あなたの隣のプレインズウォーカー ~第111回 カルドハイムで何があったのか~

若月 繭子

はじめに

こんにちは、若月です。

『ストリクスヘイヴン:魔法学院』ではシルバークイルに入学しますのでよろしく!

前々回はケイヤとティボルト、前回はなぜか『カルドハイム』に再登場した新ファイレクシアの法務官ヴォリンクレックスの話をしました。今回はカルドハイムの物語を追い、出てきた疑問点をまとめます。

1. カルドハイムの物語

まずは『カルドハイム』のメインストーリーの流れを大まかにたどりましょう。

極北の並木ルーン目のインガ星界の神、アールンド

怪物退治の依頼を受け、ケイヤはカルドハイムに降り立った。領界路探したちと協力してその怪物を追うが、それは明らかにこの次元の存在ではなかった。戦いの中で窮地に陥ったそのとき、仲間の一人に変装していた神アールンドが正体を現し、一同の危機を救うが怪物は逃走してしまった。怪物退治の報酬をすでに貰っているケイヤは、アールンドに要求して領界を渡る船を提供してもらった。

ノットヴォルドの眠り塚嘘の神、ヴァルキー

行き着いたのは領界ノットヴォルド。森へ踏み入り、怪物の兆候を探すがその気配はない。やがて話し声を聞きつけて向かうと、嘘の神ヴァルキーを名乗る者がトロールをけしかけていた。その様子を観察したケイヤは違和感の正体に気づく。嘘の神は本物の神ではなく、何者かが幻影魔法で化けているのだ。簡単な魔法を用いて自称嘘の神の正体を暴くと、それはデビルのプレインズウォーカー、ティボルトだった。その悪評はケイヤも耳にしていた。何をしていたかとケイヤは問い詰めるが、ティボルトはトロールをけしかけ、剣で空間を切り裂いて逃走した。眠りを妨げられたトロールは怒り狂ってケイヤに襲いかかり、彼女はその戦いの中で武器を失ってしまう。

タイヴァー・ケル

そのとき、筋骨隆々としたエルフの青年が現れた。彼はタイヴァー・ケルと名乗り、独特な戦い方でトロールを始末した。タイヴァーはヴァルキー=ティボルトを追っていたのだ。そのやり取りの中、ケイヤは彼が首飾りに下げた面晶体に気づく。タイヴァーもプレインズウォーカーなのだ……しかし彼はゼンディカーも領界のひとつと思っており、プレインズウォーカーも多元宇宙の概念も知らなかった。

ティボルトの計略悪戯の神の強奪タイライト剣の鍛錬

そのティボルトはカルドハイムで何をしていたのか。あるとき彼は「恐ろしい獣」に遭遇し、それが「種」と呼ぶ毒の類を刺された。カルドハイムに動乱をもたらすならそれを取り除くと怪物は言い、ティボルトは了承した。元より、彼は混乱を起こしたがっていた。

ティボルトは嘘の神ヴァルキーを騙してカーフェルの奥深くに幽閉し、すり替わった。そして神の姿を用いて人々を説得しにかかった。ドワーフの鍛冶場主コルから領界の剣を奪い、エルフの王に謁見して神々の策略を吹き込んだ。領界の剣で世界を切り裂き、星界の大蛇コーマをシュタルンハイムへ招き入れた。まもなく、カルドハイムのすべてが動乱の炎に包まれるのだ。

イマースタームの髑髏塚熱狂した略奪者領界路の開放

ティボルトを追いかけ、タイヴァーとケイヤは領界イマースタームへ入った。襲いかかってきたデーモンを倒して船を手に入れ、溶岩湖を渡って血の岩山へ。そして現れたティボルトは、殺すつもりで襲いかかるが不利を悟り、剣は放って次元渡りで逃走した。ティボルトは領界同士の衝突、ドゥームスカールを起こそうとしていた――違う、すでに起こしたのだ。ケイヤは諦めて次の次元へ向かおうと提案するが、タイヴァーははねつけた。その世界を訪れて、都合が悪くなったらすぐに逃げる、それではあのティボルトと本質的には何ら変わらない、と。タイヴァーは自らの術で領界路を開いてその先へ向かった。タイヴァーの言葉が予想以上に突き刺さったケイヤはしばし躊躇していたが、苦々しくもタイヴァーを追いかけた。

