Translated by Nobukazu Kato
(掲載日 2019/08/07)
朝礼
みなさんおはよう。コヴァルスキ先生だ。本日の講義ではミシックチャンピオンシップ・バルセロナ2019(以下MC4)を通して得た学びを生徒諸君に共有したいと思う。チームと特訓をする中で多くの発見があったのだ。
昨今のモダンは1年前と大きく様相が異なっており、墓地の重要性が飛躍的に高まっている。こういった変化に順応することは欠かせないのだが、今もなお過去に生きている青白コントロールのプレイヤーが多いように思う。私は実態を知っているからこそ、「青白コントロールはホガークヴァインに対して勝率20%しかない」といった記述を見るたびに沈痛な思いに駆られるのだ。しかし、こういった言説はとどまるところを知らず、私がモダンで溺愛するデッキの印象をますます悪くしている。
今回はみなさんが新世界に適応できるように手引きをするとともに、環境の主要なアーキタイプとの戦い方を解説しよう!
デッキリストとカード選択
2 《平地》
2 《神聖なる泉》
4 《溢れかえる岸辺》
1 《虹色の眺望》
3 《天界の列柱》
2 《氷河の城砦》
3 《廃墟の地》
1 《ガイアー岬の療養所》
-土地 (24)- 4 《瞬唱の魔道士》
-クリーチャー (4)-
4 《流刑への道》
2 《外科的摘出》
1 《糾弾》
1 《呪文貫き》
1 《論理の結び目》
1 《マナ漏出》
3 《否定の力》
1 《機を見た援軍》
2 《謎めいた命令》
2 《至高の評決》
1 《拘留の宝球》
3 《覆いを割く者、ナーセット》
2 《時を解す者、テフェリー》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《ドミナリアの英雄、テフェリー》
-呪文 (32)-
手始めに、やや特徴的なカード選択について言及しよう。私のデッキ構成を深く理解できるようになるはずだ。
プレインズウォーカー
今のモダンは非常に速い環境であるため、序盤のターンが何よりも重要だ。そういった経緯から、3マナという軽さであるプレインズウォーカーは5枚、《精神を刻む者、ジェイス》は3枚にしてあり、《ドミナリアの英雄、テフェリー》はデッキ内で1枚きりの5マナ呪文だ。
《否定の力》の加入により、《ドミナリアの英雄、テフェリー》の土地をアンタップする能力の必要性は下がった。他方の《精神を刻む者、ジェイス》は、相手を選ぶ《外科的摘出》や、終盤に引いてしまった《呪文貫き》などの腐ったカードを有効牌に変えられる点で大いに役立つ。
《呪文貫き》
《呪文貫き》と《呪文嵌め》のどちらを優先すべきかという問題があるが、メタゲームによるところが大きい。《呪文貫き》はホガークヴァイン・青白コントロールミラー・イゼットフェニックスに強く、これらはMC4で上位3つの使用率であると予想したものである。対して《呪文嵌め》は主としてジャンドや人間に対して有効な呪文だ。
《糾弾》
ライバルとして《失脚》がいるが、こちらも上記と同様にメタゲームに合わせて対応すべきだ。《糾弾》は墓地デッキ・フェニックス・バーンで有効であり、ミラーマッチでも役割が期待できる。《失脚》は多様なデッキに対応できる柔軟性があり、人間に対しては断然こちらの方が良い。
《外科的摘出》:2枚
現在の環境で必須の呪文だ。ホガークヴァインはモダン最強のデッキであり、禁止されない限りはこの構図は変わらないと予想される。常に戦える用意をしておこう。また、《外科的摘出》は《瞬唱の魔道士》を4枚採用する大きな理由となっている。2ターン目に《外科的摘出》を「フラッシュバック」できる《瞬唱の魔道士》はフリースペルの後続としてこの上ないカードなのだ!
