あなたの隣のプレインズウォーカー ~第52回 今からでも間に合うカラデシュ概論 人物編~

若月 繭子

若月 繭子


 こんにちは、若月です。今年もよろしくお願いします。


司令官イーシャ


 酉年とりどしです。

 ゲートウォッチ結成から早一年。共通の目的を持った個性あふれる超人たちが力を合わせ、時に仲違いしながらも世界のために戦う。ベタといえばベタですがおもしろいことは間違いありませんよね。常々言っていますがプレインズウォーカーが出会う所にドラマあり。そしてマジックの各色を身をもって体現する彼らが繰り広げるドラマがおもしろくないわけない! 実際毎週めっちゃおもしろい!!

 そんなわけで今回は予告通り「人物編」として、カラデシュ次元にて物語に関わっているプレインズウォーカーのお話です。プレインズウォーカーだけでも9人という稀に見る大所帯……あのですね……実はプレインズウォーカーと例のヤバい発明品について書いていましたらかなーり長くなってしまいまして……プレインズウォーカー以外の「現地の人々」まで辿り着けませんでした! すみません! 今度書きますので!!






1. ゲートウォッチ



■ チャンドラ・ナラー


「私は、燃やせる」



チャンドラの螺旋炎反逆の先導者、チャンドラチャンドラの革命


 主人公! 『マジック・オリジン』で提示された故郷の次元カラデシュ。自分から両親を奪った領事府が今また誰かを弾圧しようとしている。それを知って十年以上ぶりに戻った故郷、待っていたのは遠い昔に死んだと思っていた相手との再会でした。母ピア・ナラー、そして自分達を弾圧し処刑しようとしたバラル。


ピア・ナラーとキラン・ナラー領事補佐官

ピア・ナラー遵法長、バラル


 そしてチャンドラは領事府と改革派との争いに身を投じつつ、様々な形で過去と現在に向き合っています。ゲートウォッチの面々を振り回し、また振り回されながら。現在ゲートウォッチの中でもチャンドラと深く関わっているのはニッサとギデオンですね。ゼンディカーでの戦い、ウラモグとコジレックを燃やし尽くしたときに深く繋がったニッサ、過去に少々複雑な関わりを持ったギデオン。ニッサは近しい色ながらも自分にはない静けさを持ち、ギデオンは秩序を重んじる価値観こそ相いれないながらも絶対的に頼もしい存在。赤のプレインズウォーカーとして感情のままに生きるチャンドラですが、それぞれに対して自分が抱く感情を完全には理解できずに苦悩する場面も見られます。

 「DotP2013」にてプレインズウォーカー数人の身長体重や年齢といったプロフィールが明かされていたのですが、それによれば当時チャンドラは20歳。最近の公式記事「業火」によれば現在は23歳のようです。つまり、物語の中でも確実に時は流れている……物語を経てキャラクター達は経験を得て、それぞれ成長し、変化している。チャンドラはその制御困難な能力と向こう見ずで後先考えない性格から、過去に数々の惨事を引き起こしてきました。辛い過去を思わずにはいられない環境で戦い続けるチャンドラがこのあたりをどう受け止め、どう成長していくのでしょうか。


公式記事「封じ込め」より引用

「私達はプレインズウォーカーでしょ、つまり、いつでも自分一人だけになれるってこと――前にあんたが言ったように、切り離されるってこと。いつでも、家族を置いて、好きな人達を置いてどこかへ行ってしまえる。私はお母さんとパースリーさんを見つけたけど、ずっとカラデシュにいるって考えたことはないの。私達はプレインズウォーカーだから。そしてゲートウォッチに入ることは、もう一人じゃなくなるってこと」


 この連載では繰り返し語ってきました……「プレインズウォーカーは異邦人、例え故郷にいようとも」。そんな彼らにとってゲートウォッチというのは一つの居場所、帰ることができる場所ということなのかもしれません。

