今回は最強色の白緑の対抗馬としての「黒系アーキタイプ」について。
黒系アーキタイプとひとまとめに言ってしまったが、「黒緑」が消耗戦を前提としたゲームプランを目指すのに対して、「黒赤」はどこまでも前のめりなビートダウンを追及するアーキタイプになっており、その戦略の差から両者のカードの取捨選択は大きく変わってくる。
そしてどちらにも共通する点としてはコモンから参入する展開はまれであると言うこと。
黒系のアーキタイプはほとんどの場合アンコモン以上のパーツから入ってポジションを主張した上で、上下4~5席分のアーキタイプ専用カードを独占する前提が重要になる。多少被ってでも強引に主張することが正当化される白緑に比べて、黒系のアーキタイプは卓内の位置関係の把握が重要になってくる繊細なアーキタイプなのだ。
特に赤黒に関しては2マナのビートダウンパーツをアンコモン以上のカードでどれだけ埋められるかが大きなキーとなっていることから、黒緑にも増して上下の住み分けが重要になってくる。
では以上の前提を踏まえた上で、まずは黒緑のコモン優先度から定義していこう。
■ 黒緑コモン優先度ランキング
1位 《狂気の一咬み》
まずは環境最強コモン。白緑で運用する場合よりも信頼度は下がるが、下方向が緑に流れないようにするためにも優先度を高めてピックする必要がある。
2位 《孤独な狩人》
白青赤黒すべての組み合わせで優秀な働きを見せる。下に緑を流さない、そして自分に黒緑以外の可能性を残す意味でも他の黒のカードよりも優先度を上げてピックする。逆に住み分けが終わったドラフト中盤以降は除去など足りなくなりそうなパーツを優先していい。
3位 《闇告げカラス》
お手軽「昂揚」達成生物。仕込みだけでなく生物としてちゃんと3マナ分の働きはしてくれるので偉い。
《偏執的な皮剥ぎ人》や《魂を飲み込むもの》など「昂揚」達成がダイレクトに勝ちに繋がるカードがある場合は優先度を上げてピックしてよい。
4位 《死の重み》
《狂気の一咬み》や《殺人衝動》と違って2ターン目の動きとして計算に入れられる点は大きい。
5位 《裏道の急使》
序盤のテンポを損なわずにアドバンテージが取れるこの生物はデザインコンセプトが消耗戦を制する黒緑の戦略と合致している。
6位 《針毛の狼》
通常、他のマナ域に比べて優先度を高めて評価することの多い2マナ域だが、黒緑はプレイアブルなカードがコモンに5種類も用意されている上に《黴墓のゴミあさり》が「昂揚」の専用パーツとして供給が潤沢なので、他の色と同じノリで2マナ生物を集めているとデッキのバランスが悪くなるため注意が必要。
7位 《殺人衝動》
《信条の香炉》がある環境で警戒がついた生物が除去できない点は大きなマイナスだが、それでも2マナのスペルとしては十分な働きを見せる。
《血統の呼び出し》がある場合など、「マッドネス」が有効に機能する前提ならば評価を上げてよい。
8位 《絞首》
決して悪いカードではないが、黒緑のゲームプラン的には重いマナ域は捌くカードではなくゲームを決めるカードに割きたいので、除去の中では最も低いこの位置で評価。とはいえ《殺人衝動》との差は微差であり、黒緑は除去にインスタントが少ないので「昂揚」達成の意味合いなど、全体の構成によって上方修正するのはアリ。逆に2枚目は大きく優先度を下げる。
9位 《腐臭ネズミ》
緑のサイズに対しての解答として優秀。
同率10位 《黴墓のゴミあさり》《茨隠れの狼》
《黴墓のゴミあさり》は優秀なカードだが専用パーツなので、この程度の位置で評価して十分確保できる。
《茨隠れの狼》は白緑で運用する場合よりも評価を上げる必要がある。
12位 《信条の香炉》
白緑のように躍起になって取る必要はないが、黒緑はある程度「人間」率が高いので遅く回収できるなら問題なく採用して構わない。
13位 《グール呼びの共犯者》
《闇告げカラス》や《ガラスの破片》で落ちたときに嬉しいが、赤黒で需要が高いので2マナの選択肢が多い黒緑で取り合う必要はない。
14位 《内陸の木こり》
