週刊 統率者デッキをつくる vol.5 勝ち筋の考察
みなさんこんにちは、統率者戦だいすきいってつです。
昨日は《真実の解体者、コジレック》で「滅殺4」を4回やったのに、まわしたターンでコンボを決められて負けました。まったく、統率者戦は最高だぜ。
今回も統率者戦デッキのテーマを支える戦略、そのヒントをお届けします。
統率者は決まりましたか?では、そのデッキの勝ち手段は決まりましたか?
20点を削りあう対面戦と異なり、統率者戦は何となくでクリーチャーを出して殴るだけではなかなか勝利できません。戦闘で勝利するのか、コンボで勝利するのか。それを実現するためにどんなことを考えるべきなのか。
忘れてはいけないことがひとつあります。統率者戦にはサイドボードがありません!
今回は統率者戦での勝利を目指すためのデッキ構築について考えていきたいと思います。ちょっと長いお話になりますが……頑張ってついてきてくださいね!
勝利の定義
まずは統率者戦ではどんな状況になったら勝利となるのか、確認してみましょう。統率者戦で実際に目にする決着は主に四つです。
対戦相手のライフを0にする
もっとも単純で根源的な勝利方法です。
統率者戦では勝利のために40点を削る必要があります。
統率者ダメージで勝利する
同一の統率者からの戦闘ダメージを累計で21点受けたプレイヤーは敗北します。
高速で召喚した統率者に飛行など回避能力を付与したり、装備やオーラでダメージ量を増加させて攻撃。無限ライフでも安心できないのが統率者戦です。
実際、小粒な統率者がプレイヤーにアタック、ブロック指定なしを宣言したところで、脇のプレイヤーが《憎悪》を統率者に向けて放った結果、21点の統率者ダメージになってしまい突然一人退場させられるといった事件が起きています。
統率者ダメージを20点受けると敗北、と勘違いされがちなので注意。
毒カウンターで勝利する
「毒カウンターを10個得たプレイヤーは敗北する」のは統率者戦も同様です。
「感染」を持つクリーチャーを「変容」やオーラなどでサイズアップしたり、「増殖」を繰り返して敗北へ追い込む戦術は統率者戦でも存在します。
よく見かけるのは《荒廃鋼の巨像》かもしれません。何らかの方法で戦場に出し、一発ブン殴るだけで毒カウンター11個が乗ります。
毒カウンターによる勝利を目指すデッキは“攻撃的コンボ”とでもいうべき、独特の雰囲気があり、一部に根強い人気があります。
コンボでの勝利
デッキレベルが高くなればなるほど、勝利を決する強力なコンボで勝利を目指す傾向が強くなります。
無限ダメージや無限ターン、無限戦闘などの無限コンボや、《タッサの神託者》《研究室の偏執狂》などの特殊勝利を目指していきます。
どんな勝利を目指すか
理性的、競技的に考えれば、複数の勝利コンボ(勝利に直結する強力なコンボ)を搭載したデッキが強いと言われています。
くどいようですが、統率者戦での勝利にはゲームとしての勝利、体験としての勝利があります。ゲームに負けても体験として楽しむことができた、自身が成長できたならハッピー!という考え方です。
しかしながら、ゲームに負けてばかりで満足はできないでしょう。勝利を目指さないプレイングは、一緒に卓を囲んでくれたプレイヤーにも失礼です。お互いに全力をぶつけ合い、拮抗した先の勝利こそ「Good Game」のはず。
では、私たちはどんな勝利を目指すべきなのでしょうか。
すべてのプレイヤーが勝利コンボによる勝利を目指す必要はありません。クリーチャーの戦闘でライフをやり取りするマジックが好きな人がいたっていいのです。しかしながら、対戦相手3人の40点を削り切る、現実的な手段は手にしておくべきでしょう。
クリーチャーで勝つ!
