グランプリ・クリーブランド2019優勝レポート

Allen Wu

Translated by Ryosuke Igarashi

原文はこちら
(掲載日 2019/03/13)

はじめに

2週間前、私はグランプリ・クリーブランド2019で優勝しました。今回はそのレポートになります。もう終わったような環境のリミテッドについて記事を書くのは少しおかしなことですが、今回のシールドデッキの組み方やドラフトでのピックには、リミテッド全体に役立つ教訓があると思っています。

シールドのセオリー

これはよくある誤解の1つですが、シールドデッキはドラフトデッキよりも弱い、と思ってはいませんか?

典型的なドラフトデッキは典型的なシールドデッキに有利、という限りでは正しいですが、これは2つのフォーマット間の重要な違いを無視してしまっています。いいドラフトデッキもシールドでは悪いデッキになりうるし、逆もまた同じなのです。同様に、シールドを「ボムゲー」と片付けるものの、その認識に沿ってプレイしないような人も的外れですね。

さて、「ドラフトデッキ」というのはシナジーが重要な要素になります。ドラフトでは、穴埋めに使うようなカードはそれを有効活用できる人の手元へ行きますからね。

厳戒態勢

例えば、早い手番で《厳戒態勢》をピックしたとしましょう。自然と《評議会の急使》《ごみ引きずり》《アゾリウスの騎士判事》といったカードの優先順位は高くなりますし、卓全体、24パックで出た内の多くを手に入れられるでしょう。ですがシールドでは、引いた6パックに入っているコモン・アンコモンから逃れることはできません。《厳戒態勢》のようなカードを中心にデッキを組める……なんて可能性は低いでしょうね。

その一方、「シールドデッキ」を定義するのはカードパワーになります。シールドでは4人でドラフト1卓と同じ量のパックを剥くことになりますし、一般論としてプレイヤー数が同じでも、ドラフトの2倍のパックを開けているのです。

つまり、爆弾レアや全体除去、優秀な除去が2倍流通していることになりますね。そのうえ、シールドでは色をすすんで減らすようなことはありません。最終的には先に述べた爆弾レア、全体除去、強力な単体除去のほとんどすべてを使うことになるのです。

天上の赦免集団強制生体性軟泥恩寵の天使ハイドロイド混成体スカルガンのヘルカイト荒廃ワーム

具体的な話をしますと、『ラヴニカの献身』リミテッドでは一線を画した強力なカードが7枚あると考えています。《天上の赦免》《集団強制》《生体性軟泥》《恩寵の天使》《ハイドロイド混成体》《スカルガンのヘルカイト》、そして《荒廃ワーム》これらの内1枚を1パックから引く確率は (2*2 + 5)/121 = 9/121です。

ドラフトでは平均 9*24/121 = 1.785 枚剥かれることになるので、大抵は1、2人(22.314%)がこれらのカードを1枚は手に入れることになりますね。さてシールドでは、プール中にこれらのカードがある確率は 1 – (1 – 9/121)^6 = 0.371 です。 1/3以上のプレイヤーが、これらの爆弾レアを少なくとも1枚は持っていることになりますね。

クリーブランドでは、1231人中254人(20.634%)が2日目へ進出しました。これは上に述べた、爆弾レアを引いたプレイヤーよりも少なくなっています。

屈辱門破りの雄羊秤の熾天使守護者計画

この計算では、《屈辱》《門破りの雄羊》といった強力なアンコモン、《秤の熾天使》《守護者計画》のようなただ強力なレアは除いている、という点を肝に銘じておいてください。シールドは強力カードの地雷原です。

思考崩壊ドリルビット公判への移送奈落への放逐

シールドで勝つには、自分の引いた爆弾レアの力を最大限引き出しつつも、相手の爆弾レアを打ち倒せるようにする必要があります。《思考崩壊》のような確定打ち消しや《ドリルビット》のような手札破壊は、全てのカードを綺麗に対処できる可能性があり優秀ですね。また、使いづらく、状況を選ぶ《日晒し》《公判への移送》《奈落への放逐》といったカードも控えとしては悪くないでしょう。

死の歓楽再発生

《再発生》《死の歓楽》といった呪文を再利用できるカードは、《生体性軟泥》《荒廃ワーム》のようなクリーチャーがいると非常に強力になります。《再発生》はドラフトではギリギリ使えなくもない、といったところですが、シールドでは最も強いカードの1枚になりうるのです。《死の歓楽》《再発生》で爆弾レアを2回唱えるのも夢物語ではありません。有用な選択肢ですし、使用するデッキ次第では必要なものでしょう。

