統率者戦のカラーパイ
統率者戦では競技フォーマット以上にカラーパイを強く感じる場面があります。ひたすらアドバンテージを稼いで自分のゲームを押し付けるのが得意な色、それを妨害するのが得意な色、コンボ勝利が得意な色。
統率者が決まっているなら、その色の得意不得意を知っておくことがデッキ構築の助けになります。もしまだ統率者が決まっていないなら、色の特徴をつかんでから好きな色の統率者を探すのもアリ。
それでは実際に各色の統率者戦におけるカラーパイについてみていきましょう!
白 俺がルールを作る
《神の怒り》に代表されるように、全体除去が得意な色です。クリーチャーだけではなく、土地全体除去や、土地以外すべて除去も存在します。盛り上がること間違いなし。クリーチャーのサイズを上げる《清浄の名誉》といったカードも豊富。アーティファクトもエンチャントも破壊できるうえ、破壊不能クリーチャーさえ除去する追放除去も多く、パーマネントに触りやすい色といえるでしょう。しかし近年は緑に優秀なアーティファクト・エンチャント除去が増えてきたこともあり、そのお株は奪われつつあります。ハイランダールール(デッキに同名カードが一枚しか入れられない)においてサーチとドローの重要度は非常に高いのですが、白はドローもサーチも弱く、マナ加速も決して得意ではないです。
白の高速アグロ戦略はいつの時代も根強い人気があります。しかし、統率者戦で 40点のライフを3人ぶん削り切るのはかなりハードルが高く、統率者戦の特別ルールによって一番大きなハンデを背負わされていると言えるかもしれません。
しかしながら、相手を妨害する置物のバリエーションはやはり白が圧倒的で、大量にトークンやヘイトクリーチャーを展開して、《太陽冠のヘリオッド》、《希望の天使アヴァシン》といった統率者でバックアップするデッキも存在します。
今後、白にもドローできるカードが登場することが登場していくことが示唆されています。今後の動向は要チェックですね!
青 影のフィクサー
ドローもサーチもできるうえ、追加ターンまであり、プレインズウォーカーも強力なものが多く、非常に器用な色です。競技性の高いデッキには青が含まれていることが多いようです。《タッサの神託者》の存在も大きいです。一方で、クリーチャーのサイズ感はいまいちで、殴り統率者が苦手だったり、勝ち手段をコンボに頼りがち。「打ち消し色」とはいえ、統率者戦では打ち消しの1:1交換が実際は1:1:0:0交換になるため若干の損になってしまうのも苦しいです。にもかかわらず、すでに盤面に出てしまったパーマネントにほとんど対応できないため、結局打ち消しを強いられてしまいます。
やはり《タッサの神託者》の存在は大きいですね。アーティファクトサーチから無限マナを成立させたら《天才のひらめき》や《無限への突入》でライブラリーを吹き飛ばし、《タッサの神託者》で勝利するというのは青の統率者の定番的勝ち筋。「《タッサの神託者》はそう遠くない将来禁止になってしまうのではないか」。統率者戦コミュニティでしばしばあがる話題です。 《タッサの神託者》 が入っているかどうかで卓組みを決めるコミュニティもあるんだとか。それぐらい強力なコンボなのですね。
黒 欲しいものはなんでもやろう。
黒も青と並んで統率者戦では強い色だといわれます。クリーチャー除去に優れているのはもちろん、《吸血の教示者》など万能サーチを擁し、《汚れた契約》、《Demonic Consultation》と《タッサの神託者》のコンボは非常に強力。《暗黒の儀式》や《ヨーグモスの息子、ケリク》の存在、墓地からの蘇生などビッグアクションを序盤からとっていくこともできるのも強み。《ファイレクシアの闘技場》、《占骨術》など、デメリットつきであったり青よりも重いコストを求められるがドローもできてしまいます。
一方で、アーティファクト・エンチャントにはほとんど触れることができません。統率者戦ではかなり大きな弱点と言えます。白の妨害置物はともかく、《土牢》や《月への封印》で統率者が捕らえられるとかなり厄介です。統率者を救い出す手段は《大群への給餌》くらいしかないのです。本当はコンボパーツをそろえたいのに、《不気味な教示者》で泣く泣く《大群への給餌》をサーチする黒単統率者を何度も見てきました。白の妨害置物にも弱く、強力なコンボを擁していますが、妨害に対応するのが得意ではないといえるでしょう。かなり器用で強い色なのは間違いありませんが、墓地利用デッキに対する《墓掘りの檻》など、クリティカルな妨害をされてしまうとお手上げです。
赤 人事を尽くしてトップをめくれ