統率者ダメージや相手のライフを戦闘で0に追い込むことを考えてみましょう。戦闘を積極的に行う戦略をアグロ戦略と呼びます。
パワーが7を超える統率者は3度の攻撃で相手を沈められます。11を超えると二発。
120点を削るのは本当に気が遠い作業です。しかも統率者戦では自分のターンの後に、対戦相手のターンが3回やってくるのです。ライフを削ることに夢中になり、ガードがゆるんだすきに3人から殴られて自分だけライフがへこんでしまった……なんてことになりがちです。
おまけに、コンボデッキは相手のライフを減らすことに興味がないので、ブロッカーを立ててきます。
そこでぜひ活用したいのが回避能力やトランプルです。
ブロックされてライフが削れないなら簡単なこと。飛行や威迫といった、相手のブロックに制限をかける能力をまとめて「回避能力」と呼びます。「回避能力」を与えて殴れ殴れ!「上が空いているではないか。飛べ!」
「プロテクション」や二段攻撃も手です。統率者ダメージは回復されることがないため、「手戻り」が無いというのもメリットです。
もっとシンプルな解決方法もあります。出力を調整できる全体除去や、相手の盤面だけを片付ける除去を使いましょう。
せっかくの育てたクリーチャーが除去されると大きなテンポロスです。しっかり守ってあげましょう。
対策と、対策の対策
コンボデッキはアグロデッキと戦うために、相手の猛攻を止めなくてはなりません。統率者戦にはたくさんの戦闘を阻害する置物が存在します。競技性を追求して「かなり仕上がった」コンボデッキでもないかぎり、戦闘を阻害する措置をとってくる可能性があります。
余談。《罠の橋》と《プロパガンダ》どちらが強力か考えてみましょう。手札を減らせば攻撃を完全に阻害できる《罠の橋》に対して、《プロパガンダ》はマナを払えば攻撃ができてしまいます。しかし、「自分以外を攻撃するならタダ」であるため、ほかのプレイヤーを攻撃するようになりますし、わざわざこれを割るための呪文をサーチしてくることもほとんどないでしょう。また、 《プロパガンダ》 は自身の攻撃にはなんと制限もかけないので、アグロ戦略をとりながら相手を妨害することができます。その一方で、マナが無尽蔵に確保できたり、手札がなく、マナが余ってしまったプレイヤーあいてには機能しなくなってしまいます。仮想敵に合わせて選択しましょう。白の 《亡霊の牢獄》 もお忘れなく。
アグロデッキはこうした置物に対応するためにぜひアーティファクト・エンチャント除去が欲しいところですね。
クリーチャーをたくさん並べて殴る戦法は統率者戦においてリスキーな戦法と言えます。統率者戦は往年の優秀な全体除去のオンパレード。相手が緑単でないかぎり、少なくとも1枚は全体除去が入っているとみていいでしょう。
打ち消し以外の全体除去をかわす方法もなくはありません。しかしながら毎回必ずこうしたカードを構えておけるわけではありません。よって、「問題が起きないようにする対策」に加えて、「起きてしまった問題に対する策」も練っておきたいです。
特に緑が全体除去に弱いのは宿命と言えるでしょう。頼みの綱、《英雄的介入》も《毒の濁流》の前には無力です。死んでいった仲間たちのことは忘れて、未来に前進しましょう。盤面を作りながら手札もしっかり確保していくプレイングが重要です。
必殺コンボを決める
大前提として、コンボパーツを集める必要があります。大量にドローして引き当てるか、サーチカードを使うか。
決してやってはいけないのが、勝利手段を一つのコンボに絞ることです。《タッサの神託者》での勝利を目指すデッキで、《タッサの神託者》を追放されてしまったらどうしますか?
なるほど、代替可能なカードを入れておくのも手です。では、ライブラリーをひっくり返す手段は何でしょう。《Demonic Consultation》だけですか?それを追放されたらどうします?《汚れた契約》も入れた。なるほど。それも打ち消されたら?
