情報を制す者はマジックを制す。
特にSNSによる情報交換が盛んな現代、口コミがその後のメタゲームに与える影響は計り知れない。
すなわち、バズってる(話題になっている)カードを知ることは、メタゲームの把握と予測の大いなる助けとなることだろう。
当企画では、そんな「今、バズってるカード」を週刊で追っていきたいと思う。
カードの紹介に入る前に、先週行われたイベントやマジック関連の主な出来事を簡単におさらいしよう。
【プロツアー『ゲートウォッチの誓い』が開催】
先週末にはアメリカ・ジョージア州アトランタにて【プロツアー『ゲートウォッチの誓い』】が開催された。
モダンで行われた本大会で見事優勝を収めたのは「青赤エルドラージ」操るJiachen Tao(アメリカ)! 《空中生成エルドラージ》や《不快な集合体》、《破滅を導くもの》といったオリジナリティ溢れるカード選択で世界を制した。
そのほかトップ8には「エルドラージ」が6名、「親和」が2名と無色のカードが入り乱れる週末だった。《欠片の双子》と《花盛りの夏》が禁止された現環境では、いかにして「エルドラージ」を攻略するかが鍵となりそうだ。
主要な出来事はこのくらいだろうか。
さて、それでは今大きな話題を呼んでいるカードたちを紹介しよう。
1. 《エルドラージのミミック》
【プロツアー『ゲートウォッチの誓い』】の構築ラウンドで6勝以上の成績を残した全ての「エルドラージ」デッキに4枚採用されていたクリーチャーがあった。
それが《エルドラージのミミック》である。
2 《島》 2 《蒸気孔》 4 《沸騰する小湖》 4 《シヴの浅瀬》 3 《魂の洞窟》 1 《宝石の洞窟》 4 《エルドラージの寺院》 4 《ウギンの目》 -土地(24)- 4 《果てしなきもの》 4 《エルドラージのミミック》 4 《空中生成エルドラージ》 2 《破滅を導くもの》 4 《不快な集合体》 3 《エルドラージの寸借者》 4 《難題の予見者》 4 《現実を砕くもの》 4 《希望を溺れさせるもの》 -クリーチャー(33)- |
3 《四肢切断》 -呪文(3)- |
3 《頑固な否認》 3 《ハーキルの召還術》 2 《はらわた撃ち》 2 《虚空の杯》 2 《大祖始の遺産》 1 《精霊龍の墓》 1 《呪文滑り》 1 《漸増爆弾》 -サイドボード(15)- |
一見して地味な印象を受けるカードだが、2マナランドが8枚入っているこのデッキならばそこそこ安定して1ターン目にプレイすることができるだろう。1ターン目に《エルドラージのミミック》、2ターン目に《難題の予見者》、3ターン目に《現実を砕くもの》とプレイしていけば、わずか3ターンにして18点の打点を叩き出せる。
低マナ域を埋めつつブン回りにも貢献してくれる《エルドラージのミミック》は今後たびたび目にするカードになることだろう。
2. 《コジレックの帰還》
プロツアーで大暴れしていたモダン「エルドラージ」だったが、【MOPTQ】でも革新的な「赤緑エルドラージ」が結果を残している。
そこに4枚採用されていたカードが《コジレックの帰還》である。
1 《森》 1 《山》 1 《踏み鳴らされる地》 2 《樹木茂る山麓》 4 《燃え柳の木立ち》 4 《カープルーザンの森》 4 《エルドラージの寺院》 1 《幽霊街》 4 《ウギンの目》 2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(24)- 4 《エルドラージのミミック》 4 《果てしなきもの》 4 《作り変えるもの》 4 《現実を砕くもの》 4 《難題の予見者》 4 《世界を壊すもの》 -クリーチャー(24)- |
4 《古きものの活性》 4 《コジレックの帰還》 4 《精神石》 -呪文(12)- |
4 《稲妻》 3 《自然の要求》 3 《古えの遺恨》 3 《大祖始の遺産》 2 《塵への崩壊》 -サイドボード(15)- |
序盤~中盤を通常の「エルドラージ」系デッキのように立ち回りつつ、「親和」や「バーン」に対しては《コジレックの帰還》による妨害が刺さる。また、ゲームが長引いた際には《世界を壊すもの》のような単体で強力なクリーチャーによって速やかにゲームに勝利することができる形だ。