赤は自由、感情や混沌をテーマにデザインされてきた色。それだけに統率者戦では対戦相手をまきこんで変なことをするカードが多いようです。アドバンテージがとれるか不確定なカードや、奇妙なギミックを持ったカードもあり、相手に予想されにくい奇妙なコンボがいくつも存在します。
得意技としてあげられるのはやはり火力。象徴的な《稲妻》《地震》だけではなく、クリーチャーの起動効果・誘発効果でもダメージを飛ばすものもいます。プレインズウォーカーにも火力を飛ばせるものはかなり優秀ですね。また、アーティファクト破壊も得意で《削剥》や《汚損破》はよく見かけるカード。かつて赤は土地破壊の色でもあり、《破滅》は極端な例だが、この一枚でゲームをひっくり返すパワーがあります。
奇妙で無茶苦茶なカードとしては《鏡割りのキキジキ》、《欠片の双子》、《死の国からの脱出》があげられるでしょう。いずれも無限コンボのパーツになり、非常にテクニカルな動きを見せることがあります。
ドローは事前に手札を捨てることが求められたり、ドローできますがそのターン中に使わないと追放されてしまったり(衝動的ドロー)、ほしいカードが手に入るかは不確定という《ギャンブル》、なんでも除去できるがもっとヤバいのがでてくるかもしれない《混沌のねじれ》など、運否天賦にゲームの行方をゆだねる場面が多く、いざ! というときの安定性に欠けるかもしれません。しかしながらその不安定さと「ゲームの面白おかしさ」は比例関係にあり、めくれるカードをみんなで見守るのはなかなかワクワクします。
緑 ウチの生物、何でもやります
緑は統率者戦において最良の色と呼ばれることもあります。他を圧倒するマナ加速、豊富なクリーチャーサーチ、格闘系除去に置物破壊とかなり行動範囲は広くなっています。
また、墓地からどんなカードでも回収できる、というのも緑の強み。統率者戦は同名カードを一枚しか使えませんが、墓地から回収して使いまわしができます。黒もクリーチャーを戻すことはできますが、緑はインスタントもソーサリーでも、なんでも拾えてしまいます。
弱点をあげるなら、全体除去に弱い、といったところでしょうか。無限マナへ達する方法はいくつもあるものの、クリーチャーで成立させるものが多く、戦場を一気に片付けられてしまうとリカバリーがかなり大変です。手札を増やすカードもまた、クリーチャーのパワーや数を参照するものが多く、このことが全体除去からの復帰を難しくしています。《夏の帳》など自分の呪文を打ち消されなくするカードは存在しているものの、相手の呪文・コンボに介入することはほとんどできません。
統率者戦においても、マナ加速で行動数を増やすことができるのはやはり強力で、序盤から大きなクリーチャーを叩きつけて有利な盤面を作りやすいといえます。アーティファクトとのシナジーが弱い色ですが、アーティファクトに頼らず十分なマナが確保でき(財布に優しいということでもある)、《溜め込み屋のアウフ》や《進歩の災い》で一方的に邪魔ができます。自分のゲームを押し付ける力に秀でているため、「土地を置いただけで終わっちゃった……」という切ない思いをしなくてすむのも魅力。何色にするか困ってしまったら、初心者はまず緑に触れるのがおすすめ。
カラーパイと多色デッキ
当然、統率者戦は単色だけではありません。多色のデッキはそれだけ多くのカードが選択肢になり、より幅広い戦略をとれるのが魅力です。Jacob Nagro 氏の記事『競技EDHへの招待状』では「統率者戦では選択肢が無尽蔵にある」と前置きしつつも最強クラスのデッキを考察しています。ここであげられたデッキはやはり多色、それも3色以上のものでした。
その一方で、デッキの色が増えれば増えるほど土地事故を起こしやすくなり、マリガンで手札を少なくスタートする可能性も高くなってしまいます。
また、優秀な土地はおおむね高額。財布と相談しましょう。覚悟ができた方はぜひ晴れる屋をご利用ください。
単色万歳。
戦略から見た色。で、統率者どうする?
統率者戦における色について振り返ってきました。
すでに統率者が決まっている方はそれぞれの固有色のカードを調べたり、弱点を補うカードを探してみましょう。
色から決めようと思っていた方は……少し困らせてしまったかもしれないですね。悩んでしまったらこういうふうに決めるのはいかがでしょうか。好きな戦い方で色を選ぶのです。
統率者やクリーチャーの戦闘ダメージで3人殴り切ってやる! →白、赤、緑
一撃必殺。コンボデッキで勝負。→赤、黒、青
対戦相手の邪魔をしたい(ゆっくりのんびりゲームを楽しみたい。) →白、青
もちろんどんな色でもアグロ戦略は取れますし、無限コンボが存在しますが、戦略から見た得意な色をまとめてみました。この中から好きな戦略、色を組み合わせるのももちろんオッケー。
次回はいよいよ実践編! デッキを作り始めましょう! 統率者をローダーに入れて更新をお待ちください!