではなく公式記事とBundle小冊子の記述が、今回のラザーヴの立場を示唆しています。

公式記事「A FLAVORFUL GUIDE TO THE GUILDS OF RAVNICA」より訳

近頃、ラザーヴの情報網はいくつかの他ギルドが外からの強大な影響(ふーむ、誰だろう?)によって乗っ取られ始めていると突き止めた。

(略)

ラザーヴは断固としてこの余所者の計画を成就させはしない。

『ラヴニカのギルド』Bundle小冊子P. 11より訳

ラザーヴの最大の願いは、政変を起こすことである。最大の怖れは、それを防ぐ側に回ることである。

 これは……。もし、あのディミーア家が今度はラヴニカを守るのだとしたら、とても熱いと思いません?

 世界を守るために、これまでの悪役が更に強大な悪役へと立ち向かうのでしょうか。個人的に今回のディミーア家には非常に注目しています。

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ボロス軍

 ラヴニカ一期、最初の主人公はボロス軍の老警官アグルス・コスでした。引退を控えていた彼でしたが、複数ギルドの内外で起こる事件を調査する中、ギルドパクトを脅かす陰謀に気付きます。彼は同僚の天使やゴルガリ団やセレズニア議事会の協力を得て、黒幕であるザデックを逮捕しました。その戦いは歴史的に重要な出来事として後に演劇にもなっています。

演劇の舞台

 コスは『ギルドパクト』の物語終盤にて死亡してしまうのですが、『ディセンション』では幽霊となってアゾリウス評議会に呼び出され、再びザデックを捕らえる任務を課せられました。戸惑いながらも結局この街の平和を守ることは生前と何ら変わらない、そう考えたコスはその任務を受け入れました。彼は最終的に《アウグスティン四世大判事》がもう一人の黒幕であったと突き止め、捕獲したザデックの幽霊を解き放って始末しました。このあたり、詳しくは先日日本公式ウェブサイトに書かせていただいた復習記事をご覧ください(突然の宣伝)。

 そして一期で活躍したゴルガリ団が二期ではそうでもなかったように、二期のボロス軍もまた「暗黙の迷路」に関わるメインストーリーでの目立った出番はありませんでした。とはいえむしろその外で注目すべきトピックが二つあります。そしてこれらは三期のボロス軍にも関わってきそうなので一緒に紹介しますね。

ギデオンが身を寄せていた

正義の勇者ギデオン

 ゼンディカー次元のエルドラージに対抗する戦力を求め、ラヴニカ次元を訪れたギデオン。彼はラクドス教団との戦いで窮地に陥ったボロス軍を救ったことで、ギルドマスターのオレリア自らにギルドへと招かれます。その理念に同調した彼はしばし身を寄せ、ラヴニカの平和を守るべく戦っていました。「戦力集めはどうしたんだ」と当時言われていましたが、さらに後になって「不眠不休でラヴニカとゼンディカーを往復して戦い続けていた」と明らかに。いくら破壊不能だからってやっていい無茶とやったら駄目な無茶があるでしょ! まあそっちは無事(?)解決したのはご存知の通りです。

正義の模範、オレリア

 そしてギデオンと関わったオレリア。前述の通りボロス軍の天使はプレインズウォーカーの存在を知っているので、オレリアもギデオンがそうだと気づいたんじゃないかなあ。継続登場の今回もまた猛々しくも美しい姿をカードで見せてくれていますが、追加してBundle付属小冊子には結構驚くべき記述がありました。

『ラヴニカのギルド』Bundle小冊子P.17より訳

戦導者の一人であるオレリアはボロス軍のギルドマスターの座に就いてしばし経つ。そして長い間、好戦的かつ強い信念を規範としてきた。だが近頃、彼女の信念は変化しつつある――それはある意味、ギデオン・ジュラとの関わりに起因する。ギルド同士の衝突に捕らわれた一般市民へと目を向け、ボロス軍は信念よりも強い何かによって動くべきであると理解した。それは正義、真の正義。ただ現存する法を文章通りに遂行するのではなく(それはアゾリウスに任せておこう)、公正で公平、思いやりのある関係を全ラヴニカ市民と築くのだと。

