By Kazuki Watanabe
Hareruya Latinに所属するプレイヤーの言葉を、今回の取材ではお届けすることができた。
スタンダードマスターであるセバスティアン・ポッツォはメタゲームブレイクダウンで、トッププロが選択したデッキについて解説してくれた。さらに、この大会を振り返り、次の一歩も語ってくれた。
マルシオ・カルバリョの『イクサラン』ドラフトの基礎知識には、リミテッドの達人である彼の経験と思考が詰まっている。
そして、豪華なメンバーが集うHareruya Latinの強さを、ルーカス・エスペル・ベルサウドが語ってくれた。
彼らの言葉は非常に明快で、様々なアドバイスが込められていた。しかし、この世界選手権2017が終わってしまえば、彼らに話を窺う機会が失われる。次に私がインタビューを申し込めるのも、いつになるか分からない。
ならば、この機会を活かさねばなるまい。ほんの少しではあるが、彼らの言葉をお届けすることにしよう。
ルーカス「結果には、もちろん満足できていません」
悔しさを浮かべながら答えてくれたのは、ルーカス・エスペル・ベルサウドだ。スタンダードとリミテッドの反省点を述べながら、彼は「自らが得たもの」について語ってくれた。
ルーカス「たしかに満足できない結果でしたが、そこに至るまでの過程で、私は色々なことを学びました。世界のトッププロたちがどのようなことを考えているのか。対戦、そして会話を通じて直接触れることができたのは、大きな糧になると思います。それは、この世界選手権に出場をしなければ、得られなかったものです」
「もちろん、悔しいですけどね」とプロツアー王者は笑顔を見せる。多くを学んだ彼に、「その学んだことの一部でも良いので、読者にアドバイスはないか?」と問うと、彼は少し考え込んだあとに、心構えについて話してくれた。「対戦相手へのリスペクト」である。
ルーカス「マジックは一人ではできません。対戦相手がいなかったら楽しめませんし、仲間と情報交換をしたり、練習をしたりすることで上達できます。私も、数々の対戦相手と仲間に支えられて、この場所を訪れることができました。仲間へのリスペクトは持ちやすいと思いますが、対戦相手へのリスペクトを忘れてはいけません。マジックの勝敗に、人の優劣を決定する要素はないんです。そこにあるのは、1つのトーナメントにおける勝ち点3だけなのですから」
そして彼は、Hareruya Latinとしての今後と、日本のプレイヤーへのメッセージを述べて、この場を後にする。
ルーカス「ユニフォームを着て戦うことの重さを改めて実感しました。このシャツを身に付けて、世界中のトーナメントで戦います。今回は悔しい結果で終わってしまいましたが、良い知らせを届けられるように頑張ります。地球の真裏からではありますが、日本のプレイヤーの活躍も祈っていますよ」
さて、『イクサラン』ドラフトの基礎知識を語ってくれたリミテッドの達人、マルシオ・カルバリョにも話を伺ってみよう。
マルシオ「実に熱い週末だった。いや、ここに来たのは火曜日だから一週間というべきかもしれないし、『イクサラン』の発売からと考えればもう少し長くなるね。いずれにせよ、充実した日々を過ごしてきたのは間違いないよ」
この数週間を振り返り、彼は楽しそうに語った。
さて、彼と話ができるならば、やはりリミテッドのことを聞くべきであろう。多くの読者も、それを望んでいるに違いない。まずは「リミテッドの重要さ」について聞いてみることにしたい。
マルシオ「リミテッドは、マジックの基礎だ。リミテッドの技術はスタンダードや、他のフォーマットでも活きてくる。リミテッドのカードで上手く戦えるなら、カードパワーが段違いのフォーマットでも上手く戦えるはずさ。練習すれば、きっと大きな力になるよ」
そう語るマルシオに、リミテッドの魅力についても窺ってみると、