ドゥームスカール血空の主君、ヴェラゴス戦闘の神、ハルヴァール

ドゥームスカールによって、人間の領界ブレタガルドに多くの敵が攻め入った。人間氏族が力を結集して戦う一方、ケイヤとタイヴァーはドゥームスカールそのものを止めるため、領界の剣をハルヴァールへ届けようとする。そして航海の神コシマやタイヴァーの兄ヘラルドの助力を得て戦場を駆け抜けて辿り着くも、悪魔の軍勢が襲いかかろうとしていた。ハルヴァールが領界の剣を起動するまでの時間を稼がねばならない。だが突如現れたコーマや戦乙女の軍勢の存在もあり、タイヴァーとケイヤはデーモンの長であるヴェラゴスを倒す。同時にハルヴァールによって剣が起動され、領界の裂け目は塞がれた。

ブレタガルドに攻め入ったものたちは敗走していた。勝利、とはいえすべてが解決するまでには相当な時間がかかると思われた。タイヴァーは多元宇宙へと旅立つつもりでいた。どこかの次元が、人々が、自分を必要としているかもしれないのだ。カルドハイムがケイヤを必要としたように。ケイヤは元々、あの怪物を退治するのが目的のはずだった。だが手掛かりはない。あの怪物は、領界ではなくその先へ行ってしまったような気がする――そう感じていた。領界の先には何があるのかと問われ、疲労困憊のケイヤはおざなりな返事をする。だがその質問者、ニコ・アリスがテーロスの名を出すと目を見開いた。プレインズウォーカーがもう一人いたのだ。

タイライトの聖域樹の神、エシカ巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス

一方で。星界の神エシカの聖所に怪物が押し入っていた。その毒によって、エシカは死に瀕していた。怪物の目的は世界樹の樹液。その瓶を手にした怪物の前に、謎めいたポータルが開いた。

2. 疑問点と考察

このように、カルドハイム次元内についてはおおむね大団円を迎えました。ですが多くの疑問点が残っています。ここでは、重要キャラクターの3人についてそれらを考察します。

■ケイヤ

情け無用のケイヤ

情け無用と言いつつ情け深いことで有名なケイヤ。今回また新たなプレインズウォーカーの人脈ができました。先輩としてタイヴァーに心得を教授しようとし、物語ラストでは同じく覚醒してまだ長くないニコ・アリスにも出会っていました。テヨ君のときといい、新人を見ると放っておけないお姉さん気質の持ち主?とはいえケイヤも本人曰く「30にもなっていない」だからまだまだ若いのだけど。

カルドハイムへ来た目的は?

ケイヤの登場が発表された当初からこれは疑問でした。『灯争大戦』の後日談で故郷トルヴァーダへ向かったはずでは?「空が裂けている」という故郷の問題は解決したのか、それともカルドハイムの何かと関係があるのか……と。そしてこの件については、物語の早々に語られました。

カルドハイム メインストーリー第1話:旅人たちより引用

その通り――これは自分の発案だった。荒野へ踏み入って、人々を食らう恐ろしい獣を殺す。英雄はそういうことをするものであり、彼女自身も今や英雄ということになっていた。そのために報酬を貰うのは別に構わなかったが、誰が払ってくれるのかは知りたかった。だが五つほどの異なる次元で鋳造された特徴のないコインに文句は言えず、加えてそれは魅力的かつ単純だった。ラヴニカの乱雑な取引とは全く異なっていた。

つまりケイヤは「怪物退治を依頼されてカルドハイムを訪れた」ようです。では結局故郷はどうなったのでしょうか。これは話中での言及はまったくなかったのですが、『カルドハイム』ストーリー著者であるRoy Graham氏がツイッターにて説明してくれていました。

「この件についての最終的な回答であるとは断言できないが、大きな設定変更はない。だが『灯争大戦』からチームは大きく変化しており、ケイヤの物語は異なる方向へ舵を取るほうが良いと我々は感じた」

「ケイヤは今もゲートウォッチの一員であり、故郷の窮状もそのままである(とはいえ私が思うに、ゲートウォッチは今や正式な組織というより、問題が起こったなら助け合うという緩い合意関係に近い)」

大きな設定変更はないとのことです。ということは例の同行者3人はどうしているのか気になりますよ。

怪物退治の依頼人とは?