意外な低評価で驚く人もいるかもしれないが、対黒緑で赤緑が《腐臭ネズミ》用に《両手撃ち》をサイドインするので、巻き込まれて死ぬ点で他の2マナのカードを優先する。
15位 《遠沼の亡霊》
黒緑で空きがちなマナ域なのでマナカーブを埋める意味で需要がある。単体性能がそこまで高いカードではないが、各種装備品、もしくは《道理を超えた力》との相性がいいので1枚あると勝ち筋が広がる。
16位 《巣網から見張るもの》
ディフェンスに定評のある蜘蛛。勝ち筋が曖昧なデッキでは《茨隠れの狼》などの殴れる生物に重い枠を割きたいのであくまでサイド要員だが、特定のレアやエンジンなど、そこに繋げば勝ちというゴールが設定されたデッキにおいてはメインから採用してあげてよい。
17位 《マウアー地所の双子》
緑にディスカードギミックがないので、需要が安定しないことからひとまずこの程度の優先度で評価する。ディスカードするカードの枚数次第でマナカーブと相談しつつ優先度を上げていい。逆にディスカード関係のカードが一切ない場合はピックする必要がなく、殴れるパーツに枠を譲っていい。
18位 《ガラスの破片》
優先度は低くていいが「昂揚」達成のためにも採用する価値はある。
19位 《ケッシグの不吉な豚》
赤緑や白緑ではお呼びがかからないカードだが、黒緑においては遅く回収できるフィニッシャーとして需要がある。
20位 《根から絶つ》
《信条の香炉》を割らない限り白緑の戦線を抑えることが難しく、また青にもクリティカルなエンチャントがいくつかあるのでサイドに1枚はこのカードがほしい。
21位 《死の円舞曲》
緑同型での消耗戦を制するカードだが優先度は低い。《闇告げカラス》が3枚以上取れたときなどは積極的に採用したい。テンポが遅く除去の多い相手にはサイドインすることを意識しよう。
22位 《発生の器》
黒緑はプレイアブルなスペル枠の競争率が激しいのでなかなかお呼びがかからないが、「昂揚」達成のインセンティブが高い構成なら枠を割いてあげるのもやぶさかではない。
23位 《道理を超えた力》
すでに言及したが《遠沼の亡霊》との相性がいいので《狙いは高く》よりも優先してあげていいが、どちらも比較的安い上に必須パーツではないのでそこまで気にする必要はない。
24位 《狙いは高く》
最低限保障されたスペックがあるのでプレイアブルではあるが、パーツとしてデッキ全体の動きとの噛み合いが薄く、やや存在意義が希薄。
25位 《灰口の雄馬》
強いデッキには入らないが「昂揚」を軸にしたデッキであればプレイアブルなカード。全く競合がいないので特に意識しなくても後半で確保できる。
■ 《狂気の一咬み》よりも優先するアンコモン
1位 《ウルヴェンワルドの謎》
2マナが埋まりやすく消耗戦を前提に全体をチューンする黒緑においては《薄暮見の徴募兵》よりも優先してよい。
2位 《薄暮見の徴募兵》
重めの生物を比較的多く取る黒緑では「変身」後のコスト軽減能力による勝利貢献度も高い。
3位 《呪われた魔女》
殴って強し、除去られて強し、つまり強し。
4位 《ファルケンラスの後継者》
黒緑のアーキタイプの強さとは合わないが、デッキの構成とかあまり関係なく2ターン目に出てくる3/2飛行は単純に脅威。
5位 《偏執的な皮剥ぎ人》
エンジンとして強力な上に最低限保証されているスペックも悪くない。このレベルのカードからなら黒緑を意識してもいいだろう。
6位 《群れの守護獣》
何のひねりもなく強いのでアーキタイプを問わず高い優先度で扱う。黒緑が既定路線でない場合は《偏執的な皮剥ぎ人》よりも優先する。
7位 《モークラットの屍蛞蝓》
デカい。若干過小評価されている傾向があるがとにかく強い。
8位 《悪意の調合》
除去同士の比較なので話はわかりやすいはずだ。特にコメントが必要だろうか。
9位 《親切な余所者》
「昂揚」さえ達成してしまえば馬鹿げた強さ。アーキタイプを問わないタダツヨパーツが多い黒のアンコモンの中で、このカードは珍しく専用パーツなので位置取りがしっかりしていれば中盤で取れることも珍しくない。緑黒「昂揚」をやるインセンティブの一つ。
10位 《歯牙収集家》
