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情報を制す者はマジックを制す。
特にSNSによる情報交換が盛んな現代、口コミがその後のメタゲームに与える影響は計り知れない。
すなわち、バズってる(話題になっている)カードを知ることは、メタゲームの把握と予測の大いなる助けとなることだろう。
当企画では、そんな「今、バズってるカード」を週刊で追っていきたいと思う。
カードの紹介に入る前に、先週行われたイベントやマジック関連の主な出来事を簡単におさらいしよう。
【『イニストラードを覆う影』公式情報発表】
3月4日(金)より3日間にわたって、4月に発売される新セット『イニストラードを覆う影』の情報が公開された。
情報公開は先週末、アメリカで開催された【グランプリ・デトロイト2016】、イタリアで開催された【グランプリ・ボローニャ2016】、そしてオーストラリアで開催された【グランプリ・メルボルン2016】の各会場で同時多発的に行われたので、ソーシャルメディアで目まぐるしく更新される情報に釘付けだったという方も多いのではないだろうか?
【お知らせ】4月8日(金)発売『イニストラードを覆う影』 のトレーラーが公開!イニストラードに起きている異変。様々な謎。そしてアヴァシンは……! https://t.co/Aw696PwEeU #mtgjp #MTGSOI pic.twitter.com/vuvB6XBxPW
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) 2016年3月6日
トレイラームービーの公開をはじめとして、【狂気に堕ちたイニストラードの庇護者】や【フレイバーテキストに書かれた「ナヒリ」の名前】などが次々と公開されている。
「謎解き」がテーマに据えられた本セットから公開された断片的な情報の数々は我々の知的好奇心を大いに刺激してくれた。今後の情報公開からも目が離せない!
【アメリカ・イタリア・オーストラリアの三カ国でグランプリが開催される】
前項でも触れたが、先週末にはアメリカで【GPデトロイト2016】、イタリアで【GPボローニャ2016】、オーストラリアで【GPメルボルン2016】が開催された。
日本勢の多くはアジア圏に属するオーストラリアの【GPメルボルン2016】に足を運んでいたようで、トップ8には【Team Cygames】の市川 ユウキ選手と山本 賢太郎選手の2名が進出していた。
(かねこ)先週末開催されたグランプリ・メルボルン2016では、市川ユウキ選手が3位に、山本賢太郎選手が6位に入賞しました!おめでとうございます! https://t.co/3YxHgwvKw3 #mtgjp pic.twitter.com/s9UCaxqnDA
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) 2016年3月7日
3つのグランプリのトップ8を総合して見渡すと、24名中14名(58.3%)が(タイプこそ異なるものの)「エルドラージ」を選択していた。永らく“メタゲームが存在しないフォーマット”と呼ばれていたモダンだが、ついに環境に最強の仮想敵「エルドラージ」が登場したといっても過言ではないだろう。
他にも《けちな贈り物》4枚入りの「青赤ストーム」(GPデトロイト2016)や、エルドラージガンメタの「バントカンパニー」(GPボローニャ2016)といった個性的なデッキもトップ8に進出していた。ぜひともチェックされたし。
主要な出来事はこのくらいだろうか。
さて、それでは今大きな話題を呼んでいるカードたちを紹介しよう。
1. 《ウギンの目》
これだけ「エルドラージ」が勢力図を拡大しているとなれば、【vol.28】でもご紹介したとはいえ再びこのカードを取り上げない道理はあるまい。
モダン環境の大本命。「エルドラージ」デッキのキーカードである《ウギンの目》だ。
「エルドラージ」デッキにおいて、序盤の高速展開から中盤のダブルアクションまでデッキの軸を支えるこの強力な土地は『初手に《ウギンの目》(か《エルドラージの寺院》)がなければマリガン』と言われるほどの圧倒的なカードパワーを誇る。
「エルドラージ」台頭以降、無色マナと色マナの両方を出すことができる《アダーカー荒原》や《カープルーザンの森》といったダメージランドが脚光を浴びているというのはおもしろい現象だ。マジックファンの中には「まさか2016年になってダメージランドをありがたがって使うことになるとは」とコメントする者もいる。
パッと見の印象では不安感を禁じ得ないマナベースで構築されている「エルドラージ」だが、意外にもその挙動は見かけよりもずっと安定しており、2ターン目《難題の予見者》といった最強のムーブはけっこうな頻度で決まる。
その暴力的なカードパワーと圧倒的な展開速度をまだ体感したことがないという方はぜひ一度「エルドラージ」を回してみていただきたい。病みつきになること請け合いである。