先に紹介した「青赤エルドラージ」や、【プロツアー『ゲートウォッチの誓い』】ファイナリストであるIvan Flochが持ち込んだ「無色エルドラージ」と比較すると、ブン回りやデッキのスピードはやや下がっているものの、《古きものの活性》がある分安定した挙動に期待できる。サイドボードの《塵への崩壊》にアクセスしやすいことから、同型戦にも強そうだ。
《精神石》はやや怪しいカードだが、《世界を壊すもの》のキャストを助け、終盤にはドローに変換できることから採用されているのだろう。
疑似的な除去耐性を持ったフィニッシャーや全体火力を採用したこのリストもまた、今後新たな「エルドラージ」デッキの雛型として研究されていく形になるだろう。
3. 《萎れ葉のしもべ》
「エルドラージ」強しの構図がハッキリしたところで、次に我々が考えるべきはどうしたら「エルドラージ」を攻略できるのかだろう。
《ロクソドンの強打者》、《強情なベイロス》、そして《萎れ葉のしもべ》。この3枚は、私が個人的にその攻略の糸口となるのではないかと考えているカードだ。
サイズ的にも《難題の予見者》と相打ち、《現実を砕くもの》には完敗しているこれらのカードがなぜ?と考えている方が多いことだろう。だが、この2枚の強さはその《現実を砕くもの》の持っている誘発型能力に起因している。
《現実を砕くもの》 (4)(◇)
クリーチャー-エルドラージ
トランプル、速攻
現実を砕くものが対戦相手がコントロールする呪文1つの対象となるたび、その呪文のコントローラーがカードを1枚捨てないかぎり、それを打ち消す。
クリーチャー-エルドラージ
トランプル、速攻
現実を砕くものが対戦相手がコントロールする呪文1つの対象となるたび、その呪文のコントローラーがカードを1枚捨てないかぎり、それを打ち消す。
つまり、《現実を砕くもの》を呪文の対象に取ればマナコストを支払わずに《ロクソドンの強打者》や《萎れ葉のしもべ》をプレイできるということだ。
たとえば対戦相手が《難題の予見者》と《現実を砕くもの》をコントロールしていると仮定しよう。
(1)対戦相手の《現実を砕くもの》に《流刑への道》を唱える。
(2)《現実を砕くもの》の誘発型能力によって《ロクソドンの強打者》を捨て、置換効果によって戦場に出す。
(3)《流刑への道》解決前に《ドロモカの命令》を唱える。
→《現実を砕くもの》を対象に「+1/+1」カウンターのモード
→《ロクソドンの強打者》と《難題の予見者》を対象に格闘のモード
(4)《現実を砕くもの》の誘発型能力によって《萎れ葉のしもべ》を捨て、置換効果によって戦場に出す。
(5)《萎れ葉のしもべ》によって6/6になった《ロクソドンの強打者》と《難題の予見者》が格闘。
(6)《現実を砕くもの》は「+1/+1」カウンターが乗った後、《流刑への道》によって追放される。
(2)《現実を砕くもの》の誘発型能力によって《ロクソドンの強打者》を捨て、置換効果によって戦場に出す。
(3)《流刑への道》解決前に《ドロモカの命令》を唱える。
→《現実を砕くもの》を対象に「+1/+1」カウンターのモード
→《ロクソドンの強打者》と《難題の予見者》を対象に格闘のモード
(4)《現実を砕くもの》の誘発型能力によって《萎れ葉のしもべ》を捨て、置換効果によって戦場に出す。
(5)《萎れ葉のしもべ》によって6/6になった《ロクソドンの強打者》と《難題の予見者》が格闘。
(6)《現実を砕くもの》は「+1/+1」カウンターが乗った後、《流刑への道》によって追放される。
これで対戦相手の盤面はガラ空き。こちらには10点クロックが残るわけだ。
無論これだけで勝てるわけではないし、安定してこんな動きができるわけではない。だが、デッキの構造を歪めることなく対戦相手のカードを最大限利用することができたならその爽快感は凄まじいことだろう。
いかがだっただろうか?
今週もまた多くのカードがプレイされ、注目され、議論を呼ぶのだろう。
次回の記事も楽しみにしていただけたら幸いである。
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