縄張り持ちの猪賢者街の学者

構築中、《縄張り持ちの猪》《賢者街の学者》といった雑多なクリーチャーを入れたくない、と思うことでしょう。『ラヴニカの献身』リミテッドでは基本的に正しい判断ですが、特にシールドでは顕著です。これらの中堅クリーチャーがレアやアンコモンよりも前の段階のゲームに大きな影響を与える、なんてことは極めて起こりえないですし、ちっちゃな《評議会の急使》にすら無力化されてしまいますからね。

多くのプレイヤーが犯しがちなミスとして、弱いプールをなんとかしようと、軽いクリーチャー・コンバットトリックを組み合わせたアグロデッキを組み上げてしまうことが挙げられます。相手が爆弾レアを唱える前に勝とうとするのですが、たとえこの戦略に適したカードを引けていたとしても、効果的であることはめったにありません。ドラフトでのアグロデッキはコンバットトリックやオーラを用いますが、シールドではより多く、そして優れた除去が入っているため弱い戦略になってしまうのです。

また、シールドでの対戦相手は、コンバットトリックでは勝てないようなカード(《ハイドロイド混成体》《天上の赦免》など)をプレイしてくる可能性が非常に高くなります。とはいえ、他のプレイヤーがこういった戦略を取ってくることは予想し、思い通りにさせないよう十分防御的なカードを入れておく必要はありますね。

シールド(9-0)

シールドのプールは以下の通りでした。

  • アレン・ウー
  • 「シールドプール」
  • グランプリ・クリーブランド 2019
  • (1日目)

デッキ構築に10分ほど費やしたところで、既に2日目進出は諦めていましたね。プールには先に述べたような爆弾レアは1枚もなく、2色、果ては3色のどの組み合わせでも満足いくデッキになるように思えなかったのです。また、強力なクリーチャーの多くは青と緑のカードでしたが、除去はどれも黒と白でした。《秤の熾天使》《騒乱の歓楽者》だけでは、黒白ベースのデッキが十分強力になるとは思えませんし、単純に強力なカードを全て使い、色事故が起こらないことを祈るしかない、そう決めたのです。

結果、以下のデッキを組み上げました。

このような常軌を逸した、とてつもないマナベースの対価として、ゲームの大半では基本全ての色は揃わないでしょうし、マナカーブ通りに呪文を唱えることなんてできないでしょう。典型的な2色デッキでは、色マナ源をどちらも引ける確率を最大にし、呪文を唱えられる前提で考えます。一方、こういったデッキでは、それぞれの色が序盤出ないとしても、あまり致命的でないように構築します。

開門徴税人

例えば、《開門》《徴税人》を「タッチ」しているのは奇妙に思えるかもしれません。しかしながら、もし《開門》に必要な緑マナがない、ということは他の色の土地を引いているということになり、そういう場合には《開門》を唱えられなくても大丈夫なのです。同様に、《徴税人》は序盤に強力な守りのカードであり、もし序盤に白マナを欠いていたとしても、終盤に複数回の行動を行うことができます。唱えられない呪文のための時間稼ぎとして、代わりに唱えられる呪文を入れましょう。

秤の熾天使スフィンクスの眼識楽園党の議長、ゼガーナ

《秤の熾天使》《スフィンクスの眼識》《楽園党の議長、ゼガーナ》のように、1枚で複数枚分の価値を得られるカードも大事です。繰り返しになりますが、唱えられない呪文の埋め合わせになりますからね。ただし、言うまでもないかもしれませんが、こういったカードもないのにこんなマナベースのデッキをプレイすることはないでしょう。

《日晒し》《公判への移送》は入れませんでした。一般にはシールドのメインデッキにあると嬉しいものですが、マナベースの問題で唱えられないかもしれない上に、状況を選ぶカードを入れるリスクを犯せる余裕がないと思ったのです。……とは言いましたが、《暴風のドレイク》《公判への移送》より優先したことには後悔していましたし、ほとんどの試合ではサイドボーディングで変更していました。

《公判への移送》は思っていたほど状況を選ぶカードでもなく、逆に《暴風のドレイク》はそこまで盤面に影響のあるカードではありませんでした。《騒乱の歓楽者》のようなダブルシンボルのカードは、まあ……問題外ですね。

