MTG Just Now! vol.42 -不屈の追跡者 etc.-

晴れる屋メディアチーム





 情報を制す者はマジックを制す。

 特にSNSによる情報交換が盛んな現代、口コミがその後のメタゲームに与える影響は計り知れない。

 すなわち、バズってる(話題になっている)カードを知ることは、メタゲームの把握と予測の大いなる助けとなることだろう。

 当企画では、そんな「今、バズってるカード」を週刊で追っていきたいと思う。


 カードの紹介に入る前に、先週行われたイベントやマジック関連の主な出来事を簡単におさらいしよう。



【グランプリ・北京2016が開催される】

 先週末には『イニストラードを覆う影』リミテッドによる【グランプリ・北京2016】が開催された。

 トップ8に日本人が5名も入賞している中で見事頂点に立ったのは、レベル1ジャッジとして千葉近郊のマジックコミュニティでも活躍している菅谷 裕信(千葉)!


※画像は【マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト】より引用させていただきました。


 イメージカラー(?)の白のダブルブレストを着こなし、強力な赤黒マッドネスを組み上げて華麗に優勝を収めた。また、菅谷はこの優勝でプロ・プレイヤーズ・クラブ「シルバー」レベルを達成した。

 Hareruya Prosも多く参戦しており、対戦カバレージにも激戦の様子が収められている。『イニストラードを覆う影』リミテッド環境を読み解くコンテンツが数多く掲載された【カバレージページ】は、全プレイヤー必見の内容だ。



 主要な出来事はこのくらいだろうか。

 さて、それでは今大きな話題を呼んでいるカードたちを紹介しよう。



1. 《不屈の追跡者》

 先週末開催された【SCG Invitational Columbus】、そのトップ8のうち3名が選択したデッキがある。


不屈の追跡者


 前環境からの大本命。《不屈の追跡者》の追加によってさらに強化された「バントカンパニー」だ。

 わずかに処理が遅れるだけでも4/3、5/4、6/5……と致命的なサイズに膨れ上がり、「調査」によって多大なアドバンテージを稼ぎ出す《不屈の追跡者》。「バントカンパニー」ではこれに加えて新戦力である《薄暮見の徴募兵》の存在もあり、クロックとアドバンテージ獲得を無理なく両立している。


薄暮見の徴募兵


 2ターン目、3ターン目とクリーチャーを展開しつつ、4ターン目以降は《集合した中隊》《オジュタイの命令》の2択を迫り、対戦相手が怖気づいて動きを止めれば《薄暮見の徴募兵》が「変身」。さらに、ひとたび5枚土地が並べば《大天使アヴァシン》によるプレッシャーをかけることもできる。なんだこれ最強のデッキか。


集合した中隊オジュタイの命令大天使アヴァシン


 攻守のバランスが良く、ミドルレンジからロングレンジまでそつなくこなす「バントカンパニー」はひとまず環境最大の仮想敵であると断言できるだろう。これから【プロツアー『イニストラードを覆う影』】【グランプリ・東京2016】の2連戦で、はたしてどのようなデッキが勝ち残ることになるのか? スタンダード環境から目が離せない!



2. 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

 そして上述の【SCG Invitational Columbus】と同日に開催されたオープントーナメントである【SCGO Columbus】では、あのデッキがいよいよ牙を剥いた。


絶え間ない飢餓、ウラモグ


 強靭! 無敵! 最強! 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》4枚を擁する「赤緑ランプ」だ。



Joshua Dickerson「RG Eldrazi」
SCGO Columbus(1位)

12 《森》
2 《山》
1 《荒地》
2 《燃えがらの林間地》
4 《ウギンの聖域》
4 《見捨てられた神々の神殿》

-土地(25)-

4 《ジャディの横枝》
4 《世界を壊すもの》
4 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》

-クリーチャー(12)-
4 《コジレックの帰還》
4 《ニッサの巡礼》
4 《爆発的植生》
4 《ニッサの復興》
4 《ニッサの誓い》
3 《炎呼び、チャンドラ》

-呪文(23)-
4 《難題の予見者》
3 《不屈の追跡者》
3 《次元の歪曲》
2 《歪める嘆き》
1 《引き裂く流弾》
1 《翼切り》
1 《炎呼び、チャンドラ》

