「ゴリラ」だ。「ゴリラ」にならなければならない。
ついに頭がおかしくなったかとお思いかもしれないが、元からおかしい私は正気である。
だが、どうして突如として「ゴリラ」に至ったのか?
まずはその経緯から説明しよう。
発端は、『イクサラン』のカードリストを見ていて目に留まった1枚のカードだった。
好きなクリーチャータイプを指定できるこのカードは、《魂の洞窟》の下位互換とはいえ、多大な可能性を感じさせるカードだった。
何せ、「同じ能力を持つカードが8枚あればコンセプトになる」というのが私の持論である。4枚では毎ゲーム引けるとは限らないが、8枚ならかなり安定して引き込めるためだ。
その観点からすると、このカードの登場によって「クリーチャータイプを統一した多色ビートダウン」が、これまで印刷されたクリーチャータイプの数だけ、実現に近づいたことになるのだ。
だが、その中で「最も強いクリーチャータイプ」とは何なのだろう?
「人間」や「同盟者」、あるいは「スリヴァー」ですらも。このカードの登場によって、多少なれど強化されたであろうことには違いない。
けれども、そんな既にモダン環境である程度確立したアーキタイプのデッキをちょっとばかりアレンジするだけでは面白くない。必要なのはイノベーション。環境に革命を起こせるクリーチャー・タイプなのだ。
何か、何かないのか。響きを聞いただけで人々が恐れおののくような、圧倒的なインパクトを持つクリーチャータイプは。
しかし、いくら考えても答えは見つからない。
途方に暮れる私だったが、はたして、そこに天啓が降ってきたのである。
「くっ、アイデアが何も思い浮かばない……なぜだ……何がダメなんだ……」
「まつがん……まつがんよ……」
「頭の中から声が!? ……あなたは一体?」
「私は『アモンケット』次元の幻の9柱目の神……ドブの神……よくお聞きなさい……すべては社会が悪いのです……」
「社会が……?」
「そう……アイデアが浮かばないのも……晴れる屋トーナメントセンターに設置してあるコーヒー自販機から二日酔いに抜群に効くため重宝していたコーンポタージュが消滅したのも……すべて社会が悪いのです……」
「シャカイ……ニクイ……テキ……コワス……!!!」
そんなわけで、この秩序だった文明社会を破壊するためには「暴」のチカラが不可欠ということに気づいたのだ。
では、マジックで最も「暴」を体現したクリーチャー・タイプとは何だろうか?
そう……それは言うまでもなく「クリーチャー-ゴリラ」だ。
ならば「ゴリラデッキ」を組むしかない。
かくして、私はゴリラに至ったというわけである。
だが。
こうしてごく自然な経緯から「ゴリラデッキ」を作ることを宿命づけられた私だったが……デッキ製作は、いきなり暗礁に乗り上げることとなった。
ゴリラ/Gorillaは、かつて存在したクリーチャー・タイプの1つ。現在は廃止され、類人猿に統合されている。
(MTG Wikiより引用)
なん……だと……?
なんてことだ、ゴリラはもういないのか。
Gorilla is dead……ならば、ここまで来てノーゴリラでフィニッシュなのだろうか?
否。地上最強のクリーチャータイプは間違いなく「ゴリラ」だ。この程度のことでゴリラデッキを諦めるわけにはいかない。
だがどうすれば……そう思いかけたとき、先ほどの文章の後半が目に入った。
「現在は廃止され、類人猿に統合されている。」
ゴリラは、生きていた。
確かにクリーチャータイプ「類人猿」では、《手付かずの領土》をセットするときに「『ゴリラ』で。」と宣言して対戦相手を威嚇するマウンティング行為はできないかもしれない。
だが、戦場に立ち並ぶ類人猿を見れば対戦相手も自ずと気づくことだろう。「こいつ……なんてことだ、ゴリラを並べてやがる……!」といった具合に。
そうすればあとは、あまりの恐怖に思考が停止した対戦相手を「暴」で屠るだけである。
完璧だ……今ここに「地上最強のクリーチャータイプ」が顕現した。答えは「類人猿」。すなわちゴリラ。あとはそう、デッキを作るだけ。
早速私はマジック:ザ・ギャザリングの24年にも及ぶ歴史の中で印刷されたすべての「類人猿」を検索し……そして、一瞬にしてデッキが完成した。
それではお見せしよう。これこそがマジックにおける「暴」を体現した、人類社会を破壊するためのゴリラデッキだ!