《否定の力》:3枚
高速の環境では、マナの踏み倒しが極めて重要だ。《否定の力》を3枚採用することで、同様に3枚採用された《精神を刻む者、ジェイス》との相性も向上している。4ターン目に《精神を刻む者、ジェイス》を安全に送り出したり、彼を守ったりしやすくなるからだ。加えて、《否定の力》の価値が低い相手には[0]能力でライブラリーに戻してシャッフルすることもできる。
《至高の評決》:2枚 (《神の怒り》:0枚)
《否定の力》を3枚採用するに当たって重要なのは、デッキ内に青いカードを十分な枚数確保することだ。全体除去を1種類に絞れば《翻弄する魔道士》を擁する人間との相性が悪化するのは目に見えているが、ここまでの解説からお分かりの通り、人間との1ゲーム目は諦めている。全体除去のカードを散らしたところで改善する問題だとは思わない。しかし、青いカードであるが故に他のマッチアップでゲーム展開に影響を与える可能性はあるのだ。そういったわけで《神の怒り》には大人しくベンチに座っていてもらっている。
《ガイアー岬の療養所》
《覆いを割く者、ナーセット》と組み合わせれば強力なコンボとなる。青白コントロールにありがちな負け方は、序盤の猛攻に押し切られるか(この場合は《ガイアー岬の療養所》も《廃墟の地》も役に立たない)、終盤でマナフラッドするかである。一般的に、終盤になって「1枚ドローして1枚捨てる」効果が有利に働くのは青白コントロール側であるため、《ガイアー岬の療養所》はマナフラッドによる負けを予防してくれる。
この土地の最高の起動タイミングは、《覆いを割く者、ナーセット》をコントロールしていて、相手の手札がドローステップ時点で1枚のときだ。《時を解す者、テフェリー》もいれば、強固なロックを形成できる!
ミシックチャンピオンシップの対戦成績
MC4ではほぼすべてのTier1デッキと当たり、モダン部門の総合成績は8-2であった。
対戦結果 | アーキタイプ |
---|---|
2-1 | ホガークヴァイン |
1-1 | イゼットフェニックス |
1-0 | ドレッジ |
1-0 | ウルザソプター |
1-0 | 青白コントロール |
1-0 | エルドラージトロン |
1-0 | ジャンド |
ここからはMC4で使用したサイドボードプランをお見せするとともに、重要性が最も高いマッチアップでの戦い方を解説していく。この解説を通じて青白コントロールの理解が深まることを期待しているが、みなさんの疑問が解決しないようであれば遠慮なくTwitterで質問して欲しい。全身全霊でひとつひとつの質問にお答えしよう!
マッチアップ別の解説
ホガークヴァイン
まずは最大の目玉から解説しよう。ホガークヴァインはモダンで比較的新しいアーキタイプであり、最も誤解が多いマッチアップでもある。何よりも先に言っておきたいのだが、ホガークヴァインに対する勝率は決して20%ではない!確かに1ゲーム目は悲惨であり、唯一の勝ち目が《外科的摘出》からの《瞬唱の魔道士》という動きであることは認めよう。しかし適切にサイドボーディングを行い、戦い方を知っていれば、2ゲーム目以降は非常に有利になるのだ。
青白コントロールが守備に回るのはご存知の通りだ。ホガークヴァインが攻撃に回り、我々は何としてでも相手のゲームプランを崩す必要がある。その目標に向かってやるべきことは2つだ。1つ目はわかりやすいものであるから、みなさんもお察しだろう。《外科的摘出》や《安らかなる眠り》を使って墓地対策を行うのだ。
ステップ1が完了したとしても、盤面の対処がまだ残っている。通常、ライフを脅かしてくる生き残りが戦場にいるのだ。《安らかなる眠り》を設置している状況ならば、戦場のクリーチャーを対処する最善の方法は《機を見た援軍》である。6点のライフを回復すれば、大抵は2~3回分の戦闘フェイズを無にできるはずだ。このような状況においてはブロッカーになれば基本的にどんなものでも十分だろう。《僧院の導師》はブロッカーを作り、《瞬唱の魔道士》はあらゆる生き残りと相打ちできる。我々がすべきはただ生き残ることなのだ。
調整をする中で気づいたのだが、知っておくべき2つの事実がある。《外科的摘出》は1枚では全く足りず、後手の《安らかなる眠り》は間に合わない可能性があるのだ。ホガークヴァインが先手で好スタートを切った場合、こちらが2枚目の土地を置くころには戦場にパワーが合計15を超える軍勢が並んでいることも想定される。そうとはいえ、青白コントロール側の最善のシナリオは、毎ゲームで《外科的摘出》と《安らかなる眠り》を1枚ずつ引き込むことである。
このシナリオの実現可能性を最大化するため、サイドボード後は《外科的摘出》と《安らかなる眠り》が3枚ずつの構成にするのが正しいアプローチだと思っている。調整段階からこの考えがあったが、それが正しいという確固たる自信が持てず、結果的にチームの総意に従って《安らかなる眠り》の4枚構成にしてしまった。今後は、サイドボードの《安らかなる眠り》を1枚減らし、その枠に《外科的摘出》を1枚追加することをおすすめする。
では話題をサイドボードに移そう。古くからモダンで青白コントロールを愛用してきたプレイヤーは「《安らかなる眠り》をサイドインするなら、必ず《瞬唱の魔道士》をサイドアウトする」という考えが深く染み込んでしまっているだろう。しかし、昨今ではそれが最大の過ちになるおそれがある。
《安らかなる眠り》が戦場に残り続ける限り、《墓所這い》などの2/1の軍勢の攻撃を止めさえすれば良い。瞬速しか能力がない2/1のクリーチャーでも、攻撃を止めると言う点においては《天界の粛清》と同じ役割を果たすため、《瞬唱の魔道士》の立場が大きく悪化することはない。墓地に「フラッシュバック」の対象となるカードがなくても決して腐らないのだ。
他方で、最強の対策である《安らかなる眠り》を引けない場合、あるいは手札破壊や除去で対処されてしまった場合、《外科的摘出》に頼ることになる。先ほど伝えた通り1枚では事足りないため、もう1枚用意する必要があるのだが、《外科的摘出》をもう1枚引き込むより素晴らしいことが何だかわかるだろうか?そう、《外科的摘出》におまけの2/1クリーチャーが付いてくることだ!