となると謎になってくるのがこれ。確かにケイヤは幽霊暗殺者として名声を得ていますが(書いて思ったのだけど、暗殺者が有名になったら駄目だよなあ)、今回の怪物は明らかに幽霊どころかアンデッドですらありません。そして上でも引用したケイヤの回想には「複数の次元のコインを報酬として提示された」とあります。つまり、カルドハイム外部の何者かから依頼されたと考えるのが自然でしょう。ですが依頼人の正体はケイヤも把握していない、と。職業暗殺者としては、依頼人に深入りしないという態度は正しいのかもしれませんが。「カルドハイム外部の何者かが」「カルドハイムの外から来た怪物退治を依頼する」というのはすごく怪しいと思う……多分何か裏がありますよね。

■ティボルト

嘘の神、ヴァルキー

このたび『カルドハイム』にて、めでたく日本語ストーリーに初登場を果たしました。旧イニストラードブロックは小説が存在せず、また『灯争大戦』のウェブ版ストーリーには顔を出していなかったんですよ。やっぱり日本語で出ると出ないとでは、どんなキャラクターなのかという認識が段違いです。例えばジェイスなんて、ウェブでの物語展開が始まる以前は「嫌味な実力者」のように広く思われていましたから(完全に神ジェイスの影響ですな)。

カルドハイムへ来た目的は?

こちらは、ケイヤと異なり最後まで明かされませんでした。ちなみにチャンドラのコミック(第109回参照)よりあとではあるようなので、故郷イニストラードで捕らえられたあとは何らかの手段で脱走したのだと思われます。元よりティボルトはさまざまな次元を渡り歩いては自身の「芸術」を楽しんでいます。気ままにどの次元に姿を現しても特におかしいということはないでしょうね。

「種」とは?その影響とは?

メインストーリー第3話にこんな描写がありました。

カルドハイム メインストーリー第3話:ティボルトの英雄譚より引用

見よ、この恐ろしい獣はティボルトの多くの才能を耳にし、必死にその助けを求めた。だがティボルトのように見目麗しく強大なプレインズウォーカーは、自分のような醜く滑稽な獣に手を貸してくれなどはしない――そう強いられない限りは。ゆえに恐ろしい獣はある日ティボルトへと忍び寄り、汚らわしく狡猾な毒の類を刺した。獣はこの毒を「種」と呼んだ――そしてティボルトが獣のために動乱をもたらしてくれるなら、それを取り除くと言った。

この「種」というのもここで言及されたのみで、この後一切出てきていません。汚らわしく狡猾な毒。現状の情報でひねらずに素直に考えたなら、「獣」=ヴォリンクレックス、「種」=ファイレクシアの油……と誰もが認識すると思います。実際、私もそれ以外は思いつきません(これまでに出ていない何らかの新しいもの、でなければ)。

ではこれを刺されてしまったティボルトは一体どうなるのか?とりあえず「種=ファイレクシアの油」という過程で話を進めます。前回で詳しく触れましたが、ファイレクシア人(ファイレクシアン)はプレインズウォーカーの灯を持つことができません。では、プレインズウォーカーはファイレクシアの油を持つことはできるのでしょうか?そして、プレインズウォーカーがファイレクシアの油を持った場合どのような影響が出るのでしょうか?それを考察してみます。

ここでヒントになってくるのが、かつてのカーンです。

銀のゴーレム、カーン潜伏工作員、ザンチャ

カーンの内にはずっと、ザンチャに由来するファイレクシアの油が残っていました。それは長いこと特に影響は見られませんでしたが、『次元の混乱』の物語にてカーンはトレイリアの裂け目を塞ぐためにプレインズウォーカーの灯を捧げます。すると灯を失ったことで油が活性化を開始し、それを悟ったカーンは自らの創造した次元ミラディンへと逃亡しました。ですが、やがて完全に油に浸食され、新ファイレクシアの奥深くで「機械の父」としてまつり上げられることになったのでした(逆に、プレインズウォーカーになる以前はなぜ活性化していなかったのか?それはこう……たぶん設定が作られた時期とかが……)。