ラクドスのギルド門猪の祟神の炎グルールのギルド門

構築の際もっとも悩んだ判断は、《猪の祟神の炎》《ラクドスのギルド門》《グルールのギルド門》のみの赤マナでタッチするかどうかでした。どのみち《アーチ道の天使》のためにギルド門は必要だったので、この問題の焦点は更なる一貫性のなさを受け入れられるか?といったところに合わせられるでしょう。

最終的には終盤に強力なカードが他にも必要だと思い、入れることにしました。正しい選択だったのかは分かりませんが、《猪の祟神の炎》はその日多くの接戦の決め手となってくれましたね。このマナベースには先に挙げたようなリスクが確かにありますが、あまりにも見慣れないからといって、皆さんはこれがどれほど機能するのか、過小評価しているように思えます。

たとえば、私がプレイしたマナベースでは、《開門》を計算に入れず、3~6枚土地を引いた中でのそれぞれの色(赤を除いて)が出る確率は以下のようになります。

Allen Wu

土地の枚数:左からそれぞれ0、1、2、3、4色だけ出る可能性

6枚土地を引いていれば、全ての色が出るのはほぼ間違いないでしょう。ただ、本来なら《沼》を1枚《平地》に変えていれば、確率は約2%上がっていたことになります。

Allen Wu

1枚土地を引くごとに、4色出る確率が大幅に上がっていることに気づくかもしれません。後手を選ぶのも、このようなマナベースのデッキではとりわけ大切なことです。

コードはこちらにあるので、もし自分で計算してみたい方はどうぞ。(おそらく閉形式で行うのがシンプルなのですが、今のところやり方が分からないので、今回は見送ることにしました。)こういったデッキのマナベースを計算するとき、まずは全てのギルド門、ロケットといった色マナ源を数え、各色の呪文を見て、最後に基本土地を適量追加します。最終的には全色出るようにしたいので、私はこの際均等に各色を配分しています。また、主な色の色マナ源を6枚、可能であれば7枚は入れるようにしています。

さてこのデッキでは、基本土地を加えずとも、青と緑が4枚、黒が2枚に白が2枚、そして赤が2枚、各色マナ源が入っています。序盤のカードは青や緑、白のカードですし、マナベースを安定させるためにいくぶんか《スフィンクスの眼識》《開門》《評議会のギルド魔道士》に頼っていたので、バントの3色を主軸にしようと思っていました。黒の呪文も多く入っていますが、序盤に唱えられるかどうかはさほど重要ではありません。

したがって、3枚の《森》《島》、4枚の《平地》《沼》を入れるのが理想ですね。6枚ギルド門があることを考えると、基本土地は11枚しか使えません。3枚減らさなければならないので、《森》《沼》《平地》を1枚ずつ抜くことにしました。

リストを見てみると実際は3枚ずつではなく《沼》を4枚、《平地》が2枚で登録していることに気づくでしょうが、どうしてこうなったのかまだ私にもよくわかっていません。構築中に数え間違い、予定より白マナ源が1つ少ないままプレイしていたのでしょう。まあ、仕方ないですね。

大会自体は順調に進みました。1日を通して、土地、呪文を各色綺麗に都合よく引きましたし、《生体性軟泥》数回とあとは《スカルガンのヘルカイト》《大判事、ドビン》に1回ずつしか当たらなかったのです。この環境のレアを考えると、軽作業みたいなものでしたね。

面白いことに、1日の大半を通して、私はダイスロールで負けるよう祈っていたのです。後手が欲しくて仕方がなかったのですが、それを知られたくもなかったですしね。運よく8回戦の内最初の6回はダイスロールで負けることができましたし、ダイスロールに勝って後手を選ぶことになってしまった残り2人の相手も、サイド後のゲームで先手を取り私を助けてくれたのです。ダスティン・スターン/Dustin Sternとの9ラウンド目では、なんとか重要なダイスロールに勝ったのですが、その結果大切な3ゲーム目に後手を取ることができたのです。

連合のギルド魔道士最後の支払い秤の熾天使

この日のハイライトとしては、《連合のギルド魔道士》と、ダスティンの《法魔道士の束縛》により封じられた《秤の熾天使》を生け贄に捧げた《最後の支払い》による夢のコンボですね。古き良きシミック・オルゾフの組みあわせです。