《外科的摘出》・《瞬唱の魔道士》・《安らかなる眠り》・《天界の粛清》。これらをサイドボード後に3枚ずつ採用すれば、ホガークヴァインとの相性は勝率70%を上回るだろう。1戦目は目を当てられないような相性であったとしても、全体で見れば巷で言われるよりも遥かに相性が良いのだ。
対 ホガークヴァイン
イゼットフェニックス
非常に相性が良いマッチアップであり、両者のスキルが大きく問われる側面もある。1ゲーム目は、相手の数少ない脅威を片っ端から処理することに尽力しよう。《外科的摘出》はキーカードであり、《弧光のフェニックス》を追放できれば負ける可能性がほとんどなくなる。最も怖いカードは《炎のアリア》であるが、3枚の《否定の力》・《拘留の宝球》・《時を解す者、テフェリー》で対応できる態勢は整っている。
サイドボード後の解説は難しいものがある。というのも、全ては相手のサイドボードの構成次第だからだ。青白コントロールを意識し、《崇高な工匠、サヒーリ》・《覆いを割く者、ナーセット》・《精神を刻む者、ジェイス》などのプレインズウォーカーを駆使してくる場合、タフなマッチアップになる。対して、1ゲーム目のゲームプランから変更がなく、打ち消し呪文を数枚追加してくるだけならば非常に戦いやすいだろう。
対戦相手の立場からすると、最大のミスはサイドボード後も《氷の中の存在》を使うことである(MC4でもこのミスをしているプレイヤーを見かけた)。第一の理由は《時を解す者、テフェリー》や《精神を刻む者、ジェイス》に弱いことだ。しかしさらに大きな理由は、我々の手助けをしてしまうことにある。《氷の中の存在》の変身能力がスタックにあるときに《瞬唱の魔道士》を唱えれば、《流刑への道》などを「フラッシュバック」しつつ《瞬唱の魔道士》を手札に戻すことができるのだ。まさに“爆アド”である!