多色の統率者が強いのはたくさんの強力なコンボやカードを採用できるからだ、と度々伝えてきました。
- 2021/04/04
- 統率者列伝 vol.5《刃を咲かせる者、ナジーラ》
- いってつ
先日ご紹介した《刃を咲かせる者、ナジーラ》デッキをご紹介した記事でも、「このデッキの強さはパーツを共有しない勝利コンボを複数搭載していることにあると説明しています。
- 2021/02/28
- 競技EDHへの招待状
- Jacob Nagro
『競技EDHへの招待状』はこれまで何度も引用してきましたが、本当におすすめの記事です。競技性の高い、いわゆる「ガチ統率者戦」に興味がない人でも大変参考になります。
統率者がコンボパーツであることの利点は、ゲーム開始時から手札にコンボパーツがあるということだけではなく、コンボパーツが失われないことにあります。マナは余分にかかりますが、細いながらも見えている道をたどることが可能です。
勝利ルートを複数持ったデッキの例
《深海住まいのタッサ》デッキを例に紹介しましょう。
《深海住まいのタッサ》の誘発型能力でクリーチャーの戦場に出たときに誘発する能力を使いまわしてアドバンテージを稼ぎ、最後にはコンボを成立させて勝利するデッキです。高速のゲームエンドを目指すのではなく、「高速のゲームエンドをかわし、二の矢を構える隙を狙って勝利する」戦法をとっています。勝利コンボは三種類あり、それぞれがパーツを共有しないため、パーツを失っても次のプランに移っていくことができます。
コンボその①:唱えた後墓地に置かれる追加ターン呪文を《古術師》で拾い上げてまた追加ターンを獲得。《古術師》を《深海住まいのタッサ》でブリンクさせ無限ターンを成立させる。
コンボその②:ライブラリーをひっくり返して《タッサの神託者》で勝利する。
このコンボは失敗した時の仕切り直しが困難で、リスクが大きいです。慎重に。
コンボその③:無限マナからの歩行バリスタで無限ダメージ。《天才のひらめき》でデッキを引き切って《タッサの神託者》で勝利することもできる。
このように、複数のコンボを用意することで一度コンボを阻害されてもリスタートしていくことができます。妨害されてしまっても 《一日のやり直し》 《永劫のこだま》 などで仕切り直しが可能になっています。
コンボを入れすぎて、何をするにも身動きが取れない!なんてことのないように気を付けましょう。
対策と、対策の対策
勝利コンボはほとんどが1ターンの間に複数の呪文を唱えることで成立させるものです。それを咎めるだけで一部コンボは全く機能しなくなりますし、そうでなくてもテンポを大きく阻害します。
また、コンボデッキはマナ基盤をアーティファクトに頼りがちなだけではなく、コンボそのものやコンボパーツを集める手段にアーティファクトを使うことも多いです。「土地ないけど《魔力の墓所》 《師範の占い独楽》 があるからキープだな!」というプレイヤーに《溜め込み屋のアウフ》をぶつけましょう。
また、コンボに注力したデッキはクリーチャーが少なくなりがちである上に、序盤をアーティファクトのマナ加速やパーツ集めに奔走することになるため、高速に統率者を唱えてサイズアップしていくデッキがコンボデッキを数ターンのうちに倒してしまう場面もあります。強力な統率者を採用していたり、有名な勝利コンボのある統率者を採用していると、それだけでヘイトを集め、コンボを決める間もなくボコボコにされることもあるのです。
高レベル帯であっても《精霊の魂、アニマー》や、《悟った達人、ナーセット》《刃を咲かせる者、ナジーラ》など戦闘で大きくライフを削ったり、戦闘がきっかけでコンボが始まるデッキが存在しています。
そして同時に、コンボデッキの敵は多くの場合コンボデッキです。どれだけ早く勝利コンボを成立させるか、どれだけ相手のコンボに介入できるかが争点になってきます。
「コンボカード」「コンボを支えるカード」「相手のコンボを阻害するカード」「自分を守るカード」の割合はコミュニティや仮想敵、構築思想によって大きく異なるでしょう。コンボデッキはこのあたりの調整が難しいと思いますが、それもまた統率者戦の楽しみでもありますね。
アグロとコンボの実態
以前、「統率者列伝」で紹介したデッキを振り返っていきましょう。- 2021/04/11
- 統率者列伝vol.6《野生の魂、アシャヤ》
- いってつ
《野生の魂、アシャヤ》デッキはアグロ戦略をとりつつも、無限マナコンボ、無限マナがあればたちまち勝利できてしまうカード(いわゆる無限の注ぎ口)も搭載しています。
- 2021/03/21
- 統率者列伝 vol.3 ~《希望の天使アヴァシン》
- いってつ
《希望の天使アヴァシン》デッキも、《太陽冠のヘリオッド》《歩行バリスタ》の無限ダメージコンボを搭載しています。
決してアグロとコンボ、どちらかに寄せなければならないことはないのです。そう、統率者戦は自由!
お互いに大量のクリーチャーを並べて殴るに殴れない状況に陥ってしまったとき、無限コンボはゲームを決着させる決め手になりえます。逆に、コンボを邪魔されてしまったときに「最悪統率者で3回殴ればいい」と切り替えていけます。
まとめ
今回も学んだことをまとめてみましょう。・勝利手段を決めたら、それをサポートするカードを用意する。
・妨害に対応できるカードを用意する。
・コンボだけで勝利を目指すなら複数のルートを用意する。
・アグロとコンボは同居できる。
惚れた統率者を暴れさせるため。
自分の好きなコンボを押し通すため。
実際のゲーム展開を見据えた構築でぐっと勝率が上がるはずですよ!
次回はマジックになくてはならないカード、土地を特集します!土地の役目はマナを出すことだけではありません。きっとあなたのデッキでも役立つ素敵な土地をご紹介します。お楽しみに!