 ところでこの連載は元々『基本セット2012』に合わせて始まりました。当初はギデオン、ジェイス、ガラク……と順調にそのプレインズウォーカーを取り上げていたのですが、次第にプレインズウォーカー個人だけでなくストーリーや世界観そのものを扱うようになり、書く方もおもしろいのでそういった回も増え、そのまま年月が経ち、そのうち『マジック・オリジン』がやって来たのですが、そこで語られたチャンドラの過去は、以前に小説で描かれたものと結構異なっていました。ギデオンも後に公式記事にて「チャンドラの過去について一言も聞いたことはなかった」と言っていました。そんなことがありましてどうしたものかと悩みつつ未だに「チャンドラ回」が無いまま来てしまっています。

 「業火」を読む限り、「小説でチャンドラが告白した過去の内容は『マジック・オリジン』に準ずるが、それ以外は変更なし」という感じのようです。これはひとまず解決、だけどどうしようかねえ。


■ ニッサ・レヴェイン


「感じます。この世界の構造を。循環を」



生命の力、ニッサ霊気との調和


 ニッサにとってゲートウォッチと共に戦うことは、ゼンディカーに受けた恩義を返すことでもあります。「独りでは決して勝利しえない戦いでした。そしてゼンディカーへと馳せ参じて共に戦ってくれたプレインズウォーカー達への感謝を、彼女は生涯忘れることはないでしょう」(「プレインズウォーカー紹介:ニッサ・レヴェイン」より)。とはいえゲートウォッチの一員となったものの、ラヴニカの共同生活では都会にすっかり参ってしまっていました。カラデシュでも人の多さに時々辟易しながら、それでも「ラヴニカよりは楽」のようです。


《霊気との調和》フレイバーテキスト
「自然のいたるところに霊気が流れている。こんな世界は初めてだわ。」


《捕獲歩行機械》フレイバーテキスト
「この世界にいる冷たい金線条細工の動物を理解できるとは思っていなかったけれど、結局みな自然の法則に従っているのね。」
――ニッサ・レヴェイン


 そしてカラデシュの独自種族、霊基体との出会いがニッサとその世界を近づけてくれました。領事府に捕われたピア・ナラーを救い出すべく、彼女らは伝手をたどって霊基体の社交士ヤヘンニと接触します。霊基体という種族の姿、そして世界を循環し形作る霊気との関係を知ったことで、ニッサもカラデシュの自然の形を理解するようになりました。


公式記事「霊気より生まれしもの」より引用

「我々は霊気循環の副産物である知的生命です。家系はその若者が発生した場所によって決定されますが、後にそれぞれが選択します。完全に姿を成した日から、その寿命は四週間から四年程です」

(略)

彼女はまた別の身振りをしかけて止め、言葉を探していた。そしてようやく口を開いた。「わからないんです、この都市にとっての自然はどんなものなのか」
「我々が、この都市です。私は霊気から生まれ、やがてそこに帰ります。自然は我々を取り巻いています、ただ、貴女が見ていたものとは異なる見た目かもしれませんが」



不死の援護者、ヤヘンニヤヘンニの巧技


 そのヤヘンニは『霊気紛争』にてカード化。こちらはこちらで語りたいことがとても多いので次回に。

 ニッサはプレインズウォーカーではありますが、これまでに訪れた次元は然程多くなく、かつ人生の長い間をエルフの社会で、それでいて疎外感を抱きながら過ごしてきました。ニッサの誓い内容は「すべての次元の生命のため」。そのためにはあらゆる世界ごとに違う自然法則を、ニッサなりに理解し受け入れる必要があるのでしょう。今回カラデシュでチャンドラを筆頭とするゲートウォッチ仲間と、現地の人々と触れ合い、理解し合うことはニッサにとってそのためにきっと大切な一歩になっていると思います。


■ リリアナ・ヴェス


「金属の腕の男――あいつのことは知ってる。あいつは――」



魔性の教示者


 『異界月』にて5人目のゲートウォッチとしてリリアナが加入しました。そういえばこの連載記事で詳しい話をしていなかった。エルドラージの群れ&エムラクールとの戦いにおいて大きな役割を果たしたリリアナ。戦い終わった後、彼女は「誓い」を立ててゲートウォッチの一員となりました。