ファーストドラフト(3-0)

相乗りでのトラブルでドラフトの始まる2分前に席につき、シールドのようなデッキをドラフトすることになりました。

予知覚屈辱楽園党の議長、ゼガーナ万全/番人

このドラフトは《予知覚》から始まり、しばらくの間、ギルド門を取ってシミック・エスパーと受けを広くしていました。この結果、後に素晴らしい見返りを得ることになったのです。《屈辱》《楽園党の議長、ゼガーナ》《万全/番人》をどれもかなり遅い手順でピックでき、 《無慈悲な司教》より《最後の支払い》を優先してピックしたと思ったら《無慈悲な司教》が一周してきたりもしました。

例え明確なプランがないとしても、ギルド門を優先してピックすることに価値がある、といういい事例研究ですね。そうすれば、他のプレイヤーが流した強力なカードを全てピックできることになりますからね。

概して見てみると、マナベースはシールドのデッキよりよくなったものの、カードが弱くなってますね。ですが、シールドとドラフトの違いを考慮すると、そこまで弱くなったわけでもありません。土地、呪文と各色の配分を上手にできましたし、接死クリーチャーの多いこのデッキで、緑系のデッキに3回当たれたのです。かいつまんで話すと、ジョシュア・キム/Joshua Kimジェームズ・マンジェス/James Manges、そしてワイアット・ダービー/Wyatt Darbyに勝利し3-0することができました。

先手・後手のどちらを取るべきだったのかは定かではありません。マナベースは完璧ではないものの、軽く防御的なカードを多く取っていました。ただマナベースが悪いかと言われるとそれほどでもなく、《スフィンクスの眼識》2枚と《予知覚》を1枚入れていたのです。結局、これらのドロー呪文を考えて先手を選んでいましたが、未だに自信はありませんね。

セカンドドラフト(1-1-1)

予見のスフィンクス天上の赦免大判事、ドビンケイヤの怒り

今回は《予見のスフィンクス》から始め、《最後の支払い》のために少し黒をタッチした、堅実なアゾリウスにすぐ落ち着きました。すると3パック目の2手目、《天上の赦免》とFoilの《大判事、ドビン》が流れてきたのです!

マナ基盤がまだ整っていなかったため、3手目は《ケイヤの怒り》より《オルゾフのギルド門》を優先しましたが、3枚の《オルゾフのギルド門》をピックしたあと、7手目に2枚目の《ケイヤの怒り》が回ってきました。まだマナベースは怪しかったですが、カードパワーは非常に高かったですね。既にトップ8は確定したようなものでしたが、15-0を夢見さえしていました。

まず、何度も大きなミスをし、ロシェン・イーペン/Roshen Eapanとの接戦に敗れてしまいました。最悪のミスは、こう着しつつあった盤面に《天上の赦免》を着地させ、《思考崩壊》も手札にあったというのに負けてしまったことです。スフィンクスを2体出すためにタップアウトしてしまい、《応用生術》《壮大》に状況をひっくり返されることになりました。

また、デッキにはインスタントがほとんど残っていないにもかかわらず、インスタントタイミングで《最後の支払い》を唱える際、《ドビンの鋭感》を生贄にせずに5点のライフを支払ってもいました。結果、二度と《ドビンの鋭感》を手札に戻すことはなく、ライフ2点の差で敗れることに……。この試合を思い出しながら、心の中では頭を抱えていますよ。上手にプレイし、そして私のミスをうまく活用したロシェンに脱帽です。

次のラウンドではトップ8を確定させるために熊谷 陸とIDし、続いて下当たりしたワイアット・ダービーを再度下しました。思い返してみると、IDをすべきだったのかは定かではありません。デッキは非常に強力でしたし、もしワイアットに負けていたらトップ8に進出していなかったかもしれません。まあ、それにも関わらず、スイスラウンドを1位で突破することができました。

トップ8ドラフト(3-0)

ハイドロイド混成体守護者計画守護者計画生体性軟泥

その週末、非常に強力なデッキをドラフトで組み上げてきましたが、トップ8で組んだデッキはまさにその集大成といえるでしょう。まず、初手で《ハイドロイド混成体》をピックしました。そして3手目に《守護者計画》……すべてのアンコモン、そしてほぼすべてのレアよりも優れていると思っているカードをピックしました。

