今回も最新セット『戦乱のゼンディカー』の環境分析を行いたいと思う。
まずはクイックレビューという形で各色のトップコモンの紹介を中心に環境の所感をお伝えしたいのだが、今環境はこのクイックレビューとは別に、十分に環境の理解を深めてから総括的な環境分析記事を行いたいと思うので、そちらも期待してもらえれば幸いだ。
それではまずは環境の概観から。
■ 環境の特徴
現環境がアーキタイプ環境であるということに異論を挟む人はいないだろう。
対抗色まで含めた2色の組み合わせそれぞれにコンセプトが設定されていて、色の組み合わせだけでなくアーキタイプごとの住み分けが重要になってくる環境になっている。
なのでこの環境を解説するファーストステップとして、まずは代表的なアーキタイプごとの概観について言及しよう。
Tier1: コモンから積極的に参入したいアーキタイプ
■ 青黒嚥下
昇華者によるテンポとアドバンテージが強さの根幹……と言いたいところだが、実はそれと同じくらいタダツヨ成分も高い。この環境は青が強すぎるのだ。
とはいえ2色とも「嚥下」色なのでエンジン部分が厚く取れるのが最大の魅力であることは確か。需要の高い2色の豪華な組み合わせなので、住み分けが難しいのが唯一の欠点。
■ 青赤欠色
構成パーツがどれも単純に強いカードで、MOでの赤の安さと相まって3-0率が最も高い。
これから徐々に赤が適正評価されるにつれ、うま味が薄れる可能性あり。
コモンで「欠色」への先鋭化を肯定するカードは《棘撃ちドローン》だけだが、きちんと住み分ければアンコモン以上の専用カードも回ってくるのできちんと「欠色」に寄せよう。
■ 白黒同盟者
《カラストリアの癒し手》とその仲間たち。特定カードへの依存度が高い分、構築難度が最も高いが、完成したときの強さは折り紙付き。
アーキタイプ色が薄くタダツヨ感が漂う青や赤のパーツと違って、欲しいカードが他のアーキタイプに摘ままれにくいので、位置取りが成功したときにすごいデッキができやすいのだ。
その他、人気色である青を使わなくてすむというメリットも大きい。
Tier2: 強さに対して競争率が低いアーキタイプ
■ 黒緑トークン(エルドラージ)
トークンを並べて全体強化するプランを軸として、エルドラージ成分と同盟者成分のどちらかをハイブリッドする形がオススメ。
オプションでエルドラージ戦略を組み込むなら「上陸」シナジーまで詰め込みたくなる気持ちは分からないではないが、実際にやってみるとまとまりがなく、チグハグなハンドがくるリスクが大きいので基本的に「上陸」パーツは赤緑などに譲っておくのが選択として手堅い。
■ 白赤同盟者
今MO上で、一番不当に評価が低いアーキタイプ。白の低マナ域から《オンドゥの勇者》《髑髏砕きの補充兵》につなげるマナカーブデザインを強く意識しよう。
多彩なコンバットトリックでビートをサポートできるので、マナカーブデザインがしっかりしていれば除去が取れなくても十分に勝てる。ビートではあるが5マナまでスムーズに伸びてほしいので土地18枚が肯定される。
その分、色の合った特殊地形や発動者などでフラッドをケアすることも意識しよう。
Tier3: 狙わないアーキタイプ
■ 白青飛行ビート
専用パーツが少なく、他のアーキタイプとの競合が激しいパーツを22枚集めることになるので、組めたときのスペックは高いが狙ってできるものではないという観点からアーキタイプとしての地力の評価はこの程度になってしまう。
Tier4: 回避するべきアーキタイプ
■ 黒赤欠色
■ 白緑同盟者
■ 赤緑上陸
■ 青緑エルドラージ多色
以上が主なアーキタイプの概観になる。
Tier4については今の段階では「上手くこのアーキタイプを組む方法を模索する」よりも「やらない」というシンプルなアプローチが一番実用的なので、思い切ってバッサリ切らせてもらう。環境初期はまず、本命アーキタイプの習熟にリソースを割こう。
次に各色のコモントップ3について言及する。
■ 白
1位 《ギデオンの叱責》
何のひねりもないが、軽い除去は偉いのだ。
白絡みのアーキタイプで一番強力なものは白黒同盟者になるのだが、強さの根幹は《カラストリアの癒し手》のドレインエンジンになるので、弾数こそ重要だが、その質を白のコモンには依存していないのだ。というか白はアーキタイプの軸になるカードが白緑の《鼓舞する突撃》くらいしかない上に白緑がTier4のアーキタイプになるので所謂タダツヨパーツからピックすることになる。
2位 《大物潰し》
エルドラージが跋扈する今環境においては、従来よりも信頼度も重要度も上げて評価していい。
また、やたらと1/1トークンがオマケでバラ撒かれる環境なので低マナ圏の生物でビートすることが難しく、重いカードのぶつけ合いを想定してデッキデザインをするので環境が全体的に低速化していることもこのカードの評価を上げる一因になっている。