リリアナの誓い


 公式記事「約束されし終末」及びイニストラードアートブックを読む感じでは「ジェイスがリリアナのゲートウォッチ入りを進言」→「それを聞いてギデオンが彼女に提案」→「リリアナ了解」という流れのようです。このあたりはリリアナ視点で語られていました。


公式記事「約束されし終末」より引用

ジェイスは彼女を見つめていた、その子犬のような視線で。せめて心はしっかりしなさい、坊や! 彼女は苛立ちを飲み込んだ。彼と、その子犬のような態度が必要だったのだ。
「ギデオン」 ジェイスの声はためらいがちで、短かった。二人は声を抑えて会話し、リリアナは感じた笑みを僅かでも見せないように努めた。そうよ、外套くん。私を助けたいっていう正直な欲求を煮え切らない感じにうめいてなさい。


書籍「The Art of Magic: The Gathering – Innistrad」P.233より抜粋・訳

だがジェイスからの願いもあり、リリアナは他のプレインズウォーカーの仲間に加わることに同意した。彼らの力があれば、鎖のヴェールの束縛を逃れて更には残った契約悪魔を倒せるかもしれない、そう彼女は結論づけた。ギデオンの方としては、鎖のヴェールを破壊する、もしくはリリアナにそれを使わせないことは多元宇宙にとって良いことだろうと認めた。そうでなくとも、彼女や鎖のヴェールが目の届く範囲にあることは恐らく良い考えなのだろうと。


 そしてMagic Story『カラデシュ』編第1回冒頭でのことでした。チャンドラの部屋の扉を叩くリリアナ。そして起きてくるチャンドラ……え、何が起こってるの? 何でこいつら共同生活してるの? 状況を理解するのにしばらくかかりました。リリアナお姉ちゃん(229)はゲートウォッチのお姉ちゃんになっていた。その後故郷からの知らせに心揺れるチャンドラを連れ出し、そそのかして自分も楽しんでいた所で、思わぬ仇敵と再会……というのが今回のリリアナ。そしてラヴニカに残っていたジェイスとギデオンを連れて来るなど、テゼレットに対して並々ならぬ敵意を燃やしています。


公式記事「沈黙の時」より引用

「あいつは私の大切なものを傷つけた。私のものを壊した」 その口調は平坦で、だがその下にギデオンは怒りと憎悪の棘を感じた。
「私の邪魔をしないで頂戴。あいつに引導を渡し、この虚飾すべてを終わらせてやるわ」


 「傷つけた」のはジェイスであったり、「壊した」のはジェイスとの関係であったり……無論リリアナの自業自得な部分も多々あるのですが、テゼレットに対するこれほどの憎悪はジェイスに起因するのは明白……ですがまだ3人揃ってしっかり対峙していないんですよね。どうなるの。

 霊気拠点の攻防戦では「夜の女王」という暗号名を名乗り、超ノリノリで《新緑の機械巨人》を腐敗させて改革派から喝采を浴びていました。そういえばこの前イニストラードでは「最後の希望」を自称していたっけ。実は割と目立ちたがりなのかもしれない。


■ ギデオン・ジュラ


「私は限界を知り、限界を定めることの大切さを学んできた。
さもなくば自分だけでなく、愛する者も、
この傲慢さの重荷を背負うことになる」



巧みな放逐


 今回は何とも悩めるリーダー。ゼンディカーとイニストラードを脅かしたエルドラージはある意味天災のようなものでしたので、戦う理由を悩む必要はありませんでした。ですがここカラデシュでの戦いは現地の政府対反乱軍という構造。たしかにプレインズウォーカー・テゼレットの存在はありますが、一歩間違えれば、いや間違えなくとも過干渉になってしまいます。若いころに自らの力を過信して友を死なせてしまったギデオンは、非常に大きな力を持つ自分達が介入することで起こりうる惨事を心から警戒しています。


