【前回のクイックレビュー】で言及した環境定義に引き続き、今回は特定アーキタイプにおける網羅的なカード評価を行いたい。
現環境はデザインチームの努力のたまものか、2色の組み合わせ全10パターンがどれもアーキタイプとして成立しているという高い多様性を保った環境になっているが、まずは何を差し置いても最強色である緑系、今回はその中でも最強を誇る白緑人間における具体的なカード評価について優先度を解説していきたい。
緑系のアーキタイプは「昂揚」シナジーが重要になる緑黒を例外として、それ以外の白赤青のどれもが緑の骨太のパーツと補色の除去という原始的な組み合わせによって、アーキタイプの強みの根幹を担っている。それ故にこの3種のアーキタイプは勝利へのアプローチが根本のところで大きくかぶるので、白緑の完成形を理解することで赤緑や青緑をドラフトする際にも高い互換性でメソッドを転用できるのだ。
では、上記を踏まえた上で具体的なカードについて言及しよう。
■ 白緑コモン優先度ランキング
1位 《狂気の一咬み》
まずは環境最強コモン。2マナという軽さながら緑のサイズと合わさることで広い範囲をカバーできる優良除去。
《銀毛の援護者》《茨橋の巡回兵》などとの噛み合いは単純な除去以上の勝利貢献度を見せる。
2位 《信条の香炉》
人間率の高いデッキで運用する前提であればアンコモンレベルの制圧力を見せる。前回言及したように白緑においては直接的な装備品シナジーのみならず「変身」用に消費するターンを無駄にしないという点でも有用。
同率3位 《内陸の木こり》《孤独な狩人》
この2枚に差をつける意味がないのでここでは同率で評価。どちらも単純なサイズだけではなく、カードタイプも人間なので様々なボーナスの対象でもあり、リアルドラフトにおいては色主張という意味でも早い順目でピックすることに意味がある。
同率5位 《スレイベンの検査官》《天使の粛清》
《スレイベンの検査官》はデッキの潤滑油として複数枚の投入が肯定されるが、装備品の確保が不十分だとデッキを薄めるだけの結果にもなりかねないので注意されたし。《天使の粛清》は前回の記事で言及した通り、追加コストの都合上2枚目からは大きく優先度を落として評価する。
7位 《不屈の聖戦士》
白緑は優秀な3マナ生物が溢れているので、性能的には《スレイベンの検査官》より優秀なこのカードも優先度としてはここで評価する。
8位 《裏道の急使》
本来「カードを引く」というボーナスはこのゲームにおいてそうそう簡単に付けていいものではないはずなんだが。《木登りカヴー》に謝ってほしい。
9位 《戦闘的な審問官》
十分に優秀なカードだがマナ域の問題で下方修正されることも珍しくない。
10位 《針毛の狼》
起動コストが下がり使いやすくなった《オラン=リーフの発動者》。装備品と同じく狼男の「変身」用のターンにマナを無駄にしなくてよい点も加点対象。
11位 《ムーアランドの流れ者》
《ガラスの破片》とセットで運用することで真価を発揮する。3/2飛行は立派なフィニッシャーといえるので《ガラスの破片》があって「昂揚」の目処が立つ状況なら雑に相打たないように。
12位 《鼓舞する隊長》
《剛胆な補給兵》との二択は4マナ3/3人間という基本スペックが同じなので大きな差はないが、綺麗に展開した場合にトータルで稼げる打点がこちらのほうが上なのでこちらを優先する。
13位 《剛胆な補給兵》
《鼓舞する隊長》と同じく戦場に出た際のボーナスも無視できないのだが、単純に《信条の香炉》を付けて5/4警戒・トランプルになる3/3人間という素体の性能だけで十分にこの位置で評価できる。
14位 《ガラスの破片》
重要度の割に安すぎて現状だとこの程度の評価で十分に確保できるが、需要が上がって供給が絞られた場合は適宜上方修正しよう。シナジーの数にもよるが平均的な白緑の理想的なバランスだと装備品は3枚欲しい。
15位 《腕っぷし》
コモンのコンバットトリックの中では最優先。装備品がある状態での1/1のオマケが大きいのはもちろんなのだが、それだけではなく装備の付け替えで何かとマナがかかる白緑では構える系のカードは極力コストが軽いことが望ましい。
16位 《眠れぬ者の使者》
装備品と飛行の相性の良さだけではなく、白緑はライフプレッシャーをかけやすいので普通にコンバットをしているだけで1/1飛行を出す条件もクリアしやすい点がいい。ただ、5マナ圏は無理に取る必要はなく、取れるときに流れてきたものを確保する程度の心構えで構わない。
17位 《茨隠れの狼》
十分な性能だが《眠れぬ者の使者》と同じく無理して取りにいく必要は薄い。
18位 《厳格な巡邏官》