 これは割と驚きました。《ギルドとの縁切り》では喧嘩別れしたようで、けれど公式記事「第九地区の戦い」ではそうでもなさそうで結局どうなったんだと長いこと疑問でしたが、ギデオンは良い影響をもたらしたんですねえ。カードにもこの通り。

ボロスのギルド門

《ボロスのギルド門》#243フレイバーテキスト

「信頼が崩れ落ちているからこそ、我々は正門を開け放たねばなりません。」

――オレリア

 ラヴニカ三期には「冷戦」の雰囲気が流れていますが、少なくともオレリアは温かい存在であり続けそうですね。

タージクとテイサの同盟

軍勢の切先、タージク

 前回記事でも触れましたが、『ラヴニカへの回帰』ブロック以降の幕間エピソードにて。タージクはオルゾフ組のテイサに依頼され、彼女のオブゼダート転覆計画に協力します。ですがそれは結局失敗してタージクは捕らわれてしまい、以後どうなったかはわかっていませんでした。けれど無事生存確認! どうやって助かったのかはこれもBundle小冊子にありました。要約しますと「タージクはオレリアによって速やかに救出されたものの、彼とテイサとの友好関係は極めて悪化してしまった」とのこと。そして穏健派に動いたオレリアとは対照的に、その出来事からタージクは他ギルドへの敵意を増しているようです。

ボロスのギルド門夜帷の捕食者

《ボロスのギルド門》#244フレイバーテキスト

「困っている人々を助けるのは我々の義務だ。しかし、他のギルドはその保護に値すると示せた試しがない。」

――タージク

《夜帷の捕食者》フレイバーテキスト

「三本の短剣が天使の背に残され、三人の執行官の記憶が失われ、三本の鍵が私のベルトから盗まれたというのに、あなたは平和を語るのですか?」

――タージクからオレリアへ

 この《夜帷の捕食者》フレイバーテキストについて補足しますと(まあカードから一目瞭然なのですが)三本の短剣、三人の執行官、三本の鍵。「三つの何か」はディミーア家の象徴です。基本的に隠密を旨とする彼らは他ギルドのようにギルドシンボルを身にまとうことはありません。アイデンティティーを特定されては困る彼らが唯一自らを主張するものがその、ギルドシンボルの一部でもある「三つの何か」です。

 話が逸れましたが、ともかくそのようにタージクは健在。一方のテイサがどうなったのかはしばらく情報を待つとしましょう。

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セレズニア議事会

 ディミーア家は一期二期とも悪役サイドでしたが、セレズニア議事会は一期二期続けて主人公サイド、とはいえわりと災難に遭うポジションでした。まず一期ザデックのギルドパクト転覆計画の中でセレズニア議事会は標的とされてしまいます。ザデックは配下であるサヴラを《議事会の合唱者》に入り込ませることでセレズニア議事会を支配しようと目論みました。アグルス・コスの働きによってそれは阻止されましたが、セレズニアが受けたダメージはかなりのものでした。

 二期では主人公ジェイスの友人イマーラの所属ギルドとして、セレズニア議事会はわりと目立っていました。ですが潜入したラザーヴによって他ギルドへの敵愾心を煽られ、戦争へと向かう中でイマーラを不満分子とみなしてその力を剥奪、幽閉してしまいます。イマーラは自力でラザーヴを看破し、ジェイスを唯一の仲間として迷路レースに参加しました。しかしラクドスのギルド門で彼女が危機に陥ったそのとき、トロスターニ率いるセレズニア軍が駆け付けてその窮地を救うという熱い展開が! これは痺れました。当時のイマーラは頑健な5/7? それは言わない。

不和のトロスターニ

 でも今回のトロスターニは何だこのすごく不穏な名前は。この三位一体に何が起こっているのでしょうか。少しだけ情報がありました。

『ラヴニカのギルド』Bundle小冊子P. 19より訳

三体は「秩序」「生命」「調和」であり、それぞれがセレズニア議事会の理想を体現している。だが近頃の重大な局面において、「秩序」と「生命」は前例のない不和の中にある。「秩序」は他ギルドとの平和な関係を主張し、「生命」は内へと目を向けて議事会の力を築くことを望んでいる。「調和」は完全かつ神秘的にも沈黙を保っている。トロスターニは実質的に行動不能となっており、近頃の出来事の背後に消えてしまっている。