悲劇的な傲慢


公式記事「沈黙の時」より引用

彼の瞳がチャンドラを見据えた。その視線に疑念は燃えて消えた。まっすぐに話せ。いつでも。
「君のために来たんだ」
 炎のひとひらがチャンドラの髪にひらめき、ギデオンは熱のうねりを感じた。「へえ。あんたが来たのは、何よ、私を守らなきゃとかそんなことを思ったから?」
「君が気になったから来たんだ、チャンドラ」 ギデオンは微笑んだ。柔らかく。穏やかに。「私達は見守ることを誓った。それは、互いを見守るということでもある。互いの背中を守るということだ」 そして眉をひそめて付け加えた。「それがリリアナでも、な」


 この世界に来たのは、戦っているのは、チャンドラのため……自身の正直な心に向き合って、ギデオンはその事実を受け止めました。そしてその戦いぶりは「ウラモグとタイマン」のゼンディカー時代から変わっていません。自分に衝突してきた突撃車を大破させ、自動機械に殴り飛ばされて建物に人型の穴をあけ、機械巨人の内部組織に生身で飛び込んで機構を狂わせ……超人的すぎて最早ギャグすれすれ。逆に言えば、戦いぶりに心配はないということかもしれません。

 霊気拠点防衛戦では不安に心揺れるチャンドラを温かく抱きしめ、頼もしさと包容力も感じさせてくれた……と思いきや、心揺れていたのはチャンドラだけではなかったらしい。チャンドラ、そして霊気拠点と改革派の仲間。守りたいのはどちらで、守らなければならないのはどちらなのか。そして彼は戦闘司令官として領事府軍やその兵器との戦いに赴いたのですが、その前後の描写が……


公式記事「業火」より引用

(記事前半部より)
彼は階段を駆け上り、束の間の鼓動を思い返さないよう努めた。小さな、猛烈な、大切な太陽を胸に抱えた時の。

(記事後半部より)
「私、もうだめ」 小さな声だった。「いつもこんな。お母さんが怒るのは当たり前。私は最悪なの。なのに何で、あんたはこうしてくれてるの」
三語の狡い、不確かな、許されない言葉がギデオンの心に鳴り響いた。ひとたび発してしまったなら、二度と戻れなくなる言葉が。


 これは……。「狡い、不確かで、許されない、発してしまったなら二度と戻れなくなる三語(※英語で)の言葉」……つまりそういうこと?(どういうこと) 発してしまったなら二度と戻れなくなる、だから私もここに予想は書かない。書きたいけど……


■ ジェイス・ベレレン


「これはゲートウォッチが介入すべき問題だ」



劇的な逆転


 元々《精神を刻む者、ジェイス》の性能や胡散臭そうなフードの外見(ごめん)から性格を誤解されがちなジェイス。ですがMagic Storyのウェブ展開が始まってからは「お人よし」「直接戦闘では弱い」「案外子供っぽい」といった微笑ましい人物像が広く知られるようになりました。カラデシュ編に入ってからも副官のラヴィニアに世話を焼かれたり、「ブロッコリーが嫌い」「食後にコーヒーを暴飲する」といった可愛らしい設定が明かされたり、すっかり仲良く?なったラル・ザレックとのやり取りなど、とどまることを知りません。

 ゼンディカー、イニストラードでは自身の技が通用しない相手が多く苦戦を強いられてきましたが、今回は結構高度な文明社会での戦いとあってテレパスで情報伝達を行ったり幻影術を変装に用いたりと、派手ではないながらも活躍しています。カラデシュは魔法がほとんど存在しない世界なので、ジェイスの技は味方の改革派にとってもかなり驚きだと思います。

 そんなジェイスはゲートウォッチの中でも、今回の悪役であるテゼレットと最も多くの因縁を持っています。


※画像は公式記事「沈黙の時」より引用しました。


 公式記事で使用されていたこのアートは「DotP2012」のローディング画面であり、小説「Agents of Artifice」のクライマックスとなるジェイスとテゼレットの戦いを描いています。この因縁については今回リリアナもいるのでさぞかし深く語られるのだろう……と思っているんですが2017年1月初旬現在それほどでもない。リリアナの方はかなり敵意をむき出しにしているんですが。これを書いている時点ではまだ裏方的仕事ばかりのジェイス。果たしてこの先テゼレットとの《宿命の決着》はあるのでしょうか?