マルシオ「リミテッドをやればやるほど、マジックの奥深さに気付く。これが魅力だろう。今でも、驚くくらいだよ。1枚1枚のピックや、デッキ構築、そして毎ターンの戦闘。今は攻めるべきか、それとも? と考えることがいくらでもある。1/1のクリーチャーが1/2になっただけで、次元が変わるんだ。来週の今頃は、またカードの評価が変わってくるかもしれない。本当に奥が深いよ。勝利しても敗北しても、気付くことがあるんだから」
と答えた。マルシオがリミテッドの達人である、というのは、世界中の誰もが知っていることだろう。その達人であるマルシオでさえも、敗北を味わう。そして、勝利を求めることを目指している。
マルシオ「これまで、何度も勝利を味わい、敗北を重ねてきた。その度に、『勝つのは大変だけど、負けるのは簡単だな』と思うんだよ。考えるのを止めれば良いだけだからね。相手のライフ20点を削るのは大変で、自分のライフ20点が削られるのはあっという間だ。だからこそ、非常に困難な方……つまり、“勝ち続けること”を目標にしたいと思っているよ」
まだまだマルシオの活躍は続きそうだ。
せっかくの機会だ。ここでは「リミテッドが苦手」「構築はやるけど、リミテッドは難しそうだから……」というプレイヤーに向けてメッセージも貰っておこう。まず、マルシオは「リミテッドが難しい」と言われることについて言及する。
マルシオ「リミテッドが難しい、という声は多いね。そして、それは否定しない。リミテッドはたしかに難しいんだよ」
どうして難しいのか? その質問に対して、マルシオは「言語化が難しいから」と答える。
マルシオ「例えば、スタンダードの解説記事は多い。デッキリストに対してコメントを付せば、ある程度の文量で、役に立つ記事が完成する。今回のデッキリストも既に世界中に広まっていて、これだけでもある程度の動きが広まっているはずだ。いずれ出場者がコメントを付して、様々な記事を投稿するだろう」
マルシオは続ける。
マルシオ「その点、リミテッドは毎回違った展開になるから、容易に語り尽くせない。誰かが全勝したリストは、『こういったリストが勝った』という結果でしかないからね。そして、ドラフトの場合、周囲のデッキの完成度でも色々と変わってくる。つまり、言語化したときに『そういう流れだったから』なんていう曖昧な言葉でしか説明できない場面もあるんだよ。ピックを1つ1つ語るのも大変だ。なぜなら、パックの中、そして卓全体のカードについても言及しなければならないからね」
そして、「『イクサラン』のリミテッドについて書いてある記事は、ほとんどないよね。言語化が難しいから、プロでも書きづらいのさ」と述べてから、
マルシオ「だけど、インタビューで語ったような基礎的な部分はいくらでも共有できると思っている。今回話したことで、みんながリミテッドを楽しみ、そして勝てるきっかけになったら嬉しいかな」
と続け、「そう言えば、インタビューの反応はどう?」と尋ねてきた。彼にTwitterでの反応を伝えると「それは良かった!」と満面の笑みを見せてくれたことも、ここに記しておこう。
彼に今回投げかけた最後の質問は「リミテッド初心者に向けたアドバイスはありますか?」というもの。達人は初心者の垣根を取り払うために、優しく答えてくれた。
マルシオ「まずは、怖がらずに楽しんで欲しい。最初は誰だって初心者だ。俺も昔はとんでもないドラフトをしていた。その度に敗北を味わって、仲間たちにコメントを貰い、『なるほど、じゃあ次はこうしてみようか』と考えているうちに、リミテッドマスターになったのさ。まずはとにかくやってみる。そして……これは何度でも言うよ、マジックを楽しむんだ。楽しいならば、何度でも挑戦できるからね」
今回お届けできるHareruya Latinの言葉は、以上だ。セバスティアン、ルーカス、マルシオという3名はそれぞれが違った強さを持つ。さらに、我々読者を含む他者へ共有することを厭わない。
そして共通するのが、「マジックを楽しむこと」という姿勢である。
彼らの言葉が読者諸賢のマジック力を向上させ、そして、一層マジックを楽しむきっかけとなることを願う。それが、彼らにインタビューをした私からの、これ以上ない望みである。
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