2. 《死せる生》
GPの結果から世界的に「エルドラージ」が幅を利かせていることが明らかとなったが、【GPメルボルン2016】だけはあるコンボデッキが「エルドラージ」に並んでトップ8に3名のプレイヤーを送り込んでいた。
そのデッキこそ、前述の市川 ユウキ選手・山本 賢太郎選手・Lee Shi Tian選手(香港)の3名が選択した「死せる生」だ。
2 《沼》 1 《森》 1 《血の墓所》 1 《草むした墓》 1 《踏み鳴らされる地》 1 《ドライアドの東屋》 4 《新緑の地下墓地》 4 《黒割れの崖》 4 《銅線の地溝》 1 《ケッシグの狼の地》 -土地(20)- 4 《大爆発の魔道士》 4 《通りの悪霊》 2 《猿人の指導霊》 4 《意思切る者》 4 《死の一撃のミノタウルス》 4 《巨怪なオサムシ》 2 《叫び大口》 2 《ジャングルの織り手》 -クリーチャー(26)- |
3 《死せる生》 4 《悪魔の戦慄》 4 《暴力的な突発》 3 《内にいる獣》 -呪文(14)- |
4 《フェアリーの忌み者》 4 《鋳塊かじり》 2 《斑の猪》 2 《オリヴィア・ヴォルダーレン》 2 《叫び大口》 1 《跳ね返りの罠》 -サイドボード(15)- |
ご存じのとおり、大量の「サイクリング」クリーチャーを墓地に送り込んで「続唱」によって《死せる生》を唱え、大量リアニメイトによる理不尽な物量で押すデッキだ。性質上サイドボードまで含めても2マナ以下のカードをデッキに入れられないため、見かけ以上に構築にセンスが問われるデッキでもある。
打ち消しや手札破壊などの妨害手段が薄い「エルドラージ」に対しては構造上強く、《ウギンの目》のような強力な特殊土地に対抗できる《大爆発の魔道士》をメインボードから無理なく採用できることも特徴だ。
ちなみにこのデッキの挙動について、【GPメルボルン2016】で3位に入賞した市川 ユウキ選手がユニークなコメントを残していた。
GP最初はこんなにつまらないデッキが世界にあって良いのかと思ったけど終盤はリビエンのシュリクマが34ミノを食って34ミノが22フェアリーを撃ち落としインゴットが33のアーティファクト君を齧る仲の悪さに愛着湧いてた
— Yuuki Ichikawa (@serra2020) 2016年3月7日
たしかに墓地に《叫び大口》(シュリクマ)、《死の一撃のミノタウルス》(34ミノ)、《フェアリーの忌み者》(22フェアリー)、《鋳塊かじり》(インゴット)、《意思切る者》(33のアーティファクト君)が揃っている状態で《死せる生》を解決すると、対戦相手がクリーチャーもアーティファクトもコントロールしていない場合、凄惨な内乱が起こる。
アンチシナジーもここまでくると微笑ましいと言えなくもない。無論、そこまで潰し合う状況はレアケースだろうが……
3. 《変位エルドラージ》
『イニストラードを覆う影』で、あまりにも衝撃的な再登場を果たした守護天使。
書いてあることのすべてが強いこのカード。公開から2日が経過した今見ても何かの間違いじゃないかと目を疑うオーバースペックだが、“このカードと非常に相性のよいカード”がすでにスタンダード環境に存在していた。
そう。すでに世界各所で囁かれているが、《変位エルドラージ》がまさにそのカードである。
その起動型能力によって《Archangel Avacyn》をブリンクすれば、自分のクリーチャーを不死身(破壊不能)の軍団へと変貌させることができるのである。
また、《Archangel Avacyn》が「変身」したとき、“他の各クリーチャーと各対戦相手にそれぞれ3点のダメージを与える”という誘発型能力がスタックに乗っている間に《Avacyn, the Purifier》をブリンクすれば《Archangel Avacyn》(第1面)の状態で戦場に戻るため、自軍は再び破壊不能を得て対戦相手だけに一方的に損害を与えるといったプレイも(これから予期せぬルール変更などがなければ)可能だ。
モダンの「青白エルドラージ」で猛威を振るっているこの《変位エルドラージ》がスタンダードでも大ブレイクを果たす日は近いかもしれない。
ちなみに余談ではあるが、両面カードの扱い方に関してルールが変更される。(詳細は【公式記事:『イニストラードを覆う影』のメカニズム】を参照のこと)
たとえば両面カードの第2面は第1面の点数で見たマナコストを参照するようになるそうだ。つまり《仕組まれた爆薬》「X=0」では《昆虫の逸脱者》に対処できなくなるが、「X=1」ならば《秘密を掘り下げる者》と《昆虫の逸脱者》の両方に対して同時に対処できるようになったということである。
新ルールの施行時期やより詳細なCRなどは定かでないが、今までよりさらに直観的で分かりやすいルールになりそうだ。
いかがだっただろうか?
今週もまた多くのカードがプレイされ、注目され、議論を呼ぶのだろう。
次回の記事も楽しみにしていただけたら幸いである。
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