対 イゼットフェニックス
青白コントロール
1ゲーム目は、腐るカードを多く引いた方が負けると言っていい。その点、私の構築では《精神を刻む者、ジェイス》を3枚、《時を解す者、テフェリー》を2枚、《否定の力》を3枚、《呪文嵌め》ではなく《呪文貫き》を採用している強みがあるのだ。
ただ、相手はメインデッキから非常に厄介な《ヴェンディリオン三人衆》を使っている可能性はある。ミラーマッチにおける勝ち方は、プレインズウォーカーを盤面に維持することだ。プレインズウォーカーの能力でアドバンテージを重ねていったプレイヤーがゲームの主導権を握る。サイドボード後に最強のツールとなるのは《僧院の導師》だ。だからこそ私は2ゲーム目以降に《至高の評決》を1枚残す構成が好みであり、《僧院の導師》への保険をかけるようにしている。
対 青白コントロール
もし、対戦相手が《僧院の導師》を使ってこないことがわかっているのなら、《至高の評決》を全て抜き《外科的摘出》を1枚だけ残すといいだろう。
5色人間
先ほどお断りしたように、他の相手との相性を改善するために犠牲にしたマッチアップであり、1ゲーム目は悲惨である。主なゲームプランは、《至高の評決》を指定した《翻弄する魔道士》を除去し、全体除去で相手の盤面を一掃することだ。デッキリストが公開されていなければ、多少戦いやすくなるだろう。相手が《神の怒り》を指定してきたり、《糾弾》ではなく《失脚》をケアして《翻弄する魔道士》で攻撃してくる可能性があるからだ。序盤のゲームプランを構築するに当たってはこういった事情を念頭に入れて置くと良いだろう。
サイドボード後は、序盤のあらゆるクリーチャーを除去し、早々に《僧院の導師》でゲームの主導権を握ることが重要である。《ヴェンディリオン三人衆》は《カマキリの乗り手》に対して有効な解答でありながら、相手の手札にある秘密兵器を公にしつつ長期戦を戦う準備を整えてくれる。
対 5色人間
ジャンド
カードアドバンテージが全てである。よって、《否定の力》のようなカードは思うほど有効ではない。《ヴェールのリリアナ》や《レンと六番》を打ち消すことは当然魅力的だが、カードを2枚消費しているようでは着地させるよりも状況が悪化してしまうのが普通だ。
《天界の粛清》は我々のベストカードであり、あらゆる脅威を対処可能だ。サイドボードに3枚ある構成には大満足している。《僧院の導師》は3ターン目に出さないようにしよう。このクリーチャーはゲームに幕を引いてくれる終盤のカードなのだ。序盤は相手の脅威を打ち消すことや除去することに集中しよう。最初の4~5ターンで古典的なドローゴーの展開に持ち込めれば、勝てる可能性は大きい。
《安らかなる眠り》が万能な相手ではないが、1枚採用しておくと終盤に《タルモゴイフ》や《レンと六番》をシャットダウンできる。先ほどと同様に《安らかなる眠り》を2ターン目に設置する必要はない(相手の場に《レンと六番》がいて、こちらの手札に打ち消し呪文がない場合は例外)。まずは《瞬唱の魔道士》でアドバンテージを獲得しよう。
対 ジャンド
エルドラージトロン
現在の構築で十分に渡り合える相手だ。《糾弾》は間違いなく《失脚》より頼りになる一戦である。青白コントロールの勝ちパターンは大体は同じだ。序盤に打ち消し呪文を使い、プレインズウォーカーを着地させて彼らを死守する。
《糾弾》は《現実を砕くもの》の攻撃を通す前に対処できるため、《失脚》と比較して大きなメリットがある。《否定の力》は《虚空の杯》や《大いなる創造者、カーン》を打ち消す役割を担ってくれるため、安心して《精神を刻む者、ジェイス》や《覆いを割く者、ナーセット》をタップアウトして展開できる。
トロンランドは緑単トロンほど厄介ではないので、《外科的摘出》をトロンランドに使う戦略はあまり好まない。私の経験からすれば、1ゲーム目は《大いなる創造者、カーン》・《現実を砕くもの》・《難題の予見者》のために温存し、2ゲーム目以降はサイドアウトして存在すら忘れ去ってしまうのが良いだろうと思っている。
対 エルドラージトロン
終礼
以上、現環境でトップ6のマッチアップ解説してきた。モダンにはまだまだ多くのデッキが存在しているが、そのひとつひとつを解説するのは不可能だ。繰り返しになってしまうが、お困りのマッチアップに関してアドバイスが欲しいならばTwitterでぜひ尋ねてほしい。先生は人助けが大好きだし、MC4前の2週間は青白コントロールの調整に専念してきたのだ。だから遠慮なんていらないぞ!
Great work made during the weekend. Finished 13th #MythicChampionshipIV which was good enough for $6k and 24 mythic points + locking the team series final with hareruya sword! Now in taxi moving to a new hotel next to the beach. Time to relax after a week of hard work! UW is gas! pic.twitter.com/Mr8taeMcfA
— Grzegorz 'Urlich' Kowalski (@urlichmtg) July 28, 2019
「訳:今週末は大きな成果をあげることができた。MC4にて13位でフィニッシュしたことで、賞金6000ドルとミシックポイント24点を獲得し、Hareruya Swordとしてもチームシリーズファイナル進出確定だ!今はタクシーに乗ってビーチの隣にある新しいホテルに向かっている。ハードワークの後に過ごすリラックスの1週間だ!青白コントロール最高!」
本日の講義はここまで。ではまた次回の講義で会おう!