USA Legacy Express vol.167 -フェアな新世界-

Kenta Hiroki

はじめに

みなさんこんにちは。

「相棒」のルールが変更されてしばらく経ち、レガシー環境も大きく変化しました。

今回の連載ではLegacy Challengeの入賞デッキを見ながら、「相棒」のルール変更が環境にどのような影響を与えたのかを解析していきたいと思います。

Legacy Showcase Challenge #12165551
新環境はコンボデッキが多数勝ち残る

2020年6月7日

  • 1位 Urza
  • 2位 ANT
  • 3位 Eldrazi
  • 4位 Death and Taxes
  • 5位 Hogaak
  • 6位 Sneak and Show
  • 7位 Snow Control
  • 8位 Izzet Delver

トップ8のデッキリストはこちら

「相棒」のルール変更直後に開催されたLegacy Showcase ChallengeはDelver系が数を減らし、Sneak and ShowやANTなどのコンボデッキが勝ち抜いていました。

ルール変更によって生じる追加の3マナはカードプールが広くマナ効率重視なレガシーでは思いのほか厳しく、《深海の破滅、ジャイルーダ》コンボも姿を消しました。

Legacy Showcase Challenge #12165551

Urza

新環境のChallengeを制したのはUrzaでした。ミッドレンジ寄りのモダンと異なり、レガシーでは《覆いを割く者、ナーセット》+《永劫のこだま》が搭載されたコンボ寄りの構成です。

《古えの墳墓》《裏切り者の都》といった2マナランドや《オパールのモックス》《水蓮の花びら》などのマナ加速にも恵まれているので爆発力に優れます。

☆注目ポイント

古えの墳墓虚空の杯オパールのモックス

2マナランドやマナアーティファクトによって高確率で1ターン目に《虚空の杯》をキャストできるため、1マナキャントリップを不採用にしています。これによりほかのコンボに対しても強いデッキになります。

ライオンの瞳のダイアモンド覆いを割く者、ナーセット永劫のこだま

《ライオンの瞳のダイアモンド》+《覆いを割く者、ナーセット》+《永劫のこだま》の3枚コンボ、《最高工匠卿、ウルザ》《練達飛行機械職人、サイ》によるアドバンテージで圧倒していくコントロールスタイル、《大いなる創造者、カーン》+《マイコシンスの格子》によるロックなど、多角的な攻めがこのデッキの強みです。コンボパーツである《覆いを割く者、ナーセット》《大いなる創造者、カーン》は相手の行動を制限しつつキーカードを探し出すなど、単体でも仕事をするカードが多いのも特徴です。

意志の力歩行バリスタ

サイドボードには追加のコンボ対策として《意志の力》が採用されています。《歩行バリスタ》は勝ち手段ですが、除去としても機能するのでDelver系やDeath and Taxesなどのマッチアップで特に強さを発揮します。

Snow Control

前回でも予想した通り《アーカムの天測儀》を軸にした多色コントロールデッキも勝ち上がっていました。『イコリア:巨獣の棲処』リリース前の環境ではトップメタの一角であり、新環境でも有力なフェアデッキとされていました。

《アーカムの天測儀》と氷雪基本地形によってマナ基盤は安定しており、多色デッキながら《血染めの月》《基本に帰れ》も運用できるため、特殊地形を多用するLoamやEldraziに強い構成です。

「相棒」をキャストする際に追加のマナが必要となったため《空を放浪するもの、ヨーリオン》を不採用にした60枚の構成が主流になりました。デッキ総数が減ったことでコンボ相手に《意志の力》などの打ち消しを引き当てやすくなっています。

☆注目ポイント

紅蓮破突然の衰微

新環境ではミラーマッチも流行ると予想されていたため、相手の《王冠泥棒、オーコ》対策で《紅蓮破》がタッチされています。カウンターされない《突然の衰微》も有力な対抗手段の1枚ですが、《紅蓮破》はコストが軽く、除去のモードを使用することで《夏の帳》で弾かれないのも強みです。