 以上、そんなゲートウォッチ五分の五の純情な感情でした(このフレーズ好きらしい)。物語の進行とともに繰り広げられる彼らの人間模様(含エルフ)がまた凄くおもしろいんですよねーもうねー。




2. 現地組


■ サヒーリ・ライ


「改革派へようこそ」



サヒーリ・ライサヒーリの芸術


 『カラデシュ』のキーアートとして最初に紹介されたサヒーリ。彼女はカラデシュを象徴するようなキャラクターとして生み出されました。


公式記事『「賭けてみるか、エーテルパンク?」 その2』より引用

第1セットではカラデシュ世界の栄光を描きたかったのだ。発明家らしさに注目を集め、不思議な雰囲気と楽観主義を描きたかったのである。

(略)

ドビン・バーンも検討した。彼はカラデシュ出身ではあるが、我々が望むような発明家らしさは持っていなかった。そうなると、我々が望むようなイメージそのものの新しいプレインズウォーカーを作ることになる。カラデシュ出身で、発明家なのだ。こうしてサヒーリ・ライが生まれた。


 そしてサヒーリはまさにその通りのキャラクターです。朗らかで楽観的、才気溢れる発明家。「現地民プレインズウォーカー」なので前ブロックの《アーリン・コード》のようにメインストーリーには絡まないのではないか? という危惧もありましたが、友人のラシュミが領事府にさらわれたことでゲートウォッチに接触しました。特に描写はありませんでしたが向こうもプレインズウォーカーだとすんなり気付いたのだと思います。プレインズウォーカー同士はしばしば見た目や喋り方から互いがそうだと理解し合います。そう、プレインズウォーカーはだいたい現地語を話すのですが(そういう通訳魔法があるようですが多くが謎)、アクセントや発音が妙だったりはするようです。

 そしてサヒーリも改革派に手を貸して戦っているのですが、プレインズウォーカーのうち彼女だけ領事府の指名手配リスト(チャンドラリリアナ、ジェイスニッサ、ギデオンアジャニ)に入っていないんですよね。発明博覧会の冊子にも顔と名前が出ているほどの著名人なのに。「それほどの著名人が改革派に手を貸している」と知れたら逆に領事府には都合が悪い、という感じなんでしょうか。


■ ドビン・バーン


「彼らには欠点があります。適切に突けば確実に失敗を引き起こすような」



ドビン・バーン


 初のヴィダルケンプレインズウォーカー。彼がゲートウォッチの助力を求めてラヴニカを訪れた所から『カラデシュ』の物語は始まりました。これまでにメインキャラクターとして登場したヴィダルケンは《メムナーク》の部下で《グリッサ・サンシーカー》の命を狙うポンティフェクス、《ジェイスの文書管理人》のカヴィンなどがいましたが、ここまで大きく物語に関わってくるキャラクターは初めてだと思います。

 そもそもヴィダルケンとは何ぞ? 初出は『ミラディン』。青い肌をした冷静沈着な人型種族、見た目の通りに青のクリーチャーであり主にアーティファクトの扱いを得意としていました。その後ラヴニカとアラーラにて再登場、基本的な特徴は変わらないながらも腕や指の本数が上下したり耳の大きさや髪の有無が異なったりと次元によって様々な姿をとっています……そう、カラデシュ世界のヴィダルケンには髪の毛がある者もいる! これはとても驚きました。


珍品売り敏捷な革新者ジャンジーの歩哨


 さてドビンは「あらゆる機構や機械の欠陥を明確に目で見ることができる」という才能を生かし、カラデシュ領事府の首席検査官として働いています。明確に目で見ることができるのは機械装置の欠陥に留まらず、生体の怪我や病気の具合にまで及びます。そして客観的に、私情を挟むことなく領事府役員としての仕事に従事しています。たとえ身内が暴走しようとも、それに対する扱いは変わりません。とてもよく表れているのが、バラルが過去にチャンドラへと行った所業を告発する場面。