1 《冠雪の森》 1 《冠雪の山》 4 《Taiga》 1 《踏み鳴らされる地》 4 《樹木茂る山麓》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《魂の洞窟》 4 《手付かずの領土》 1 《樹上の村》 -土地 (24)- 4 《密林の猿人》 2 《ゴリラのシャーマン》 4 《金属ミミック》 4 《猿人の指導霊》 4 《順応する自動機械》 1 《ウークタビー・オランウータン》 1 《Gorilla Pack》 1 《怒り狂うゴリラ》 1 《ゴリラの戦士》 1 《うなる類人猿》 1 《頂の猿人》 1 《密林の酋長》 1 《猿人の喧嘩屋》 1 《ゴリラの酋長》 1 《ラースの猿人》 1 《凶暴なゴリラ》 1 《シルバーバック》 1 《ゴリラのタイタン》 1 《Gorilla Berserkers》 1 《わめき騒ぐマンドリル》 1 《年経たシルバーバック》 1 《Gargantuan Gorilla》 1 《Uktabi Kong》 -クリーチャー (36)- | -呪文 (0)- |
ゴリラ並みの知性で構築されたデッキかな?
ゴリラを出してアタックするしかないという貧弱なコンセプト、フォーマットを無視した『アンヒンジド』投入、バラバラのマナカーブ……なんという烏合の衆、いやゴリ合のゴリとでも言うべきか。
おまけにゴリラに道具は不要なので呪文は当然0枚。「暴」というよりは「棒」と呼ぶのがふさわしい、デッキ未満の猿山がそこにはあった。
というか冷静に《手付かずの領土》はどう考えてもデッキに入らない。「クリーチャータイプを統一した多色ビートダウンが実現に近づいた」ということでスタートしたデッキ構築だが、「ゴリラ」は赤と緑にしかいないので多色土地は不要という残酷すぎる事実が突きつけられただけだった。
結論: ゴリラでは勝てない。
当たり前だった。
だがこれだけで終わってはせっかく集まってもらったゴリラたちに申し訳ないので、デッキに入っているゴリラのうち数匹を紹介しておこう。
Pauperでお馴染みのゴリラ。こいつが入っているおかげで「親和」デッキにだけは勝てるかもしれない。
ゴリラの頭数を埋めるために投入された便利な機械たち。高度に発達した文明の証であるはずの自分たちがまさか「類人猿」に指定されようとは露ほどにも想像しなかったであろう。
しかもせっかく「類人猿」を指定した《金属ミミック》や《順応する自動機械》も、《刻み角》のような知性 (「破壊してもよい」の一文) を持たない《ウークタビー・オランウータン》が自ら破壊してしまうのである。文明の象徴たる機械を原始のパワーで破壊するゴリラ (厳密にはオランウータンだが)。これこそが「暴」だ。
無駄に絵違いが存在するおしゃれなゴリラ。
こいつのことは「緑タイタン」「赤タイタン」のノリで「ゴリタイタン」と呼びたい。
出たときに《森》を生け贄に捧げないと7点食らうけど、《冠雪の森》を生け贄に捧げたらボーナスでトランプルを得られるゴリラ。でも「ターン終了時まで」なのでマジで意味がない。生け贄に捧げるのはアップキープでした。申し訳ありません!
デカすぎてイラストがハミ出てるゴリラ。知性が無さすぎる顔をしている。
かくしてデッキは一瞬にして解体となったが、私はまた一つ知見を得た。
すなわち、人はゴリラになってはいけない。ゲームに勝つためには、知性を投げ捨ててはいけないのだ。そのことをゴリラたちは教えてくれた。
読者諸兄はこう思っているかもしれない。なんだこの
ただ読者諸兄の貴重な時間を奪ってしまったことに対する反省の証として、最後に一つだけ言わせて欲しい。
こんなデッキは、もう
この記事内で掲載されたカード
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