森の知恵自然の怒りのタイタン、ウーロ

コントロールミラーを意識していたことはメインから採用されている《森の知恵》を見ても明らかです。ライフゲインしつつ土地を伸ばせる《自然の怒りのタイタン、ウーロ》とのシナジーが強力で、このデッキがほかのフェアデッキに強い理由の1つです。

翻弄する魔道士耳の痛い静寂

苦手とするデッキはANTやSneak and Showなどのコンボデッキで、必要最低限の対策は用意されているもののDelver系と異なりクロックが遅く、苦しい戦いを強いられます。コンボ側も《夏の帳》をはじめとした妨害スペルを採用しているので《翻弄する魔道士》《耳の痛い静寂》などパーマネントベースの対策カードを用意する必要があります。

Legacy Challenge #12168604
Delver系が上位に多数

2020年6月14日

  • 1位 Dredge
  • 2位 Death and Taxes
  • 3位 Snow Control
  • 4位 Dark Depths
  • 5位 Dark Depths
  • 6位 Temur Delver
  • 7位 Esper Vial
  • 8位 Temur Delver

トップ8のデッキリストはこちら

《夢の巣のルールス》が禁止になったことで墓地対策が緩やかになってきたことと、Snow Controlなど有利なマッチアップが増加したことで、Dredgeのように墓地を使ったデッキが台頭してきました。

トップ16をみるとDelver系が6名と多くの入賞者を出していました。軽いクロックと妨害スペルを搭載したDelver系が勝ち上がっていたことで、前回結果を残していたSneak and ShowやANTといったコンボには苦しい大会だったようです。

Legacy Challenge #12168604

Temur Delver

新環境ではSnow Controlの流行が予想されていたため全体的にDelver系にとっては厳しくなるはずでした。しかし、先週末に開催されたLegacy Show Case Challengeではコントロールに強いコンボデッキが台頭してきたため、軽いクロックと妨害を搭載したDelver系は今大会では多数の入賞者を出しました。

Delver系を得意としMOの大会で好成績を残し続けているsilviawataruのリストにはメインから《戦慄衆の秘儀術師》が採用されています。クロックのサイズよりもカードアドバンテージを重視しており、コントロールとのマッチアップを意識した構成です。

現環境のレガシーにおいてフェアデッキを使う場合、最高のプレインズウォーカーである《王冠泥棒、オーコ》を使わない理由を探すほうが難しく、TemurカラーがDelver系の主流として定着しています。

☆注目ポイント

戦慄衆の秘儀術師

メインではクリーチャーサイズで勝る《タルモゴイフ》よりも《戦慄衆の秘儀術師》が優先され、1マナのキャントリップが多めに採用されています。《もみ消し》は受動的なスペルであるため《戦慄衆の秘儀術師》との相性が悪く、採用が見送られています。《タルモゴイフ》は除去耐性がないためサイドに落とされています。

わめき騒ぐマンドリル

《わめき騒ぐマンドリル》《突然の衰微》の対象にならずトランプルもあるため、Snow Controlとのマッチアップではほかのクロックよりも信頼できます。

森の知恵冬の宝珠ブリキ通りの悪党

《森の知恵》もメインから採用され、ほかのリストよりもロングゲームを意識した構成です。サイドにはマナを縛る《冬の宝珠》が2枚採用され、苦手なSnow Controlなどの対策にスペースを割いています。

《ブリキ通りの悪党》《虚空の杯》や装備品を対策しつつクロックを追加できるため、デッキに合っています。Snow Controlは《不毛の大地》をケアで基本地形をサーチすることが多く、必要な色マナを捻出するのに《アーカムの天測儀》に頼っているため《ブリキ通りの悪党》は効果的です。

Legacy Challenge #12171470
レガシーの環境を踏み鳴らす巨人

2020年6月21日

  • 1位 Sultai Field
  • 2位 Temur Delver
  • 3位 Naya Loam
  • 4位 Temur Delver
  • 5位 Sneak and Show
  • 6位 Snow Control
  • 7位 Goblins
  • 8位 Dredge