堕落した良心遥かなる記憶

この事例を見るに、プレインズウォーカーがファイレクシアの油を持つ場合は「不活性のまま油を持ち続ける」のだと推測されます。つまり、ティボルト自身がファイレクシアの油に侵食されて「完成する」ことはないんじゃないかな……?ミラディンの人々は次々と「完成」させられていきましたが、それは彼らが身体に金属部分を持っていたため容易だったというのもあるのではと。また油は体内に残り続けるのか、それとも代謝や免疫といった生体機能で撲滅されてしまうのかはわかりません。カーンは数千年単位で油を持ち続けた計算になりますが、無機物の彼に生体機能はないのでこの点に関しては参考になりませんね。

また、プレインズウォーカーでありながら油を持ち続けたカーンの事例は「大修復」以前のものです。現在ではプレインズウォーカーの灯の性質や多元宇宙の法則が変化しており、私の推測はまったく的外れという可能性はもちろんあります。

そしてティボルト自身は平気だとしても、ティボルトの周囲が平気かどうかは実際わかりません。これは今後のエピソードに関わってくるのでしょうか。

■ヴォリンクレックス

巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス

私、新ファイレクシアとは当時から長い付き合いになります。法務官についても再録や何やらでときどき振り返ってきました。それでも、法務官5人のうちヴォリンクレックスがここまで注目を浴びたことはかつてありませんでした。どうしても話題にのぼるのはトップであるエリシュ・ノーンや、思想的にはぐれ者であるウラブラスクになってきますからね。

カルドハイムへ来た目的は?

ティボルトやケイヤ以上に、公開時からさんざん「何しに来た」と言われていたヴォリンクレックス。これはメインストーリー最終回にて明かされていました。

カルドハイム メインストーリー第5話:決戦、カルドハイムより引用

怪物は瓶を井戸へと傾け、光へと掲げた。その中では、世界樹の樹液が領界のあらゆる光に揺れていた。この世界で最も美しいもの――あらゆる世界でも最も美しい、エシカはそう思っていた。怪物がその美しさを感じたとしても、何の徴候も見せなかった。

「試料は採取した」 縫い合わされた声で、怪物は言った。「戻る準備はいい」

ヴォリンクレックスは《樹の神、エシカ》の聖所へと押し入り、世界樹の樹液を強奪しました。それが目的であったようです。世界樹の樹液を持ち帰る、一体何のために?

「プレインズウォーカーのためのカルドハイム案内 その1」より引用

神々は世界樹の「樹液」からもたらされた高い魔力を持つ物質を用います。タイライトはまるで、星界のオーロラのような光が形を成したもののように見えます。神々はそれを安全に取り扱いますが、定命がタイライトに直接触れるのは極めて危険です。

世界樹の神エシカがタイライトから星界の霊薬を作り出したため、スコーティの皮膚や彼らのほかの徴候には、曖昧な(ときにはそれほど曖昧でない)形でオーロラの光の影響が現れます。

「カルドハイムの伝説たち」より引用

エシカは星界の霊薬を作り、神々はそれを飲んで加齢の速度を緩め、超自然的な力を維持しています。彼女はその霊薬の製法を知る唯一の存在であり、その秘密を他の誰かと共有するつもりはありません。

タイライト剣の鍛錬戦闘の神、ハルヴァール星界の霊薬

世界樹の樹液から作り出されるタイライトという物質、それを用いて創造されたのが《領界の剣》です。元々は《鍛冶場主、コル》《戦闘の神、ハルヴァール》のために鋳造しましたが、ティボルトに奪われてしまいました。最終的にはハルヴァールのもとへと届けられ、彼はその力を用いてドゥームスカールを止めることに成功しました。領界の剣は空間を切り裂き、カルドハイムの領界間を移動する道を作り出します。

一方で《星界の霊薬》。カルドハイムの神々はほかの次元の同類のように破壊不能こそ持ちませんが、これを飲むことで長い寿命や大いなる力を得ています。つまりヴォリンクレックスが持ち帰ろうとしたのは、「空間を切り裂き、世界と世界を繋ぐ道を作る」「服用した者に力と長命を与える」ようなものの原料となる素材。加工や利用には困難を極めるようですが、危険なものをファイレクシアが入手してしまった、というのは間違いありません。

ところで、プレインズウォーカーの灯を持つことのできないファイレクシア人が、カルドハイム次元やその世界樹の存在を知るはずがありません。一体どうやって知ったんでしょうね……?