公式記事「業火」より引用

「遵法長ディレン・バラル。貴方を一件の殺人及び……あるいは未だ発覚していないものが複数件存在する可能性もありますが……一件の殺人未遂、一件の超法規的拘禁、繰り返しますがこちらも余罪が明らかになるでしょう、そして隠蔽を含む複数件の公文書改竄により告訴します」

「貴方はその制服に相応しくありません。そして貴方は領事府が掲げる理想を脅かし逸脱させる存在です。私は貴方を告発しますが、極めて悩ましいことに……貴方のような者であろうと、法廷にて裁かれる。法はそう定めています。お気を付け下さい、この先貴方が発するあらゆる発言は証拠として公式に記録され、提出されます」


 良く言えば真摯で公平、悪く言えばお堅くて冗談が通じない性格。「白青」という色が持つ一つの典型的なイメージを体現しているキャラクターだと思います。そう、ドビンは《滞留者ヴェンセール》《卓絶のナーセット》に続く3人目の白青2色プレインズウォーカー。ですが能力制限、ライフゲインとドロー、アンタップ制限。3人目にして「白青」という色からそのままイメージするシンプルなコントロール感を一番醸し出している気がします。

 ところでこちらを見て頂きたい。




 これはバンドル(旧ファットパック)付属のPlayer’s Guideからのものです。白状しますが初めてこの全身画を見たとき、ときめきました。何というスタイルの良さ! たしかにヴィダルケンは細身の種族ですが、それでいて人間の私達から見てもバランスの取れたスマートさ。そして青い肌に赤と金の制服がとっても映えていてお洒落です。リリアナの言葉を借りれば「長身で」「決闘の剣のように痩身で」「身なりは完璧」。というかギデオンやガラクの扱いを見るにリリアナはマッチョな男性が好きではないんだろうなあ。

 話がそれました。前述の通り彼は助力を求めてゲートウォッチを訪ねたのですが、その目的は「改革派による発明博覧会への脅威を対処してもらうため」でした。ですが助けを求めた彼らの中にその改革派の娘がいた……という今回の物語。公式記事「領事府の思惑」「業火」を読むに、ドビンは本当にそれを知らなかったようです。

 現在のところドビンは変わらず領事府側におり、発明博覧会にて押収した発明品の研究と、紛争が活発になってからは改革派の対処に動いています。敵側、ですが個人的には生き延びて、紛争で荒れてしまうであろうギラプールの復興にその能力を生かして携わって欲しいです。ほらーただでさえ白青キャラってだけで死亡率高いんだからさ……「先代」もヴェンセールは死んだしナーセットだって歴史改変前は死んだし……いや、詳しい結末は私もまだわかりませんけれど。




3. 霊気紛争の2人


 テゼレットにアジャニ。まさしく、次のブロックに登場するらしいあいつと直接繋がりのあるプレインズウォーカーですよね……。『霊気紛争』から『アモンケット』へ、そのまま繋がってくるのか否か。


■ テゼレット


「できなければ、お前は終わりだ」



策謀家テゼレットテゼレットの野望機械医学的召喚


 今回、物語のテゼレットに初めて触れるという人も多いでしょう。第49回にも書きましたが、「審判長テゼレット」の名が公開されたときは大盛り上がり、そしてマローも熱く語っていました。(動画9分48秒付近)




 「テゼレット! テゼレットが帰ってくる! 悪役にはぴったりだ!」

 悪役っていう大前提。デスヨネー。領事府は実力主義の組織です。金属を操る能力に長けるテゼレットはその中で高い地位へと駆け上がり、多大な影響力を振るう立場にあります。Magic Story初登場ということでテゼレットというキャラクターは果たしてどう描かれるのだろうか、過去の小説から何らかのイメチェンはあるのだろうか……と待っていましたら。


公式記事「躍進」より引用

「私に悠長に待つ時間は無いのだぞ」

「失望した。出ていけ」

「私の言う通りにしろ、さもなくば死ね」


 ……あーこういう奴だったよ。つまりは変わってないです。『ミラディンの傷跡』小説ではもうちょっと柔らかかった気もするんですがあれは出張業務中だったからか。権力を与えたらいけない部類の人物だった。