-サイドボード(15)-
hareruya



 環境が変わっても《炎呼び、チャンドラ》《絶え間ない飢餓、ウラモグ》の制圧力は相変わらずで、マナが一定数伸びるまでのラグはあるものの、フィニッシュ力は環境随一である。

 このデッキでは自身の《コジレックの帰還》にも引っかかる《面晶体の這行器》のようなマナクリーチャーを採用していないことも特徴的だ。これにより2マナ→4マナ→7マナのジャンプアップはできなくなっているが、代わりに《ジャディの横枝》が土地が伸びるまでの猶予期間をもたらしてくれる。


炎呼び、チャンドラコジレックの帰還ジャディの横枝


 また、プレイングが比較的容易であることも対戦回数の多い競技トーナメントではメリットになる。圧倒的なカードパワーでゴリ押しする快感は他の追随を許さない。



3. 《保護者、リンヴァーラ》

 さて、環境の大本命が「バントカンパニー」であるならば、次に考えるべきことは二通り。「バントカンパニー」を使用するか、あるいは「バントカンパニー」を倒すデッキを構築するか、である。

 そこで、筆者が個人的に「バントカンパニー」攻略の糸口となるのでは? と考えているカードをご紹介させていただこう。


保護者、リンヴァーラ


 プチ《機を見た援軍》内蔵クリーチャー、《保護者、リンヴァーラ》だ。

 ライフゲイン+トークン生成のETB能力をうまく誘発させることができれば攻守を入れ替えることが可能で、横並びする「バントカンパニー」に対してはそのどちらも比較的容易に達成することができるだろう。

 素のサイズもさすがに6マナクリーチャーの貫録を感じさせる5/5飛行《大天使アヴァシン》をも一方的に屠ることができるだけのスペックがあり、SCGなどでもトップ16までに一定数存在する「ナヤミッドレンジ」のようなデッキでもたびたびその姿を見かけるようになってきている。


Jacob Bard「Naya Midrange」
SCGO Columbus(12位)

6 《森》
2 《平地》
1 《山》
4 《梢の眺望》
2 《燃えがらの林間地》
4 《進化する未開地》
4 《鋭い突端》
1 《要塞化した村》
1 《獲物道》

-土地(25)-

4 《森の代言者》
3 《棲み家の防御者》
3 《ラムホルトの平和主義者》
4 《死霧の猛禽》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
2 《大天使アヴァシン》
1 《保護者、リンヴァーラ》
1 《龍王アタルカ》

-クリーチャー(19)-
2 《ウルヴェンワルド横断》
4 《ドロモカの命令》
3 《石の宣告》
3 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》
4 《先駆ける者、ナヒリ》

-呪文(16)-
3 《狩猟の統率者、スーラク》
3 《光輝の炎》
2 《不屈の追跡者》
2 《アヴァシンの裁き》
2 《翼切り》
1 《棲み家の防御者》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
1 《龍王ドロモカ》

-サイドボード(15)-
hareruya



 このデッキの《ウルヴェンワルド横断》は序盤の色マナ基盤の安定に貢献し、「昂揚」を達成する中盤以降はクリーチャーのシルバーバレット戦略を可能とする。また、4枚採用された《先駆ける者、ナヒリ》は「+2」能力が「昂揚」達成、「-8」能力がシルバーバレットの両方に役立つだろう。おまけに戦場に出したクリーチャーはターン終了時に手札に戻ってくるため、ETB能力を使いまわして二度おいしい思いをすることもできる。


ウルヴェンワルド横断先駆ける者、ナヒリ


 “クリーチャーとプレインズウォーカーでゴリ押す雑に強いデッキ”という、「ナヤミッドレンジ」かくありきといったリスト。《保護者、リンヴァーラ》を一番うまく使えるデッキがこれだとは言わないが、しばらくスタンダード環境では見られなかったアーキタイプの復活だ。今後の活躍を見守りたい。






 いかがだっただろうか?

 今週もまた多くのカードがプレイされ、注目され、議論を呼ぶのだろう。

 次回の記事も楽しみにしていただけたら幸いである。



この記事内で掲載されたカード

Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする

関連記事

このシリーズの過去記事