 どんなふうに「不和」なのかはわかりましたが、何故「不和」になったのかはわかりませんね……フレイバーテキストにも特に手がかりはありませんでした。白緑は基本的に平和と協調の色、けれど不穏な情勢から内部に亀裂が生じる、というのは二期と同じ構造ではありますが……。

協約の魂、イマーラ

 仲たがいしてしまったトロスターニとは対照的に、新イマーラのカード名は平和と協調を語っています。イマーラがよく知られているのは二期からになりますが、初出はもっと早くてジェイス主人公の小説「Agents of Artifice」(2009年2月発売)。ジェイスの古くからの友人であり、『マジック・オリジン』では彼が初めてラヴニカに辿り着いた直後からの付き合いだと判明しました。ラヴニカに来て最初に親切にしてくれた相手ということで、それはジェイスも大切にするわけだ。

『ラヴニカのギルド』Bundle小冊子P. 19より訳

ジェイスの友人として、イマーラは彼が容易でない地位にあると、その責任は一人の人間が負えるものではないと理解している。この世界にはギルドパクトの体現に代わるものが必要だとイマーラは信じており、他ギルドの指導者たちへと平和協定の座につくよう説得を続けている。

セレズニアのギルド門

《セレズニアのギルド門》#256 フレイバーテキスト

「私たちは庭を開放します。皆が驚異を学べるように。しかしそれを守りもします。皆が平和を学べるように。」

――イマーラ

 『ドラゴンの迷路』以降の物語にイマーラの出番はほとんどありませんでしたが、今もジェイスを気にかけていること、なおかつギルド内でも協調路線を歩んでいることに変わりはないようです。

 それと、あまり関係はないと思いますが今回のセレズニア議事会のカードで一つ注目したいのはこれ。

大集団の行進
大集団の行進 カードイラスト拡大版

 やっぱり会えたねフブルスプくん! 実はこの子、最近ずいぶんと頻繁に再録カードで登場しているんですよ。

道迷い道迷い道迷い疑いなき権威

 「人ごみが嫌いだった」わりには今回もめっちゃ人ごみの中にいます。また迷って入り込んでしまったのでしょうね。本来はアゾリウス評議会所属のはずなので、『ラヴニカの献身』に期待?

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3. もう少し

 ところで今回気になっているんですよ、「注目のストーリー」に通し番号が振られていないことが。

ギルド会談暗殺者の戦利品火想者の研究千年嵐

《ギルド会談》フレイバーテキスト

疑惑に満ちた状況の中、イスペリアはギルドを集めると過激な提案を行った。協力である。

《暗殺者の戦利品》フレイバーテキスト

アゾリウスにとっては権力の空隙。ヴラスカにとっては記念の品。

《千年嵐》フレイバーテキスト

ラルの嵐が謎めいた反応に音を立てた。プレインズウォーカーがラヴニカに侵入している。

 ↑の並びはコレクター番号順です。「注目のストーリー」のシステムは物語がわかりやすくなってとても良いのですが、逆に先のネタバレになるとも言われていましたのでその対策なのでしょうかね。それも含めて『ラヴニカの献身』組についても今見えている内容から探ってみようかなと思いましたが、すでにこの長さ。次回以降にしましょう……けれど一つ。Magic: The Gathering公式フェイスブックアカウント(英語)に、早くも『ラヴニカの献身』のアートがいくつか掲載されています。中でも私が注目したいのはこちらなのですが……

2019年早くに出るセットでのアゾリウスの土地 イラスト

 説明書きには「2019年早くに出るセットでのアゾリウスの土地」とあります。《神聖なる泉》かはたまた《アゾリウスのギルド門》か。そしてこのアートで気付いてくれとばかりに飛んでいる……飛行機械? アゾリウスに飛行機械? いや科学技術レベル的にはラヴニカに飛行機械があっても全くおかしくはないと思いますが、これまでに全く登場していなかったものです。はて……?

 気になりつつ、また次回。

(終)

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この記事内で掲載されたカード

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