このカードがボーダーラインか。黒緑が既定路線でない場合は《狂気の一咬み》でもいい。
■ 《ウルヴェンワルドの謎》よりも優先するレア
「レアは強い」以上のコメントがない。
8 《森》 8 《沼》 1 《穢れた果樹園》 -土地 (17)- 2 《偏執的な皮剥ぎ人》 1 《黴墓のゴミあさり》 1 《腐臭ネズミ》 2 《闇告げカラス》 1 《遠沼の亡霊》 1 《親切な余所者》 1 《歯牙収集家》 1 《孤独な狩人》 1 《魂を飲み込むもの》 1 《茨隠れの狼》 1 《マウアー地所の双子》 1 《モークラットの屍蛞蝓》 -クリーチャー (14)- |
2 《殺人衝動》 1 《死の円舞曲》 1 《道理を超えた力》 1 《絞首》 2 《死の重み》 1 《悪意の調合》 1 《血統の呼び出し》 -呪文 (9)- |
※自由度の高いアーキタイプなので勝ちパターンを具体的にイメージして全体の構成を微調整しよう。
※恒久的なエンジンなどがない場合は《ケッシグの不吉な豚》などサイズのある生物を採用して消耗戦を意識した調整が必要。
■ 赤黒について
続いては赤黒について。冒頭で述べた通り、赤黒は環境で最も住み分けが重要なアーキタイプだ。
赤黒はビートダウンでありながらコモンにパワー2以上の生物が1種しかない、つまりは赤黒の成否は黒の2マナアンコモン生物がどれくらい回ってくるかに左右されるということになる。
環境最初期はこの点があまりに大きな問題となり、赤黒はアーキタイプとして致命的な欠陥があるとすら考えた。
しかし、ドラフトの回数を重ねるうちに現環境はあまりに白緑が強く、白緑以外のカードの押し付け合いが卓内各所で発生することが珍しくない点、そして黒系の最も有力なアーキタイプである黒緑が遅い展開を目指すという点、黒緑の2マナの選択肢が潤沢で2マナを埋めることがそれほど優先されないなどの要因が相まって、アンコモン依存というハードルの高さながら当初の予想よりも赤黒が成立する機会は多いという結論になった。
上記を踏まえた上でコモン優先度を決めていこう。
■ 赤黒コモン優先度ランキング
1位 《癇しゃく》
ベスト「マッドネス」カード。このカードから入って緑が混んでいるところに黒の優良アンコモンが回ってくるというのが典型的な赤黒の流れだ。
2位 《死の重み》
戦線を伸ばしながらブロッカーを排除できる貴重な1マナ除去。
同率3位 《グール呼びの共犯者》《ヴォルダーレンの決闘者》
《グール呼びの共犯者》は吸血鬼ではないが貴重な2マナパワー2。
《ヴォルダーレンの決闘者》は4マナのベストカード。《血狂いの吸血鬼》から繋げて7点稼ぐ動きを基本の型にして、そこからもう一押しをどう決めるかが赤黒の戦略の基本形になる。
5位 《ガツタフの放火魔》
生物は極力吸血鬼で揃えたい赤黒だが、このカードはそれでも優先度を高く設定してあげる価値がある。
6位 《吠え群れの狼》
この位置はデッキ内の「吸血鬼」シナジーが最も薄い場合での評価。素のスペックが高いので無駄になることはないのだが、《流城の導師》の前に出す生物は極力「吸血鬼」でありたいというのも切実なのでデッキの構成次第で調整が必要。
7位 《絞首》
インスタントの除去は狼男を「変身」させつつ表裏で一気にブロッカーを減らす動きができるので多少重くても重要。
8位 《マウアー地所の双子》
《ファルケンラスの後継者》《貪欲な求血者》などの0マナでディスカードできるカードが何枚あるかで強さが全く変わるので、柔軟に優先度を調整する必要がある。
9位 《血狂いの吸血鬼》
赤白で《厳格な巡邏官》から2ターン目にキャストするのがベストだが、ディスカード手段が豊富な赤黒でもデッキにマッチした仕事をする。既に言及したように《ヴォルダーレンの決闘者》と合わせてプレッシャーをかけよう。
10位 《流城の導師》
4ターン目の生物でカウントしないほうがよい。《マウアー地所の双子》を強化するのがベスト。
11位 《苛虐な魔道士》
青赤でこそ活きるカードだが赤黒でも種族補正込みでプレイアブル。
12位 《無差別な怒り》