最後に話していた相手は何者なのか?

『カルドハイム』メインストーリー最終回はこう締められていました。

そのポータルの先から、極めて不気味かつ奇妙な音が届いた。かろうじて、それは何かの声だとわかった。「よくやった、ヴォリンクレックス。これで我らはまた一歩、完成に近づいた」

言うまでもなく、「完成」はファイレクシアが好んで使う表現です。そして「きわめて不気味かつ奇妙な音」「かろうじて何かの声だとわかる」――ファイレクシア語なのでしょう。マジックでは次元が違っても言葉は通じるものとして話が進んでいますが、特定の種族や勢力内でのみ用いられる言語もまた存在しています。ファイレクシア語もそのひとつ。それも単純に英語のアルファベットをファイレクシアのアルファベットに置き換えただけというものではなく、独自の単語や文法体系が設定されているようです。私も読めません(何度か読もうと努力はしましたがまったく駄目でした)。

つまりここでヴォリンクレックスが喋っている相手は、ファイレクシアにいる何者か。そして「不気味かつ奇妙な音」という表現から、ファイレクシア人の可能性が高いと私は考えています。ごくごく順当に考えれば、現在の新ファイレクシアにてトップに立っているエリシュ・ノーンか、技術的なところを担当しているであろう青派閥のジン=ギタクシアスか。ちなみに英語の原文を見ましたが、喋っている相手の性別は不明でした。

ヴォリンクレックスが次元を渡った手段は何だったのか?

これについても明確には判明しませんでした。ですが最終回に、ポータルが開く場面の描写がありました。

『カルドハイム』メインストーリー第5話:決戦、カルドハイムより引用

不意に、部屋の中央に眩しい閃光が現れた――息のような音を立て、火花を散らす赤い輝きが一つの星のように始まり、広がり、ゆっくりと、円になっていった。その円は広がった。

『灯争大戦』の続編小説に、テゼレットが次元橋を開く場面がありましたので比較してみましょう。

小説「War of the Spark: Forsaken」チャプター58より訳

テゼレットの胸が瞳孔のように丸く開いてその内の虚空を、次元橋の技術を露わにした。それは前方へ投射され、空間に巨大な円形の孔を作り出した。大気圧の変化に押され、ラルは数歩後ずさった。そしてそのポータルを通って隕石が飛来し、ラルは不意をつかれた。

次元橋機械と共に

うーん。空間に円形の穴が開く、というところは同じですが。けれどポータルが開くのって大体こんな感じだよなとも思う。テゼレットが関わっているのが最有力候補だろうなあ、と私が思っているので似ているように見えるだけかもしれませんし。まだ断定するには情報が足りなすぎますね。

3. ここはカルドハイムなのであって

今回はここまでです。何だかファイレクシアの話ばかりになってしまいました。今いるのはカルドハイムなんだけどな……まあイクサランでも半分くらいはラヴニカの話をしていた気がするけど。ですが「実時間10年を経てついに新ファイレクシアが動き出した」というのは、私たちにとってはとてつもなく大きな出来事です。それこそ、話中の登場人物たち以上に。

そもそも、現在のプレインズウォーカーの多くはファイレクシアをあまり知らないのかもしれません。ドミナリアへの侵略はもう遠い昔であり、新ファイレクシアは当時のファイレクシアから独自の進化を遂げています。今回の当事者であるケイヤも、遭遇した怪物がほかの次元の存在であるとは予想していましたが、ファイレクシアに思い至った様子はありませんでした。ドミナリア出身のテフェリーやリリアナが見ればまた反応は違ったのかもしれませんが。「名前は知っているけれど実際に見た・行ったことはない」というキャラクターが大半なのではないかな、と思います。

それではまた次回に。もう少しファイレクシアの話をしようかどうしようか。

(終)

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若月 繭子 マジック歴20年を超える古参でありながら、当初から背景世界を追うことに心を傾け、言語の壁を越えてマジックの物語の面白さを日本に広めるべく奮闘してきた変わり者。 黎明期から現在までの歴代ストーリーとカードの膨大な知識量を武器にライターとして活動中。 若月 繭子の記事はこちら