 元々テゼレットが何故カラデシュにやって来て領事府を掌握したのか、それはまだわかりません。ですが彼は発明博覧会に出展された一つの発明に注目しました。《永遠の造り手、ラシュミ》が作り上げた「物質転送装置」。


公式記事「領事府の思惑」より引用

「ラシュミが出した作品は眩暈がするほど大きな意味を含んでいた。この些細な反乱よりも大きな、カラデシュそのものよりも大きな」


 詳しくは後の項目で書きますが、これが「大きな意味」を持つのは私達もよくわかります。大きな、とても危険な意味を……。


■ アジャニ


「殺さない、もう誰も」



不撓のアジャニ絶妙なタイミング


 何の気配もない所から「プレビュー期間中に掲載された画像の中にいた」アジャニ。思えばテーロスブロックでも『ニクスへの旅』のキーアートに後ろ姿が映っていたことから登場が推測されていました。もしかしてそういう芸風なの? そして「何故アジャニがカラデシュに?」という疑問が提示されましたが、私がピンと来たのは『基本セット2015』ファットパック付録小冊子の記述でした。抜粋して訳します。


『基本セット2015』ファットパック付録小冊子より私訳

「あのドラゴン、ニコル・ボーラスは野放しのままだ。奴の真の計略は今も知れない、とはいえ奴の目的は力、それは明白だ。私はアラーラの大渦で奴を打ち負かしたが、ただ遅らせたに過ぎない。だからこそ、あのエルダー・ドラゴンを防ぐことは今も私の使命となっている。エルズペスが死んでしまったことで、これはずっと危険な務めになることだろう」



不動のアジャニ


 繰り返しますがこの記述は『基本セット2015』当時のもの。つまり『ニクスへの旅』直後です(セットとしては『コンスピラシー』を挟みましたけど)。この時点でアジャニはすでに再びボーラスを見据えていた。カラデシュ世界へはテゼレットを追ってやって来たようですが、それもまたボーラス繋がりなのかな、とは容易に想像できます。ちなみに『アラーラの断片』ブロックストーリーの時点でアジャニとテゼレットに面識があったかどうかは確認されていません。前回にも少し書きましたが、ゲートウォッチとは別に改革派と接触して活動していたようです。




 カラデシュにレオニンはいないから色々大変だ。ちなみにこの一連の「指名手配」情報、多分ドビンがゲートウォッチ各々を知っていたから名前が判明しているのだと思います

 そして《アジャニの誓い》が示すように、ゲートウォッチ6人目として加入!


アジャニの誓い


 みんな言ってますが肉球がない! 調べた感じ、どうもレオニンの手に肉球は無いみたいです(足にはあるかもしれない)。


オレスコスの太陽導き主導権の奪取


 他の次元のレオニンでもこの通り。直立二足歩行をするので肉球は不要なのかもしれません。

 さて。ゲートウォッチはさらに増えるのか、と驚いた人も多いでしょう。実は人数の増加については結成初期から言われていました。公式記事「こぼれ話:『ゲートウォッチの誓い』 その2」から抜粋します。


次のセットに黒のプレインズウォーカーの誓いカードは入りますか、それともゲートウォッチだけですか?

誓いカードが作られるのは、ゲートウォッチに参加したときだけだ。例外はない。


「誰かの誓い」サイクルは『ゲートウォッチの誓い』独自のものですか、それとも他のプレインズウォーカーがゲートウォッチに参加したときにも作られますか?

他のプレインズウォーカーがゲートウォッチに参加したら、誓いカードが作られることになる。それができるようにデザインされているのだ。


 ゲートウォッチの理念は「多元宇宙を脅かすあらゆる脅威へと共に立ち向かう」そして「互いの背中を守る」。なるほどアジャニにはぴったりです。ギデオンとは良い直接戦闘コンビになりそう。戦闘ではないですが先日の記事で早速息の合った動きを見せてくれました。


公式記事「業火」より引用

靴音の群れが廊下を近づいてきた。代用の制服をまとった改革派の一団が照合表や軍備品、配置を議論しながらやって来た。ギデオンとアジャニはしかめた顔を見合わせ、わずかに肩をすくめ、そして腕を組んで肩を怒らせると扉の前に並び、あらゆる侵入へと立ち塞がった。