トップ8のデッキリストはこちら

先週の大会に引き続いてTemur Delverが安定した成績を残し続けており、コンボは減少傾向にあります。

そんななか勢力を伸ばしているデッキは《原始のタイタン》を軸にしたビッグマナであり、今大会で優勝を果たしたSultai Fieldは土曜日に開催されたLegacy Challengeでも優勝していることからも要注目です。

Legacy Challenge #12171470

Sultai Field

今大会で見事に優勝を果たしたMUSASABIは同様のデッキで土曜日に開催されたLegacy Challengeも優勝という凄まじいパフォーマンスを見せました。

《原始のタイタン》を採用したビッグマナ系のデッキは、『テーロス還魂記』から《イリーシア木立のドライアド》を獲得したことで存在感を示し始めました。1ターン目に《虚空の杯》を設置可能なだけではなく、《魂の洞窟》《死者の原野》《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》といったカウンターでは対処できない土地が中心のため、Snow ControlやDelver系など青いフェアデッキに対して強い構成です。

☆注目ポイント

ラムナプの採掘者死者の原野不毛の大地

特殊地形が中心ですが、セットランドだけでクリーチャー・トークンが生成可能な《死者の原野》に対しては《基本に帰れ》はあまり効果がありません。《ラムナプの採掘者》によって毎ターン墓地から土地をプレイすることができるので、土地に対する解答が少ないSnow Controlにとっては《死者の原野》は脅威となります。

イリーシア木立のドライアド自然の怒りのタイタン、ウーロ

『テーロス還魂記』から《イリーシア木立のドライアド》《自然の怒りのタイタン、ウーロ》を手に入れてTitan Fieldは大幅に強化されました。《イリーシア木立のドライアド》はモダンの《原始のタイタン》デッキと同様に《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》との組み合わせが強力で、マナ加速を促進しつつマナ基盤の安定性向上に貢献します。タフネスが4あるため除去を《稲妻》に頼っているデッキにとっては対処しにくいクリーチャーとなります。

《自然の怒りのタイタン、ウーロ》はSnow Controlと同様に序盤はライフゲインによる延命とマナ加速をし、墓地が肥える中盤以降はカードアドバンテージ兼フィニッシャーとなり長期戦における強さに拍車をかけます。

ゴルガリの女王、ヴラスカトレストの使者、レオヴォルド溜め込み屋のアウフアメジストのとげ

《ゴルガリの女王、ヴラスカ》《王冠泥棒、オーコ》などに対する追加の解答となります。《突然の衰微》に耐性があるのでSnow Controlとのマッチアップで強さを発揮します。対コンボマッチでは最速で《虚空の杯》が置けないと厳しくなるため、《トレストの使者、レオヴォルド》《溜め込み屋のアウフ》《アメジストのとげ》といった追加のカードがサイドインされます。

総括

モダンよりもさらにカードプールが広く、速さが重要なレガシーでは追加の3マナは致命的であり、禁止改訂後には「相棒」を使ったデッキはほとんど見られなくなっています。

Legacy Challengeの結果から青いフェアデッキでもっとも安定した成績を残しているのはTemur Delverです。《アーカムの天測儀》が無事残ったためSnow Controlも安定した成績を残しています。《自然の怒りのタイタン、ウーロ》はSnow Control以外では最近好調の《原始のタイタン》デッキにも採用されており、ミッドレンジやコントロールの必須カードとして定着しています。

さらにレガシー好きにとって嬉しいニュースがあります!7月5日に晴れる屋 トーナメントセンター 大阪で127th KMC with 晴れる屋 トーナメントセンター 大阪が開催されます。レガシーの紙の大規模なイベントは久しぶりなので楽しみですね。

USA Legacy Express vol.167は以上になります。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいレガシーライフを! 

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Kenta Hiroki アメリカ在住のプレイヤー。 フォーマットを問わず精力的に活動しており、SCGやグランプリの結果などからグローバルな最新情報を隔週で発信する「USA Modern Express」「USA Legacy Express」を連載中。 Kenta Hirokiの記事はこちら