インスタントタイミングでディスカードできる手段がある場合は上方修正。前述の2ターン目《血狂いの吸血鬼》のバックアップとして無理やり勝つプランは美しくないがある程度有効。
13位 《放たれた怒り》
辻斬り。通り魔。モニター越しに対戦相手の「んなもんケアしてらんねぇよ」というバイブスをひしひしと感じる。
2枚まで採用してよい。《血狂いの吸血鬼》との相性の良さは癖になる。
14位 《灰と化す》
ソーサリーなのが玉に瑕。狼男色のスペルはインスタントとソーサリーの差が果てしなく大きい。
15位 《アドレナリン作用》
一度育てた《血狂いの吸血鬼》が相手のパワー2にブロックされたシチュエーションに合わせられればベスト。また、《放たれた怒り》と組み合わせることで場が不利でも無理やり勝つことができるので意識しよう。
16位 《燃えさし眼の狼》
コンバット前に4マナで生物をキャストしたい赤黒で運用するとメリットよりもパンプマナの手間が気になるが、それでも2マナが足りない場合は贅沢を言っていられない。マナフラッドした際に《アドレナリン作用》と合わせて無理やり勝つ目が残されるのはメリット。
17位 《吸血貴族》
単体評価としては積極的に採用したいカードではない。《流城の導師》の有無が採用基準。
18位 《傲慢な新生子》
見た目よりもちゃんと仕事するので1枚は無理なく採用できる。2マナが薄い場合は《血狂いの吸血鬼》と合わせてマナカーブをごまかせる。
19位 《闇告げカラス》
デッキの動きとは合わないが最低限保証されるスペックでプレイアブル。
20位 《腐臭ネズミ》
デッキ合わない最低保証スペックプレイアブル。
21位 《殺人衝動》
デッ合わ最保プ
22位 《療養所の骸骨》
《甘やかす貴種》が取れた場合は大きく上方修正して必ず確保しよう。
23位 《溶岩の地割れ》
安いカードだがゲームを決めるカードでもある。ある意味、赤黒は相手に色々な事故死を用意してあげるのがコンセプトになるのでこのカードは1枚欲しい。
■ 《癇しゃく》よりも優先するアンコモン
1位 《ファルケンラスの後継者》
厚く取りたいマナ域であり、種族も能力も完璧。赤黒が既定路線ならば最優先。
2位 《稲妻の斧》
赤黒はインスタントタイミングでディスカードできるだけで偉いのに、その上1マナ5点火力。つまりすごく偉い。
3位 《首折れ路の乗り手》
3マナ生物にあるまじきフィニッシャー性能の高さ。
同率4位 《ケッシグの鍛冶場主》《オリヴィアの血誓い》《トロスタッドの死騎手》《貪欲な求血者》
1-1なら《癇しゃく》を優先していいが、既に赤黒が既定路線ならばこれらの2マナ生物を優先する。
8位 《悪意の調合》
インスタントタイミングでディスカードできるメリットは本体に飛ぶメリットよりも上回る。
9位 《手に負えない若輩》
基本的にこちらを優先していいが、3パック目で除去の枚数が2枚以下なら《癇しゃく》を優先する。
■ 《ファルケンラスの後継者》よりも優先するレア
赤黒のブッ壊れはこちらになります。
9 《山》 8 《沼》 -土地 (17)- 1 《甘やかす貴種》 1 《傲慢な新生子》 1 《ファルケンラスの後継者》 1 《ケッシグの鍛冶場主》 1 《オリヴィアの血誓い》 1 《貪欲な求血者》 2 《血狂いの吸血鬼》 2 《ヴォルダーレンの決闘者》 1 《流城の導師》 2 《マウアー地所の双子》 1 《手に負えない若輩》 -クリーチャー (14)- |
1 《稲妻の斧》 1 《アドレナリン作用》 1 《癇しゃく》 1 《放たれた怒り》 1 《悪魔と踊る》 1 《ギサの召集》 1 《血統の呼び出し》 1 《無差別な怒り》 1 《ステンシア仮面舞踏会》 -呪文 (9)- |
※2マナの生物の質が最優先。
※除去が少ないのは《アドレナリン作用》と《放たれた怒り》でごまかせる。
以上、今回は黒系のアーキタイプを解説した。次回は青系のアーキタイプについて解説したい。
それでは、よいリミテッドライフを。
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