 ピアとチャンドラ、母娘の大切な時間を守る二人。「業火」の回は(ギデオンの項目で触れたのもそれ)内容が濃密かつ盛り沢山でたまらなかったのですが、このラストシーンはビジュアルを想像して少しクスっとしました。




4. 次元橋


 今回は「プレインズウォーカー回」なのですが、これだけは急いで書いておきたいと思いました。


公式記事「革新の時」より引用

サヒーリは見つめ、驚きに開いた口が塞がらなかった。友人は不可能をやってのけた。その装置は今や空間を越えて物体を運んでいた。自分は正しいことをした、サヒーリはそう願うだけだった。



永遠の造り手、ラシュミ逆説的な結果


 Magic Story『カラデシュ』編第2話「革新の時」。新プレインズウォーカー・サヒーリの紹介回……と思いきや、注目されたのはむしろ彼女の友人の発明家ラシュミとその作品でした。「空間を越えて物体を運ぶ」、それがどれほど危険な意味を持つかをプレインズウォーカーは、プレインズウォーカーである私達は知っています。ラシュミが苦心して作り上げた「物質転送器」は発明博覧会で総合部門優勝を成し遂げ、彼女は領事府の設備と資金を得て改良と大型化を進め、いや進めさせられ……


公式記事「革命の始まり」より引用

次元橋。彼らは――プレインズウォーカー、サヒーリがラシュミへ紹介した者達は、ラシュミの物質転送器をそう呼んだ。その名を、呪いの言葉のように。


 「呪いの言葉のように」。


次元の門


《次元の門》フレイバーテキスト
空は裂け、大気は割れてかき乱れた。ドミナリアへのファイレクシアの侵略がついに始まったのだ。


 私達はこのカードを、そしてこのカードが語る、一つの世界が別の世界へ侵略したという歴史を知っています。ですが新世代プレインズウォーカーの中には知らない者も多いかと思います。ゲートウォッチの面々でも、知っているのはドミナリア出身のリリアナだけという可能性もあります(とはいえ物語に出てこない、我々が詳しく知らないプレインズウォーカー情報網があるらしく、結構な人数が知っていてもおかしくはないとは思います)。そうだとしても、「呪いの言葉のように」その名を口にするのは、物質を転送するという技術がいかに危険な可能性を秘めているかを直観したからなのでしょう。

 そう、このカラデシュにて、極めて近いものができてしまった。


次元橋次元橋


《次元橋》(通常版)フレイバーテキスト
「完成だ。ここからが本番だぞ。」
――テゼレット


《次元橋》(Aether Revolt Inventions版)フレイバーテキスト・私訳
ラシュミの設計は始まりに過ぎない。大領事様がこれを元に何を計画されているのか、是非とも拝見したいものだ。
――領事府技師による記録


 かつて、といいますか旧世代プレインズウォーカーの時代には「次元間ポータル」はそれなりに見かける存在でした。入口と出口が固定であったり出口を設定できたりと様々な種類があり、物語中でもウェザーライト号や多くのキャラクターが行き来していました。その技術が途絶したのか否かポータルは長いこと物語に出てきませんでしたが、カラデシュの霊気科学技術は独自にそれを完成させてしまいました。テゼレットの言う「本番だぞ」とは一体何が本番なのか……。

 以前テゼレットがいたこともあり、「新ファイレクシアの次元侵略が始まるのか」という危惧の声も多く聞こえてきます。以下全く個人的な予想というか願望ですが、カラデシュにファイレクシアは来ないと思う……何故って、マジックの魅力の一つは「多種多様な世界」だと思うんですよ。カラデシュにファイレクシアが来たらファイレクシアになっちゃうじゃないですか(わかりづらい)。




5. おわりに


 ああ書き足りない! こうなったら次回もカラデシュだ! おなじみアートブックも発売されましたし、プレインズウォーカー以外の人物とか、佳境に入るであろう物語とか……


橋上の戦い闇の暗示


(続く)




この記事内で掲載されたカード


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