「マッドネス」がないアーキタイプではプレイアブルではないと判断する人もいるかと思うが、先にマウントを取った状態から相手の反撃に蓋をする動きは明確な勝ち筋として機能する。種族的に装備品との噛みあいもあり、必要パーツとまではいかないが軽いビート戦略で運用する前提で評価すると一定以上の勝利貢献度がある。
19位 《悪魔の棲家の狐》
2マナ圏の常としてマナカーブデザインの関係で上方修正されることは珍しくない。2/2よりも3/1を優先するべきではないかという意見を持つ人もいるかと思われるが、通常のビート戦略においてはタフネスよりもパワーの高さが重視されるが、装備品で強化する前提で生物を選別していくと、通ったときの打点よりも「止まらなさ」が重要になってくるので3/1よりも2/2が優先される。
20位 《薬剤師の霊》
白緑用のカードではないが最低限保証されている基本スペックの時点でプレイアブル。ただし埋めやすいマナ域なので優先度は低い。
21位 《根から絶つ》
サイドボード用に必ず1枚以上欲しい。替えの利かないカードなので供給の多いコンバットトリックよりも優先する。
同率22位 《狙いは高く》《道理を超えた力》
白緑は生物がいる前提で機能するカードが多々ある関係で、他のアーキタイプよりも生物の枠を多く確保したい。目安としては生物16枚、装備3枚、除去2~3枚、コンバットトリック1~2枚のバランスを目指すので、コンバットトリックの優先度は必然的に下がる。逆説的に装備が十分な数確保できない場合はその分コンバットトリックの枠が広がると考えていい。
24位 《邪悪の暴露》
フィニッシュに使うのであまり「調査」の意味がないのと、《厳格な巡邏官》のほうが装備で強化できる分デッキにあっているという点で、カードが余った場合には真っ先に抜けるカード。しかしデッキの基本戦略にはあっているのでプレイアブルではある。
■ 《狂気の一咬み》よりも優先するアンコモン
1位 《薄暮見の徴募兵》
レアでいいレベルの性能。「変身」ターンのマナの使い道を自前で持っている上に、「変身」後は表の能力で増やした手札を迅速に戦場へ還元できるようになるという至れり尽くせりっぷり。種族的にもマナ域的にもベスト。文句のつけようがない。
2位 《古参の聖戦士》
厚く取りたいマナ域のフィニッシャーなので喉から手が出るほど欲しい。最初手では色の縛りがない分《薄暮見の徴募兵》を優先していいが、白緑が既定路線の場合は優先度を逆転させてもよい。
3位 《群れの守護獣》
狼男を「変身」させつつ展開できるので土地が捨てられなくても十分に強い。「変身」した上で土地まで捨てたときは非常識な打点の上がり方をするのでそれだけでゲームが終わることもしばしば。
4位 《ウルヴェンワルドの謎》
このカード1枚で消耗戦で負けることがほぼなくなる。
5位 《月銀の拘束》
The・万能除去。付替えできるので盤面の打点だけを考えて後顧の憂いなくプレイできる親切設計。何気に「変身」を抑止できる点も無視できない。
6位 《グリフの加護》
こういった極端にゲームを簡単にする系のカードは好きではないのだが、好き嫌いと強さはまた別の話。
7位 《近野の司祭》
適当に強い要素が詰め込んであるので適当に使って雑に強い。1/1飛行2体はやりすぎだろう。
8位 《執念》
多少強さにムラのあるカードでもあるので除去の枚数が少ないときなどは活躍が安定する除去を優先したくなる気持ちも分かるが、こういった1枚でゲームを決めるカードは多少デッキの理想のバランスを崩してでも採用する価値がある。
■ 《薄暮見の徴募兵》よりも優先するレア
白緑のぶっこわれの皆さんです。
9 《平地》 8 《森》 -土地 (17)- 2 《スレイベンの検査官》 1 《内陸の木こり》 1 《ラムホルトの平和主義者》 1 《針毛の狼》 1 《サリアの副官》 2 《戦闘的な審問官》 1 《裏道の急使》 1 《不屈の聖戦士》 1 《不屈の追跡者》 1 《アヴァシン教の宣教師》 1 《剛胆な補給兵》 1 《孤独な狩人》 2 《眠れぬ者の使者》 -クリーチャー (16)- |
1 《腕っぷし》 1 《忘れられていた家宝》 2 《信条の香炉》 1 《狂気の一咬み》 1 《天使の粛清》 1 《月銀の拘束》 -呪文 (7)- |
※生物を厚く取るようにこころがける。最低15枚、最大で18枚。
※とにかく装備品を厚く取ること、もし装備品が取れない場合は《スレイベンの検査官》の優先度は大きく下がる。
以上、今回は緑系ビートの代表格、白緑の解説を行った。次回はシナジー色の強い黒緑「昂揚」と黒赤「マッドネス」の解説を行う予定だ。
それでは、よいリミテッドライフを。
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