ただし、裏目も大きいので2枚目以降は評価を大きく下げることも忘れずに。
3位 《真っ逆さま》
白+黒・赤・緑のいずれかで組む場合は基本的に同盟者に寄せるため、同盟者以外の生物よりは白の除去を優先する。
青と組む場合は《霞の徘徊者》などの運用が難しいため、十分にスペル枠が埋まる目算が立っているなら《グリフィンの急使》を優先することが肯定される状況もある。
環境が低速化されたことによって、古きよき白青フライング戦略が日の目を浴びる日がくることになった。白と青は相互のシステムの補完が薄いためTier1になるまではいかないが、豊富な除去と層の厚い飛行生物による継続的な打点は十分に3勝を狙うことができる。
地味に色マナ拘束が薄く、マナカーブを埋めやすいなど事故りにくさという点でも優秀。
■ 青
1位 《空中生成エルドラージ》
高い水準で平均的な働きをするハズレのない1枚。青白フライング、赤青欠色、エルドラージなどあらゆるアーキタイプでコンセプトに貢献する。
2位 《掴み掛かる水流》
このカードも《空中生成エルドラージ》と同様に使い勝手のよいカードで、この2枚に優劣をつけるのは難しいのだが、コンセプトへの貢献度の面を考慮すると微差で《空中生成エルドラージ》を優先することになる。《ハリマーの潮呼び》が取れた場合は評価を逆転していいだろう。
とはいえ身も蓋もないことを言ってしまうと、今のところこの2択に遭遇していないのであまり気にする必要はないようだ。
ちなみに「覚醒」は重ねがけしてサイズを上げることができるので覚えておこう。
3位 《霧の侵入者》
「嚥下」システムへの依存度によっては最優先にしてしまっても構わない。
そういう意味では上位2枚との比較で考えるよりも《水底の潜入者》との2択こそ悩みどころなのだが、青の2マナ域の層の薄さを考えると基本的にこちらを優先することになるだろう。
■ 黒
1位 《カラストリアの癒し手》
専用パーツであるため受け入れの狭さがネックになるものの、白黒同盟者においてこのカードの依存度があまりにも高いため、初手で取ってしまって構わない。逆に言うとこのカードを下に流したら後付けで白黒同盟者に走るのはできるだけ避けて住み分けよう。
2位 《完全無視》
《カラストリアの癒し手》とは逆にどんなデッキに入れても一定以上の働きが保障されている。同盟者を目指さないならもちろん上方修正。
3位 《淘汰ドローン》
微差で3位に挙げたが、上位2枚とは大きく評価が下がり、このラインから下はアーキタイプごとに優先度を大きく変えることになるだろう。
白黒にも黒緑にも特に需要はないが、青黒、赤黒では重要なエンジン部分のカードだ。厚く取りたいパーツなので「嚥下」にいくなら各種昇華者よりも優先して取っていい。
各種昇華者を採用する目安としては、昇華者の数+3枚以上の「嚥下」生物or追放呪文を最終的に確保したい。
■ 赤
1位 《虚空の接触》
《完全無視》との2択が難しい。
環境初期の所感では赤青、青黒、白黒の3アーキタイプが現環境のTier1であるので、より受け入れの広い黒除去である《完全無視》を優先するというのが現状の見解だが、このレベルの比較はこれから二転三転することが予想される。
2位 《多勢》
展開しながら除去もできる小回りのよさが魅力。仕込みが必要なカードではあるが、そこまで神経質にならなくても機能させることは難しくない。
3位 《棘撃ちドローン》
《棘撃ちドローン》は赤青、赤黒で活躍する。採用する場合はデッキ全体を「欠色」に寄せるよう意識しよう。3マナが既に太っていて除去が足りない場合は優先度を下げて赤黒の各種5マナ除去から取っていい。
■ 緑
1位 《目なしの見張り》
《末裔の呼び出し》との2択は《大群の殺到》や《タジュールの戦呼び》とのシナジーからこちらを優先する。これらのカードを採用しない場合は、マナカーブによってフレキシブルに選択する。
2位 《末裔の呼び出し》
《目なしの見張り》との二択については基本的に前述の通り。
付け加えるなら6マナのレア生物をピックしていて、まだ全体強化系のカードを確保していない場合はこちらの優先度を上げてもいい。
3位 《オラン=リーフの発動者》
見た目よりもずっと強い。トランプルがつくためトークンでのチャンプも対策として有効でなく、2マナ2/2ながらも消耗戦の末のロングゲームではフィニッシャーとして機能する。
以上、環境の概観は掴めただろうか? 今回はファーストインプレッションということで、網羅的に言及するよりも一定以上リソースを割く価値のあるポイントに絞って解説をしてみたので、アーキタイプの数が多く何を目指せばいいか分からないという人は参考にしてもらえれば幸いだ。
それではよいリミテッドライフを。
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