2パック目を剥いたら2枚目の《守護者計画》が現れ、3手目には《生体性軟泥》が流れてきました。その時点で、このグランプリはもらったな、と確信していましたね。

このセットで最高級のレアを2枚も持っており、毎ゲームそれらを引くためのカードもあるのです。それに加え、完璧なマナベースやちょっとのギルド門シナジー、そして間違いなくベストコモンの《拘引者の忠告》が3枚も入ったデッキを組み上げすらしたのです。

成長のらせん平地小走りワニ

トップ8を通じて先手を取れることを忘れていたので、《平地》ではなく《成長のらせん》《小走りワニ》を入れたのは間違いでしたね。私の友人である、ジェイコブ・ナグロ/Jacob Nagroが指摘してくれました。

アーチ道の天使アゾリウスのギルド門

友人の間では《アーチ道の天使》《アゾリウスのギルド門》を採用すべきかについて若干議論が起きていましたが、これらの起用は正しい選択だったと自信をもって言えます。《守護者計画》が2枚あることを考えると、基本1ゲーム中にデッキのほぼ全てを引けるでしょうし、押されている状態でもゲームを掌握できるほど強力な、《アーチ道の天使》のようなカードは貴重です。

ロシェンとの準決勝では《成長のらせん》のせいでゲームを落とし、フルセットまでもつれ込んだりもしましたが、私のデッキは非常に強力でしたし、その通りの動きをしてくれましたね。このデッキでこれ以上遊べないのかと思うと、決勝で勝った時に悲しく感じたほどでした。

まとめ

この優勝はミシックチャンピオンシップ・クリーブランド2019での3-5という戦績に続くものです。初めて2日目に進出できなかったプロツアーでしたね。また、この翌週に参加したグランプリ・ロサンゼルス2019では1-3という戦績でした。2016年以降、初めてグランプリで初日落ちしました。今回のグランプリで特にいいプレイができていたとも思っていませんが、先程述べた2つの大会で特に悪いプレイをしたとも思っていません。間違いなく、今回は非常に運がよかったのでしょう。

全体的に、この2週間は報われるものでしたが、同時に競技マジックは最小限しかコントロールできない、長く行き当たりばったりな道だと思い出させてもくれました。私たちは出来る限りのことをして、その過程を楽しむしかないのです。

また、とても素晴らしい週末でした。1年以上会っていなかった友人、ジェイク・ケーニッヒ/Jake Koenigゼン・タカハシ/Zen Takahashiにも会えましたし、クリーブランド美術館/Cleveland Museum of Artでは畏敬の念に打たれました。あと、Lucky’s Cafeはとても美味しい店でしたね。Inklin Customsが美しいプレイヤーカードを作ってくれたりもしました。

ハンター・コックラン/Hunter Cochranが何やら罪深い理由で、メンタルマジックで何試合か《ハルマゲドン》を唱えるのも見ていました。ただ、そのおかげでジェイコブがたやすく勝利しましたがね。加えて、オータム・バーチェット/Autumn Burchettが歴史に名を刻む瞬間を目にすることもできました。

まだ「勝てる」のだという感覚は、安心させてくれるものでした。大人になって、大人らしい生活をしなくてはいけないという強迫観念のようなものから、マジックへの力の入れ具合を変えてきてましたが、この選択によってもたらされる結果にも、納得がいくようになってきています。今回のミシックチャンピオンシップ、そしてグランプリに向けてはドラフトを7回、構築リーグを1回しかプレイしていませんでした。上手くいけばいいな、とは思うと同時に、普通に考えればそんなに順調にはいかないだろう、とも思ってましたが……今回は上手くいけちゃいましたね。

マジックフェスト・ロンドンが楽しみです。そこでは同じ土俵で戦えるでしょうからね。

それではまた次回。

アレン・ウー@nalkpas

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Allen Wu アメリカ出身のプロプレイヤー。狭き門といわれるMagic Onlineでのプロツアー予選を幾度となく突破しているアメリカの強豪。グランプリ・アルバカーキ2016の優勝でその名を馳せた後、Wizards of the Coast社のプレイ・デザイン・チームに加入し、マジック開発に携わる。プレイヤーに復帰後、2018年8月に開催されたマジック25周年記念プロツアーでベン・ハル、グレゴリー・オレンジと共に優勝。さらなる研鑽を積むべく、チームメイトたちと共にHareruya Prosに加入した。 Allen Wuの記事はこちら